池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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千里眼真実

「だああ!鬱陶しい!」

 

 山から下り、川に沿って歩いているとまた襲われた。今度は手足の長い鰐のような生き物、プリスティカンプススだ。数が多く、大きさも3メートルとかなり巨大。

 すばしっこく静雄が数匹蹴り飛ばす間に別の個体がアキラ達に迫る。アキラ達が木の棒で追い払おうとするが鰐の強靱な顎で砕かれる。

 群としての統率は天下丸の群には劣るものの、群で生活するだけありある程度取れている。集団で個人である静雄を狙う程度には、静雄を危険視しているようだ。

 殺せないことはないが何人か怪我人がでるかもしれない。と、その時──

 

「川に逃げてー!」

 

 不意に聞こえてきた少女の叫び声。

 戸惑いながらも鰐相手に川に飛び込むなんて自殺行為だろと叫ぶ者も現る中、アキラは声に従い川へ向かえと叫ぶ。殿は静雄。

 追ってくるプリスティカンプススを蹴り飛ばし川に飛び込む。プリスティカンプスス達は、川岸で悔しそうに歯を鳴らすが飛び込んでくる様子はない。どうやら本当に水の中が苦手なようだ。

 

 

 声をかけてきた人物はどうやら高台にいるらしい。そこにはあの鰐達も登ってこられないだろうと移動し、数人のグループを見つける。

 村松充裕、池田雅行、向井正二、内村忠彦の男性四人と、中山恭子、神楽真実の女二名のグループだ。

 代表としてトオルが助言をしてくれたことに礼を言い、自分達が島の秘密を探っていることを教え、大勢でいた方が安全だから一緒に行動しないかと提案する。

 中山は相談させてくれといい、その場合トオルがリーダーになるのかと聞けばトオルがリーダーはアキラだと説明すると向井がアキラに絡んできた。

 

「───あ、思い出した」

 

 相談してくるとその場から去ろうとした中山グループだったが不意に静雄が呟いた言葉に足を止め振り返る。

 

「あんた、あれだろ?宇宙人と交信してるっつー巫女」

「へ?う、宇宙人?」

「ああ、違うのか?俺の友人がそう言ってたんだが。確か──」

 

『きっと彼女は宇宙人と交信してるんだ!宇宙人の演算装置は未来も予知できると言うからな!』

 

「──的なことを言ってたが……」

「い、いえ、宇宙人さんとは、話したことありません」

「何だそうか」

 

 存在自体がオカルトのクセに宇宙人方面のオカルトが大好きかつ苦手な友人を思いだし彼女の言っていたことを伝えると否定された。

 

「静雄さん、知ってるの?」

「ああ、確か雑誌でみた……せん、なんだったか………」

「『千里眼』の真実よ」

 

 と、中山が眼鏡をクイッ、と上げ応え、静雄がそうそれだ、と頷く。

 中山はこれから真実が予知を行うからその結果次第で同行するか決める、と言って立ち去る。何というか、胡散臭い女だ。イザヤを薄めたようなにおいがする、端的に言ってムカつく。

 

「………静雄さんは、信じてるんですか?」

「宇宙人をか?」

「いえ予知の方っす」

 

 後藤がどこか苛立った様子で話しかけてきたが、静雄の返答に毒気が抜かれたように肩を落とす。静雄はさぁな、と返す。静雄はオカルトを否定する気はない。妖怪とか首なしライダーとか変態闇医者とかいろんな知り合いが居るし……最後のは人間だった。

 後藤は何ともいえない顔をして、そうですか、と引き下がった。

 暫くすると戻ってきた。視線が何気に静雄に向いているのは、静雄が真実の正体に気付いたからだろう。ビビらせてやろう、という視線に苛立ちが募る。

 

「貴方達とはついて行かないことにしたわ。真実が予知したのよ」

 

 と、中山。予知の内容は、血に染まったWの文字、だそうだ。自分達の中には該当する人物が居ないし、そちらに血に染まるような事態になる者が居るのでは?そんな連中と一緒にいるのはごめんだ、との事。

 

「W?誰のことだ?」

「頭文字がWの奴っているか?」

「いねぇよな?名前のどっかに含まれるとか?」

「だったら何でわざわざピンポイントにそこなんだよ」

「………俺じゃねーか?ほら、へい()じまで、名前の中心にあるし」

「へぇ、なら確かに貴方かもしれないわね」

 

 なんとなしに呟いた静雄に中山がニヤニヤ笑いながら応えると、血に染まった、という言葉に不安げだった空気が霧散する。

 

「なんだ返り血か」

「何時のものことですね」

「だよね、驚いてそんしちゃった」

「わざわざ予知に出てくるなら相当でかい獲物なのかもしれないな、皆、気をつけてくれ」

「……………は?」

 

 その態度に理解できないというような顔をする中山達。

 

「と、兎に角私たちは貴方達とは行動しないわ。良いわね?」

 

 そういってやる中山達。その前にザジがサインをお願いして、サインを書くためにしゃがんだ真実の尻を向井と池田がニヤニヤ見ていた。

 

 

 

 その夜、静雄は物音を聞いて目を覚ます。

 

「後藤、加藤、こんな時間にどこ行く気だ?」

「し、静雄さん!?い、いや、ちょっとトイレ………」

「そうそう連れしょんっすよ……」

「………神楽んとこか?」

「「…………」」

 

 静雄の言葉に気まずげに顔を逸らす二人を見て、はぁ、とため息を吐く。

 

「俺も行くぞ。お前、このままだと女相手に殴りかかりそうだからな……歩きながらでいいから話せ。少しは楽になるだろうよ」

「………はい」

 

 崖の近くを歩きながら、後藤は己の過去を話す。後藤の母親は、インチキ宗教にはまり借金を作り、仕舞いには己の息子を悪魔の子と叫び話をいっさい聞かなくなってしまった。

 だから、適当なことを言って人を不安にさせ弄ぶような奴を許せないのだとか…。

 

「あのガキはそういう気配無かったがな。そういう奴等は、もっと匂う」

「匂う?」

「ああ、町中が臭くなる………ん?」

「え?」

「なんだ?」

 

 不意にゴトン、という音が聞こえてきて。三人が上を見上げたとたん、大きな岩が静雄の額にぶち当たる。

 

「いて」

 

 そして砕けた。

 加藤と後藤はポカンと口を開ける。静雄は首をゴキゴキ鳴らす。重たい岩が頭に当たったというのに首の骨は折れてない。

 

「何処の何奴だごらぁぁぁ!」

「うわ!」

「ひぃ!」

 

 ドゴォン!と静雄の拳が崖にめり込む。ビキビキと亀裂が走っていき、慌てて逃げ出す後藤と加藤。一拍おいて崖の一部が崩れる。

 

「し、静雄さん?ど、どうしたんですか?」

「今、崖の上に誰か居たような気がしたんだが……クソ、いきなり人ん頭に石落としやがって、あぶねぇだろうが!下手したら怪我するぞ!」

「いや、普通の人は死にますよ」

「だよな……ていうか、誰か居たってやっぱり───!」

「いや、あの子じゃあの石落とせないだろ。静雄さんみたいな怪力ならともかく」

「……俺もみた訳じゃねーからな。しゃーねぇ、今日は帰るぞ」

「え、いいんですか?」

「今苛ついてんだよ。向こうの態度によっちゃ、俺が何するかわかんねえからな」

 

 特に、あの女に……と心の中でつぶやく静雄。後藤と加藤は思う。血に染まったWと言う文字が本当だとしたら、それが静雄だとしたら、絶対ただの返り血だと。

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