五等分の花嫁 by Strawberry   作:はちゃメチャ

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久し振りにss書くので不安しかないですねーーはい。


#1 動き出す

 

 

 

 

 

誰かの為に、自分を捧げられる人間になりなさい––––––

 

 

 

遠い昔、ある人に言われた言葉

 

 

そう言い残して、その人は俺に背を向け姿を消してしまう–––––

 

 

待ってくれよ

 

 

俺が本当に捧げたいのは––––

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––

 

 

 

携帯のアラームが甲高く鳴り響く

 

また..........あの時の夢か

 

 

今まで幾度と見たが、最近になって特に見る

 

 

 

「...........ねみぃ。」

 

 

瞼を擦り、アラームを止める

 

ふと視線が向かうは、机の上に立ててある写真

 

 

「何だって今更–––。」

 

 

そこに映るは、仏頂面でそっぽを向く少年––––つまり、中坊の俺と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 零奈さん–––」

 

 

当時の恩師、中野零奈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒崎」

 

 

大学にて、講義が終わり、食堂へと向かう足を聞き慣れた声が呼び止める

 

 

一言で表すなら、典型的なインテリ眼鏡–––相も変わらず気難しい顔を貼り付けておられる

 

 

「何だよ、石田」

 

 

「何だじゃない、結局お前返事はどうするんだ?」

 

「そのことかよ........」

 

 

 

返事–––––何に対するかというと、数日前に話は遡る

 

 

俺と石田、そしてもう1人から構成される大学内での慈善活動グループ––––なんて聞こえはいいが、実際はただの便利屋

 

 

そこに週に何度か依頼が来る

 

 

依頼といっても落し物の捜索だとか、大学教授のパシリが殆どを占めるのだが、その日は違った

 

 

使われなくなった倉庫をリニューアルして体裁だけ整えた部屋にやる事なく暇を潰してた俺たち

 

 

石田の方からは忙しないタイピング音、もう1人の活動員、茶渡は欠席

 

 

男2人、なんの面白みもない空間に小一時間

 

 

気だるさを感じ始め、帰路につこうかとした時、ノック音がした

 

 

石田が短く返事をし、ラップトップを閉じ来客用のソファから、正面にある俺のいるベンチへと席を移した

 

 

忙しい奴だ

 

 

ドアが開き、その姿を一瞥する

 

 

「失礼するよ」

 

 

見覚えがない

 

 

粗方、ここを訪れる顔ぶれは決まっているが今までと明らかに毛色が違った

 

 

落ち着いた雰囲気の男性はスーツに身を包み、1つの封筒を手にしていた

 

 

「どうぞ、お掛けください」

 

 

学生ほど若いというわけでもないが、教授達ほど歳を重ねてる風にも見えなかった

 

 

真っ先に頭によぎったのは––––

 

 

 

 

「大学関係者.......じゃないのか?」

 

 

「一目見ただけでそれを見抜くとはね、流石だ

 

 

 

 

 

黒崎一護君。」

 

 

 

一瞬、背筋が震えた

 

 

「え?」

 

 

何で俺の名前を––––

 

 

 

「話が早くて助かるよ–––そう、私は外部の者だ」

 

 

などと訊く暇なく、話を始めてしまう

 

 

 

「単刀直入に言おう、君に依頼したい事があるんだ–––黒崎君」

 

 

手に持っていた封筒をソッと俺に差し出すと腕時計を確認する

 

 

「すまない、あまり時間がない為返事はまた後日聞かせてもらおう」

 

 

大きめのテーブルを挟んで対話していた俺たちはその封筒にある物を捉える

 

 

「これって......」

 

 

 

「私の連作先と住所を入れておいた。返事はそこで聞こう」

 

 

「依頼ってのは一体––––」

 

 

 

「あぁ、君には

 

 

 

 

 

 

 

娘達の家庭教師を頼みたい」

 

 

 

 

 

 

そして土日を挟み、今に至る

 

 

「家庭教師ねぇ......先週あの人にも言ったけど、何で俺なんだ」

 

 

「どうせなら、主席合格の石田にでも––––。」

 

 

「クライアントの指名はお前なんだ、ぐちぐち言うな」

 

 

疑問は山程ある

 

 

今言ったように、俺より優秀な奴に頼まない事、外部の人間が何故かあの日現れた事

 

そして極め付けは––––

 

 

「逆に怪しいだろ、コレ」

 

 

並外れた給料額

 

 

家庭教師という仕事に詳しいというわけではないが、あまりに破格だ

 

 

「俺別に、懐が寂しい訳でもないんだけどな」

 

 

すると

 

 

 

「とにかく一度会ってみればいいじゃないか」

 

 

図太い声が背後から響くも、聞き慣れたもんだ

 

 

その大男–––茶渡は片手を挙げ2人と合流し、共に食堂に向かう

 

 

「そういや、先週はどうしたんだ?連絡もなしに欠席とはよ、コイツと2人で息苦しいったらありゃしねぇ」

 

 

「そのセリフ、そのままお前に返そう」

 

 

「あの日か、バイクと衝突事故に遭ってな、それでぶつかってきた方が重症だったからそのまま背負って病院へ」

 

 

「............相変わらず何つー身体してんだ」

 

 

 

 

 

 

「ここ.....だよな」

 

 

 

2人と別れた後、クライアントの残した住所へ向かった俺

 

 

受けるにしろ断るにしろ、どのみち今日はここに足を運ばなくてはならなかった–––だが、

 

 

「待っていたよ」

 

 

やっぱりこの人は少し苦手だ

 

 

何かこう........何だろうな

 

 

「......どうも」

 

 

クライアント自らの出迎えに恐縮千万

 

 

.........にしても背後から急に声をかけるのは流行ってるんだろうか

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

高層マンションの最上階へと続くエレベーター内にて

 

 

何とかして沈黙を破りたかった俺は

 

 

 

「この前も言いましたけど、家庭教師ならやっぱり石田が適任っすよ–––給与額見るなり言葉失うくらい経済的に飢えてそうだし」

 

 

「確かに......学力1つ取れば彼の方が適任だろう......だが君個人を指名している人がいてね」

 

 

 

.........引っかかる物言いだった。まるで俺を指名したのはこの人じゃなく別の誰かの様な–––––

 

 

 

考えに耽ってるや否や

 

 

「着いたよ、行こうか」

 

 

今聞いた言葉を反芻してる間も無く、エレベーターを先に降り部屋のインターホンを鳴らす

 

 

「ま.......どうでもいいか」

 

 

俺を指名したのが誰であれ、この依頼に対する返事は決まっていた

 

 

 

決まっていた........のだが

 

 

 

「待たせたね、帰ったよ」

 

 

「お帰りなさい、お父さん」

 

 

 

扉を開けた1人の少女を見て俺は........

一瞬時が止まったかのような感覚にみまわれた

 

 

「彼が?」

 

 

「そうだ」

 

 

少女は俺の数歩前まで近寄り礼儀正しく振る舞いで

 

 

「初めまして、アナタが今日から私達の家庭教師をして下さる方ですね。私は中野五月と申し–––」

 

 

 

「零奈........さん......?」

 

 

 

気が付けば俺は口に出していた

 

 

 

かつて救われた恩師の名前を、その姿を、目の前の少女に重ね合わせていた

 

 

 

止まっていた歯車が今再び動き出した––––。

 

 

 

 

 

 

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