池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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学校

 ザジの案内の下森の中を歩いていると、確かに旗が見えた。太い木の上に立てられており、周りを囲むように木の柵が積まれていた。

 中央の木の上で誰かが手を振っていた。

 

「おーい!無事だったのかお前等!はやく中に入ってこい!」

 

 どうやらその人物は、アキラ達の高校の生徒会長山口崇というらしい。

 そのグループは生徒約20人、教員2人とそこそこの大きさのグループ。狩りが大変そうだな、と静雄はぼんやり考えていた。

 

「なあ仙石、お前等も協力しろよ!僕らはここに国を作ることにしたんだ!」

「……く、国!?」

 

 国を作るという発言に驚くアキラ。いや、アキラ達だけでなく他のメンツもだ。

 山口曰く、ここには生徒と先生がいる。故に、学校という形の国を作るのだと。

 発案者は教員の藤本と川合。奇妙な獣に毎夜毎夜襲われ意気消沈していた生徒達にここに学校を作ってはどうか、と言ったらしい。

 それぞれ係りを決め、日に一時間勉強も行う。学校を再現することで、平和な日常を思い出すことで元気づけると言ったところか。

 

「…………?」

 

 しかし静雄は何か違和感を覚える。首を傾げる静雄をミイナはジッと見ていた。そして、胡散臭そうに藤本と川合をジロリと睨む。

 その後新しいシンボルである『3ー6』が描かれた旗を見て決意を新たにするアキラを見て、何かを言うのは無粋かと首を降った。

 

 

 

 

 静雄が狩りに出て十和も調理係、生徒達も他の生徒達の下に行って一人暇なミイナは柵作りを手伝うアキラ達を眺めながら寝そべりふん、と鼻を鳴らす。

 

「学校ね……」

「え?君、学校嫌いなの?」

「…ん?」

 

 その声に振り向くと小太りの男子生徒がいた。やけにそわそわにしている。視線が気持ち悪いが、実行に移す勇気も無さそうな男だ。つまり単純にきもいだけで害はない。無視してやろうとしたが静雄もいなくて暇なミイナは一つ悪戯を思いつく。

 

「ねー、お兄ちゃん」

「え?な、何!?」

「ミイナ、お願いがあるんだけど♡」

「お、お願いって……?」

 

 ミイナの猫なで声と笑顔に顔を赤くして狼狽え出す男。ミイナはペロリと舌で唇を撫でる。

 

 

 

「こんな所か。助かったぜお前等」

「ウオウ!」

 

 静雄は草食獣を狩っているとやってきた狼達に礼を言う。最初は遠くから見つめてくるだけで襲ってくる気配はなかったのだが、傷だらけの狼が静雄の前に一度立つと歩き出した。その後振り返り此方を見つめる。

 ついてこいというようなその態度に従ってみると数匹の草食獣を発見することが出来た。そのうち一匹を小さく引きちぎる。

 

「ほらよ、これは今回の礼だ。しかしお前等賢いな。やっぱ犬ってのは頭がいいんだな」

 

 弟の唯我独尊丸にちなんで天上天下丸と名付けた傷だらけの狼の頭を撫でる静雄。クゥゥと気持ちよさそうな声を出した狼は頭を静雄にすり付ける。

 

「あんま穫れすぎても俺らは少し傷んだ肉でも危ないからな。余ったぶんは外に置いとくから取りに来いよ………って、流石にそれはわかんねぇか。ま、彼処の近くに棲んでるみてぇだし勝手に持ってくか」

 

 静雄が天下丸から手を離すと天下丸は肉を咥え走り出す。他の狼達もそれに続いた。

 

「………ん?」

 

 ズリズリと獲物を引きずっていると何やら学校が騒がしいのに気付く。何事かと向かってみれば門番もいないので勝手にあけて中にはいる。

 

「おい、何かあったのか?」

「うお、ビックリした!あんた……平和島だっけ?あんたの連れがやらかしたんだよ」

 

 近くにいた鼻のデカい男に聞くとどうやらミイナがこの国の国旗に当たる『3ー6』に落書きしたらしい。3は雪だるまに、ーは百足に、6はなんかよくわからないが顔がかかれて手が生えていた。

 

「へぇ、なかなか上手いじゃねぇか……」

「えへへ、でしょぉ♡」

「し、静雄さん!こういうのはキチンと叱らないと駄目ですよ……」

 

 静雄に頭を撫でられうにゅうにゅと目を細めるミイナ。ほめた事に周りがずっこけアキコが慌てて耳打ちする。静雄は周りのミイナを責めるような視線に気づき、顎に手を当てる。

 

「……何でこんなことしたんだ、ミイナ」

「この学校を壊そうと思ったのよ♪」

「成る程な………けど、ここの奴等は学校でありたいらしいぜ?それが大多数の意見だ。それに逆らうんなら、ここから出てかなきゃならねぇ」

「……………」

「ちょ、静雄さん!何もそこまで──!」

「本当だよな、速く出てってくれよ……」

「迷惑だよなぁ……」

「反省してないみたいだしなぁ」

 

 静雄の言葉にミイナがムッとして、りおんが止めようとするが周りの生徒達は口々に文句を言い始める。静雄とミイナはそれを黙って聞いていた。

 

「良いわよ別に、でってやるってーのこんな所!」

「そうか、じゃあ今日はもう遅いから明日な」

「………へ?」

「つーわけで悪いな。狩り係っつたが、今回だけみてぇだ」

「え?え……?お、お兄ちゃんもついてくるの?」

「おう、俺も学校あんま好きじゃねーしな」

「お兄ちゃん!」

 

 と、大したことでもない事のように言う静雄。ミイナは笑顔で抱きついた。

 

「ま、まあ別に狩り係がいなくなったってなぁ?」

「……どうせ大したもんとってこれな………え?」

 

 静雄が去ると聞いてオロオロしだす十和達と違いどうでも良さそうな生徒達だが、振り返り積まれた肉の山をみて固まる。

 この島において動物性タンパク質は貴重だ。小動物は素早いし、危険な動物が多く狩りなど行えない。静雄が狩りに行くと聞いてもどうせ大型動物から逃げると思っていた。

 

「で、出て行くほどじゃないんじゃ……」

「そうですよ、子供一人より、こっちには必要としてる人多いですし」

「知るか……つー訳だミイナ、必要ないものとかは此処においてくぞ」

「はーい♡」

「「……………」」

 

 他の奴等など知った事かと言う態度のミイナ。そんなミイナに何ともいえない顔を向ける一同。

 

 

 

 

「ん、ふぁ………」

 

 その夜、女子達に紛れ寝ていたミイナは尿意を感じて目を覚ます。

 出て行くとは言ったが、アキラ達を見捨てるのは気が引ける。とはいえ悪戯を続けるのは静雄が認めないだろう。

 

「アキラお兄ちゃん達もバカなんだから………」

 

 目をこすりながら呟く。明日、ついてくるか聞いてみるか。

 

「あん、男子トイレだった───女子用はも一個向こうね……」

 

 まあいいか、本当は男だし、とスルリとパンツを脱ぐミイナ。と、その時───

 

「───!?」

 

 ゴッ!と硬い何かに頭を叩かれる。

 

「こ…此奴が悪いんだ!此奴がいると、この国が、計画がぐちゃぐちゃになる……出て行かれたら、肉が手に入らなくなる………此奴は、殺すしかない────」

 

 自分に言い聞かせるように、あるいは誰かに言い聞かせるように言う襲撃者は蔓を噛ませ、蔓で手足を縛ると担いで運び出した。

 

 

 

「……………」

 

 天下丸は血の臭いを感じてスンスン鼻を鳴らしながらその場に赴く。昼間、狩りを手伝った動物によく似た動物が頭から血を流して倒れていた。臭いを良く嗅いでみる。嗅ぎ覚えのある臭い。あの動物の臭いだ。同族だから、というわけではあるまい。

 

 

 

 

 次の日の朝、静雄は姿を消したミイナを探していた。アキラ達も付き合ってくれているが見つからない。

 

「出て行ったんじゃないか、昨日の事が気まずくて。だとしたら探すだけ無駄だぞ」

「俺もついてくっつったのにか?」

 

 山口の言葉に静雄がギロリと睨みつける。しかし周りの生徒達は居なくなって良かった、迷惑だったしな、と口々に呟く。静雄の額にピキリと血管が浮かぶ。

 

「お前等も手伝ってくれよ!」

「え?何で?お前等の連れだろ……」

 

 アキラの言葉にキョトンとする生徒達。

 

「大丈夫だってきっと」

「何処かで遊んでいるのよ」

「案外出て行く勇気がなくて隠れてるのかもな───」

 

 ふん、と鼻で笑う山口。静雄の額の血管が増え、静雄は柵の前に立ち、蹴りを放った。

 ゴバァン!と柵の一部が盛大に吹っ飛ぶ。。

 

「探してくる………」

「ちょ!?あ、あんた何て事を!探しに行くだけなら、門から出ればいいだろ!」

「反対側だからよ」

「だからって、解ってるのかこの森は───」

「ガキ一人居なくなっても心配する必要のねー平和な森なんだろ?」

「………え、いや……そ、それは………」

 

 静雄の言葉に固まる生徒達。ここで危険などないと言えば静雄に強く言えない、彼には行方不明の子供を捜すという大義名分がある。危険だと言えばそれはそれで気にしなかった自分達を責める動機を与える。と、その時──

 

「ガアア!」

「え?う、うわぁ!」

 

 と、静雄のあけた穴から狼が飛び込んできた。突然の猛獣にパニックになる生徒達だが狼は静雄の前で立ち止まる。

 

「ハルルルル」

「………ミイナ!」

 

 狼の視線を追うとミイナを背負った天下丸がやってきた。ミイナは頭から血を流して、手足を蔓で縛られていた。口も叫べないように蔓を加えさせられている。静雄はブチブチと蔓を千切る。

 

「アキコ!夏奈子!」

 

 応急処置の出来る2人を呼ぶ。頭を打っているなら、下手に動かさない方がいいだろう。

 

「天下丸、ありがとな……そこの肉、好きなだけもってけ」

 

 静雄が昨日捕まえた肉を指さすと天下丸は一鳴きする。何処に隠れていたのか数匹の狼達がやってきて肉をいくつか咥えて去っていった。やはり頭が良い。それもかなり。

 

 

 

 

 静雄はミイナの世話をアキラに任せミイナが眠る仮設テントの前であぐらをかく。もう一度襲ってこないとも限らないからだ。アキラはアキラで責任を感じているようだ。ミイナの違和感に気づけなかったことを……。と、アキラが出て来た。

 

「静雄さん、ミイナが目を覚ましました」

「そうか、様子は?」

「普通に話せてるんで大丈夫そうです」

「そうか」

「…………静雄さん、俺──」

 

 と、アキラが意を決したような顔をして語り出す。

 

「この学校を、ぶち壊します」

「………そうか、頑張れよ」

 

 静雄はそういってアキラの背中を軽く叩く。本当に軽く。そしてミイナのテントに入る。

 

「何言ったんだ?アキラの奴、やる気だったが」

「ちょっとね……それよりさ、お兄ちゃん。犯人は生徒か先生だよね」

「ああ、見つけ次第ぶっ飛ばしてやる!」

「それは良いけどさ、アキラお兄ちゃんが何かするみたいだからその後でね。こういうのってほら、当人達で解決しないと」

「…………ま、お前がそういうならそうなんだろうな。わーった、アキラがなんかするまでは見逃す。だが、それが終わったらぶっ飛ばす」




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