俺が拾ったこいつはズグラというらしい。意味はギリシア語で森、名は体を表すというが小宇宙にそっくりな名前だな。
俺がズグラを拾った町はアテナ信仰の町ではあるが聖域の城下町ではない。ここから一週間ほど移動しなければいけない。
「ここから一週間ほど歩いて移動する。小宇宙を燃やして走ればすぐ着くが、俺は心臓が少し弱くてな、できるだけ戦闘以外では激しく小宇宙を燃やさないようにしている。それに走ってしまうとお前が追い付かないだろうからな、ゆっくり歩いていこう。」
「わかりました、あの心臓が弱くて小宇宙を燃やさないってどういうことですか?」
「小宇宙を燃やすと心臓が熱を持って激しく痛みだす、あと高い熱が出るな。」
どうなるかを教えてやると、ズグラは顔を真っ青にして心配の表情を表に出す。
「ははっ、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だ、昔ほどしょっちゅう起こるわけじゃないし、普段はデジェルっつう俺の親友、水瓶座の黄金聖闘士がな、心臓を直接冷やしてくれんだ、そうすれば痛みも楽になる。」
言ってやればあからさまにほっとしていた。無表情かと思えば割と表情豊かで楽しいな。
「じゃあ、先生がもしも倒れたらそのデジェル様を呼べばいいんですね!」
「あぁ、そうだよろしくな。デジェルのことは先生と呼んでやるといいぞ、勉強に関しては俺はあんま見てやれねぇからデジェルに任せるつもりだからな。」
「えっ、わ、わかりました。」
「ところでズグラ、足を引きずっているがもしかして痛いか?」
ズグラは片足をやや引きずって歩いている、おそらく足の裏あたりを怪我しているのだろう
「…はい、切り傷ができてしまって、少し膿んでしまっていて。」
「じゃあとりあえずきれいにして包帯だけでも巻いておこう」
ズグラを道のわきにあった岩に座らせてちゃっちゃと手当する、うん血はもう完全に止まっているな。けどこれだと歩くとかなり痛いと思う。
「ズグラ!それじゃ歩けないだろう、俺の聖衣の上に乗るといい」
「え、でも聖衣って大切なものじゃ…」
「ダイジョブだ!この聖衣もいつかはお前のものになるんだから問題なし、聖衣も怒らないだろう」
「で、でも…」
「ええぃ!問答無用!」
「え、ちょ、ひょわああぁぁ!」
遠慮するズグラを抱き上げ聖衣の上ににのせる
「ふわぁ…高い…風が気持ちいい…」
ズグラを乗せたまま歩き出す、遮るものもない、さぞ風が気持ちいいだろう。
「乗り心地はどうだ?」
「…バランスが、取れなくて、動けないです…」
「…はははっ!そうか!ぶふっ!」
「わ、笑わないでください!!」
できるだけ振動を出さないように歩き出す、半日もすればズグラも聖衣の上に慣れてきたようで、狭い聖衣の上をうろちょろしている。
足が横に出てきたのでひっぱって肩車にしてやった。なんだか楽しいのでこのまま移動することにした。
「わぁ先生の髪ふわふわですね。触り心地がいいです。」
ズグラは俺の髪を弄っていた。楽しいようで声が弾んでいた。
この日からズグラは毎朝俺の髪を梳かして楽しむことになる。
夜になった、この近くに泊まれるような場所はないので野宿をすることにした。
「先生、野宿ならあっちの少しはいったとこの草陰がいいですあそこなら見えにくいってみんなが言ってます。」
「お?皆って?」
「此処の草木たちです。私はシーファの民なので」
シーファの民とは何だろうか?休む準備をしながら聞いてみる。
「シーファの民はですね、まず外見的特徴として耳が少しとがっています。ほら私の耳も少しとがってます。それから寿命がとても長いのです。ジャミールの民より生きます。」
「ジャミール!今の聖域の教皇はジャミールの方だぞ!」
「そうなのですか!それはとても楽しみです、話には聞いたことはありますがあったことはありません!ほんとに引眉なのですか?」
「あぁ、引眉だぞ、牡羊座の黄金聖闘士もジャミールだぞ。」
「ほんとですか!会うのがとってもたのしみです!、あ、えっとあと足と耳と目が普通の人より良くてですね、人ではないものの声が聞こえます。」
「それは幽霊とかってことか?」
「違います。草木や動物たちです。特に空を羽ばたく鳥たちとは仲が良いです。それが何故かというと私たちシーファの民の小宇宙に関係があってですね。」
それはおそらくズグラの森のような小宇宙のことを言っているのだろう。
「えぇ、その先生の言う森のような小宇宙のことです。シーファの民独特の小宇宙で、シーファの民は生まれながらに、特に訓練することなくその小宇宙だけは発現します。もちろん訓練すればシーファの特殊能力の力は上がりますし、たぶん聖闘士のように戦う力にもなると思います。」
「そうか…その特殊能力ってのはなんだ?」
「回復能力です。自分に使用するより相手に使ったほうが効果のある回復能力です。」
それは…
「そりゃすげぇな!お前!うんうん、育てがいがあるってもんだぜ。」
「ふへへ、ありがとうございます。」
「でもその能力をその傷に使わねぇのか?」
「はい、もう膿んでしまっていますし、このまま治すと膿が中にあるまんまで傷が閉じてしまうかもしれないので」
「そうかそれならしゃーねーな。聖域まで肩車で行こうな!」
「はい!お願いします。肩車はなかなか楽しいです!」
「ん、ん、そりゃぁよかった!」
それからしばらく話をしていたがズグラがうとうとし始めたので寝ることにする。
「おやすみ、ズグラ」
「…はい…おやすみ…なさい…せんせい…」