スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦) 作:ハトメヒト(ヒットマン)
「合格? なんの事だ?」
「いや、こちらの話だよ。それよりも……エリル」
そう言われてようやく気配に気付いた。
さっき出て行ったと思ってた女が、身の丈ほどはある黄金の巨大なランスを片手に、背後から切っ先を俺の首に向けて居る。
恐怖を感じて声を出す事も出来ない。
「はい、わが主。不届き者は私が始末します」
「そうではない、武器を下げてくれるかな? 彼は少し興奮してるだけさ。本当にただそれだけだ」
「御意」
男の指示に従って後ろに居た女、エリルと呼ばれた人は巨大なランスを天井に向けると俺の背後から移動してくれた。
「さて、話を続けよう。キミは元は人間の身だ。いつまでもこの世界に居る事は出来ない」
「出来ないって……だったらどうしたらい……良いんですか?」
一旦は離れてくれたが後ろのエリルは視線だけで刺し殺すかのように鋭い表情で俺の事を睨んで来る。
それに気付いて咄嗟に口調を正した。
「選択肢はそう多くはない。元の世界に戻るか、違う世界に行くか」
「違う世界……」
「キミのように普通の人間では計り知れないモノがこの世にはある。けれども、断罪した反逆者の作ったような偽りの世界はダメだよ。あんなマヤカシはこの世に必要ない。まぁ、すぐに決めるなんて無理だろうから、もう暫くだけここに居ても良いよ。エリル」
「はい、わが主」
「彼を連れて行って欲しい。くれぐれも丁重に頼むよ」
「御意」
エリルって人はまた勝手に歩いて行ってしまう。
置いて行かれたらマズイ、俺は小走りであの人の背中に追い付いた。
どこまでも続く通路、いったいどこまで行くんだ?
「あの……1つ良いですか?」
「発言を許可します」
「どこまで行くのでしょうか? 教えて欲しいのですけど」
「すぐに着きます。それまで口を開けないように」
「は……はい」
あのランスで刺されたらたまったもんじゃない。
結局何もわからなかったけど、言われた通りに付いてくしかないか。
そうして喋る事も許されないまま歩いてると、前の方から誰かがやって来た。
エリルって人と同じ真っ白なドレスを来て、ウェーブの掛かったエメラルドグリーンの髪の毛。
おっとりとした表情をして、なんだか癒されるなぁ。
「あら、エリル。まだ働いてるの?」
「私には私のやる事がある。それよりもメント、お前の方こそこんな所で何をして居る?」
「エリルに会いたくなったから来ただけ。でもその様子だとすぐには無理っぽい」
「そうだな、暫くは構ってはやれん」
「だったら--」
あのエメラルドの人はメントって名前なのか。
対称的な性格だな。
なんて観察してると、その人は突然エリルと体を密着させるとキスをした。
あまりに予想外の事に俺は目を見開いてしまう。
「なっ!? 何をして!!」
「えぇ~? だっていつもしてるじゃない?」
「こう言うのは目の届かない所でやるのが普通だ!!」
「エリルったら照れちゃって。そのかわいい顔が見れただけで良しとしますか。じゃあ、早く終わらせて私の所に来てね。待ってるから」
言うとメントって人はどこかに行ってしまう。
鉄仮面のように表情を変えないと思ってたエリルが、今や頬を真っ赤にして居た。
あのメントって人も当初の予想とは随分違う。
メントはエリルの何なのだろう?