私がカルディア先生に拾われこの聖域に来てからあっという間で早くも3か月がたちました。
あれから3日ほどたってから聖闘士の修業が始まりました。聖闘士の修業はかなりつらいものですが、カルディア先生とデジェル先生が褒めてくれますからどうってことはありません。…カルディア先生はたまにやりすぎで叱られてますけど。私はどうやら筋が良いらしく、自分でもどんどん力が上がっていくのを感じています。
そして今日は午後がお休みの日です。午前中はデジェル先生と聖域の歴史についての勉強をしていましたが、それも終わり今はロドリオ村に来ています。おこずかいで画材を買いに来たのです。まだあまりうまく書けませんが練習あるのみ!です。気に入っていた濃さの鉛筆が切れてしまっていたのでそれと途中で見かけたパン屋さんで焼き立てのやわらかめのパンを1枚買いました。固めのパンはあごが疲れてしまいます、このぐらいの歯ごたえがちょうどいいです。食べた感がします。それから果物屋さんでおいしそうなイチジクを一つ。
今日はこのままはずれにある崖ににピクニックに行こうと思います。一人ですけどね。あそこは景色がいいから。新しい鉛筆も使いたいですし。
そんなことを考えながら歩いていれば、ふとどこかから聞こえてくる押し殺したような鳴き声。また兄弟喧嘩か何かでしょうか?前は弟君が泣いてましたね。
流石にこのまま放っておくことはできません。路地裏の方へ向かいます。
「あれ、女の子だわ。」
私が声をかけると紫色の髪をした女の子は肩をびくつかせてこちらを見上げてきました。
「ねぇ、どうしたの?なにかいやなことでもあった?それとも喧嘩かしら?」
「うぅ…ぁぅ…~っぅ」
泣き止まないなぁ・・・たぶんこの子はアテナだろう。でもきっとまだ覚醒していないただの女の子だ…
「何か、悲しいことかさみしいことがあったのね。でもそこは少しきたないわ。立てる?」
「……ぅ~~…」
無理そうね。じゃあ抱っこしましょう。画材をリュックに詰めて女の子を持ち上げる、歩き出す。
「ちょっと失礼するね。…よっと」
「私がいいところに連れてってあげるわ。あそこはとってもきれいなのよ。涙なんて吹っ飛んでいっちゃうわ。」
「ほら、もう少しよ…ほら!見てごらん!」
「…わぁ…きれい・・・」
「えぇ、きれいでしょ。私のお気に入りのいいところよ。これからここでピクニックなの、一人じゃさみしいわ。付き合ってくれる?」
「…うん」
よかった。まだ沈んだ気持ちは持ちあがらないみたいだけど涙は止まってくれた。
私は、女の子を隣に座らせて、彼女に話しかける。
「ねぇあなたのお名前は?」
「!…さ、サーシャ…」
「そう、サーシャね。私はズグラ、呼び捨てでいいわ。サーシャ、おなかはすいているかしら」
「うん…少しだけ…」
そりゃそうだあんなに目のふちが真っ赤になるまで泣いているんですもの。泣くのはとっても体力を使うもの。
「じゃぁパンを食べましょう。私とサーシャで半分こよ。はい、焼き立てだからおいしいわ」
「…おいしぃ」
「でしょう。あそこのパン屋の娘さんはパン焼きの達人なのよ。冷めてもおいしいけどこれみたいにあったかい方がもっとおいしいの。」
やっぱり少しといわず、かなりおなかがすいていたようであっという間にパンを食べきってしまった。
次はイチジクを半分こに割って渡す。修行を初めてから最近リンゴやイチジクを素手できれいに割れるようになった便利。
ずいぶん涙を流したみたいだからその分を補給しなきゃね。それに満腹と甘いものは少し心を楽にしてくれる。
「!」
「甘いでしょう?イチジクは今が旬だからね。一等赤いのを買ってきたのよ。」
「ねぇ、サーシャ。なぜあんなところでひとりでいたの?」
できるだけ優しい声音で話しかける。でもきっと話してしまった方が心の整理がつくと思う。考えるだけだと頭の中で気持ちが混ざりあってよくわからなくなってしまうから。
「…あのね、わたし、3日ぐらい前にここに引き取られてきたの…シジフォスさんっていう人が、アテナがどうとかって…わたし本当はアローン兄さんとテンマ達から離れたくなかったの…でもなぜだかついていかなきゃいけない、気がして…」
「そうなの…それはつらかったわね…それで帰りたくなって、家出してきてしまったの?」
「うん…それにみんな、わたしのことサーシャって呼んでくれないの…自分がアテナだということは、わかったわ。でも…まだ少しだけ…サーシャって呼んでほしいの。セージさんもシジフォスさんも女官さんもよくしてくれる…でもっもうしばらく戦いが大きくなる前は…サーシャって…呼んでほしいの…」
「サーシャ…じゃぁ私はサーシャのことサーシャって呼ぶわ!私はサーシャの聖闘士よ!ずっと、サーシャを守ってあげる!」
「ほんとう・・・?」
「えぇ!サーシャ、私の友達。私の守る人!ほら!サーシャ立って!」
「うん!…わっ」
私は立ち上がったサーシャを持ち上げる今は夕暮れ、景色がとってもきれいよ!
「…きれい・・・」
「きれいでしょう、サーシャ。あなたの世界よ!」
「私の…世界」
「えぇ!あなたの世界!私たちが生きる世界!私たちが守る世界!」
「守る世界!」
「地球は私たちを愛してるわ!だってこんなに美しいのだもの!」
「私の守る、美しい世界。アローン兄さんたちのいる世界…」
「えぇ…アテナのサーシャの愛で力で守るのよ」
「うん。わたしが守るの。私たちで…ズグラありがとう。だいすき」
「わたしも大好きよサーシャ!さぁサーシャそろそろ帰りましょう!もう暗くなってしまうわ!手をつないで一緒に帰りましょう!」
「うん。セージさんおこってるかな…」
「大丈夫よ。もし怒ってたら一緒にあやまってあげる。でもきっとそれよりも心配しているわ」
「うん…ねぇ、ズグラ今日一緒に寝よう?今日だけだから…」
「もちろんいいわよ!教皇様に頼まなきゃね。それに今日だけじゃなくていつでもいいのよ!」
二人で暗くなった道を手をつないで歩く。まぁきっと、というよりも絶対心配しているでしょうし、なんてったってもう護衛がいるしね。割と初めの方から建物とか、木の影にシジフォス様の気配がうっすらある。心配性だなぁ、まぁ仕方ないか。出てこないってことはもう教皇様に連絡が行ってるってことでいいのかしら
二人で手をつないで聖域までついたけれど、サーシャの体力じゃこの階段は無理よね…シジフォス様にこっそり目線を向ける。
「…サーシャ様お帰りなさいませ。心配しましたよ。」
「!名前…シジフォスさん…あの、かってに出て行ってしまってごめんなさい。」
「いいえ、ご無事で何よりです。教皇宮までは私がお連れしましょう。さぁこちらへ」
「あの…ズグラも一緒でもいいですか?」
「もちろん。さぁズグラもおいで」
呼ばれたのでそばに行って抱き上げてもらう。私は大丈夫なのだけど楽だからいいか。
今日はうまいことデジェル先生とアスミタ様以外見かけなかったカルディア先生は外に出ているみたいだから途中でデジェル先生だけには泊まることを話しておく。
教皇宮について、やっぱり教皇様もかなり心配していたらしく少し落ち着きがなかった気がする。でも連絡はちゃんと行っていたようで泊まってもいいといわれた。
サーシャの大きなベッドに二人で寝そべる。
「ねぇサーシャ知ってた?」
「え、なにがですか?」
「シジフォス様ね途中からずっとそばに隠れてたのよ。心配性ね。でもサーシャのことがとっても大事なのね。」
「え!全然気が付かなかった…恥ずかしい…」
「嫌い?」
「…ううん、嫌いじゃないけど…」
「ふふっ、じゃぁ好き?」
「うん…好きだけど、こっそり見られるのは何かヤダ」
「じゃぁ今度は家出じゃなくて私のところに来ればいいわ。教皇様にだけは言っておいてね」
夜も暮れ二人揃って眠りにつく。なんだかいい夢が見れそう。また明日。お休みサーシャ。