池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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ジャングルの奥へ

 どうやら何時の間にか気絶していたらしい。静雄は頭をかいて起きあがる。

 他の乗客も気絶している。何人かは起きて、飛行機職員が脱出シューターを下ろして乗客を誘導している。

 静雄も取り敢えず外に出る。

 

「………ジャングル?」

 

 飛行機の外に広がる光景は、圧倒的な自然。日本じゃまず見ないタイプの植物だ。あの後運良く島に不時着したということだろう。

 

「ケータイは………駄目だ、圏外か。仕事復帰、遅れちまうな」

 

 まあ、これだけの事故なら報道されるだろうし、多少融通は利かせれてくれるだろう。

 今はとにかく生き残ることだ。

 

「あ、あの、動けるなら薪拾いを手伝ってもらって良いですか?」

 

 と、一人のCAが話しかけてきた。周りを見れば比較的軽傷の者達が薪を集めている。

 

「後、その……乗客の中に医者のお知り合いはいませんか?」

「医者?」

 

 その言葉に再び周りをみる。よく見れば骨折している奴らもいる。なるほど、確かに医者が必要な状況だ。

 医者の知り合いと言われ思いつくのは親友の恋人で、ついこの前その恋人にひどいことをすると宣言したから空高く、恋人の下までぶっ飛ばした闇医者の顔。

 

「乗客の中にゃ居ねーな」

「そう、ですか……すいません。あ、そ、それと先ほどはありがとうございました」

「……あ?………あー」

 

 よく見れば飛行機が揺れた時とっさに抱き寄せたCAだ。あんな状況じゃ誰が助けてくれたかなんて関係ないだろうに、律儀な奴だ。

 

「私は十和アキコと言います。何かあったら言ってください」

「……あー、じゃあ煙草あるか?」

「あ、はい。機内販売用の………少し待っててください!」

 

 暫くして戻ってきたアキコからお気に入りの煙草を受け取り、静雄は薪を集めにジャングルの奥へと向かった。

 

 

 

 二日目の夜。パチパチと木が焼ける音が聞こえる。機内食が配られ、配られたそれを喰う。

 静雄も配られたぶんを食っているとアキコがやってきた。

 

「お疲れ様です。力持ちだったんですね」

「あー、まあ……」

 

 今回の薪拾い。一割ほどが静雄一人の成果だ。手頃な蔓を見つけ薪になりそうな枝を結び肩に担いで持ってきた。一回の量は数10キロはあるだろう。それを何度も。薪拾いのMVPは間違いなく静雄だ。

 

「本当に、助かりました。こういう時、私達がしっかりしなきゃいけないのに皆さんに頼ってばかりで」

「適材適所ってのはあるだろ。トムさんもよく言ってた」

「適材適所……その通りだと思いますけど、だからこそ私も出来ることを探さなきゃですね」

 

 よし、と気合いを入れ直すアキコ。と、その時機長が何やら叫んでいるのが聞こえてくる。

 

「繰り返します!皆さんご心配はいりません!無線で連絡が付きました!もうすぐ日本に帰れます!」

「お、やったな……」

「……は、はい……」

「…………」

 

 何やら煮え切らない様子のアキコ。何か知っているのかもしれない。とはいえ、無線が復活したという言葉に安堵する周りの者達を再び不安にするようなことは言うべきではないだろう。と、その時、何やら悲鳴が聞こえてきた。

 安堵の空気から一転、皆慌てて悲鳴の聞こえた方を見る。

 

「……犬?いや、ワニ……?なんだありゃ……」

 

 見た目は毛むくじゃらで哺乳類のようだ。しかし3メートル以上はあるだろう体躯で、その三割が頭というおかしなバランス。と、ノシノシ歩いてきた一匹が人を咥えているのが見える。

 

「う、うわあぁぁあっ!!」

「に、逃げろ!飛行機に登れ!」

 

 直ぐに我先にと脱出シューターを登る乗客達。前にいる奴らを押しのけ踏みつけ上に登る。静雄はチッ、と舌打ちして怪物に向き直る。

 

「ハー………ハー……」

 

 大きな口を持つからうまく吠えられないのか、それとも威嚇する必要がないと思っているのかうなり声すら上げず息を吐く怪物。飛行機の方は、ドアが閉められたらしい。取り残された奴らは必死に森の奥へと逃げる。或いはそれでも扉にすがりつき罵声をはき散らし、登ってきた怪物に喰われた。

 

「……………」

 

 この動物は、まあ食事をしに来ただけだろう。悪意などとは無縁の筈だ。だからムカつきはしない。が……

 

「………ふー」

 

 タバコに火をつけ、煙を吸い、吐き出す。怪物は困惑する。この獲物は、何故逃げない?何故恐れない?

 人間なら、生きるのを諦めたからだと判断するだろうが自然界にそんな言葉は存在しない。故に、怪物達は困惑し、しかし先程まで食っていた獲物と同じだと大口を開けて突っ込む。

 静雄は横に跳んでかわし、蹴りつけた。

 ドゴォ!と大気が揺れ怪物の身体が吹っ飛ぶ。

 

「──!?」

「バハウ!」

「ウウ!」

 

 そのまま怪物の仲間を数体巻き込み、それでも数メートルは吹っ飛んだ。その異様な光景に残っていた者達も怪物達も思わず動きを止める。

 

「別にてめぇらに恨みがある訳じゃねぇが、大人しく喰われてやる気もねぇ。殺して食う気で襲ってきたんだ、殺されたって文句ねぇよなぁ?」

「─────!!」

 

 背後の一匹が大口を開け、静雄を捕らえる。この中に知識がある者は居ないが怪物の名はアンドリューサルクス。3600万年前に滅んだとされる肉食獣で、陸亀の甲羅を噛み砕いて喰っていたと言われている。普通の生物はその顎に挟まれればまず終わりだ。しかし、牙が刺さらない。

 

ゴキン──

 

 と、アンドリューサルクスの顎が外れる。続いて聞こえた音はブチブチという何かを千切るような音。()()()()()()()()()を疑問に思う間もなく意識が闇に沈んだ。

 

「バハァ──!」

「ハフゥ、フハァ──!」

 

 投げ捨てられた()()()()()を見て狼狽えるアンドリューサルクス。あろうことか静雄は、アンドリューサルクスの顎を外すどころか頭を引きちぎったのだ。当然血だらけ。

 ひっ、と誰かが悲鳴を上げる。

 

「クソ、幽のくれた服が……涎くせえし鉄くせぇ………」

 

 イライラと、静雄の中に怒りがたまっていく。近くの木に手を押くと、そのまま指を食い込ませた。

 ガサガサと木が揺れミシミシと地面がひび割れ根が飛び出す。木は、片手で持ち上げられていた。

 

「よくもやってくれたなおらぁぁぁ!」

 

 そのまま、豪腕を以って大木を振り下ろす。何体かのアンドリューサルクスが押しつぶされる。残りは、逃げ出した。

 

「ひ、ひぃぃ!ば、化け物だぁぁぁ!」

 

 残っていた乗客達も逃げ出した。と、飛行機の扉が開く。タイミングが良いがまさか見ていたのか?なら、外の乗客達のように恐れて閉じこもりそうなもんだが……

 

「!?ひっ………!」

 

 真っ先に出てきた金髪の少女が血だらけの静雄を見て悲鳴を上げる。と、その少女を庇うようにCAが少女を抱き締めた。

 

「あ、あれ……平和島さん?」

「ああ……十和さん、だったか?何だ、中で何かあったのか?」

「………機長が、刺されて………皆、パニックになって、暴れ出して」

「………そうか………んじゃ、とりあえず逃げるぞ」

 

 そういって静雄は飛行機の外に出していた荷物の中の一つ、自分のキャリーケースを持つ。中には弟から新しく貰った最近では自分のトレードマークになったバーテン服が複数入っている。静雄はそのまま金髪の少女を見る。

 

「一人で走れそうか?」

「…………」

 

 少女が首をフルフルと横に振る。静雄はそうか、と呟き少女を抱え上げた。

 

「あんたも女だけど、走れるか?」

「え?あ、はい……」

「んじゃ、行くぞ」

 

 そういうと静雄は駆け出す。子供一人とは言え、人を抱えて。

 

 

 

 暫く歩いた後、子供をおろし歩き出す。朝になり視界が良好になると食料を探しある程度の人数で固まり動く。

 静雄は新しいバーテン服に着替え、チョコボみたいな鳥の首をへし折り肉を確保した。

 

「へ、平和島さん強いですね」

「まあ、昔から腕力だけはあったから………誰かこれ料理できる奴いるか?」

「あ、お、おれ精肉店だから………」

 

 

 

 

「ふぅ、喰った喰った。とりあえず、自己紹介しねぇか?」

 

 かなりの大型の鳥だったが静雄一人で半分以上平らげた。周りのメンバーも満足いく量が食えたのか特に不平不満はなさそうだ。というか静雄が穫ってきた肉だし。

 

「俺は平和島静雄。名前の通り、平和に静かに生きてぇ一般人だ。職業は借金の取り立て」

「バーテンダーじゃなかったんですね」

「これは前バーテンダーの仕事に就いた時、弟が長続きするようにって送ってくれて……次の職についても着てたら何時の間にか俺のイメージとして定着して今の社長にその格好でいろって…弟もまた新しく買ってくれてな」

 

 と、嬉しそうな静雄。その弟と仲がいいのだろう。

 

「私はCAの十和アキコです」

「オレは警察、狩野信造。一応警部補だ」

 

 と、次々自己紹介していく一同。最後は昨晩静雄に抱えられていた少女だ。

 

「………ミイナ、石動ミイナ」

「………石動?」

 

 少女の自己紹介に藤木と名乗っていた男が反応する。いや、彼だけでなく他の者達も同じように驚いていた。

 

「何だ、このガキなんかあるのか?」

「し、知らないんですか?石動って言えば、日本屈指の大財閥ですよ!?」

「そういえば、そこの会長の孫娘が、そんな名だったな」

「へー……」

 

 金持ちなら客にはならないだろうし、興味もない。というか静雄は客の名前なんて覚えてない。基本的にトム任せだから。

 

「……おい嬢ちゃん、俺たちをボディーガードとして雇わないか?救助がきて日本に帰れたら、礼金をもらいたい」

 

 と、藤木が提案するとチンピラ風の二人、確か丸目と西が目を見開く。

 

「………こっちのお兄ちゃんの方が強そうだけど?鳥、捕まえてきたし」

「まあ、そりゃ………おい兄ちゃん、あんたもどうだ?一人じゃ大変だろ。俺らも手伝うから山分け……でなくても、せめて六、四で……」

「俺らは大人だ。なら、ガキ守んのは当たり前だろ。少なくとも俺はこのガキ守んのに金とる気はねーよ。世話役したいんなら勝手にやれ」

 

 そしてジャングルの中を移動すること五日。拠点になりそうな水辺を見つけ、そこで救助を待つことになった。

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