スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦) 作:ハトメヒト(ヒットマン)
独房に向かって歩く最中、俺はまた彼女の姿を見る事になる。
電子タバコを片手に通路の壁に背中を預けた彼女は俺を見ると鋭い視線を向けて来た。
「アンタにさ……1つ聞いておきたい事があってさ」
「急にどうした? 女医さんらしくもない」
「まぁ、黙って聞いてくれ。連邦とジオンの戦争はもう終盤だ。次のア・バオア・クーで最後になるかもしれない。いや、連邦の上層部は次で終わらせるつもりだろう」
「そうだな。地球での戦線は完全に連邦に傾いてる。宇宙でもソロモンを奪取した。ジオンに残されたのはア・バオア・クーとグラナダくらいだ。これ以上、戦争を続けるだけの力はもうないかもしれない」
「艦長をしてたんだからそれくらいわかるか。アタシが聞きたいのはその後の事さ」
「連邦とジオンの戦いが終わった後……」
「そう、アンタはどうなると思う?」
女医さんはいつにもまして神妙な面持ちで俺に聞いて来た。
俺はこの先の結末を知ってる。
ジオンはこの戦いも敗れ数日後に降伏宣言を出す。
俺はこの戦いで無理に戦わなくても逃げまわってれば他の奴らが勝手にやってくれる。
女医さんは言葉通りに戦争の結末がどうなるのかを聞いてるが俺にとっては違う。
この世界にやって来たが、戦争が終われば俺はどうすれば良いんだ?
帰る方法もわからず、この世界で生きてく力もない。
死ぬ思いなんてゴメンだ。
落ち着いたら連邦軍なんて抜けてやる。
でも……どうすれば良い?
目の前の出来事を何とかする事に夢中で考えられなかった。
本当に……どうすれば良い?
俺の心の中の声に答えてくれるヤツなど居る筈もなかった。
「取り敢えず言える事はジオン公国は失くなるだろうな。これだけの事をしでかしたんだ。サイド3の監視も強まるし、スペースノイドに対して連邦は更に重圧を掛けるだろうな。宇宙に住む人達は今よりも息苦しくなる」
「ありきたりな回答だな」
「悪かったな。ありきたりで」
「アタシはこの先も戦争が続く気がしてならないね。今の戦いが終わった所でジオン兵全てが降伏する訳ではない。暫くは残党兵が各地で抵抗するだろうね」
「だが本国が失くなれば増援も補給もない。そんなのは暫くの間だけだろ?」
嘘だ。
一年戦争が終わってもこの世界ではまだまだ戦争が続く。
0083とゼータ、ダブルゼータ、逆シャア、新作でユニコーンが作られてたっけ。
どちらにしても戦いは終わらない。
それを知っていながら俺は平然と嘘を付く。
まぁ、言っても誰も信じないだろうがな。
そんなに詳しく知ってる訳ではないが、この情報があるから少しは生き延びる可能性が増える。
本当に……どうすれば良いんだ。
「このくらいでスペースノイドの恨みが晴れるとは思えないね」
「そんな事を言う為に呼び止めたのか?」
「あぁ、そうだね。アタシはこの戦争が終わったら地球に降りる。ムラサメ研究所って場所に転勤だ」
「こういう職業だ。よくある事だ」
「最後の戦いになる事を祈るよ。向こうが攻め込んで来たら死ぬかもしれないしね。しっかり頼むよ、艦長さん」
言うと女医さんは何処かへ歩いて行った。
俺はこの先をどう生きてくのか考えがまとまらぬまま、あの人の背中を眺めるしか出来ない。