池袋最強とエデンの檻   作:超高校級の切望

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世界のルール

 翌日、何やら騒がしい。ミイナをアキコ達に任せて外に出るとアキラが丸太を持って暴れていた。

 止めようと肩をつかんだ山口を押しのけ叫ぶ。そんなに学校が大事なら体を張って守れと、欲しいものはその手でつかみ、守りたいものはその手で守る、それがこの世界のルールだと。

 

「だ、だからって壊すことないじゃないか!学校(ここ)は皆が安心して暮らせる場所なんだぞ!」

「皆が安心?笑わせるんじゃねーよ……」

 

 なら何故ミイナは襲われた。そう応えたアキラに一同が固まる。

 ミイナは頭から血を流していた。ひょっとしたら後遺症が残るかもしれない。誰かに襲われたのだ。誰に?ここに住む誰かに決まっている。そんな奴がいるところが、安心できる場所?

 

「そもそも学校って誰のためにあるんだ?」

「え、何それ?」

「ミイナが言ってたんだよ───」

 

 生徒達を閉じ込めて自由を奪って、そんなところ誰のためにあるのだ、と、ミイナは言っていたらしい。

 この『3ー6』は、誰のためにあるのか、とアキラは尋ねる。

 

「皆のため?いや、こうは考えられないか……この学校を造るメリットがある奴がいて、そいつが邪魔しそうなミイナを襲った。出て行ってもらえるのがちょうど良かったんだろうが、静雄さんっていうこの島で生き残る確率をうんと上げる人まで出て行きそうになったからミイナだけ殺して、ってな……なあ、生徒会長───」

 

 アキラが丸太を山口に向けるとザワリとざわつく一同。そういえば、彼はやけにやる気が強かった、旗に悪戯された時凄い剣幕で怒っていたし、と疑心の目が向かう。

 

「バ、バカな!僕はやってないぞ!僕はただ、皆のために早く学校を完成させようと!そのために頑張って───いや」

 

 叫んで否定した山口は、しかし急に静かになる。そして己の真情を吐露する。自分だって怖かったのかもしれない、と。こんな島に放り出されて、不安だったと。

 

「それでも、僕はあの子を襲っていない……」

 

 と、その時、割り込んでくる影があられる。

 

「も、もうその辺にしたまえ仙石くん!」

「先生これ以上みてられんよ!」

 

 藤本と川合だ。

 こんな状況、大人の仲裁に空気が少しだけ緩むのを感じた。彼等曰く仮に山口がそんなことをしても彼は大事な生徒なのだと、彼を許してやってくれ、後は自分たちに任せてくれないか、とのことだ。静雄はん?と首を傾げる。何だろうか、此奴等、やけに慌てているような。それに許してやってくれ?仮に、などと言いながらやけに山口がやったのだといいたげな………。

 

「何言ってんだよ先生、俺は生徒会長がやったなんて一言も言ってないぜ。むしろ俺が犯人だと思ってんのは、先生、あんたらだよ」

「そういや、そもそも発案者そいつ等か……」

 

 アキラの言葉に静雄があっ、と思い出す。その言葉に明らかに狼狽える2人。

 アキラはいう。そもそも犯人は2人以上いると思っていたと。危険な深夜の森、静雄でもあるまいし一人で行動するなど危険。ならミイナを運ぶ役と周囲を警戒する役の2人がいたはず。

 山口は様子を見る限り犯人ではないだろう。なら次に怪しいのは2人組でかつ『学校』を造る事で高い立場をえる人物。それは藤本と川合だ。

 

「な…何を言っているんだね!」

「いくら何でもそれは言いがかり───!」

 

 ガン!と丸太で近くの木を叩き付け黙らせるアキラ。

 

「往生際が悪ぃんだよ!許さねーぞこの変態共!」

「へ、変態……!?」

「とぼけんなよ!ミイナが襲われたのはトイレだぜ!お前等10才の子供に何した!?言ってみろ!」

「バ、バカを言うな!私達は教師だぞ!」

「……証拠はないんだろ!?」

「証拠だあ!?そんなもんいるかよ!」

 

 そう言って丸太を掲げるアキラ。2人は慌てて手を前に出す。

 

「そんなムチャな、誤解だ私達にそんな趣味はない!」

「だいたいあの子は、男の子じゃないか!」

 

 その言葉に、アキラの動きがピタリと止まる。

 

「……聞いたかりおん」

「え?」

「俺はここに来てからミイナが男だなんて一言も言ってないぜ……」

 

 昨晩ミイナが言っていたらしい。トイレで下着を脱いだ時に襲われた。だから、犯人は自分が男だと知っているはずだ、と。

 

「なありおんは言ったか!?」

「い……いいえ!」

「真理谷!」

「いや!」

「ザジっ!」

「言うわけねーだろ!」

「大森さん!」

「い、言ってません!」

「同じく……」

「静雄さん!」

「言ってねぇな……」

 

 元有田グループの者達は一人残らず驚いていた。男だと知らなかったらしい。そういえば言ってなかった。

 なのに、何故知っていると尋ねるアキラに何も言えない2人。そんな2人に疑心の視線が集まる。

 

「……仙石アキラ、やっぱりお前は、問題児だよ」

 

 と、丸太を持ちあげる2人はそのままアキラに殴りかかった。静雄がゴキリと指を鳴らす。が、ミイナの言葉を思い出し踏みとどまる。ピキリと額に青筋が浮かぶ。

 

「バカやろー!お前等はなぁ、俺らの言うこと聞いてりゃ良いんだよ!」

先生(おれたち)だってこんな世界、好きにやりたいと思って何が悪い!」

(ヤロー)は奴隷みたいに俺たちのために働いてりゃいい!」

「でもってかわいい女子は皆オレらのもんだ!」

「当然だろ!俺たち先生が──!」

「この学校の王なんだからなぁ!」

 

 と、そこまで叫び2人の体が浮かび上がる。静雄が2人そろって持ち上げたのだ。

 

「んで、言いたいことは終わったか………?」

「あ、あででで!」

「は、放せ!俺達は公務員だぞ、お前みたいなチンピラとは格が違うんだあああいでぇぇぇ!?」

 

 ジタバタ暴れるも落とさないようにむしろ力がこもり叫ぶことすら出来なくなる藤本と川合。

 

「ふざけやがって、お前等はただのクソやろーだ!」

 

 息を整えながら叫ぶアキラ。何か言いたいことがあるのだろう、と静雄は2人を放り捨てる。

 

「俺だって考えてた……皆が集まって暮らせる国みてーなもんがこんな世界でも作れねぇかって……でもそれは誰か一人の為じゃなくて、皆のためのもんで……苦しくたって皆で笑えて、辛くても皆で頑張れる、皆でいきたいって思える───俺達の理想の国だ!」

「うるせぇ!もう死ねよガキ!」

 

 と、足下の石を拾って殴りかかろうとする2人。しかしその2人を全力で殴る者が2人いた。

 

「お、思わず手を挙げてしまった……」

「ふん、僕は一度殴ってみたかったんだ。教師という人種をな……」

 

 握った枝を見て呆然とする山口と肩に担ぎ得意げな真理谷。優等生の彼等が手を挙げると思っていなかったのか狼狽える2人。真理谷達を睨みつけたが自分達を責めるような視線が周囲から向けられているのに気づく。

 

「…な…何だお前等その目は」

「お、おい良いのかそんな態度取って……」

「もう面倒みてやらんぞ!お前等だけでどうやって生きてくつもりだ!」

 

 自分達を求めろと言うように叫ぶ藤本と川合だが、誰も何の反応も返さない。ギリ、と睨みつけ吐き捨てるように叫ぶ。

 

「本当にどうなっても知らんからな!」

「ガキ共だけで勝手に死んでろバカ共が!」

 

 そして、走り出そうとして、再び静雄に捕まる。

 

「………おい、他に何か言いたいことあるか?」

「え、いや……」

「そうか、じゃあ後は俺の番だな」

「は、放せ!」

 

 藤本が持っていた石で静雄の頭を殴りつけるが、石が砕ける。思い切り殴ったためだろう、石に挟まれた指の骨も折れたらしく片手を押さえてうめく。

 

「ガキを夜後ろから殴りつけて、動物に喰わせようとしてよぉ、まさかただ逃げてくだけで許されると思ってねぇよなぁ………?」

「は、放せ!」

「ど、どうする気だ──!?」

「ミイナにぶっ飛ばすって言ったからよぉ………ぶっ飛びやがれぇぇ!」

「うわああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 石でも投げるかのように腕を振るい、藤本をぶん投げる。ドップラー効果を残して遥かかなたに吹っ飛んでいく相方をみて顔を青くする川合。

 

「ま、待て!落ち着け!これは、その、あれだ!こんな状況で、少し混乱してて──!」

「学校造って支配者になって、その発案者を他人に押しつけようとする程冷静な奴が混乱してるわけねぇだろうがぁぁぁ!」

 

 そう叫び、川合もぶん投げる。あっという間に見えなくなった。人はあんなに飛ぶものなのか、と思う者はいても誰も心配する者は居なかった。

 

 

 

 

「で、その後なんだかんだあってアキラがリーダーになった」

「なんだかんだって、そこを説明しろよおにーちゃん」

 

 静雄が持ってきた木の実を喰いながら笑うミイナ。珍しく素の喋り方だ。

 

「しかし彼奴等、本当に飛んでったのか、いい気味だぜ」

 

 ケケケ、と楽しそうに笑うミイナ。

 

「んで、今後の方針は?指導者が切り替わったって事は、ここは学校じゃなくなったんだろ?なら新しい方針も決まったはずだろ」

「ああ、周辺の探索だってよ。俺は確定として、後アキラと他のメンバーも見繕うらしい」

「探索?」

「果物とか、危険な動物がいないかとかみるんだってよ」

「………お兄ちゃん狼と仲良かったろ、なら平気じゃねーの」

「俺が狩りしてる間にあぶねぇのがでるかもしれねぇからな。備えるべきどうかで柵の形も変えるんだとよ」

「へぇ……」

「後は、他にも生き残りがいねぇか……」

「あー……また変な奴じゃないといいね。男のレイプ魔に殺人鬼、中学生狙ってた変態教師………」

 

 指を一本一本立てながら変なの、の例を挙げていくミイナ。

 

「見事に男ばっかだな。そろそろ女の変なのが出てくるんじゃねーの」

「女を殴る趣味はねーんだが、ま、人を殺そうとする奴だったら関係なくぶん殴るがな」

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