スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦)   作:ハトメヒト(ヒットマン)

40 / 46
第38話 災厄と希望

 シャア・アズナブル――ジオン・ズム・ダイクンの息子にしてニュータイプ――赤い彗星の事を忘れるとは不覚だった。しかもジオング……サイコミュによる5連装メガ粒子砲のオールレンジ攻撃と高機動。シャアが『足は付いていない』と言った後『あんなの飾りです。 偉い人にはそれがわからんのですよ』とジオング整備士が言ったのも有名な話だ。

 しかし、どうする。奴は確実に近付いている。確かアムロとやり合う前の奴の撃墜数は、MS18機と戦艦4隻だったはず。スコア入らないために何としても持ちこたえてやる。俺は声を張り上げ指示を出す。

 

「第一種警戒、全機にスクランブルを指示! 急げよ(やっこさん)は赤い彗星だ。それに機体は高機動だぞ」

「艦長なぜそんな事分かるんですか!?」

 オペレーターは疑問を感じたように見えたがすかさず叫ぶ。

「勘だ。勘に決まっているだろう。そんな悠長に言っている暇があるなら早くしろ堕とされたいのか! ええいモビルスーツの出撃まだか――」

 落ち着け落ち着け、冷静になるんだ。まだやられた訳じゃない。例のアレもある……だが油断は出来ない。しかし考えても仕方がない。感じるんだ自分が何を成したいかを。

「モビルスーツ隊発進しました艦長指示をお願いします」

「良し弾幕を張るんだ! 奴を近づけさせるな、必ず生きて帰る」

 俺はブリッジにいる仲間やモビルスーツ隊の仲間に激を飛ばした。が、なぜまた艦長なんかやらなきゃいけないんだろうかと思ってしまう。しかし理由は簡単だった。

 

 このマゼランの前艦長は艦長室にて、遺書を残し銃による自殺をしていた。そのピンチヒッターとして俺が務める事になった。それだけだった。ほんの一時間前の出来事だった。ちなみに俺の隊長職は解任となり以後はイワンが務める事になった。

 しかし呪われてるとしか言いようがない。赤い彗星が現れたのだ(これに続いて真紅の稲妻ジョニーライデンのキマイラ隊が来たらこう言ってやる)、つくづく泣けてくるぜ――。

 思いにふける暇など無いはずなのに、思考の海に潜ってしまった。逃げたかったのかもしれない。しかしジョンの一言で現実に引き戻された。

 

『おいおいやべぇ避けられねぇ速過ぎる! 艦長このままじゃやられちまう――グッ! 右腕損傷とはやるじゃねぇか化け物(レッドモンスター)がよ』

『ここで死ぬなんて絶対に嫌! まだやりたい事があるんだから』

『チッ、狙い撃っても当らねぇとは湿気てやがる。これで当てられたらクレー射撃の金メダルだ』

 

 どうやらサイコミュ兵器に苦戦している。しかしここで俺が出撃する訳にもいかない。でも……行くしか無い。行っても無駄じゃないはずだ。この戦いを生き残るって誓ったんだ。何のために願いを四つにしたんだ。

 

 ――今がその時だ。無謀かもしれない。この先は地獄への片道切符……往復切符にする為に必ず打倒してやる。

 俺は席を立ちあがり吠えた。悔いのない選択のため、後悔をしないために。

 

「俺は、モビルスーツに乗って出撃する。止めるなよ」

 

 その時の周りの視線は痛かった。軽侮した視線……舌打ちするオペレーターはともかく、ジョンやイワン、ミシェル言葉は出撃に否定的だった。

 

『おいおいなんで艦長が出てくるんだよ! あの機体じゃけん制にもなんねぇよ!』

『艦長……もしかして死にたいんですか!? あ、マゼランに当てそうになっちゃったよぉ』

『止めてくれ足手まといになる!』

 

 危機的状況には変わりないのに良くもまぁ言ってくれますね(聞き捨てならないセリフが聞こえたような)。じゃあ行きますか……。

 歩みを進めブリッジから急ぎ出た。パイロットスーツに着替え、船外に出るとそこに残されていた機体は、最弱ボールしかなかった。本当にこの機体しか無いのか聞くために整備兵に声をかけた。

 

「ちょっと今出せる機体はこれしか無いの?」

「はい。配備された機体はジム・コマンドと量産型ガンキャノンとジムスナイパーカスタムとボール“だけ”ですね」

「えっ、えーっ! これに乗れっていうの!?」

 

 その言葉に対して真顔で「はい。そうです艦長殿! 元々この機体は艦長が搭乗する予定でした」などと答えられた時には、頭が真っ白になってショックを隠し切れなかった。知っていたからこそ3人はそう言っていたのかと。どうしようか、このままボールで出撃するのもありだ……しかしこっちにはワイルドカードが4枚ある。ここでカードを切るのは気が引けてしまう。うーん貧乏性はここにも来てしまったようだ。

 はっきり言おうボールでジオングに挑むなどネズミがライオンに挑むような物だ。ここに来てサッカーボールにはなりたくないが、覚悟が出来ていたはずだ――

 ならばやるしかない。簡単な説明を受けボールに乗り込んだ(もちろんすごろくが入ったリュックも持って)。

 コックピットに座ると武者震いを感じた。

 

「は、ハンガーのロック解除をお願いします」

『分かりました。ロック解除完了しました艦長御武運を……』

 

 やろうじゃないかガンダムの来るまでの間、何と無く翻弄してやるよ。このロリマザ野郎!

「ここが地獄の一丁目! クレイム・フレア、ボールで出ます」

 

 軽くフットペダルを踏み、操縦桿でアームを操作する。3人が赤い彗星を引き付けている間に漂着物を掴んだ。

「これを盾にしつつ牽制してやる。行けぇ!」

 

 トリガーを引いて120mm低反動キャノン砲を撃って撃って撃ちまくる。

 しかし、高機動の為か結局避けられてしまった。

 

「何で当たらないんだよ! おいおい、ウソだろ何でこっちに来るんだよ」

 奴が俺に向かいつつ撃ってきた。避けたが少し遅く軽くかすってしまった。幸い動力系には当たらならなかったが、左アームは半壊コックピットは半分剥き出しの状態になった。その上、右半身には破片が刺さるというオマケ付き。

 

「い、痛いなぁ……ここで俺は死ぬのか情けねぇ、情けねぇよ! 転生してここにきて運が尽きるのか……俺の一生は何だったんだ!?」

 

 この答え返してくれる奴は俺だけなのか……痛みで意識が飛びそうになる。そんな時にミシェルから通信が入る。その声は狂気そのものだった。

 

『艦長さん……返事してくれなきゃ嫌……イヤ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ――!』

「俺は、だい……じょうぶだ。一応無事……だ」

『はぁ~、フフフ良かった。でも許さない。絶対に許さない! 私はあの人を愛しているのにメチャクチャにしてくれた。許さない許さない許さない許さない許さない許さない――!』

『や、止めるんだ前に出すぎるな! おめぇ死にてぇのかよ!』

 ジョンがそう叫ぶのがうっすらと聞こえた。

『離して! でないと皆殺しにするの……私の恋路を邪魔するやつは、みーんなみーんな殺しちゃうのよ。だから邪魔しないでよォォォォ! このクソウジムシ野郎がぁ――。ヒ、ヒヒッ……アヒャヒャヒャヒャヒャ!』

『お、おいよせ!』

 その声にかぶさるようにイワンが発狂する。

『よせ、止めろ! 死神だ、死神が来たんだ! まだ死にたくねぇよ。う、ウワァァァァ!』

 

 このままだとみんな死んでしまう。俺はまた逃げるのか、このまま終わりたくねぇ……俺は涙を流していた。まだ死にたくないんだ。悲しいんだ。想いに応えてくれパンドラ、願いは……今にも崩れそうな心の中で叫んだ。

 その想いに応えるように箱が開く音が聞こえた気がした――。




感想募集中です。
次話は多分関係がないお話が来ることが予想されます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。