池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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毒ダニ

 鈴木は恋人である柏木と逢い引きしていた。しかしその顔は優れない。

 理由は、岩山で熊もどきとダイアウルフに囲まれた時、仙石アキラに殴られたことだ。

 鈴木はあの時偶然割れ目に落ち気絶したりおんを、犯そうとしていたのだ。そのためアキラに殴り飛ばされた。

 傲慢にも赤神りおんが自分にふさわしいと、という上から目線かつ身勝手な考えの彼は今の彼女である柏木がブスに思えて仕方がないのだ。別に、柏木はそこまでブスではない。唇こそ太いものの、それでも顔立ちは整っている方だろう。赤神りおんと比べてしまえば格段に劣るが……。

 あの時アキラが邪魔しなければそのりおんは自分のものになっていたのに、しかし静雄にも忠告された。今日も狩りに出向いて今はいない。

 狩りの最中、強い猛獣にあって死んでくれねーかな。そうすりゃまた行動に移せるのに、などと考えていたからだろう、バチがあたったのは───

 急に襲う浮遊感。遠ざかる地面。空を見上げれば、巨大な鳥に捕まっていた。逃れようと暴れると思いの外あっさり落とされ、しかし自分の上に降りてきた鳥に踏まれる。

 

 

 

 

 

 

「シャァァァア!!」

「蛇か……でけぇな」

 

 13メートル級、地球の歴史上最大の蛇ティタノボア。重さ一トンはあるその怪物を前に静雄は蒲焼きを思い出す。帰ったら、幽と食いに行こうかなどと考える。

 

「シャッ──!?」

 

 巨大なサイズで鰐すら喰らう当時最強……この島に於いても有数の頂点捕食者の一角であるティタノボアは、初めて喰われるという恐怖を感じたのかビクリと身体が固まる。その一瞬の硬直を、捕食者は見逃さない。首の肉がえぐり取られ、ティタノボアは失血死した。

 パニック映画にでも出られそうな怪物を一捻り。一体何を狩りに行けば狩りの途中命を落とすことになるのだろうか?生物兵器?

 

 

 

 コロニーに突如現れたのはアルゲンタビスという翼開長時が7メートル近くある巨大な鳥。その巨大さから飛び立つことが出来ず滑空する鳥と思われていた怪鳥に襲われていた。よりにもよって、静雄の不在時に……。

 一度目の襲撃は一匹。二度目は数匹。パニック状態に陥った彼等の中の、誰かが考える。誰かが囮になればいいんだと。

 真理谷が立てた二人一組という作戦は全く意味をなさなかった。むしろ、必ず誰か一人と近くにいるのだからおしあいや道連れが始まる。

 

「守るって言ったじゃんよ、ねぇぇ!」

「は……放せー!」

 

 人は強くない。人は弱い。誰かのために命を捨てられる者は希だ。そして、誰もが自分のために命を懸けてほしいと思っている。

 

「嘘つき!この、逃げるなぁ!」

 

 松下という少女が守ってくれると言って逃げた島津の頭を石で叩く。

 

「あ、ぐ──!」

 

 頭を叩かれたショックでフラフラと倒れそうになる島津。その格好の餌を食おうと嘴を大きく開いたアルゲンタビスだったが突如空へと飛び上がる。

 

「え──うわ!?」

 

 その場所を()()()()()が通過した。いや、首だけというか、蛇の首だ。まだ生きている。

 

「何だぁ、この状況───」

 

 その声を聞く余裕があった者は、ほんの数人。しかし聞いた者は例外なく安堵した。ゴキリと首を鳴らす静雄が、巨大な蛇の胴体を引きずりながら現れた。

 

「み、見てたぞ今!お前島津の頭を──!」

「だ、だって、私を守るって言ったのに一人で逃げよーと!」

「許さねーぞ!」

 

 と、言い争う隙だらけの者達を食おうと迫るアルゲンタビス。が、静雄がその嘴を掴んで止める。

 

「何喧嘩してんだ、状況考えろ」

「で、でも……守ってくれるって、言ったのに……この人が………」

「…………あー」

 

 生憎、守ってもらうほど……守ってもらえるほど弱くない静雄には守ると言われ、それを否定される苦しみは理解できない。理解できないからこそその事に関して知ったかぶりで責めることも出来ない。取り敢えず言えることは一つ。

 

「俺が守ってやるよ。だから落ち着け、それと、離れるな」

「ギィィィィ!」

「鳥は鳥らしく、飛んでろ!」

 

 バサバサと必死に羽ばたいていたアルゲンタビスを別のアルゲンタビスに向かって投げつける。が、どちらも翼を広げて空へと逃げる。静雄はふと違和感を覚える。が、その違和感の正体を掴む前にミイナが襲われそうになっているのが目にはいる。舌打ちして、足下の石を拾い投げつける。

 

「ギエェェェ!!」

「え?きゃっ!!」

 

 ミイナはその鳥が見えていなかったかのように叫び声に振り返り腰を抜かす。静雄は松下に振り返る。守るから近くにいろと言ったのは自分。なので、抱え上げて走る。フラフラと後退したアルゲンタビスが再びミイナを襲う前に殴りつけようと拳を握りしめ、しかし止まる。

 不意に聞こえた笛の音。それに反応したアルゲンタビスがそちらに向かったのだ。所詮は動物、目立つ方に集まるのだろう。では、笛を吹いたのは?

 

「かかってこいよ鳥ヤロー!」

 

 アキラだった。武器も持たず、叫ぶ。当然殺到するアルゲンタビス達。その行動に、静雄も思わず固まった。何がしたいのか理解できなかったから。しかし、直ぐに思い知らされる。アキラの体を張った行動に感化された者達が一斉にアルゲンタビス達に向かっていったのだ。とはいえ、勝ち目があるとは思えない。

 

「伏せろお前等!」

 

 だから、ここから先は自分の仕事だ。今回の獲物である蛇の尻尾をつかみ叫ぶ。静雄の大声に生徒達が一斉に伏せ、反応したアルゲンタビス達が迫ろうと駆け出し、静雄が振るった蛇の体を叩き付けられる。メキメキポキバキと言う音ともに吹っ飛ばされ、ピクピク動くが、飛べそうにはない。

 

「す、すげぇ……やっぱ、この人最強だ」

 

 

 

 

「あ、あの……ありがとうございました」

「気にすんなって。ガキ守んのは大人の仕事だろ。なあトオル?」

「あー……まあ、そうですけど、たぶん俺は静雄さんみたいに守るのは無理ですね」

 

 アルゲンタビスの焼き鳥にティタノボアのスープを夜食に盛り上がる一同。さすがにティタノボアは食わないものも何人か居たが。静雄は両方食ってる。松下がモジモジと礼を言ってきた。

 

「そういやお前、あの後コトミとはどうなんだ?仲直りできたのか?」

 

 と、包帯をとって三本線の傷を刻んだトオルに対して尋ねる静雄。それに対してトオルは何とも言えない顔をする。

 

「レイは、幼なじみなんですよ」

「聞いたな」

「あいつが、落ち込んでる時の俺に言ったんです。元気出せ、私がついてるって……そしたら、なんか、コトミの事も、一瞬忘れて」

「そうか……ま、その辺俺にゃわかんねーから、答えは自分で探せ」

「静雄さんはどうなんですか?コトミ、最近静雄さんと仲良いですけど……」

「嫌いではねーけどな……」

 

 普段から素なら、もうちょい好ましい。が、別にあの猫かぶった様子が嫌いというわけでもない。隣のアキコが離れた場所で談笑するコトミを見てから静雄に声をかけた。

 

「コトミさん、若くて綺麗ですしね」

「あ?あー……まあ、美人なのか?」

 

 首がない女を良い女だと判断できる静雄には美醜の差は余りない。まあ、芸能人が身内にいるし何となく整った顔立ちそうでない顔立ちのは解るがそれを魅力だとは思わない。大事なのは中身だろう。首なくても良い奴が居るように、女にモテる容姿でゴミくずなノミムシだっていた────

 

「────あ?」

 

 不意に、静雄がその場に倒れる。

 息が、うまく吸えない。体がうまく動かない。何時だったかノミムシの罠でガスが充満する屋上に誘い込まれた時のように───

 

 

 

 

「静雄さんの容態は?」

「麻痺です……何処からか神経毒を受けたのかも」

 

 あの静雄が倒れた。その事実、再び不穏な気配が覆うベース。アキコの見立てでは病気よりも毒の可能性が高いとの事だ。あの静雄も、毒には弱かったという事だろう。問題は、感染源だ。

 

「蛇じゃないのか?あの蛇が、毒蛇だったとか……」

「いや、彼処まで巨大な蛇が毒なんて持つ必要があるとは思えない。第一、あの蛇の口を調べても毒腺はないしそもそも噛まれた後がないし、噛まれたとして、刺さるか、あの人に」

「でも他に……食べ物だったら俺達だってただじゃすまないはずだろ?」

「……………」

 

 不安そうに話し合う生徒達を後目に鈴木は静雄の眠るテントを見る。念のためと生徒達から距離が置かれ、今は看病のアキコだけが側いる。

 

「……くはっ」

 

 ペロリと舌なめずりした鈴木はこそこそテントに近づいていく。

 静雄は今動けない。ちょうど良い、このグループのキングが本当は誰なのか、アキコの身にたっぷり教えてやるぜ!

 ついでに静雄が死んでてくれないかなぁ、などと考えながら向かう途中、後ろの生徒達にばれないか警戒し、良くない妄想をしていたため人にぶつかる。

 

「ってぇな!何処見て歩いてやがる!」

「あぁ?」

 

 あ、死んだ……。

 

 

 

「静雄さん、もう大丈夫なんですか!?」

「あー、なんかまだちょっと体が変な感じだな………ん?何だこれ」

 

 僅かな痺れが残った体を動かし頭をかく静雄。手に何かが触れ、とってみると変な色をした固まりだった。プニプニと柔らかい。良く見ると虫のようだ。虫が苦手だったのか、宮内がきゃあ!と叫ぶ。

 

「変な虫だな。ノミか?」

 

 プチ、と潰すとイクラみたいにはじけて血が飛び散る。ノミ、もしくはダニのようだ。

 

「血?虫から、血だと──!?まさか!皆、今すぐ川に入れ!」

 

 真理谷が何かに気づいたように慌てて叫ぶ。

 戸惑いながらも一同が川に向かうと何故か鈴木がプカプカ浮いていた。

 

「良いか!体を洗うんだ!隅々までな!」

 

 いぶかしみながらも言うとおりにする。すると、ゴミのようなものが浮かび始めた。真理谷曰く、それが静雄の不調の原因、毒ダニだ。

 毒の効果は対象の大きさにも左右される。静雄の身長であれなのだ。中学生なら死んでもおかしくない。それに、静雄のあの体力を支える内臓だって普通じゃないはず。細胞レベルでオーバースペックの筈の静雄を30分ほど苦しめたのだ、中学生でなくとも普通の人間なら死ぬ可能性の方が高い。

 静雄は自分の血を吸ってるダニを五匹ほど見つけた。毒には耐性が出来たのか、もう不調はないが。

 ミイナも洗ってやる。うにゃーと叫んでいたが髪に数匹潜んでいたのでゴシャゴシャと指でかき回した。

 さて、ダニの発生源だが、おそらくはアルゲンタビスが運んできたのだろう。さんざん暴れ回っていたのだから、コロニーはもう毒ダニの巣窟。

 出るしかない。必要な物を持って、他の生き残りが誤って住まないように火をつけた。

 

 




はたらく静雄の細胞

司令室

「神経系が正常に作動していない?なんか入りやがったな、探し出してぶっ殺せ!」

白血球

「おらいたぞぶっ殺せ!」
「抗原発見!」
「くたばれ雑菌が!」
「此奴等数多いぞ!」
「つぶせ!」


たぶんきっとこんな感じ



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