五等分の花嫁 三玖√   作:おとぎの

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#4 三玖はお布団の気持ちよさを知る。

「で、風太郎君のどこが好きになっちゃったの?」

「ち、違う。そんなんじゃない……」

 

 三玖は一花のいきなり核心をつく質問にたじろぐが、すぐに落ち着きを取り戻し、持ち前の冷静さでガードを固める。

 

「ふーん……。じゃあ、何かやましいことでも?」

「うっ……! え、えっと……」

 

 薄すぎるガードだった。冷静さはどこへ行ったのか。

 

「え、ええっ! ? み、三玖……もしかして本当にやましいことを……」

「一花の考えてるようなことじゃないから!」

「え、私の考えてることって? なになに? お姉さんに教えてよ。……答えないなら……こうしちゃうよー」

 

 そう言い、一花は三玖のパジャマの下に手を潜り込ませお腹の辺りをつまむ。

 

「ひあっ……あ、ダメ……! あっ、ふ、ふふっ」

 

 口に手をあて、くすぐったさを我慢する三玖。抵抗をしようと動く三玖により、ベッドのスプリングが軋む。一花の攻撃は三十秒ほど続いた後にようやく終わった。

 

 話は少し前に遡る。

 

 

 

 転校初日の夜。

 三玖は二乃が作った夕食を食べ、勉強は勿論せずにドキュメンタリー番組を見て、いざ寝ようとしたその時。

 ガチャリと扉が開き、パジャマ姿の一花が三玖の部屋に来たのだ。

 

「三玖ー久しぶりにお姉さんと寝ない?」

「汚くしないなら……いいよ」

 

 珍しいことに三玖は少し驚いたが、断る理由は特になかったのでそのまま自室に招き入れた。

 

 ひとしきり部屋の中を物色された後(汚くなった)一緒にベッドに潜り、今に至る。

 寝るときにショーツ以外脱ぐ性質がある一花は、自室ではなかろうと遠慮なく裸になった。

 

 まさかこんなことになるとは考えもしなかった三玖は、一花を自室に入れたことを早速後悔をし始めていた。

 床に散乱した自分と姉の下着を見て(漁られた)、はあ、とため息をつく。

 一花は他人の下着に興味を持つお年頃なのだろうか。自分の下着はすぐどっかやるくせに。

 

「い、いじわる……」

「ごめんって。で、ほんとはなにがあったの?」

「もう……笑わないでね」

 

 じとっとした目で一花を見るが、しかし誰かに相談したかったこともあり、昼にあった出来事を最初から説明した。

 ハンカチを貸したこと。お昼を一緒に食べたこと。そして……自分がした告白まで。

 

 説明をしていくうちに、妙な恥ずかしさが込み上げてくる。

 

 なんであんなこと言っちゃったんだろう……。

 友達になってくださいって……高校生にもなって……うう……。

 

 全て話終えたとき、一花は。

 

「ふ、ふふっ……ご、ごめんって。あ、暴力は禁止だよ……ふふっ」

 

 笑っていた。

 どすっどすっ ではなく、ぽこぽこと布団の中で一花の腹を殴る三玖。

 

「笑わないでって言ったのに」

「笑わないとは言ってないけどね」

「……」

 

 ぽこぽこと殴り続ける。

 

「それで三玖はどうしたいの?」

「え?」

「風太郎君と仲良くなりたいんでしょ? なんで?」

「なんでって」

 

 それは……なんでだろう。

 あんなこと、なんで言ったのかもわからないし……。

 うーん。

 

 少し考えてみても、三玖の頭には答えが浮かんでこなかった……が。

 自分の中に芽生える一つの気持ちには気付いていた。

 

 

 明日からの学校、楽しみだな。

 

 

 そんなことを思ったのはいつぶりだろう。

 

「やっぱり、やましいこと?」

「だから違う!」

 

 ぽこぽこ。

 

「わからないの。なんであんなこと言ったのか、そう思ったのか──」

 

 自分でも変だと自覚しながらそう言うと、一花から返ってきたのは意外な言葉だった。

 

「ふーん……ま、分からなくてもいいんじゃない?」

「え? なんで?」

「だって、今日あったばっかりでしょ。これから分かればいいじゃん」

 

 ……それも、そうかもしれない。

 

 まだ出会ったばかりで、家庭教師すらもまだ始まってない。たまたま食堂で会っただけ。急ぐ必要はないのだ。

 

「まだ一日も経ってないでしょ。明日は風太郎君がウチに来るんだから、そっから頑張ればいいの」

 

 楽観的な一花らしい考え方だったが、三玖はどこか納得していた。

 

「そうだね、ありがと」

「どういたしまして。ま、お姉さんだからね。困ってる妹くらいは安心させられないと」

 

 柔らかな微笑を浮かべながら、左手を三玖の頭にのせる。

 久しぶりに感じた気がする一花の姉らしい一面。

 ……だが三玖は安心を覚えたりしなかった。なぜなら──。

 

「ふーん……で、さっきからなんで、安心させたい妹の服を脱がそうとしてくるの? すっごく不安」

「だって私だけ裸なのおかしいじゃん」

「私がおかしいみたいに言わないで」

「えーいいじゃん、減るもんじゃないし 。そもそも三玖は裸で寝たことないんでしょ? ぐーっすり眠れて気持ちいいから、オススメだよ。一回だけ! お願い!」

「減るよ! 羞恥心がすり減ってた一花には分からないかもしれないけど」

「いいからほら、ばんざいして」

「え、ええっ! ?」

 

 結局、三玖は一花のいいようにされ──。

 

 その結果。

 

 お布団がひんやりしてて、ちょっと気持ちよかった……。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 翌日の昼休み。

 できれば一人で食べたかった風太郎だが、三玖に誘われてさらに一花まで教室に来たので、二人に腕を引っ張られながら仕方なく食堂へ向かう。

 教室内がざわついていたのは言うまでもない。

 

 今度はどんな噂が立つのやらと考えながら食堂の行列に並んでいると、すぐに自分の番が来た。もちろん、注文はいつもと同じ。

 

「焼肉定食、焼肉抜きで」

「え? なにそれ」

 

 その奇妙な単語が初耳だった一花は、きょとんとした表情で風太郎に聞く。

 からかうことを面白がっている印象しかない風太郎にとっては、そんな顔もするのかと意外に感じていた。

 

「焼肉定食の焼肉抜きだよ 。たくあんと味噌汁と白飯 。一汁一菜で戦国の足軽風の食事だぞ」

「ええ……それは……どうなのかな?」

「戦国の足軽は何合も食べてたはず……それだけじゃお腹すいちゃうよ?」

 

 三玖の声を聞きながらトレイを受け取り、待ってくれていた二人に合流する。

 

「つってもなぁ。無駄に金使うわけにもいかないし……ま、今後どうなるかは今日からの家庭教師次第ってことだ」

 

 すると三玖は何故か考え込むような顔をして。

 

「そっか、頑張ってね」

 

 と、すぐに顔を上げ、笑った。

 

「いや、主に頑張るのはお前らだからな」

「お、お手柔らかにお願いします……」

「いや、頼むぞ。マジで」

 

 俺の生活がかかってるんだからな。と真面目な顔で言うと、一花はあはは。と笑いながら食堂の奥を指差す。

 

「あそこらへんにみんな集まってるんだって」

 

 みんなとは当然他の姉妹のことだろう。ここにいない二乃、四葉、五月が既にいるということか。

 せめて最後の抵抗として風太郎は一花が指す方向の真反対を指差す。

 

「じゃあ、俺はあっちで食べるから」

「ダメだよフータロー」

 

 しかしそんな敵前逃亡は逃がさないとばかりに、三玖が風太郎の腕をガッチリと掴む。あまりの力に振りほどくことはできない。

 

「お前、意外に力あるんだな」

「風太郎君の筋肉が貧弱なだけだと思うよ? ご飯も全然食べてないみたいだし」

 

 ため息をつきながら、仕方ない。と腹を括った風太郎は、五つ子が集まるテーブルへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 魚介の風味漂うこってりしながらもしつこくない豚骨スープ。

 口のなかでとろけるチャーシュー。

 歯ごたえがあるメンマ。

 そして、黄金に輝く細麺。

 最高です! 

 

「あんた……少しはこいつ見習いなさいよ。正直アタシが男子なら……引くわ」

「デザートはやっぱりプリンですよね!」

「はぁ……」

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 放課後。

 青春を満喫している人はこの後カラオケにでも行くのだろうか。そのまま赤点補講に行っちまえ。

 若干一名不満顔で、風太郎は五つ子と共に家庭教師をする中野家に向かっていた……のだが。

 

「ダブルデラックス肉まん!」

「はぁ……」

 

 

 両手に大きな肉まんを持ち、ご機嫌な様子の五月。

 食堂でも聞いた二乃のため息がまた聞こえる。もしかすると意外に苦労してるのかもしれない。

 五月の要望で途中のコンビニに寄り道をしたのだ。昼にあれだけの量を食べたにも関わらず、五月の胃袋は満たされていないらしい。

 三玖によると、いつものことだと言うが·····医者の父親は気にしないのだろうか。

 

 風太郎は太るぞ。と言いかけたが、その言葉は二乃が代弁してくれた。

 しかし、そのあと膝に蹴りを入れられていたので、もし自分が言っていたら……と考え、風太郎は一人でゾッとする。

 

 そしてまたしばらく歩くと、前方に大きなタワーマンションが見えてきた 。それを指差して三玖が呟く。

 

「あれが私たちの家。最上階一フロア全部」

「は? ……マジで?」

「うん。8LDK」

「8LDK!?」

「言っとくけど、変なことしたらすぐに追い出すから」

 

 そんな二乃の辛辣な言葉が聞こえたが、正直どうでもよかった。

 

 俺の家 1DKだぞ! なんだ8LDKって! 

 

 どうやら俺はお金持ちを舐めていたらしい。

 

 

 

 




どうも、フィヨルドです(´・ω・`)
遅れて申し訳ない·····。
正直、花火大会までさっさと行きたい気持ちもあるんですが·····できるだけ早く、でめ寄り道も。って感じで進めます。


二日に一回は更新したいと思っているので、次回もまた読んでくれたら嬉しいです。
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