魅夢の一族   作:あまてら

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描写的に注意。
R18にならないように削ったので短めです。






貫かれたハナゾノ

 

 

「た、たべる?」

 ヒソカに『食べる』と告げられたアリシアはさーっと一気に血の気を引かせ、恐る恐るそれについて訊いた。

「怯える必要はないよ♠︎」

「前にわたしのことは食べないって言った」

「本当にむしゃむしゃとキミを食べるわけじゃないし♥」

「もっとわからないわ……」

 上に覆いかぶさるヒソカはアリシアの両脚を割って入り、形良く並んだ歯をすらりと見せた笑みを浮かべて、アリシアの首筋を指の腹で撫でた。

 不安が押し寄せる。この状況は理解出来なかった。怯えながら小刻みに震えるアリシアの姿は、ヒソカの興奮を高める材料でしかない。

「怖いかい? でも怖がらなくてイイんだよ♠︎ ボクはキミを殺すんじゃない──プレゼント(キミ)が欲しいだけなんだ♥」

 初めて会ったあの日の夜のような狂気を、アリシアはヒソカから感じ取った。

「本当はもう少し我慢する予定だったんだけどさぁ、今日みたいな愉しい試合の後は、本当に我慢出来なくなっちゃうんだよねぇ♦︎」

 ヒソカはアリシアの右手首を掴むと、自身の熱く滾る場所へと持って行く。バスローブ越しから触らされた固い何かは、アリシアの知らない感触であった。

「……ほら、わかるかなァ? さっきからなかなか治まらなくってね♦︎ もうこんなに硬くなっちゃった♥」

「……ヒソカ、手が痛い」

 力を込められ、ヒソカに掴まれている手首が痛む。『離して』とアリシアが言うより先に、ゴンとの試合で見たような禍々しさ溢れるオーラを、 ヒソカは発した。

「ひ……っ!」

 アリシアは恐怖から、ヒソカに掴まれていた手を咄嗟に振り解こうとした。だが、それは叶わなかった。自分を見下ろすヒソカは、まるで自分をタベようとしたあの男達のようにも見える。

「……ボクを殺すかい?」

 アリシアの念の力を知っているヒソカは、アリシアの唇を人差し指で何度か撫でながら問いかける。

「そ、そんなことしないっ。だってヒソカは、わたしのお友達だもの!」

 今にも泣き出しそうな顔で返せば、ヒソカはくつくつと可笑しそうに笑ってアリシアの額に唇を一つ落とした。流れるように次は鼻の頭。鎖骨、最後に右脚を持ち上げ、膝の上辺りをねっとりと嬲り上げる。

 それに合わせていくように段々と動悸が速まっていったアリシアは、次は一体何が起こるのかを純粋に恐れた。森にもいた、蛞蝓(なめくじ)のような舌先で太ももを這われ、アリシアの身体はびくりと大きく震える。『やめて』と震える声で訴えるも、ヒソカは止めてはくれない。寧ろエスカレート。

「こ、──恐い。ヒソカ、わたしにな、何をするの?」

「ンフフ♥ とっても、気持ちイイコト……♥」

 秘部に息がかかった瞬間。アリシアは恐怖に耐え切れずに、ぎゅっと瞳を閉じた。

 それはとても長く感じられた。一体どれくらい続いたのだろうか。ベッドシーツに顔を埋めて横向き体勢のまま、違和感の残る下腹部を押さえてアリシアは咽び泣いていた。

「……う、ううっ」

 先程までのアレは、あの行為は何なのか。恐ろしくてとても痛いあの時間は、全て現実であったのだろうか。

「アリシア」

 ヒソカの手が背後からそっと肩に触れると、アリシアはその身を縮めて小さく震わせた。

「ボクを嫌いになった?」

 声からは、さっきまでの狂気は一切感じられない。アリシアは一瞬間を置いてから、首を横に振った。

「よくボクを殺さなかったね♠︎」

「……だ、だってヒソカは、大切な、お友達……だもの」

 鼻を啜りながら返せば、ヒソカはアリシアの髪を優しく指で梳かし、『痛かっただろ?』と口元を緩ませる。

「止めてくれなかったわ」

「悪かったと思ってるよ♦︎ だけどしょうがないじゃないか♠︎ 一度動き出したら止められないし、それにとっても気持ちが良くってね♥」

「わたしは、痛かったわ!」

 勢いよく上半身だけを起こしてヒソカの方へと体を向けると、アリシアはボロボロと涙を流しながら感情的に怒った。

「苦しくて息も出来なくて! 痛くて、痛くて! ……うぅっ!」

 泣きながら憤激の表情を見せるアリシアに『おやおや』となったヒソカもゆっくりと体を起こし、頬に微笑の皺を寄せて言った。

「ごめんねアリシア、ボクなりに優しくしたつもりなんだけど♣ でもさァ、痛いのは初めだけだから♥」

 満悦らしい笑みを浮かべてヒソカは、怒っているアリシアの頭を撫でた。

「そんな顔のキミもまた……、そそっちゃうんだけど♦︎ くくくっ♥」

 あのオーラが再びヒソカから溢れ出すのを感じ取ったアリシアは、体を強張らせ、流していた涙を一瞬にして引っ込めた。

「──さあ、機嫌を直してボクとシャワーを浴びよう?」

 目の前に差し出されたヒソカの手を見つめて数秒間。少し戸惑いながらもアリシアはその手を取った。

「ンフフ、良い子だね♦︎」

 全てを洗い流してバスルームから出ると、ヒソカからこの部屋を出て行く話と、次に行く場所の話を聞かされた。

「よーくしんしてぃ?」

「そう♣︎」

「"よーくしんしてぃ"で何をするの?」

「実はボクさァ、幻影旅団のメンバーでね……って言ってもキミにはわからないだろうけど、そのメンバーの団長の命令で、ヨークシンシティに行かなきゃいけないんだよねェ♠︎」

 勿論初めて聞いた場所である。だがアリシアは、それ以上ヨークシンについて訊こうとは思わなかった。今は大きな窓から見える夜空の星が、思考を奪っているからだ。

「キミを連れてヨークシンまで行く予定はなかったんだけど、団長がキミも一緒にって♣」

 ヒソカも座っていたソファから移動し、アリシアの隣に立って窓から見える星を見つめた。

「……クロロという人物と、心当たりある?」

「知らない。誰?」

「じゃあ『ミムノイチゾク』ってなんだい?」

 その質問に、アリシアは視線を夜空から隣に立つヒソカへと向ける。

「ミムノイチゾク……」

 

『私とアナタが"ミムノイチゾク"だから』

 

 母親に言い聞かされていた言葉が、久しぶりに頭の中で響いた。

「わからない。だけど、母様がいつも言っていたわ」

 ヒソカから視線をゆっくりと外し、アリシアは暗い顔をして目を伏せた。

「母様とわたしが『ミムノイチゾクだから』って。それ以上は教えてくれなかったの」

「ふぅん……♠︎」

 ますます謎めくその言葉に、ヒソカも少しは気になってきた。だが、『わからない』と言うアリシアにこれ以上質問を続けても、知りたい答えは返ってはこないだろう。それならばアリシアについて詳しく知っているであろう人物に直接訊いたほうが早そうだと、今はこの件を頭の隅に置く事にした。

「──ヒソカ」

 名を呼ばれ、ヒソカはアリシアに目を移す。

「わたし、これからどうなるのかしら?」

 アリシアは森林公園の先に見える、雑居の建物を見つめながら言った。住んでいた森から約束を破って出て来た先は、丁度あの雑居の辺りだった筈。初めは戻ろうとしたのに、『二度と戻れないだろう』と言われてしまってからは、あの場所に近付く事も出来なかった。

 本当は戻りたいと思っていたあの気持ちも、ヒトと関わってしまった今では完全に薄れ、寧ろ戻りたくなくて近付かないようになっていた。この場所を離れたら、きっともう二度とあの森には戻れないだろうと、何故かアリシアは思った。

「さあ、それはわからない♣︎ ……でも、今はボクと楽しい時間を過ごせる♠︎ これからもね♦︎」

 アリシアがヒソカを見上げると、いつもと変わらない微笑みがそこにあった。

「一緒にトランプタワーで競争しようか♦︎」

「……ええ。そうね」

 ──ごめんなさい、母様。

 約束を破って森を出てしまった事、もうあの森には帰らない事を決心しながら、アリシアは心の中で母親に謝った。

 

 

 

 

 

 

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