池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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真実の予知

「結局昨日は何もなかったな……」

「まあいいじゃないか、予知がはずれて何よりだ」

 

 アキラの呟きにトオルが返す。なんか、崖の一部が崩れていたらしいがそこに誰かが生き埋めになったりはしていない。

 と、早朝狩に向かった静雄が戻ってきた。

 

「………あ」

「当たった、のか?」

 

 頭のない大型の草食獣を抱えて戻ってきた静雄は返り血だらけだった。心なしか何時もより多いように見える……気もする。

 

「何だ、やっぱり返り血か」

「はー、良かったぁ。あ、でも予知は当たったのかな?」

「まあ血に染まってるしねぇ」

 

 と、のんきなアキラグループ。男達が肉をかき分けていると中山グループの内山がやってきて、深夜と早朝に起きたので二度寝している血だらけの静雄をみる。

 一言目に、やはり当たったのか、だった。

 彼曰く、元々自分達は三十名ほどのグループだったらしく、しかし殆どが底なし沼に沈んだらしい。真実はその底なし沼を予知しており、沈んだのは信じなかった者達。だから、信じた方がいい、と忠告しに来たようだ。

 

「───」

 

 演技にはとても見えない内山の言葉に、空気が少しだけ強ばる。と、そこへ──

 

「あれー?内山さんも来てたんだ」

「おつかれー」

 

 向井と池田がズカズカと無遠慮に入ってきた。

 

「───お、肉?何で?」

「美味そうだな、寄越せよ」

 

 キョロキョロと辺りを見回し血だらけの静雄を見てぷっ、と笑い、肉を強請る。その態度にアキラが攻撃的な返答をするとそんな態度で良いのか?と鏡を見せたくなることを言ってきた。

 何でも彼らは新しい予知を伝えに来たそうだ。その予言は、「赤い絨毯に横たわる制服姿の二人の男女」。

 赤い絨毯と聞き大量の血か?と誰かが言ったが実際に予言通り人が死んだ光景見たわけでもない、多少ざわつく程度。そんな彼等の反応が気に食わなかったのか向井達は顔を歪める。

 

「おいおいまだ予知信じてないの?」

「良いのかよ?あのおっさんみたいに死んじまうぞー?」

「はい、静雄さん焼けましたよ」

「───ん、おお……悪いな」

 

 静雄を指さす二人。と、アキコが焼けた後ろ足を丸ごと一本女子と協力して持って行くと静雄が目を急に覚ます。え?と固まる二人。

 

「あん?…………食いたいのか?」

「う、うわぁ!生きてるぅ!?」

「ば、バケモンだぁ!」

「………?」

 

 食うか?と差し出してみれば大慌てで逃げ出す二人。静雄は首を傾げて肉に食らいついた。そして、袖口の血に気づく。

 

「そういや俺血だらけだったな。そりゃ怖ぇか………」

「いい気味なんじゃなーい?」

 

 怖がらせちまったか、と申し訳無さそうな静雄に対してミイナはケラケラと楽しそうに笑う。

 

「ていうか、今日は何時にもまして赤いですね」

「ああ、突進してきたから頭蹴ったら……なんか、つぶれた」

 

 どうりで背骨が飛び出るほど折れているはずだ、と思う辺り皆静雄の強さになれてきたようだ。

 

「そういえば静雄さん、なんか崖崩れてたんですけど、知りません?」

「ああ、俺が殴って崩した」

「やっぱり……何があったんですか?」

「………あー」

 

 どうするか、と加藤と後藤を見る静雄。後藤が素直に話し出した。昨晩、皆が寝静まった時に、神楽真実に予知など嘘なんだろ、と問い詰めようとしていたこと、明らかに殴りかかりかねない雰囲気で、落ち着けるために静雄が付いてきてくれたこと。

 

「そん時に、落石が静雄さんの頭に当たってな。で、静雄さん曰わく崖の上に気配があって、殴って崩した」

「まあ結局犯人が居たのかはわかんなかったけど……」

「誰かが石を落としたってのか!?何のために──!」

「全くだ。何のためにんなあぶねぇことを──怪我したらどうすんだか」

 

 普通なら怪我するし、下手したら死ぬが、まあ静雄だし。

 

「─────」

 

 と、こっそり覗いていた真実はじっと静雄達を眺めていた。

 

 

 

 

 

「ムカつくわね彼奴等!全く狼狽えないで──!」

 

 苛立たしそうに爪を噛む中山。真実はオロオロとそんな中山とアキラグループ達のいる方向を交互に見る。

 

「あ、あの……良いんでしょうか、こんな皆をだますような真似……」

 

 不安そうに言う真実を見て中山はふん、と鼻を鳴らし、真実は恐る恐る訪ねる。

 

「あの、マネージャー……違いますよね?石が落ちてきたって……偶然ですよね?」

「さあね、なんなら予知で見てみれば?「千里眼の真実」ちゃん」

 

 と、彼女の予知で方針を決めていると言っていたとは思えないほど、彼女を小馬鹿にしたように言う中山。

 彼女は真実のマネージャーだ。神社に赤い帯が巻き付く夢を見て、気になり外に出て放火魔を見つけ、新聞に取り上げられた真実に目を付け「千里眼真実」という有名人を作り上げた。

 とはいえ、真実が当てたのは本当に少しだ。偶然は何度も続かない。

 

「真実、あんたはね。私の言うとおりにしてればいいのよ、今まで通りにね……」

 

 そういって真実の後ろから体を抱き寄せる中山。中山の手が真実の胸を揉む───

 

「─────ッ!?」

 

 その瞬間、何かが見えた。それは大量の鰐に喰われた、中山の姿だった。

 

 

 

 何者かが静雄に石を落とした可能性がある。そう聞いた真理谷が一番に疑ったのは中山だ。真実がリーダーであるといいながら実質彼女こそが仕切っているように見えたからだ。

 十和アキコとともに問い詰めたが、まあしらばっくれられた。

 だが、もし予知を実行しようとする者が彼女ならこれで赤い絨毯に横たわる制服姿の男女は自分達になっただろう。

 

「それにしてもなかなかの演技だな。奴め、完全に冷静さを失っていたぞ」

 

 ククク、と笑う真理谷。悪い顔だなぁ、とアキコは呆れた。

 

 

 

 

「ふぅ──」

 

 静雄は服に付いた血を池で落とす。髪に付いていた血を落としながら、一本抜く。根元が茶色っぽい黒髪に変わっている。元々染めているから仕方ないだろう。しかし、金髪というのはそれなりに思い入れがある。静雄が尊敬する数少ない年上のトムに勧められたのだ。喧嘩を売られないために、だったか……。

 

「───ん?」

 

 と、パシャリと水音が聞こえる。動物か何かか?と警戒しながら草をかき分ける。

 

「───え」

「──あ」

 

 そこにいたのは、真実だった。彼女も水浴びにきたのだろう。なので、当然、裸だ。

 

「きゃあああああ!!」

「あー、すまん」

「あうあうあう────!」

 

 直ぐに背を向ける静雄だが真実は赤くなった顔であうあうと呻く真実。さすがに、これを放置するのは頂けない。とはいえどうすればいいのかさっぱり解らない。

 

「うー!ううー!」

「………………」

「…………み、みました?」

「みた、すまん」

「うぅ──」

 

 顔を口まで沈めボコボコ息を吐く真実。取り敢えずは落ち着いてくれたようだ。

 

「悪いな、覗くつもりはなかっただが──」

「い、いえ──お見苦しいものを──」

 

 そのまま沈黙が訪れる。

 

「すまん、俺はもう出てく。この辺蟹も居るから気をつけろよ」

「あ、は、はい───あの──」

「──あ?」

「────平和島さんって、予知を信じますか?」

 

 ピリッと空気が張りつめた気がした。真実から感じる気配が変わった。

 

「す、すいません!やっぱり、何でもないです!」

 

 真実はそういって逃げるようにその場から走り去っていった。

 

 

 

 自分は何をしようとしてたのか、言ったところで信じてもらえるわけがない。中山にだって、先程見た光景を説明したが、笑われるだけだ。なのに何故話そうとしていたのか、きっと彼の持つ雰囲気のせいだろう。

 中山や村松のように子供と見下した風でも内山のように縋る風でも、向井や池田のようないやな目でもない。何というか、父と話している時のような安心感があった。

 ………そういえば、今自分は男の人に裸を見られたわけだが───

 

「─────ッ!!」

 

 ボッ!と顔が赤くなる真実。わきゃわきゃと謎の踊りをしていると向井と池田がやってきた。

 

「真実ちゃん!こんな所にいたんだ」

「向井さん、池田さん……」

「向こうのグループなんだけど、化け物が居たんだ。真実ちゃんも気をつけて」

「化け物?」

「そうなんだ、血だらけなのに、平然と動いてた……まあ、例え化け物が相手でも僕らが守るからね」

「そうそう、真実ちゃんは僕らのアイドルなんだからね」

 

 ポン、と肩に手をおいてくる向井達。と、再び何か妙なイメージが流れてくる。

 また、鰐だ。今度は二人が喰われている。それだけではない、次々にイメージが脳裏に浮かぶ。

 村松に内山が鰐に食われ、静雄が鰐の尻尾を持ち振り回し頭を踏みつぶし、見たこともない眼鏡の少年やロングスカートの少女が鰐に食われ、アキラと呼ばれていた彼等のリーダーが鰐に襲われ、そして、鰐に食われる自分。

 

(これ──私?)

 

 …………ん?何か今変なのが混じっていたような?

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