染岡さんwiki更新されないの悲しいなぁ……
「流石だぜソメオカ!あそこで放ったお前のシュート、完璧だったぜ」
「おいおい、よせよ。アレはお前のパスが良かったから撃てたんだ」
「いいや、アレはお前の手柄だぜ。もっと誇れよソメオカ、謙虚さも過ぎれば嫌味になるぜ」
イタリアの街中を、3人の男が談笑しながら歩いていた。
中でも真ん中を歩く体格のいい男は周囲の視線を引きつけいる。
白いスーツに、焼けた肌。ピンク色の髪をソフトモヒカンに刈り上げ、その見る者を威圧するような強面をサングラスで隠しているその男の名は“染岡 竜吾”。
かつて日本でその名を轟かせた『イナズマイレブン』のメンバーであり、今や欧州サッカー界の『ドラゴンストライカー』として活躍している名プレイヤーだ。
「ソメオカ!サイン頂戴!」
「ん?おお、いいぜ」
談笑の最中、目を輝かせながら駆け寄ってきたファンの子供に快く応じる。
とてもカタギとは思えない外見に似合わぬ、このファンサービスの良さも人気の秘訣である。
「人気者だなソメオカ、嫉妬しちまいそうだぜ」
「悔しかったら俺よりも点を取ってみろ!」
「あ!言ったな!見てろ、今度の試合は俺の活躍を見せてやるぜ!」
「じゃあどっちが活躍するか賭けるか?俺はソメオカに賭けるけど」
談笑しながら目当てのレストランへ向かう途中、染岡はふと足を止めた。
それをチームメイトの2人は不思議そうな顔で振り返る。
「どうしたんだいソメオカ、レストランはあっちだぜ?」
「今、悲鳴が聞こえなかったか?」
神妙な面持ちで辺りを見回す染岡に、チームメイト達は悲鳴?と首を傾げる。
少なくとも隣を歩いていた2人の耳にはそんな物は聞こえていない。
「気の所為じゃないのか?」
「そうか?……いや、確かに聞こえたと思うが…………」
その時、近くの路地裏へ続く細道からはっきりと女性の助けを求める声が響いた。
チームメイト2人が顔を見合せていると、染岡は勢いよく走って路地裏へ飛び込んで行く。
「俺も行く!お前は警察を!」
「ああ、分かった!」
呆気に取られていたチームメイト達も、ようやく状況を呑み込めたようで慌てて行動を始めた。
「助けてぇぇ…………!」
「へっ、大人しくしていろ!」
ブロンドの女性が、暴漢に肩を捕まれながら泣き叫んでいる。
暴れる女性に苛ついたのか、別の暴漢が懐からナイフを取り出すと女性へ突き付けた。
「暴れると刺し殺すぞ!」
「ひぃっ…………!」
薄暗い空間の中で、鈍い光を反射する刃物に女性は身を竦ませる。
下卑た笑みを浮かべる暴漢達は大人しくなった女性へにじり寄った。
その時、何処からともなく勢い良く飛んできたサッカーボールが暴漢の1人を吹き飛ばす。
「な、なんだぁ!?」
壁に叩きつけられ意識を失った仲間と、ぶつかって跳ね返ったサッカーボールを何度も見比べる暴漢。
ポン、ポンと地面を何度かバウンドしたサッカーボールは、やがて革靴を履いた足によって止められる。
その足の主へ視線を向けた暴漢は思わず怯んでしまった。
「何くだらねぇ事してんだ、お前ら……」
そこに居たのは白いスーツに身を包んだ強面の男、染岡。
どこからどう見てもカタギではない、本格的なマフィアの登場に暴漢は慌てふためく。
「ひっ……ひぃ…………!この…………」
怯えながらも暴漢が向けた刃を、染岡は冷めた目で眺める。
「ったく…………そんなモン持ち出してんじゃねぇ……よっ!」
次の瞬間、暴漢は自分の脳の正常を疑った。
眼前の白スーツのマフィアが姿を消した、と思った瞬間、自分の耳元からマフィアの声が聞こえたからだ。
『疾風ダッシュ』、一気に加速して相手を抜き去るというサッカーのドリブル技である。それを利用して染岡は一瞬で暴漢の背後へ回り込んだのだ。
「ぐえっ!」
そのまま首筋に衝撃が走り、暴漢の意識が途切れる。
糸の切れた人形のようにその場へ倒れ込む暴漢を見下ろしながら、染岡は先程まで襲われていた女性へ意識を向けた。
「大丈夫かい、アンタ」
「は……はい…………ありがとう…………」
へたり込む女性へ手を差し伸べ、助け起こす。
怯え切っているものの、女性に怪我が無いことを確認した染岡はホッと安堵の息をつく。
そこへ遅れてやってきた染岡のチームメイトは、女性を助け起こす染岡を見てヒュウと口笛を吹き─────そして次の瞬間、喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「ソメオカ!!後ろだーーーーーーーッ!!!!」
「ん?ぐおっ!?」
振り返った染岡はこちらへ駆け寄ってくる暴漢を視認すると同時に、傍らの女性を突き飛ばす。
ドンッ!と衝撃が染岡の体を揺らす。
この程度の衝撃で倒れる事は無かったが、代わりとして衝撃を受けた腹部がじっとりと熱を持つのを染岡は感じていた。
視線を下ろしてみれば、白いジャケットの腹部にナイフが突き刺さっており、そこから真っ赤なシミが広がっている。
それを目の当たりにした途端、染岡の両足から力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「おい!ソメオカ!しっかりしろ!おい!!」
刺した暴漢が逃げ去るのに目もくれず、チームメイトは染岡へ駆け寄る。
深々と突き刺さった刃と鍛えられた腹筋の隙間から真っ赤な血潮がとめどなく溢れている。
ゴボリ、と喉奥から湧き上がってきた物を吐き出せば、地面に赤黒いシミが広がった。
「へ……へへ…………下手こいちまったな」
全身の熱が傷口から流れ出していくような感覚を覚えながら、染岡は力無く呟く。
チームメイトが必死に何かを叫んでいるが、最早それは彼の耳には届いていなかった。
(くそ、力が入らねえ…………俺のサッカーはこんな所で終わりかよ…………)
ぐらりと染岡の体が揺れ、地面に広がった血溜りの中へ倒れ伏す。
(錦……すまねぇな。お前がプロになるのを…見届けてやりたかったが……でも、お前なら絶対なれるさ………………)
薄れ行く意識の中で、懐かしい声が響き渡るのを感じて染岡はふと口元に笑みを浮かべた。
まるでそれが合図かのように、まぶたがゆっくりと閉じられる。
(『サッカーやろうぜ』…か…………ああ、そうだよなぁ。円堂…………豪炎寺…………吹…雪………お前らと…………ま………………た……………………)
「ソメオカ!?ソメオカ!!……ソメオカーーーーーッ!!!」
チームメイトが必死に血塗れの染岡を揺さぶる。
強面のストライカーは、もう二度と目を覚ます事はみ無かった。
──────この世界では。