五等分の花嫁 三玖√   作:おとぎの

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#3 二乃、フラグを立てる。

「はじめまして~。何か困ったことがあったら、一花お姉さんに相談してね」

「お姉さんって……同学年だろ」

「ふふっ……私、五つ子の長女なので」

 

 そう言うと、一花は風太郎の耳元に口を近付け、二人以外には聞こえないような小さな声で囁く。短く切られた髪の毛が風太郎の頬をくすぐる。

 

「三玖のどこが好きなの? 一目惚れ?」

 

 一花の肩越しに、不思議そうに首を傾げる三玖の姿があった。

 

「そういうわけじゃ……ハンカチ貸してもらった時に少し話しただけだ」

「少し、ねぇ」

 

 意味深に言葉を切り、口角を少し上げ風太郎を見る一花。

 今のやり取りに何を見たのかは分からないが、満足したようで一歩離れ、

 

「じゃあ、今はそういうことにしといてあげる」

 

 と言うと、今度は三玖の方に向かって行った。

 

 よく分からん人だ。性格から見ると、あれが三玖の姉だとはあまり信じられないが·····まあ顔はそっくりだったな。

 

 というか待て。五つ子だと? 

 

 だとすると、つまり……。

 風太郎は昼のらいはとの電話を思い出す。

 

 

『アットホームで楽しい職場! 相場の()倍のお給料が貰えるって!』

 

 

 成る程、相場の五倍の給料ってそういうことだったのか……。

 俺に五つ子全員の家庭教師をやれと。

 

 いやいやできるのか? 

 頭はいい俺だが(自尊心)、何せ人に教えたことがない。

 だが……。

 

『これでお腹いっぱい食べられるようになるね!』

 

 やるしかない。

 五つ子全員の勉強のでき具合にもよるが……まあ、なるようになるだろう。

 俺だってお腹いっぱい食べたいしな。

 

「うーえすーぎさーん」

 

 風太郎がそんなことを考えていると、目の前から自分を呼ぶ声が聞こえることに気づく。

 顔をあげると、少し近付けば鼻がふれ合ってしまいそうな程近くに、ウサギの耳のようにリボンを結んだ少女がいた。

 

「うおっ! 誰!?」

「あはは。やっとこっち見た」

 

 突然目の前に現れた少女から、顔を引く風太郎。

 ウサギリボンの少女は、それを見て続ける。

 

「私は中野四葉です! よろしくお願いしますね」

「おう……」

 

 先程から五つ子の名前を三人聞いたわけだが……。

 やっぱみんな、顔似てるな。

 正直、それぞれが身に付けているアクセサリーがあるからいいものの、外されたら誰が誰かを当てる自信はない。

 

「うーん? なんだか反応が薄いですねー」

「ああいや、……四葉って……運が良さそうな名前だなってな」

 

 適当に誤魔化したつもりだが、意外にも四葉は風太郎の言葉に食い付く。

 

「確かにそうかもしれませんけど……例えば、テストの4択問題とか絶対当たりませんよ?」

「は?」

 

 そう言い、鞄の中を漁り始める四葉。しばらくすると、プリントがまとめてあるファイルの中から一枚を取り出して、風太郎に差し出した。

 

「ほら、見てください上杉さん! 4択問題すら全て間違えて、0点です!」

 

 胸を張って自慢気にいい放つ四葉。

 しかしそれは、風太郎にとって絶望の宣告でしかない。

 プリントを持つ手は震えていた。

 何度見ても0点。綺麗にバツマークが並んでいる。

 あまりにも信じられない光景に、自分のテストではないにも関わらず何度も見直し……。

 

「あまり見ないで下さいよ……? 照れちゃいます……」

 

 0点が何言ってんだおい。

 

 これから来る自分の未来を想像し、風太郎はがくりと肩を落とす。

 しかしすぐさま顔を持ち上げ向き直り、最後の希望を込めて四葉に問う。

 

「なあ、あとの四人は……成績どうなんだ?」

「私ほどじゃないですけど、全員赤点なのは変わりません! みんな一緒です! 何故なら……私たちは五つ子ですからー!!」

 

 ですからー、ですからー、……と風太郎の頭の中で、四葉の言葉が反響する。

 

 あー……。やっぱ裏の仕事だろ、これ。

 

「何が五つ子ですからー。だよ!!」

「あっ! 上杉さんが怒りました!」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「「「「「家庭教師!?」」」」」

 

 おお。五つ子息ぴったりだな。

 驚くのも無理はないだろう。何せ、自分の身内に何故かくっついてた見知らぬ男が家庭教師なんだからな。

 

「ふーん……パパが言ってたけど、まさかあんただとはねぇ。……こんな家に引き込もってプラモデルばっか作ってそうな人で大丈夫なわけ?」

「偏見が過ぎるな……えーっと」

 

 風太郎が三玖に説明をしてほしいと目配せすると、三玖はその意図を察して口を開く。

 

「次女の二乃だよ。五つ子の料理担当。最近タピオカにはまってて、よくインスタに写真上げてる」

「ちょっと! なに勝手に言いふらしてんのよ!」

 

 説明口調の三玖に抗議の声をあげる二乃。だが構わず三玖は続ける。

 

「あとは、そっちの星の髪飾りを付けてるのが五月。二乃が料理担当なら、五月は食事担当。インスタでは──」

「ああー! それ以上はダメです! あと食事担当って!」

 

 二乃と同じく五月も声をあげるが、チラリと風太郎の方を見ると一つ咳払いをし、向き直る。

 

「中野五月です。上杉君……ですよね、よろしくお願いします」

「ああ……話しやすくて助かる」

「?」

「いや、気にしないでいい」

 

 一花姉(自称)よりよっぽどしっかりしてそうだ。個人的にこういう人は、成績もいい傾向にある気がするんだが……。やはり四葉の言う通り、全然ダメなのだろうか。

 

「ちょっと五月! 私はこんな冴えないもやしが家庭教師なんて認めてないわよ!」

 

 冴えないもやし。

 

「じゃあどんな人がいいの?」

 

 と、三玖が問うと、二乃は顎に手をあて、少し考える素振りをみせた。

 

「そうね……金髪で、少し強引な……ってちがうでしょ!」

「おお、ナイスノリツッコミ」

「二乃、楽しそう……」

「楽しくない!」

 

 一花と三玖の言葉に反論する二乃。確かに楽しそうだと風太郎も心の中で三玖に同意した。

 

「ですが……あのお父さんが見つけた人ですよ? 心配ないのでは?」

 

 逸れた話を五月が戻す。五月の言うことに一理あると感じてしまった二乃は、咄嗟に言葉を返せなかった。

 

「う……あーもう!」

 

 二乃はキッ、と風太郎を睨み付ける。

 

「三玖と何してたか知らないけど、私はあんたのことなんか認めてないから! 家庭教師も必要ないわよ!」

「認めてないって言われてもな……そうか」

 

 他の四人に悪印象を持たれてはいなさそうだが、二乃は別のようだ。

 だが、風太郎も言われっぱなしのままではない。

 

「なら、明日から家庭教師が始まるらしいんだが……最初に全員高校一年の復習テストをしよう。家庭教師いらないんだから、それなりに勉強はできるんだろ?」

 

 風太郎の発言は二乃を煽ったようにも聞こえるが──半分はそうだが──期待もしていた。

 もしかしたら、本当は勉強ができるのかも知れないと。

 もしそうなら大分楽になるし、一定の成績まで伸びた二乃自身も他の四人の勉強を助けるということができる。

 

「ふーん……あんまりアタシを侮らない方がいいわよ」

「ああ、期待してるぜ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、自身満々な様子の二乃。

 それを見た三玖達が微妙な表情をしていたことに、風太郎は気付かなかった。

 




どうも、フィヨルドです(´・ω・`)

ルーキー22位、高評価、感想。そして赤バーありがとうございます。

前回11巻の感想も書こうとしましたが、忘れてましたね。なんだかよかったなぁーって感じです。あと三玖がかわいい。
ラストは衝撃でしたね。このSSの展開に影響が出るかもしれないまであります。

明日も投稿するので、是非読んで下さいね。
評価、感想も是非お願いします。
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