五等分の花嫁 by Strawberry   作:はちゃメチャ

4 / 5
4話です

今回は主人公の半分の過去を書きました

もう一つも早く書きたくてウズウズしてます

嘘です


#4 悼む

勉強を再開してからものの数十分、横目でチラリと右隣の三玖を見る

 

机に向かう表情は先ほど会話していた時と一切変わらず、ペンを止めては少しの間考え込み、再びペンを走らせる

 

その繰り返し

 

あの会話の後は特に何も言ってこないが、そこにまた何とも言えない緊張感を煽られる

 

「ほい」

 

そこで俺の視界に一枚のテスト用紙が割り込んでくる

 

「採点よろしく、先生」

 

見上げると、長女の一花は三玖とは対照的ににこやかな表情で所々空欄のあるテストを差し出していた

 

一卵性の五つ子といっても似るのは外見のみだったのか、他の言動から垣間見えるこの個性豊かっぷりに時々調子を狂わされる

 

五月と四葉に続いて一花は三番手であり、先に休んでいる他の2人に合流するのを横目で見届ける

 

採点中に残りの2人も解き終わり、テーブルに置いといてくれと指示する

 

途端にキッチンにて五つ子によるミニティーパーティーが始まる

 

疲れただの、今からでも遊びに行こうなどとまぁ勝手なことを並べてくれる

 

まずは5人の勉強に対する姿勢の矯正が第一の課題なんだが

 

「それは普通親の仕事だよな......」

 

多忙とはいえ放任主義もここまでくれば迷惑案件である

 

気付けば、俺の家も片親だが息子である俺には学業に関してそんなに干渉的ではなかった

 

俺も五つ子にも母親はもういない

 

となると、やはりあいつら本人の問題だった

 

採点が終わる頃には時計は午後の四時をまわっていた

 

腕を天井に向けて伸ばし、固くなった身体を解すと、何処からともなく関節の破裂音が響く

 

それを見ていたのか四葉がお茶を片手にテーブルに戻ってくる

 

「お疲れ様です、どうでしたかテストは?」

 

お茶を半分程飲み込んでから、5枚のテスト用紙を掬い上げ四葉の眼前に持ってくる

 

「何とな、100点だ」

 

「えっ!?」

 

「5人合わせてな」

 

「はぁ〜.....」

 

面白いくらいに感情を隠せない、というか嘘をつけないタイプなんだろう

 

上がった肩が溜息と共に落ちる様は加虐心を少しくすぐられた

 

というか、やっぱコイツのリボン動いたぞ

 

「溜息つきたいのはコッチだっての」

 

「おかしいですね.....ちゃんと勉強したのに.....」

 

いつの間にか四葉の隣には自分の答案用紙を悲壮な目で眺める五月がいた

 

「.......」

 

「......何ですかその哀れむような目は......本当に勉強したんですってば」

 

「いや、出来れば嘘であって欲しい」

 

勉強して他の姉妹と大差ない点数など俺の存在価値すら危うくなってきた

 

そして哀れんでるのはお前の残念な頭でなくて、これから俺に降り注ぐ仕事量だっての

 

だが今は取り敢えず

 

「全員座ってくれ。一問一問解説してくぞ」

 

目の前のことに集中しよう

 

 

 

———————————-

———————

———

 

 

時刻は午後六時過ぎ

 

流石に2時間ぶっ通しでやると、こっちも疲労感が襲ってくる

 

教える側というのもまだ慣れてない

 

少し眉間を揉み帰宅の準備を、始めると

五つ子はというと

 

「もう無理、頭おかしくなる」

 

ニ乃が机に顎と両腕を乗せ固まっている

 

心配すんな、もうおかしいから

 

「見た目通りスパルタだね」

 

「ねー」

 

三玖と一花はお互いによりかかりつつも、ソファに背を預けていた

 

見た目通りは余計だ

 

「晩御飯は何ですか.....」

 

五月はもうキャラが定まっていない

 

四葉は言葉もなく床に背をつけ目を回している

 

絶賛アレルギー発症中であった

 

今日の授業で分かったことはこの5人の学力は悪い意味で未知数

 

テスト結果を見る限り得意分野もそれぞれ違う

 

それぞれ......

 

本当にこいつらは五つ子なんだろうか

 

テストの合ってた問題が一つも被っていないのも偶然ではないのだろう

 

一瞬真っ暗闇の中に一縷の希望を見つけた気分だったが所詮どんぐりの背比べなので、姉妹の間で教え合うのはあまり期待できそうにないか

 

すると一花に肩を叩かれ

 

「明日も家庭教師あるの?」

 

「その予定だ」

 

「じゃあさ」

 

ニィっと悪戯小僧のような笑みを貼り付ける一花

 

背筋が少し冷やっとした

 

姉妹の中で三玖とは違ったベクトルで何を考えているか分からないこの長女

 

「皆で花火祭り行こっか」

 

続く言葉は案の定素っ頓狂なものだった

 

一応皆んなの中に俺も含まれていることを確認した

 

.......含まれてるのか

 

 

 

 

翌日

 

天気は曇り 夕方ごろには晴れるとの予報

 

傘が要らないのに安心するも、降ったところで大して問題なかった

 

花火大会を楽しみにしている五つ子の頬が少し膨れる程度のことである

 

それにしても

感情の起伏が読み辛い三玖でさえ、花火大会というワードに目を輝かせていたのは少し意外だった

 

個性が強い五つ子だが、共通して好きなものもあるようだ

 

 

因みに俺は花火には大して思い出が........ないわけじゃないがもう随分昔のことだ

 

あの5人のように今も尚心が踊らされる程じゃない

 

そうこう思考に耽ているうちに目的地が見えてきた

 

五つ子達のブルジョワマンション.......ではなく年に二度決まって訪れる場所

 

墓地......亡くなった家族、友人、恋人を悼み

安らかな眠りを捧げる場

 

墓参りなんて似合わないと自分でも思うので、この習慣を教えてるのは家族を含めても極少数

 

もちろんあの五つ子達にも

 

目的の墓石を目指しやけに重い足を動かす

 

いつ来てもこの場所の雰囲気の独特さには未だに身体が強張る

 

一歩足を踏み入れた途端、まるで別の世界に迷い込んだような感覚

 

姦しい車のエンジン音も、工事現場の騒音もここには一切届かない

 

いつだったか誰かがここを世界から切り離された場と例えていたが、最近になって漸く意味が分かってきた

 

誰かが先に去ったばかりなのか焼香の匂いが

強く残っている

 

今聞こえるのは足元の砂利を踏み均す自分の足音のみ

 

見える色は質素な白と黒

 

年に二度ここを訪れる理由は、ここの俺の大切な人達が2人眠っているから

 

その2人の命日に必ず足を運ぶことにしている

 

その内の1人の墓前に今足を止める

 

「お袋.....」

 

10余年前にこの世を去った俺の母親である

 

雨の日の交通事故だった

 

救急車が駆けつけた頃には既に———

 

幸か不幸か、あの日のことは今も映像となって思い出せる

 

なんせ、お袋を殺したのは......

 

 

 

 

 

—————————————-

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———

 

 

10余年前——

 

 

1人の少年が母親と並んで歩いていた

 

雨が強く水溜りが疎らに出来ているせいで、車がその上を走り去る度に水飛沫が歩行者に覆い被さる

 

一際大きな水飛沫が少年の身体を打ち付ける

 

雨合羽を着ていたとはいえ、首より上が無防備な為頭がびしょ濡れとなる

 

「冷たっ」

 

「あらあら悪いトラックね、大丈夫?」

 

持っていたハンカチで顔を拭きながら身を案ずるその様は

 

「ゴメンね、ほら交代しよ。お母さんが道路側歩くから」

 

いつも優しく強い母そのものだった

 

「いいの、今見たいのから俺が母ちゃん守るから」

 

「あら頼もしい、でもダーメ」

 

年齢にして9つの少年は背丈で言えば母親の腰より少し高い程度

 

子供の強がりにしては背伸びし過ぎだった

 

「はい、綺麗になった。さ、行こ」

 

頭に手を置き髪をくしゃっと撫でられ渋々母を道路側に譲る

 

少年は母親が大好きだった

 

一度だって彼女の泣いたり怒ったりする様を見たことがなかった

 

 

「母ちゃん」

 

「何?」

 

「手、繋いでもいい?」

 

「当たり前じゃん」

 

そうして雨の降る道を、他愛もない会話で笑いながら進んでいた時は思いもしなかっただろう

 

歩く場所を交代したその微笑ましいやり取りが、母親の死を招くなど

 

2人の親子がやがて交差点へと差し掛かり、信号が青になるのを待っている時だった

 

通路の内側を歩いてる少年でも交差点に着けば道路に面する

 

十字形の交差点ならば尚のこと

 

やけに長く感じた赤信号がようやく終わろうとしていたその時だった

 

少年は視界の端にあるものを捉える

 

二度見し目を凝らせば少年から見て左側——母親と手を繋いでるのとは逆の方面

 

リードをつけた子犬が雨粒降り注ぐ道路に飛び出していた

 

飼い主らしき人物の姿は近くに見えず、更に奥からは向こうからは乗用車が向かってきている

 

その日の土砂降りで視界が悪かったのか、車線に入りかけている子犬には一切気付かずに、車のスピードは緩まなかった

 

瞬間、少年は母親と繋いでいた手を振りほどき、その子犬めがけて駆け出していた

 

気付けば身体が勝手に動いていた

 

「ダメ、一護!」

 

背中から母の叫ぶ声

 

いち早く状況を理解して息子を呼び止める母だが、虚しくも雨にかき消され届かない

 

ガードレールを飛び越え、水溜りを踏みつけ一歩、また一歩と進む

 

雨のせいか、履き慣れない長靴のせいか

動転してるせいか

 

理由はどうあれ走るのがやけに重苦しい

 

まるで四肢にそれぞれ鉄球でもつけているような

 

それでも着実に距離を縮め、すっかり車線に侵入してしまった子犬を抱き上げるも

 

更に重い鉄の塊はすぐそこに迫っていた

 

運転手が割り込んできた少年に気付いた時にはもう遅く急ブレーキすら間に合わない程に

 

9歳児の判断能力では自分の行動の危険度など理解し得ないことだろう

 

それでも生物の本能か

 

彼は悟った

 

真っ暗な死を

 

命の終わりを

 

少年があのまま道路側を歩いていれば

 

子犬を救おうと走り出すこと叶わず手前の母が制止したか、あるいは母親が壁となって目視すらできなかっただろう

 

水溜りができるほどの雨が降っていた、歩く場所を入れ替えた、元気に走る子犬を見つけてしまった

 

最悪のの条件が全て揃って......いや、揃えてしまったのである

 

他ならぬ親子自身で

 

 

少年は数分の間意識を失った

 

目を覚ますと雨の強さは変わらず耳に入るはアスファルトと加速した水滴のぶつかる音

 

そして野次馬達の喧騒

 

加えて、背中を走る痛みと自分にのしかかっている何かに苦しげに一瞬顔を歪める

 

ふと思い出すは先ほど体験した根源から湧く恐怖

 

隣り合わせた死

 

何故意識を失い背中を少し炒める程度で済んだか———答えを見つけるのに然程時間はかからなかった

 

自分の上に覆い被さっていたソレは心地よい温もりを帯び、少年を抱擁する形でピクリとも動かない

 

全身の力を使い何とか這い出ることに成功するも、次の瞬間には言葉を失っていた

 

「........母ちゃん?」

 

さっきまで覆い被さっていたのは、心から愛してやまない母親の死体だった

 

脚の関節は増え、至る箇所から流血し、アスファルトを赤く染め上げていた

 

顔はさっき見ていたより蒼白くまるで生気を感じさせない

 

「母ちゃん!」

 

返事どころか指先一つ動かさない

 

只でさえ細い腕が殊更細く見えた

 

肩を揺する

 

叫ぶ

 

更に肩を揺する

 

更に叫ぶ

 

肩を———返事がない

 

土砂降りで身体は冷え切っているはずなのに、やけに目元と喉が熱い

 

濡れた雨合羽の袖で顔を拭う

 

まだ熱い

 

視界が霞む

 

それでも手を動かした

 

手を止めたら最愛の母がどこか遠くに行ってしまう気がした

 

その為顔を拭うのをやめた

 

目から頬を伝う雫が雨なのか自分の涙なのか分からなくなった頃

 

身体が硬直した

 

理由は分からない

 

頭では腕を動かそうとしても、身体が言うことを聞いてくれない

 

やがて救急車が駆け付け少年と母親は病院へ搬送され、少年は手術室の前で座して待っていることしかできなかった

 

報せを受け合流した父親と共に医師から聞いた言葉

 

「誠に残念ですが———」

 

そこから先は記憶が曖昧で

 

医師と父の悲壮に満ちた顔ともう一つ

 

唯一憶えてるのは

 

初めて見る父の涙

 

事故前と違い父と手を繋いで歩く帰り道

 

繋いでる少年の手までつられて震えてしまうほど動揺している父を見るのは後にも先にもこれが初めて

 

帰り道、彼は一言も発することはなかった

 

そこで少年は実感した

 

母親の死を

 

そしてもう一度、幼い顔は涙で濡れた

 

雨は止んでいた

 

 

———————————

———————

—————

 

そうだ——あれは交通事故じゃない

 

お袋を殺したのは———俺だ。

 

拳を強く握る

 

爪が掌に食い込み、血が流れ落ちる

 

痛みなど感じなかった

 

己の愚かさに比べればこんなもの

 

けれど直ぐに止めた

 

持ってきた花が自分の血で汚れてしまうのを防いだ

 

今でも偶に夢に見る

 

お袋の優しい笑顔

 

それを奪ってしまったあの日

 

当然だ

 

一生縛られるだけのことをやらかしたのだ

 

安いくらいの代償ですらある

 

花を墓前に置き、手を合わせる

 

優しいお袋のことだ

 

空の上で笑って俺を許してくれていることだろう

 

だけど俺は許せない、自分自身のことが

 

「また来る」

 

あとで親父も来るが、最後に一緒に墓参りしたのはいつだっただろうか

 

今の自分の顔を誰にも見られたくはない

 

もう一度手を合わせた後、来た道を引き返す

 

引き返す先は出口———ではなく

 

もう1人の大切な人

 

その人が眠る場所へ向かう

 

といっても今日は命日じゃないからその人への花はない

 

ついでみたいで怒られるだろうか

 

お袋と違って、こっちには怒られてばかりだったのはまだ記憶に新しい

 

そんなことを思い出し、ふと笑みが零れる

 

お袋の墓から少し離れた位置

 

最初訪れた時はしばらく迷ったっけか

 

足を止める すると

 

「あれ?黒崎君?」

 

「お前ら......!」

 

聞き慣れた声で呼びかけられ振り向くとそこには見慣れた顔揃い

 

正直いつかこの場で鉢合わせるとは思っていたがこうも早いとは

 

五つ子達がそこにいた

 

「何でお母さんの墓前に......」

 

「何で......か」

 

他の4人より少し前に出ている五月

 

手には白い花を携えてる

 

「......いつか話そうとは思ってたんだけどな」

 

隠す必要も躊躇う意味もないのだが何故か初日には言えなかった

 

目の前の五つ子達は黙って聞いている

 

「俺は————お前達の母親の元教え子だ」

 

5人全員が微妙に違う反応をする

 

取り分け驚いた様子の五月、四葉、ニ乃

 

別段表情が動かなかったのが一花と三玖

 

だが全員取り乱す程の動揺は見せない

 

「思ってたより......驚かねぇんだな」

 

特にリアクションが薄かった三玖を見て言う

 

「うん......昨日で薄々そうなんじゃないかって」

 

今までの会話や俺の言動

 

母親の名前を知ってる時点で大体の予想はつくはずだ

 

他の姉妹も同様だろう

 

薄々勘付いてはいたものの確たる根拠がなく、本人の口から改めて聞くことで再度この奇怪な巡り合わせに戸惑いを隠せないといったとこか

 

「今日は......月命日でか?」

 

「はい、私は毎月ですが全員でくるのは年に二回です」

 

奇しくも2人が亡くなったのは違う月でも同じ日

 

命日ともう一度、月命日で姉妹揃って墓参りに来るが、何月かは決まってないらしい

 

年に二度

 

俺と同じだ

 

五つ子が手を合わせ黙祷してる間、俺は黙ってそれを見ていた

 

5人の母親がなくなったのは五年前

 

その時5人は小学生のはず

 

小さい時に母親を無くす気持ちは痛いほど分かる

 

お袋を死なせてしまった当時の俺は何をするにも気力が湧かず、学校を休んではあの日の事故現場を行ったり来たり

 

まともな生活に戻れたのには何ヶ月かかっただろうか

 

この5人は母親の死をどうやって乗り越えたんだろうか

 

それとも——

 

「アナタはしないんですか?」

 

「....俺はいい。また命日に来るからよ」

 

何だろうか........今はここを離れたい気分だった

 

お袋が亡くなってからは2年間、墓参りには家族が同行していたが、命日での彼等の表情を小一時間でも見ていると罪悪感と吐き気が込み上げてしまい、3年目からは墓参りには一人でくるようになった

 

そのため、今まで一人でやってきた事に他の誰かが参入するのは思ってたより息苦しかった

 

——————

————

 

 

 

「さ、花火大会の時間だよ」

 

さっきと打って変わってやけにテンションが高い長女の一花

 

そして彼女に後ろから抱きつかれるも、別段迷惑そうじゃない三女、三玖

 

墓参りの後は家庭教師として、五つ子の家に赴き、あろうことか週末に出された課題をまだ終わらせておらず、終わらすまで家から出さんと言ったら大慌てで取り掛かった

 

途中逃げ出そうとするニ乃や居眠りする一花を連れ戻しながらも課題は思ってたより早く終わった

 

今日はやけに聞き分けがいいが花火が関係してるんだろうか

 

外出を許可すると着替えがあるからアンタは先に行ってなさいとニ乃に告げられる

 

忘れてると思うけど、俺一応先輩だからな

 

大方の予想はついていたが、再び合流した時には浴衣姿で戻ってきた

 

母親の墓参りの時見せた静かな態度が嘘みたいな光景だが、先程の彼女達の表情は真剣だった

 

それにしても、墓参りの直後に花火大会というのは、聞いたことがないが

 

「そんなに花火好きなのか」

 

「お母さんが花火好きだったんですよ」

 

「昔は6人で必ず見てたよね」

 

「だから同じ花火大会の日に全員でお墓に行って、花火も見る事にしてるのよ」

 

そういうことか

 

偶然にも、この馴染みの花火大会は母親の月命日でもあると

 

確かにあの人も......花火が好きだったっけ

 

母親との思い出.....か

 

母親を思い出すと胸が痛くて堪らない俺は五つ子が少し羨ましい

 

「花火って何時から?」

 

「19時から20時」

 

「ありゃ、まだ2時間以上あるね」

 

「しばらく屋台見て回ろっか」

 

姉妹仲良く並んで歩くのはいいが、人数が人数だ

 

車が通らないからいいものの、道の横半分以上をこの五人が占めてしまっている

 

同じような格好だからだろうか、今日は特にドッペルゲンガー感を増してる

 

 

 

こうして俺達はあくまで試験前の息抜きのつもりの軽い気持ちで花火祭りに参加したわけだが

 

まさかあんな波乱万丈なイベントになるとは誰も思ってなかったんだ

 

 

 

 

 

 

というのも、時は少し進み

 

花火が打ち上がる1時間と30分前

 

何故か俺は一花と正面から抱きしめ合っていた

 

 

 




5話もそのうち
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