一試合20得点は当たり前、前半だけで15得点も
ハットトリックを頻発
染岡さんにとってのドラゴンクラッシュはパスの打ちそこない
残り時間10分100点差、チームメイト全員負傷の状況から1人で逆転
自陣ゴール前からも余裕でゴールを奪う
一回のシュートで3得点
ピッチに立つだけで相手GKが泣いて謝った、心臓発作を起こすGKも
GKを一睨みしただけでボールがネットに突き刺さる
試合の無い移動日でもハットトリック
足を使わずに手でシュートしたことも
自分で撃ったドラゴンスレイヤーを自分でシュートブロックしてエクスカリバーで撃ち返す
11人ごぼう抜きなんてザラ、ゴール間を往復することも
ベンチでシュートを決めた
セーブしようとしたGKと、それを受け止めようとしたゴールを後ろの観客ともども吹き飛ばした
観客の宍戸佐吉のヤジに流暢な韓国語で反論しながらドラゴンクラッシュ
グッとガッツポーズしただけで5点くらい入った
シュートで嵐・竜巻・ハリケーンが起きたことは有名
湾岸戦争が始まったきっかけは染岡さんの相棒論争
ボーリングの球を蹴りで粉砕してた
自分のドラゴンクラッシュに飛び乗ってスタンドまで行くというファンサービス
染岡さんは、いつも店先のトランペットを 物欲しそうに眺める少年にサッカーボールを買ってあげたことがある
木の陰から試合を見守っていた豪炎寺修也は、知らず知らずの間に胸のペンダントを強く握り締めていた。
とんでもないシュートだった。同じFWとして、思わず憧れてしまう程の。
…………サッカーがやりたい。
胸の内に浮び上がる思いを、無理やり抑え込む。
ダメだ、俺にその資格は無い。思い出せ修也、夕香は誰のせいで事故にあったんだ。
自分自身へ言い聞かせるようにしながら、再びコートへ目を向けた豪炎寺は思わず息を呑む。
たった今、シュートを放った男、染岡。
彼が、コート上からこちらをジッと見つめていたのだ。
その目を見返した豪炎寺は、彼が言わんとしている事を感じ取る。
─────お前はそれで満足なのか?
「そんな訳……ないだろ…………!」
木の幹へ勢い良く拳をぶつけながら、豪炎寺は絞り出すように呟く。
見てるだけでは満足できない。
俺も…………俺だって、サッカーがやりたい。
染岡は、豪炎寺の葛藤を感じ取ったのか、背中を向けて得点に沸き立つ仲間達の元へ戻って行く。
「俺は…………俺は……………………!!」
迷う豪炎寺、しかし彼に構うことなく、試合は再開しようとしていた。
校庭前に止められた帝国学園の大型車両。
そこから試合の様子を眺めていた帝国学園の監督 影山零治は、苛立たしげに椅子の手摺を殴りつけた。
「何者だ、あの選手は」
「は、はい! 名前は染岡竜吾。雷門中学の2年生、サッカー歴は小学生から、それ以外は特筆すべき情報は何もありません! 至って平凡な学生です!」
側近の報告に、影山はもう一度手摺を殴りつける。
平凡、あれが平凡だと?
ならば何故自分が選出し、鍛え上げた帝国の選手たちがこうして圧倒されている。
「……鬼道達へ指示を出せ。出し惜しみするな、とな」
「は、はいっ!」
一礼し、影山の側から離れる側近。
それに目もくれず、影山はコート上の染岡をサングラスの奥から睨み付けた。
「────アレは野放しにしていい存在ではない。私の元へ来るならよし、来ないのなら…………サッカーを出来なくしてしまえばいいのだ」
「…………了解です」
キックオフ前、影山からの指示を受け取った鬼道は静かに頷いた。
内容を確認した帝国イレブンも、鬼道の顔を見て頷く。
「奴らが弱小校だという認識は捨てろ、出し惜しみは無しだ」
ポジションに着く帝国イレブン、佐久間がボールに触れると同時に、鬼道は指を鳴らして高らかに宣告する。
「──────デスゾーン……開始」
帝国の逆襲が、始まる。
「気ィ引き締めろよ!」
「「「おう!」」」
染岡の呼び掛けに、マックスや風丸達は頷く。
恐らく今の1点で帝国側の余裕は失われた。ここからは向こうもなりふり構わず攻めてくる筈だ。
(豪炎寺は…………)
ポジションにつきながら、木陰に隠れている豪炎寺の様子を伺う。
ツンツン頭の少年は、未だに同じ場所から試合の様子を眺めていた。
しかしその表情は最初の冷めたものとは打って変わって、様々な感情が渦巻く複雑なものになっている。
(まだ来ねぇか。だが……俺は知ってるんだぜ? お前がどれだけサッカーが好きなのか)
サッカーを守るためなら平気で汚名を被るような男だ。きっと今だって試合に参加したくてウズウズしてるに違いない。
染岡は待ち続ける。炎のストライカーの復活を。
ピ────ーッ!!
帝国のキックオフで試合が再開する。
ボールを受け取った佐久間はすぐさま後方の鬼道へパスを出すと、寺門、洞面と共に雷門ゴールへ向けて走り出した。
「デスゾーンか!」
染岡の呟きに鬼道は一瞬驚愕するが、すぐさま笑みを浮かべると前線の佐久間へ向けてパスを出す。
「そうだ、止められる物なら止めてみろ!」
「上等だ!!」
『疾風ダッシュ』でボールよりも早く駆け出そうとした染岡は、そこで動きを止める。
ここであのパスをカットし、デスゾーンを完封するのは簡単だ。
だが全てそうして円堂の成長の場を奪ってしまって本当に良いのか?
影山の野望を阻止する為にも、そしてサッカーの未来を守る為にも、必要なのは染岡竜吾ではなく円堂守だ。
それに、自分1人で仲間の役割を奪う────染岡の愛するサッカーとは、そんなワンマンプレーの競技ではないのだ。
染岡は足を止め、ジッと円堂を見つめる。
視線を受けた円堂は1度だけ染岡へ頷き返すと、ボールの動きに意識を集中させた。
「どうした? あのキーパーじゃデスゾーンは止められんぞ」
「俺はFWだ。サッカーってのは1人でやるもんじゃねえからな、俺の役割は後ろの仲間を信じて攻撃の機会を待つ事なんだよ!」
「随分とあのキーパーを買っているようだな」
見る目がないな、と言わんばかりに鬼道は鼻で笑う。
昔の自分なら鬼道へ掴みかかっていたかもな、そんな事を考えながら染岡はフッと笑みを漏らした。
「今に分かるぜ、アイツの凄さがよ」
パスを受けた佐久間が上空へボールを蹴りあげる。
そこへ体を回転させながら洞面、寺門、そして遅れて佐久間もボールを追うように跳躍した。
「「『デスゾーン』!!」」
三方向から同時にボールを蹴り付け、エネルギーを纏わせたシュートが放たれる。
「うおおおおおおおおっ!!!」
迫り来る強力なシュートに対し、円堂は右腕を突き出した。
一瞬、まるで巨大な掌のような物が浮かび上がってシュートを受け止めかける。
だがそれは本当に一瞬で、次の瞬間にはボールは円堂の体ごとゴールに突き刺さっていた。
「なんだ、今のは………………」
今の掌が見えていたのか、鬼道が小さく漏らす。
ヨロヨロと立ち上がりながら、円堂は不思議そうな顔で自身の右手を眺めた。
「今のだ……今のがじいちゃんのノートにあった必殺技だ!」
点を取られた事すら気にせず、切っ掛けを掴んだ事ではしゃぐ円堂。
おかしくなったのか、と栗松や壁山が円堂の元へ駆け寄った。
「どうしちゃったでやんすか?」
「キャプテン! 大丈夫すか?」
心配そうに覗き込む後輩二人の肩をバンバン叩きながら、円堂は呆気からんと笑ってみせる。
「だいじょーぶだって! なんか、掴めた気がするんだ! よーし!! 次は止めてみせるぞ!」
バンバンと拳を手のひらに打ち付ける円堂。
それを眺めながら、壁山と栗松は不思議そうに首を傾げた。
前半が終わり、1-2。
結局その後、もう一度デスゾーンを打たれて失点したものの、予想以上の接戦に観客も雷門ベンチも盛り上がっていた。
「もしかしてこれなら……勝てちゃうんじゃないですか!?」
「染岡さんにボールが渡せれば、きっと勝てますよ!」
宍戸と少林がはしゃぎながら言う。
しかし水分補給をしながら、当の染岡は冷静そうに窘めた。
「まだはしゃぐのは早ぇよ。相手は不敗の帝国だぞ、まだ隠し玉があっても可笑しくねぇ」
「それは……そうですけど。……なんか、染岡さん変わりましたね。まえは真っ先にはしゃぎそうだったのに」
染岡に言われてしゅんとしながら、宍戸が尋ねる。
染岡はそうか? と後輩のさりげないdisりを気にする様子もなく円堂の方へ話しかける。
「円堂、どうだ? 何か掴めたか?」
「うーん……もうちょっと! って感じなんだよなぁ……くぅー! 俺の技さえ完成すれば試合に勝てるのに!」
「俺たちもキャプテンの技が完成するまでサポート頑張るっす!」
和気藹々といった様子の雷門イレブン。
その様子を微笑ましく見守っていたマネージャーの木野秋は、その中に目金の姿が無いことに気がついた。
「あれ? 目金くんは…………?」
「10番を貰ったのにいい所は全部染岡くんに持ってかれちゃってるじゃないですか! 帝国の選手は目がぎらついてて怖いし、横の染岡君はもっと怖いし……もう付き合いきれません!」
ベンチから離れたところで、目金はユニフォームを脱ぎ捨てるとそのまま走り去ってしまう。
その様子を伺っていた豪炎寺は、地面に置かれたユニフォームをじっと見つめていた。
体が燃えるように熱い。
試合を見ていただけだと言うのに、既にウォーミングアップは必要ないほどに体内のエンジンはかかり切っていた。
あとは豪炎寺自身が動くのを待つだけだ。
「夕香……俺は、結局のところ……どうしようもなくサッカーが好きみたいなんだ」
1歩、木陰から踏み出す。
手は、いつの間にか胸のペンダントを固く握り締めていた。
1歩、また1歩。
気がつけば地面に置かれたユニフォームの前にいる。
それを拾い上げて、豪炎寺は何かを決意したような表情を浮かべた。
「兄ちゃんに…………もう一度……チャンスをくれ!」
ユニフォームを片手に豪炎寺は走り出す。
炎のストライカーは、再びフィールドに甦ろうとしていた。
「豪炎寺修也…………円堂守」
前半の内容を思い返しながら、影山は苛立たしげに名前を呟いていた。
この2人が帝国の障害となり得る事は予想できていた。
去年のフットボールフロンティアにて、ただ一人帝国のゴールを脅かす可能性があった“炎のストライカー”豪炎寺修也と。
かつて影山自身の手でこの世から葬った“伝説のイナズマイレブン”の監督 円堂大介の孫 円堂守。
だが蓋を開けてみればどうだ。あの2人が問題にならない程の化け物が潜んでいたではないか。
「染岡竜吾…………!!」
サングラスにピンク坊主の中学生極道を映らせながら、影山は怒りを込めてその名を呟く。
アレは障害だ。自分にとっての敵だ。
なんとしても排除しなくてはならない。
「鬼道へ繋げ」
「はっ!」
側近が手元の端末を操作すると、影山の眼前のガラスに鬼道の姿が投影された。
「……申し訳ありません、総帥。不甲斐ない戦いをお見せしました」
「気にするな、あの選手の存在は私のリサーチ不足だ。それよりも、後半の指示を出す」
「はっ!」
それぞれの思惑が混じり合いながら、後半戦が始まる。
【デスゾーン】
帝国学園で生み出された技。
前衛3人による必殺シュート。
後にイタリアで鬼道と染岡さんの手で魔改造され【ラストデスゾーン】としてプロの戦場で使用された。
【デスゾーン2】【デスクラッシャーゾーン】と派生技が豊富。