池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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洞窟からの脱出

 悲鳴が聞こえ、姿を消した雪とりおんを探して洞窟内を走り回っていたアキラは、たまたま聞こえた声を頼りに進み人影がりおん達に飛びかかった。

 

「……こーちゃん?」

 

 しかしその相手を見て、固まる。

 有田幸平。仙石アキラの小学生以来の親友で、殺人鬼に狙われているという彼を助けに来て、襲われているりおん達を見て

 

「な、何で……こーちゃんが2人を……そんな……」

 

 カラカラと口が渇く。押さえつけようとした腕から力が抜ける。混乱した頭が整わないまま、ドッ!と腹に衝撃が走る。

 

「がっ!?」

 

 幸平の膝がめり込んだのだ。

 手加減のいっさい無い、本気の蹴り。痛みに息が詰まる。

 

「何、すんだよ……説明しろよ、おい!どうなってんだよ、これ!」

 

 幸平は、応えない。ずっと、黙っている。

 

「何とか言えよ、こーちゃん!」

 

 幸平は、応えない。踵を返して逃げようとする。それをザジが止めた。

 ならばと、別の出口を見れば真理谷が邪魔していた。

 

 

「う、うう……」

 

 静雄が運んでいた上野が呻き出す。バッ!と距離をとる生徒達。目を覚ました上野は自分が縛られていることと中村達が居ることに気付き狼狽え出す。

 

「う、うわあぁ!ち、違う、僕は、違うんだぁ!」

「うるせぇ、耳元で騒ぐんじゃねえよ」

「────ッ!!」

 

 騒ぎ出した上野に静雄が抗議すると慌てて黙る。しかし、周りの責めるような視線に顔を青くしている。

 

「上野くん、貴方が犯人なの?」

「ち、違う!有田だよ………僕は、有田に脅されて!」

「はあ?つくんならもっとましな嘘つきなさいよ!」

「お、落ち着いて真喜多さん……私も、その……可能性はあると思うの」

「中村さん……?」

 

 真喜多と呼ばれた少女は中村の言葉に固まる。

 

「だ、だって思い出してよ──!殺人鬼に誰かが襲われた時、決まって幸平君は何処かに行ってたし、雪の時だって───」

 

 その言葉に全員目をそらす。皆、心の何処かではその違和感に気付いていたのだろう。しかし気づかない振りをしていた。

 

「そいつ人気者なんでしょ?じゃ、もし疑ってるのが自分一人だったら、周りが敵になって自分が殺人鬼だと疑われる、それが怖かったんでしょ」

 

 と、ミイナが言うと全員うつむく。

 

「そういうもんなのか」

「そういうものよ。ま、そいつが助かりたいために嘘言ってる可能性もあるけどね」

「う、嘘なんかじゃ──!」

「それはその有田とか言う奴に確かめりゃいいだろ───ん?」

 

 不意に何かが飛んできた。受け止めると、リストロサウルスとか言う恐竜みたいな生物だった。襲ってきたわけではなさそうなので床にそっと置く。

 

「こ、こら!どーしてそーやってすぐに蹴るの!どんな姿でも生きてるんですよォ!」

 

 リストロサウルスが飛んできた方向から聞こえてきたのは、女の声。小さいが男の声も聞こえる。その声に生徒たちははっと駆け出す。

 

「操栖先生!」

「え?み、皆……」

「あんたは、あん時の先生か……それと、あの時の坊主──」

「ひっ!や、矢頼!?」

 

 そこにいたのはグアムで出会った男女だった。矢頼と呼ばれた男をみて生徒達が怯える。

 

「きーきー……」

「………これ蹴ったのお前か?」

 

 床におろしてやったからか、なんか懐いて足にすり寄ってくるリストロサウルスを指さす静雄。矢頼は特に気にした様子もなくああ、と応える。

 

「『ああ』じゃない!生きてるのに、何もしてないのに蹴るなんてあんまりよ!平和島さんも何かいってやってください」

「生き物いじめんな」

「うが!?」

 

 ゴォン!と音が鳴り響き矢頼の身体が一回転して地面に倒れる。静雄はあれ?と己の手をみる。

 

「な、何か言ってやってくださいとは言ったけど、その……やりすぎなんじゃ……」

「おかしいな、ただのデコピンだぞ……」

「デ、デコピン?今のが、鉄パイプでぶん殴られた時より衝撃来たぞ……」

 

 頭を押さえながらフラフラと立ち上がる矢頼。頑丈なようだ。

 

「ちょうど良い、実は俺たち地面に呑まれて落ちてな。ここの出口解るか?」

「それが、私たちも今迷ってるんです」

「解る……」

「……へ?」

 

 操栖が申し訳無さそうに言うが、矢頼は静雄の質問に対する答えが解ると言った。視線は地面に流れる泥水に向いている。

 

「そうか、じゃあ此奴等頼む。俺はアキラ達のところに行く……ミイナ、お前はどうする」

「私的には外よりお兄ちゃんのそばの方が安全そう」

「そうか。んじゃ、しっかり掴まってろよ」

 

 ピョンと静雄の背中に抱きつくミイナ。腕を首に回ししっかり固定すると、静雄が走り出した。

 

 

 

 暫く走っていると開けた場所にでた。そこには大量のキクロトサウルスがおり、静雄達に気付くと尻尾を地面に叩き付けて跳ね、襲いかかってきた。

 

「うお!」

 

 一匹や二匹ならともかく数10匹はいそうなキクロトサウルス。一人ならともかくミイナを守りながらとなるとやりにくい。

 

「な、何なの此奴等!この穴の動物、全部逃げてたのに!」

「……熊みたいに人の味を覚えた、とか?」

 

 ミイナの叫びに静雄は取り敢えず頭の中から知識を引っ張り出す。確か熊というのは本来臆病で人前に姿を現すのは向こうからしても不本意で、驚いて暴れるらしい。

 しかし人の味を覚えると人を恐れず襲ってくるのだとか。

 

「つまり俺は餌に見えるって事だろ……」

 

 と、その時一匹が静雄のバーテンダー服の一部を食いちぎる。静雄が一瞬固まり、隙ありとばかりに襲ってきたキクロトサウルスが蹴りにより壁に激突する。

 

「てめぇぇ!そこの奴!待ちやがれ!」

「「「────!!」」」

「あ、動物達が一斉に逃げてく………」

 

 人は狩れるものだと学んだのだろうが、静雄も同じだと思っていたのだろうが、静雄の怒声に怯えるように慌てて水の中に飛び込んでいくキクロトサウルス達。口の端に布の切れ端を引っ掛けた個体が地底湖に飛び込もうとした瞬間静雄に捕まる。ヌルヌルした肌によって一瞬手を滑らせかけるも、静雄が指を立てると皮膚を貫き肉をがっちりととらえる。

 

「おらぁ!」

 

 そのまま壁にたたきつけ、腹を踏みつぶした。

 

「………どーぶつはいじめないんじゃなかったの」

「先に襲ってきたのは此奴等だ……」

 

 グチャリと生々しい音を立てる死体にうっ、と顔を青くするミイナ。アキラ達を探すぞ、と再び走り出す静雄。足下を大量の水が流れる。

 

「何これ……」

「外で雨でも降ってんのか?」

「かもね……ん?」

 

 と、不意にミイナが何かを発見する。人面石だ。落ちてきた場所にあったのとは異なる。実は、ミイナは他にも見つけていた。これで三つ目と言うことになる。こんな短時間で見つかるという事はそれだけ狭い範囲に人面石が幾つもあるという事。加えてここは、迷路のような場所。偶然か?と首を傾げていると地響きのような音が聞こえてくる。

 さらに歩いていると上下に分かれたY字路に出た。するとバシャバシャ何かが走ってくる音が聞こえてくる。

 

「あ、静雄さん!ミイナ!」

「おうお前等、見つかってよか──」

「逃げてください!」

「………あ?」

 

 と、前方からやってきたのはアキラ達だった。知らない男子が一人混じっている。その背後から、津波のような水。直ぐに踵を返す。上下に続くY字路。普通に考えるなら上に向かうべきだがその前に見覚えのない男子がしたにいく道を選ぶ。

 

「こっちだ!来い!」

「こーちゃん!?」

 

 こーちゃん……つまり此奴が有田幸平かと静雄が見ていると有田は追ってこないアキラ達を見て叫ぶ。自分はここを良く知っている、助かる道はこっちだと。

 最初に信じたのはアキラ。すぐに残りのメンツも追う。静雄は最後尾を走りながら上に続く道にある壁に腕をつっこみ走り出す。

 ガガガガ!と研削機でも使ったかのような音が響き坂道が崩れ水の勢いを少しだけ緩めた。

 

「うーん、お兄ちゃんってば自然災害にも勝てそう」

「バカ言うな、俺だって中学の夏休み、台風の時飛んできた看板とか普通に痛かったし、ノミ虫に落とされた流れの速い川を泳ぐのは大変だった……」

「…………」

 

 突っ込んだら負けだ。ミイナは追及することをやめた。そして、走りながらアキラ達に訪ねる。

 

「ねぇ、りおんお姉ちゃんしか女子が見あたらないけど、他の女の子達は!?」

「先に、はぁ──地上に戻ってもらった!レディファーストだよ!」

 

 息を切らしながら説明するアキラ。りおんだけ残っているのは、アキラと居たかったからだろう。

 暫く走っていると、行き止まりに出た。目の前には濁流の川。有田は、ここで雪を襲ったのだと告白する。やはり殺人鬼は彼のようだ。しかし、静雄は思い出す。

 雪は外で発見した。つまり、この川は外の川と繋がっている。 

 

「ミイナ、しっかり掴まってろ」

「え、まさか……」

 

 静雄は背負っていたミイナを腕に抱え直すと濁流に飛び込む。そのまま流れに乗って泳いでいく。途中ある岩や流木は全て避けて……

 

「………あの濁流の中スイスイ泳いでるよ。人抱えたまま」

「僕達には無理だ!絶対にな!即席浮き袋の作り方を教えるから、作ってから飛び込んでくれ!」

 

 

 

 

 地上に出た男子一同とりおん。しかし有田幸平だけは、出てくることはなかった。きっとそれが、彼なりの償いなのだろう。

 矢頼はアキラと何か話した後、さっさと何処かに行ってしまった。

 

「国を作る?」

「はい、矢頼がそんな事を……静雄さんは、どう思いますか?」

「さあな……俺は別に頭良くねぇからな。まあ、でもこの島は危険だらけだしな。人が増えりゃ、安心できる場所ってのは必要だと思うさ………しかし筋っぽいな此奴」

「……………」

 

 スミロドンの兜焼きを食いながら呟く静雄を見て思う。この人さえいれば、そこがもっともこの島で安全な場所じゃないだろうか、と。

 

「例えば動物が寄りつかねえ不思議エリアを探すとかな」

「ありますかね、そんなところ………」

 

 アキラ達が食べるのは普通に草食獣の肉だ。ジビエだから当然硬いが、まあ肉食動物よりは咬みやすい。

 

「でも、安心出来る場所は確かに欲しいですよね。上野みたいになるのは、何も特別な事じゃないでしょうし」

 

 元有田グループの杉山トモの言葉に静雄やアキコ、ミイナは黙る。この状況下でおかしくなった人間の死に様を目にしたからだ。一歩間違えれば上野はもちろんほか数人の有田グループ達もそうなっていたかもしれない。

 

「ま、生き残ってりゃ大抵の奴は群れるだろ。そのグループの中に案外国を作ろうとしてる奴等もいたりすんじゃねーか?」

「あ、グループと言えばよ、さっき見回りの時森の中に旗があったぜ。生き残りじゃね?」

 

 と、ザジが言うと空気が固まる。

 

「ちょっと早く言いなさいよー!」

「まったくザジねぇ……」

「ほんとザジなんだから」

「そんなんだからザジなんだよ」

「な、なんだよ皆して!」

「いいから案内しろザジ!」




スミロドンの兜焼きの作り方

材料 スパイスになりそうな果実
   スミロドン(大型肉食動物)
 
 大型だけあり首が太いので石器ではまず切り落とせません。腕力で引きちぎった後香辛料とともに大きな葉に包んで火の中で温めて完成。スミロドンは捕獲が大変なので捕獲は人に任せましょう
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