「正直お前に庇われるとは思ってなかった」
「別に、私だって何処行ってたとは思うわよ。でも、だからってグループを割ってたら意味ないじゃない」
静雄に頼りきり、早く戻ってきていれば、という人間は多いが、全員ではない。
前者のグループは元『3−6』グループに多い。教師という頼れる大人に縋り、本性を知ったあとも頼りがいを見せたアキラについてきた者達だからだ。全員という訳ではないが。山口などは周りの態度に狼狽えていたし。
アキラグループやエイケン達のグループも山口などと同じく後者。あのまま静雄を前者のグループが攻め続けていたら、こんな状況で不和が生まれていた事だろう。
「文句を言うなら守ってもらうな、とか誰かが言ったら終わり。自分達だけ恩恵を得る気だーって不信感は敵意に変わる」
「そういうもんか……俺は、そういう人間関係考えるのは苦手だ」
「そんなんじゃまともに友達って呼べる人少なそうだもの。人間関係は大切よ?男共を勘違いさせたうえで、それを意図しない天然だと思わせるには男女の距離感をうまく調整しないといけないし」
「………そこまですんなら普通に友達作ったほうが良くねえか?」
思い通りにならなかった場合、あんなふうに豹変してしまう程張り詰めるなら信用出来る相手を見つければ良いのに。
「私って老舗旅館のお嬢様なの」
「らしいな」
「お金持ちって、それだけで同性に嫌われるのよ。裏で悪口ばっかで表では友達ですって顔してお金ばっか欲しがる人達と、本音で話すわけ無いじゃん。男だってどうせ顔しか見てないくせに」
「少なくとも、大黒はお前の事嫌ってないと思うが……」
「レイは……ね。単純というか、ちょっと馬鹿なだけよ」
と、トオルの看病をしているレイを見つめるコトミ。
「顔の良くない男と付き合えば、とたんに馬鹿にされるのに、そういうの気にしないで誰かを好きになるくせにさ……簡単に諦めるんだもん。本当、馬鹿よ」
「ま、俺もあんたの言うとおり友達なんて少ねえし、高校の頃にゃ喧嘩の強さ利用しようと笑みはっつけて近付いてくる先輩ばっかだったけどよ………」
そう言いながら静雄が思い出すのは一人の先輩。
「安心できる人一人いりゃ、意外と周りなんて気にならねえもんだぜ」
「好きな男とっといて顔にしか興味ないって言った女が怪我したら本気で心配する女なんて、安心以前に色々不安になるわよ」
ふん、とそっぽを向くコトミ。そろそろ自分も看病の手伝いをしたほうが心象が良くなると思ったのか、怪我人の方へ歩いていった。
「森羅のおやっさん、俺もなにか手伝いましょうか?」
「む? 静雄君が怪我人に触れては重症化するかもしれんから手伝いは不要だよ」
「……そっすか」
仕方なく、柵周りの見張りでもやろうかとした時だった。何やら慌てた声が聞こえる。
「どうした!?」
直ぐに駆けつけると、気絶したアキラが運ばれていた。静雄はすぐに、アキラ達が運ばれてきた方向に向かって走った。
アキラが見回りをしている途中、巨大カンガルーのプロプレオプスがやってきたらしい。連絡している時間がないと判断したアキラはその場で正剛、宮内の3人で相手したらしい。
最も、勝てるはずもなくスミロドンとティタニスがやってきて三竦みとなり立ち去ったらしいが。
「駄目だな。俺が近づくと、バラバラに逃げる。オマケに残りの2種がベースに向かおうとしやがる」
2、3匹ならなんとかなったろうが5、6匹の群れが3つ。オマケに種族もバラバラだ。協力するということもないだろう。
常に出し抜こうと考えていれば、その使い方は静雄への囮。
「俺から手を出さなけりゃ、互いに互いを見張ってくれてるみたいだが」
「逆に言えば、僕らもここから動けないわけか」
静雄が戦闘に入ればその隙きに襲ってくるだろう。これが一つの群れならともかく複数のムレならば自分の群れの被害を抑えられるかもしれないから。
「それって、まずいよな……」
「怪我人だっているのに……」
「先に言っておくが薬には限りがあるぞ。私は薬草はあまり詳しくないからな」
「薬もそうだが食料や水の問題もある」
「特に水だな。もうこれだけしかない……」
と、真理谷が僅かな水が入ったペットボトルを見せる。水がなければ人は3日と持たない。
「み…水か。確かにそれは問題だな」
「川までちょっと距離があるし……」
「………俺が行く」
と、名乗り出たのは引目だった。襲撃により骨折した腕を釣っているが、利き手じゃないから大丈夫だという。
「……………」
チラリと気絶したアキラを見る引目。
「なら俺も手伝うぜ」
「あんたが居なきゃ襲ってくるかもしんねえだろ」
「牽制しあってる間は俺が追わねえ限りは大丈夫だろ」
そう言って静雄も立ち上がる。もとより水は重い。運ぶには力がある奴が行った方が良いだろう。何人かは不安そうな顔をするが、実際水は必要だし、コトミの言葉を思い出したのか大人しく引き下がる。
「このままじゃ駄目だよな」
静雄が居なくなったあと目覚めたアキラが言う。
「連中は静雄さんに勝てないから襲ってこない。だけど、静雄さんは俺等を守るためにあんま遠くにいけない。何なら何時水を取りに動くことすら出来なくなるかも解らない」
何時向こうが業を煮やし、取り合いをやめ襲ってくるか解らない。向こうに限界が来たら静雄でも全員は助けられない。
「そん時は間違いなく俺達も動けなくなってる。なら、まだ動けるうちに出来る事をやるべきじゃないのか!?」
「んな事、言ってもよ千石………実際問題どうすんだ?」
「静雄さんが言ってたんだけど、ティタニスは足元が見えないのか逃げる時躓いてたらしいんだ。あの体型だし、足元が見えないのかも」
とはいえ、その足元に近づく事が出来そうにない。
「ティタニスは足元が死角だよ。そして体を捻る動きが不得意で、小回りがきかない」
と、そんな中聞こえてきた声は、本物のミイナだった。スケッチブックを開きながら淡々と呟く。
「頭蓋骨は正面は分厚くて頑丈だけど、横からの衝撃に弱い……」
「………なあ、ミイナちゃん。そのスケッチブックちょっと見せてもらえないか」
そう言って受け取ったスケッチブックには、大量の絶滅動物達が書かれていた。スミロドンやプロプレオプスも。
詳しく聞けば、プロプレオプスは前進しか出来ず、体長に対して体重が少ない。スミロドンは攻撃特化の進化故に力強い前足と牙は脅威だが脳は小さく、牙も薄くて折れやすい。
真理谷曰く図鑑には書かれていない情報だが、アキラはこれなら、と作戦を考える。
「で、でもよ。危険じゃねえか?んなもん、あのバケモン……みてえな静雄さんにやらせりゃよ」
「だからだよ」
鈴木の言葉にアキラは拳を握り込む。
「静雄さんなら勝てる。静雄さんしか勝てない。向こうだってそう思ってるから、まだ俺達を見張ってんだ。だからこそ、これは俺達でやらなきゃならねえ。そうじゃなきゃ、俺達はあの動物達以上に静雄さんの敵になる!」
「千石……」
「アキラくん………」
「静雄さんには言うなよ?間違いなく、止める。あの人は大人だからなあ」
子供が危険な目に合うぐらいなら自分が引き受けようとする。だから、これは静雄にも秘密で行う。夜は危険だから、日の出とともに向かう。
「私も行くよ」
「常磐?」
「あんたの作戦なら、早く動ける奴が居た方が良いだろ?」
常盤は陸上部で、県大会でも上位。確かに今回の作戦で助けになるだろう。
「それに、私達はあの人に頼り切りだったわけじゃないから」
「……常磐」
言葉にせずとも残る、静雄に頼りたい空気を出していた者達を見る常磐。なるほど、その為でもあるのか。
「ありがとな」
「あの人には落とし穴の蓋開けてもらった恩があるから」
暫くして静雄と引目が戻って来た。水汲みの途中、動物の気配はあったがやはり静雄を恐れて近づいて来なかったようだ。
引目はたしかにアキラ殺そうとしてたけどその後りおんを無理やり犯そうとは考えてなかったっぽいしめちゃくちゃ反省してたし女の子命がけで守ろうとするし……逆に鈴木は全く反省しないしアキラに死んでくれないかと思い続けてたし、桐野じゃないけどなんでこっちが生きてんの?
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