魅夢の一族   作:あまてら

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沿いながらも必要なので、少しだけ変わってる







キケンな博打

 

 

 

 クロロ達が仮宿に戻ってからも不機嫌だったノブナガは、日が昇り明るくなっても、未だ不機嫌のままだった。

「どーいうことだ? 引き上げるってのはよ」

 ひとりクロロの前に立つノブナガが言った。

「言葉の通りだ。今夜ここを発つ」

 仮宿で祝杯を上げてから暫く経った後、クロロは『ここを引き上げる』と皆に告げたのである。

「鎖野郎が残ってる」

 ノブナガは納得しなかった。

「こだわるんだな」

「ああ、こだわるね。」

 ウボォーギンの仇を討つまでは、鎖野郎を探し出して八つ裂きにするまでは引かない。ノブナガの決意は固かった。

「ノブナガ、いい加減にしねぇか。団長命令だぞ!」

 黙って聞いていたフランクリンは、遂に口を出した。

「本当にそりゃあ、団長としての命令か? クロロよ」

 ノブナガはフランクリンを無視し、クロロをじっと見据えている。クロロもそんなノブナガを見つめ返し、過去の記憶を思い起こしていた。

「ノブナガ──」

 クロロは瞬きと共に右手にオーラを発し、本を出現させた。

「オレの質問に答えろ」

「はあ?」

 唐突でよくわからぬままにクロロから質問を受けたノブナガは、生年月日と血液型、フルネームを答え、渡された紙にそれらを書いた。

 クロロはその紙を見つめ、今度は左手に不気味なモノが薄っすらと憑いたペンを出すと、取り憑かれたように何かを紙に書き出していた。

 

 

  大切な暦が一部欠けて

  遺された月達は盛大に(とむら)うだろう

  加わり損ねた睦月は一人で

  霜月の影を追い続ける

 

  菊が葉もろとも()れ落ちて

  血塗られた緋の眼の地に臥す傍らで

  それでも蜘蛛は止まらない

  遺る手足が半分になろうとも

 

 

「詩の形を借りた、100%当たる予知能力を持った女から盗んだ。今回、オレ達がマフィアの競売を襲う事も、その女に予言されていた。十老頭にファンがいたらしい」

 『女』とは、ノストラード(ファミリー)のボスの娘の事である。

 クロロは "天使の自働筆記(ラブリーゴーストライター)" という特質系の能力を、盗賊の極意(スキルハンター)を使って手に入れていた。

 能力によって紙に書かれたのは、今月の週毎に起きる、ノブナガの運命の予言だった。

「どうなんだ、ノブナガ?」

 自動書記の為、クロロには占いの内容がわからない。シャルナークは直接ノブナガに訊いた。

「来週、……おそらく五人死ぬ」

 ノブナガは書かれた予言の紙をじっと見つめながら答えると、予言も自ら皆に伝えた。

「他の事は何だかさっぱりわからねェが、蜘蛛の手足ってのがオレ達団員の事だろうから、半分て事は、ウボォーの他五人て事だろう?」

「オレの占いにも同じように出ていた。多分、他の団員を占っても、同じような結果が出るだろう」

 クロロが予言された自分の紙を順番に回し見させると、黙って聞いていたシズクが口を開く。

「ちょっとあたしを占ってみて下さい」

 

 

  大切な暦が一部欠けて

  遺された月達は盛大に葬うだろう

  あなたは仲間と墓標に血をそえる

  霜月が寂しくないようにと

 

  黒い商品ばかりの収納場(しのば)

  あなたは永い眠りを強いられる

  何よりも孤独を恐れなさい

  二人きり程怖いものないのだから

 

 

「来週死ぬの、あたしだ」

 そう言うも、表情に変化は無い。シズクの占いには2周目までしかなかった。

「後ね、パクノダとシャルナークも死ぬよ」

 ノブナガが『何でわかる?』と問えば、暦の月が団員の番号を表してるみたいだとシズクは答えた。

 霜月は11月。ウボォーギンの団員番号である。菊が菊月で9月、葉が葉月で8月。涸れるが水無月で6月をそれぞれ暗示しており、涸れ落ちるが枯れ落ちると掛かり、まるで死を示していた。

「緋の眼はオレ達の誰か、じゃない」

「十中八九、鎖野郎の事だろう」

 フィンクスの後にクロロが言う。

「緋の眼……、思い出した。目が赤くなる連中ね」

「あの時の生き残りがいたという事か」

「そいつも死ぬって?」

 パクノダとフェイタンの後にボノレノフが続けると、フィンクスは横に寝転んで肘をついたままの体勢で、『わからんぜ、血だらけで地に臥してるってだけじゃあ』と鼻で笑いながら言った。

「これでわかっただろ? ノブナガ。このまま鎖野郎と闘り合うと被害が大きい、戦力半減だよ?」

「だけどよぉ……」

「オレやノブナガの能力はいくらでも代わりが利くけど、シズクとパクノダはレアなんだ。旅団として失うわけにはいかない」

 シャルナークの言う事は勿論わかっていた。だがノブナガは、どうしても鎖使いを諦めたくなかった。

「今日が9月の第一周目の土曜日。今日中に本拠地(ホーム)に戻れば、来週鎖野郎に会う事はまずないだろう」

 悪い予言を回避するチャンスが与えられている所が、この予知能力の最大の利点である。クロロ達がこの地を離れて、鎖野郎と戦いさえしなければ、逆に100%この予言は成就しない。

「ノブナガ」

 クロロは更に続けた。

「お前やウボォーは特攻だ。死ぬのも仕事の一つに含まれる。お前らすすんで捨て石になる事を選んだんじゃなかったか」

 ──そうだ。ノブナガの視線は、クロロから地面へと移っていた。

「シズク、パク、シャルは主に情報処理部隊。オレ達全身の行動を補佐する生命線だ。こいつらの盾になって守るのが、お前の役目じゃないのか、違うか? 旅団の立場を忘れて駄々をこねてんのは、オレとお前どっちだ? 何か言う事はあるか?」

 諭すクロロにこれ以上何も返せないノブナガは、半ば諦めたような声で『ねェよ』と答えるしかなかった。

 外は雨が降り出し、近くで雷の轟音が響いていた。

 本を読んでいたアリシアは、クロロやノブナガの話を途切れ途切れでしか聞いておらず、内容にはあまり興味を示さなかった。

 それよりも外の雷に気を取られ、大きな雷が鳴る度に、びくりと身体を震わせていた。

 そんなアリシアの斜め後ろに座るヒソカは、携帯電話をいじりながら誰かに向けてメールを送っていた。

 ──送信、と♥

 送り終わったヒソカの口角はニタリとつり上がり、視線をクロロへと向ける。

 これから残りのメンバーも占うと言って、クロロは団員達に紙を回し配った。

「そこにはシズクのように、危険回避の助言が出ているかもしれない」

 それぞれに名前と生年月日、血液型を書かせた。しかし、それらがどうしても不明な者は仕方なく省かれた。最後に自分も占ってくれるのだろうかと、雷から占いに興味を惹かれたアリシアも同じく、生年月日や血液型が不明の為に諦めるしかなかった。

 

 

  赤目の客が貴方の店を訪れる

  半身は天使で半身は死神

  月達の秘密を売るといいだろう

  霜月のそれが特に喜ばれるはずだ

 

  熱い日に件の客の仲介で

  逆十字の男と2人きりになれるだろう

  偽りの卯月は暦からはがされる

  これで残りは6枚となる

 

  片眼の熊の手招きで

  大事な箱から夜空の星が飛び出すだろう

  誘いの糸を切ってはいけない

  伝えば逢瀬が叶うから

 

 

 回ってきた順番で占いの結果を見ていたヒソカのもとに、パクノダがやって来た。

「どんな占いが出たの? 見せて」

 パクノダの声で、皆が一斉にヒソカへと注目する。

「やめた方がいい♣︎ 見たら驚くよ?」

「いいから」

 ヒソカは『ハイハイ♦︎』と、あっさり結果の紙をパクノダに差し出した。

 パクノダがそれを読む間、ヒソカはトランプを切って一枚だけを選んで目にする。──鎌を持った骸骨のジョーカーだった。

「ねえ! ちょっとみんなも見て」

 内容に驚いたパクノダがフランクリンにそれを渡すと、周囲にいた団員らが集まって来た。

 

 

  赤目の客が貴方の店を訪れて

  貴方に物々交換を持ちかける

  客は掟の剣を貴方に差し出して

  月達の秘密を攫って行くだろう

 

  11本足の蜘蛛が懐郷病(かいきょうびょう)に罹り

  さらに5本の足を失うだろう

  仮宿から出てはいけない

  貴方もその足の1本なのだから

 

 

 パクノダや他の団員が見ている結果は、先程とは違うものになっていた。それは皆が気付かぬ間に、ヒソカが瞬時に自身の能力である、薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)を使って内容を改ざんしていたからだった。

「見せろ!」

 ノブナガは読んでいたシャルナークから無理矢理奪うと、変えられたとも知らない結果を目にした。

「ヒソカ……」

 ピリリとした不穏な空気を醸し出し、ノブナガは高い場所に座るヒソカを睨み上げる。

 ヒソカの近くにいたアリシアは、流石にこの状況には雷よりも気になって、ノブナガとヒソカを交互に見ていた。

「てめェが売ったのか? ウボォーを」

 腰に差していた刀の鞘を、ノブナガは抜いた。

「イエスと取るぜ!!」

 何も答えずに再度トランプを一枚だけ引くヒソカに対し、ノブナガは動こうとした──が、それは前に出たフランクリンとシャルナークによって止められた。

「どけ!」

「まあ待てよ。話を訊いてからだ」

「話? 何もねェな。コイツがウボォーを赤目の客に売ったって、はっきり出てるじゃねーか!」

「落ち着きなよ。これは予言だから、行動によっては回避出来るって団長が言ってたろ」

「ヒソカ、今週何があったか説明しろ」

 フランクリンが代わりに問いかけると、ヒソカは『言えない♠︎』と答えた。

「だが……、そこにある一つ目の詩の内容は、事実だったと言っておこう♦︎」

「聞いたろ、どけ!!」

「まあ、待てって」

「何故言えない?」

 今度はシャルナークが問う。

 しかし、それでもヒソカは答えない。

「言わないんじゃなく、言えない♠︎ ボクがギリギリ言えるのはそこまでだ♣︎ それで納得出来ないなら──」

 ヒソカはその場でゆっくりと立ち上がった。

「──ボクもボクを守る為、戦わざるを得ないなぁ……♦︎」

 ノブナガとヒソカ、2人の間に流れるのは、異様な緊迫感だった。

「……チッ、止めとくぜ。てめェは戦り辛ェからな────」

 軽く溜息を吐いたノブナガは、鞘に刀を戻した。

「──っなわけねェだろボケェェ!!」

 ノブナガは皆の不意を突き、ヒソカに襲いかかろうと動いたのである。

 ──危ない!

 アリシアは迫ってくるノブナガに対して強い殺気を感じ、驚きのあまり弾ける赤い風船(ブラッドバルーン)を使いそうになった。

 だが次の瞬間。ヒソカの前に来る筈であったノブナガが、全く別の方へと移動していたのだ。

「ノブナガ、少し黙れ」

 黙って聞いていたクロロが静かに口を開く。

 ノブナガを瞬時に移動させたのは、クロロの能力であった。

 その能力を皆が初めて知り、一体どんな能力で、どう使ったのかさえわからなかった。

「ヒソカ。いくつか質問する。答えられないものは『言えない』で良い」

 クロロはヒソカに質問を投げた。

「攫われた秘密というのは、何の事だ?」

「団員の能力♦︎」

「それは何人だ?」

「七人……いや、八人か♣︎ 団長にウボォーギン、シズク、マチ、フランクリンとパクノダ、シャルナークにボクで八人だ♣︎」

 次にクロロは相手の能力、形貌、ヒソカと相手との関係を訊いたが、どれも『言えない♠︎』の一点張り。

「赤目の客……鎖野郎は、最低でも二つの能力を有する敵だ。一つはウボォーを捕らえた時の能力、もう一つはヒソカの言動を縛っている能力」

 後者の能力が【掟の剣】という表現から察すれば、相手に何らかのルールを強いるものである。

 鎖使いがヒソカに与えた"(ルール)"が、『オレに嘘を吐くな』と『オレに関して一切説明するな』だとクロロは推測し、考えを述べていった。

「ここからは更に想像に依るが、ヒソカの体内には敵が仕掛けた何か、が埋まっている」

 【物々交換】で【差し出す】とあるにもかかわらず、【攫う】のでは前後の文意が食い違ってくる。

 【掟の剣】がヒソカを攻撃するという予言を暗示させる為、差し出すと刺し出すを掛けたものであると、クロロは思った。

「その剣でヒソカの言動を規制している。具現化系か操作系かは断定できないが、何か、かなり強制力の大きな能力とみている」

 ちょっと整理してみよう。シャルナークが言った。

「鎖の使い手となると、操作系なら実物の鎖を使い、ウボォーを倒した。具現化なら念で作った鎖を使ってウボォーを倒した」

「それって何か違いあるの?」

 シズクの質問に、シャルナークは『大アリさ』と答えた。具現化なら、手ぶらを装う事が出来るからだ。

 操作系は人や物体を媒介しなければ力を発揮出来ないので、常に武器は手放せない。特に物体操作の場合、使い込んだモノでないと威力、制度が上昇しない事が多い。

「……つまり、愛用品を失くしたら致命的って、リスクがある」

「そっか、具現化はイメージ修行が大変だけど、一度具現化出来ちゃえば出し入れ自由だもんね」

「しかし、具現化した鎖で本当にウボォーの馬鹿力を押さえ込めるもんなのか?」

 次はフィンクスが質問した。

「可能だよ。捕らえた瞬間に、相手を麻痺させたり眠らせたり出来る鎖を具現化すれば良い。ちょっと難しい制約を付ければ出来る筈」

 それより問題は、ヒソカを縛っている力だ。

「……掟の剣って言うんだから、何かを守らせるんだろ?」

「そう、それが団長の挙げた2つの命令である可能性は高い。後は、鎖野郎への『攻撃不可』とかあるかもね。確認は出来ないけど、多分、約束を破ったら死ぬって事だと思うよ」

 鎖使いについての話がまとめられようとしている中で、ヒソカだけは心の中でほくそ笑んでいた。それは、ヒソカの体内に掟の剣など刺さっていないからだ。

 しかも、皆が見たヒソカの予言が、ヒソカの能力で上貼りされた創作であると、クロロでさえ気付いてはいない。唯一真実なのは、団員の能力を鎖使いに話したという一点だけ。

 しかも八人ではなく二人、ウボォーギンとシズクの能力のみ。ヒソカは団員個々の能力全てを知っているわけではない。

 パクノダの場合は対象に触れ、そこに残る記憶を探る特質系であるという事だけしか知らない。

 他の団員達も、同じようにそれぞれ切り札を隠し持っている。実践経験の中で自分自身の情報が漏れる事は、即、"死"に繋がるという事を知っているからだ。

 ヒソカも例外に非ず。薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)を知るのは、団員の中でマチのみ。

 だがマチは、ヒソカの能力を真に理解出来てはいない。

 体を保護や装飾するものだとしか解釈していないが、実際ヒソカの能力で平面上に再現出来る質感は、軽く千を超える。

 ヒソカは賭けをした。旅団全員を敵に回し、命さえ落としかねなかった危険な賭けを。

 全ては旅団(クモ)をヨークシンに留まらせ、クロロと戦う為であった。それは正に執念。

「ボクは此処に残るよ♥ 死ぬ前にやりたい事があるんでね♥ 仮宿は離れない♦︎」

「……団長」

 ヒソカが告げた後、シャルナークがクロロに『退くか残るか』を問うた。

「──残ろう」

 クロロは少しの間を置いて答えた。

 

 

 

  黒い商品ばかりの収納場で

  貴方は永い眠りを強いられる

  何よりも孤独を恐れなさい

  2人きり程怖いものはないのだから

 

 

  暗くてわずかに明るい日

  貴方は狭い個室で二択を迫られる

  誇りか裏切りかしか答えはないだろう

  死神が貴方の側に佇む限り

 

 

  電話を掛けてはいけない

  一番大事な時につながらないから

  電話に出るのもすすめない

  3回に一度は死神につながるから

 

 

  11本足の蜘蛛が懐郷病に(かか)

  さらに5本の足を失うだろう

  仮宿から出てはいけない

  貴方もその足の1本なのだから

 

 

 順番にシズク、パクノダ、シャルナーク、ヒソカ。死の予言が出た者達だ。

「それじゃあ班を決める。 来週はこの班を基本に動き、単独行動は絶対に避ける事」

 先ず、シズクにパクノダとマチ。データ不足のコルトピとフィンクスにフェイタン。ノブナガとシャルナークにクロロ。そしてボノレノフとフランクリン、ヒソカは待機という班で決まった。

 アリシアは勿論、仮宿でおとなしく待機である。

「団長、一つ良い?」

 思い出したかのようにマチが言った。

「子供がさぁ、此処の場所知ってんだけど。まあ、鎖野郎とは関係ないみたいなんだけど。やっぱりどうも気になるのよね」

「子供?」

 マチが言っていた子供というのは、ゴンとキルアの事である。

「あ! そうだ忘れてた、団長!!」

 ノブナガも二人を思い出したらしく、声を上げて若干興奮気味に話に入って来た。

「そいつの入団を推薦するぜ!」

「ちょっと! こっちはそんなつもりで話をしてんじゃないよ!」

 マチとノブナガは、クロロにゴンとキルアの話を、粗方説明した。

「なる程、確かに面白そうな奴ではある。……だが、話を聞く限りそいつは旅団には入らないだろう」

「説得するさ!」

 ノブナガは特にゴンを気に入ったらしく、『なんとしても連れて来るから、兎に角見てくれ』とクロロに頼んだ。

「……うむ」

「団長!」

「──で、マチ。お前が気になる事とは?」

「あ、え──と、何となく……な、だけなんだけど」

「勘か?」

 マチの勘はよく当たり、とても頼りになるものだった。

「その子供、もしかしたら何か重大な繋がりがあるかもしれないな」

 用心の為にアジトのダミーを増やしておくべきかと、クロロはコルトピに棟を増やさせた。

 コルトピのコピーする能力は"円"の役割も果たし、(にせ)のアジトのどれかに誰かが進入すれば、コルトピ本人に直ぐにわかるようになっている。

「全員で最終的な確認をしておこう」

 クロロは、先ずシャルナークの名を呼んだ。

「ウボォーから聞いた鎖野郎の情報ってのは、前に話した分だけなんだな?」

 シャルナークは頷くと、ウボォーギンと一緒にハンターサイトでノストラード(ファミリー)の構成員の顔写真を、片っ端から調べていた事を話した。

「その時ウボォーが『こいつらだ!』と言ったのが、この写真の中の上段3人」

 シャルナークは自分で用意していた構成員の顔写真リストの三人を指差した。

「ウボォーは奴等の宿泊場所がわかった時点で行っちゃったけど、オレはその後も少し調べてみて、こいつらが娘のボディーガードだって事がわかったんだ」

「それが一日の深夜だな。オレも昨日、そのサイトを調べてみた」

 クロロはノストラード組のボスの娘の写真を、順番に回して見せた。

「そしてこっちが、オレが調べた時のボディーガードの顔写真リスト。更に二人加わっている」

「もう新しい情報に変わってたの?」

 新たな顔写真リストにシャルナークは勿論、フィンクスとフランクリンも食い入るように見つめた。

「これを調べてから一日近く経っている。シャル、後でもう一度このサイトを確認してみてくれ」

「了解」

「ボディーガード、七人もしくはそれ以上……か。娘っ子一人に大層なこったな」

「親バカなんだろ」

 新しい顔写真リストを見ながら、フランクリンとフィンクスが言った。

「娘自身より、その能力の方が大事らしい」

 クロロの情報によれば、父親は娘の占いで現在の地位を築き、それを面白く思ってない連中も多かったという。

「でもなんでこのコ、ヨークシンに来たのかな?」

 回って来た娘の写真を見つめたシズクに、パクノダは『そりゃあ、オークションなんじゃない?』と返した。

 ──そうか。

 二人の言葉に、クロロは直感した。

「シズク、パクノダ」

「はい?」

「ナイスだ」

 唐突過ぎて意味がわからないと言った顔を、パクノダとシズクは向け、クロロは独り言のように何かを呟いている。

「──何故、ボスの娘はヨークシンに来たか? そこにオレが気付いていれば、もっと早く鎖野郎に辿り着いていた……!」

 ボスの娘がボディーガード付きでヨークシンに来た目的、それはオークションである。

 だが、占いの能力ばかりに気を取られて重要視してはいなかったが、クロロが見たサイトの情報では、娘には人体収集家という、もう一つの顔があった。

「人体……! 緋の眼か!」

 鎖使いがノストラード組に入ったのは、偶然なのではない。

 今回の地下競売に緋の眼が出品される事と、それをノストラードの娘が狙っているという事を予め突き止めていたとすれば、鎖使いの目的は二つ。

「オレ達への復讐と、仲間の眼の奪還」

 クロロはシャルナークに、競売品の中に緋の眼があったかどうかを訊いた。

「ごめんわかんない。競売の最中は、進行役を自動操作してたから」

 すると後ろにいたコルトピが、『あったよ。確か、コピーした』と言った。

「お前のコピー、"円"の効果があると言ったな。緋の眼のコピーが今どこにあるのかわかるか?」

「本物を触れば、ね」

 奪った宝の中を探し、漸くシズクが緋の眼を発見した。

「同じ形のものは、あっちの方角……。だいたい、5500m」

 能力を使ってコピーの場所を特定したコルトピが、ある方向を指差した。

「急いだ方が良いよ。コピーしたの昨日の夜だから、後数時間で消えちゃうから」

 クロロはフィンクスから地図を受け取り、コルトピのコピーの場所を割り出していた。仮宿から約5500。そこは、ホテルベーチタクル。

「団長、オレに行かせてくれ」

 今のノブナガの表情からは先程までの、ただ怒りに任せて必死だった時の様子は無い。クロロはノブナガを見据え、それを承諾した。

「その代わり、オレと一緒だ。単独行動は許さない」

「了解!!」

「パク、マチ、シズク。お前達も一緒に来い。メンバー交代。シャル、コルトピと代われ」

「OK」

 こうして、クロロ、パクノダ、マチ、シズク、ノブナガ、コルトピの六名は、ベーチタクルホテルへ向けて行動を開始する。

「クロロ」

 仮宿の建物からクロロが出る寸前、アリシアは声をかけて手を振った。

「いってらっしゃい」

 アリシアの声に振り向いたその一瞬、クロロの唇が微笑を浮かべたように見えた。その視線はアリシアを捉え、そして背後のヒソカへと移してから、クロロは踵を返して行った。

「団長とも仲良くなったんだね♦︎」

 ベーチタクルホテルへと向かったクロロ達から向き直れば、いつもと同じようでどこか違う笑顔のヒソカが言った。

「クロロがね、わたしに本をプレゼントしてくれたのよ」

 アリシアは、クロロから貰ったその本を抱き締めて見せた。

「へぇ♣︎ 団長が、ねえ♦︎」

 大事そうに本抱き締めるアリシアからは、甘い香りが漂って来る。

 ──そんなにアリシアが欲しいかい?

 先程の目を合わせたクロロが脳裏をかすめる。その眼はアリシア(獲物)を欲する眼差しだった。

 ──本当にイイ目だった……♥

 下半身を熱く滾らせながら、ヒソカはクロロとの闘いを心から待ち遠しく思うのだった。

 

 

 

 外は未だ雨が降り続いている。

 クロロ達はコンチネンタル通りを西へと進み、中心街を目指して、渋滞を避ける為に電車に乗り込む。途中、目的地に近いリパ駅で降りた。

「動いてる……! 下にゆっくり降りてる」

 能力によって反応し、察知したコルトピが言った。コピーの緋の眼を持った何者かは、どうやらエレベーターで降りているらしい。

「これから全員で捕獲にかかる。お互いにお互いをフォロー出来る間合いを保て。パクノダ、敵を捕まえたらウボォーの事を訊き出せ」

「了解」

「その後はノブナガ、お前の好きにして良い」

 クロロの『Go』という掛け声と共に、六人は全員その場から一斉に駆け出した。

「2時の方向、時速50km程で移動中」

 車に乗ったのか。逃げられる前に捕まえなければ。よりスピードを上げて走っていると、何者かが背後から追って来るのを、クロロは感じ取った。

 ──尾けられている。

「追うのに夢中で気付かなかった」

 漸く気付いたマチとシズクは、後ろを意識しながら走った。

「前と後ろ、どっちが鎖野郎だ!?」

 舌打ちをしたノブナガがクロロの隣を走り、次の命令を待った。

「団長!」

「ノブナガ、パクノダ、コルトピは前を追え!」

「了解!」

 命令に従った三人は前方へと走り、残ったクロロとマチ、シズクは、不意を突くように体勢を後ろへと向き直った。

「見えたか?」

 シズクが見たのは路地に隠れた影のみ。マチはゴミ箱の後ろに隠れた何者かの姿を捉えていた。

「"凝"を怠るな」

「了解」

 警戒を強めたクロロ達は"凝"を使用し、沈黙のままに様子を見て待った。すると──。

「ごめんなさい! もう追っかけないから、許して下さい!!」

 ゴミ箱の後ろから両手を上げて出て来たのは、ゴンであった。

「またこの子?」

「こいつか、例の子供は」

 マチは路地の方向を見つめながら、『出てきな』と相手に呼びかける。すると、その呼びかけに応じたキルアが路地からゆっくりと現れた。

「何の用だ? もうあたしらに賞金懸けてるマフィアはいないよ」

「え、ホント!? どうして?」

 銀髪の少年、キルアが問う。

「どうする、団長?」

「捕まえろ」

 瞬時でゴンとキルアの背後を取り、マチは自らの念糸で2人を拘束した。

 そしてクロロはコートからケータイを取り出し、仮宿で連絡を待つフィンクスへと電話をかけた。

「……フィンクスか、オレだ。ベーチタクルホテルまで来てくれ」

 一方でノブナガとパクノダ、コルトピの三人は、鎖使いのデータを引き出せる事に成功していた。

「こっちはスクワラって男だった。ウボォーのその後はわからないままだったけど、鎖野郎の名前と顔はわかったわ。……能力は、まだ不明」

『わかった。ベーチタクルホテルのロビーで待つ』

 クロロへの電話を切ったパクノダは、ノブナガとコルトピと共に、ベーチタクルホテルへと向かうスピードを速めるのであった。

 

 

 

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