笑顔のウラガワ
ヒソカは、クロロの依頼で"
自ら交渉を経て、高額の報酬を条件に応じた除念師、アベンガネと共に、"G・I"から現実の世界へ戻ったヒソカは、クロロの待つ指定場所へと足を進めていた。
──早く、クロロと
一歩、一歩と進む度にその想いを強めていったヒソカは、ここに至る前の事を頭の中で振り返る。
それは、クロロからの依頼の真相を確かめる為、指定された酒場に出向いた時だった。
「──除念師?」
「そうだ。能力で封じられた念をもう一度使えるようにするには、貴重な除念師が必要になる。そこいらの半端な奴ではなく、優秀な奴をな」
他に誰もいなくなった酒場のカウンター席で、グラスの中の溶けかけたアイスボールを見つめたまま、クロロは更に言葉を続ける。
「オレの占いによれば、除念師は"G・I"に必ずいる。だが、このゲームは念能力者にしかプレイできない」
「……で、ボクが行って、除念師を連れて来ればイイんだ?」
頷くクロロを横目に、残り少なくなったグラスの中身を、ヒソカはごくりと飲み干した。
「報酬が除念後のオレとタイマンなら、お前も文句ない筈だろ?」
「まぁ、……そうだね♠︎ オーケー。それ、受けるよ♥」
先ずはどうすれば良いのか。それを問うヒソカに対し"G・I"に行く為に必要なものは既に揃えてあると、クロロは言う。
「じゃあ、善は急げって事で♦︎」
ヒソカが先に席を立とうとすれば、『訊きたい事がある』そう言ってクロロに呼び止められた。
「何? ボクはいつでも行けるんだけど?」
「……アリシアはどうしてる?」
クロロを真っ直ぐと目で捉えながら、ヒソカがほくそ笑んだ。
「ふぅん、諦めてなかったんだ……♣︎ 元気だよ、
「……そうか」
諦めてなどいない。含み笑いを浮かべるクロロから目線を離したヒソカも、丁度今気になっている事を質問した。
「あそうだ、キミにこういう質問するのもアレなんだけどさァ、──アリシア以外とヤれなくなったのって、魅夢の一族が関係してる?」
アリシアと躰を合わせてからというもの、男女関係なくいざそういう時にだけ、何故か勃たなくなってしまったのである。
「本当に、そういう時に
これがイルミ相手に告げたのなら、『笑った方が良い?』と返ってくるであろう。しかしクロロは違う。
「魅夢の一族を手にするにもリスクはある。肉を喰らった時と同様に起こる症状のようなもの。他の食べ物が受付なくなったんだ。つまりそれは、……副作用だ。」
──真面目か。
「副作用? ボクさぁ、取り扱い説明書読むの苦手なんだよねぇ♣︎」
クロロへジト目を向けたヒソカは、席を立ちながら溜め息交じりに言った。
「お前に一つ言っておこう。アリシアを、あまりひとりで置いておかない方が良い」
一脈の微笑と共に遅れて席を立ったクロロは、ヒソカの横を通り過ぎて店のドアの前まで先に歩くと、端然とした声で告げる。
「オレは、欲しいものは必ず手に入れる」
……ざわり、ヒソカの胸の奥底から、何かが
──ボクから奪うつもりなんだろうけど。
アリシアを見つめた時のクロロを思い起こせばヒソカの心臓は
「あの
……絶対に、あーげない。舌先で下唇をぺろりとひと舐めし、ヒソカは言葉を漏らした。
「お、おい……! 本当に大丈夫なんだろうな? 除念した途端に用済みで……なんてのは無しだぞ!」
後ろを付いて歩いていたアベンガネは、禍々しいオーラを発してしまっているヒソカを警戒し、眉間に縦皺を作りながら問いかける。
「大丈夫だよ♠︎ 除念師は貴重だからねェ、用済みなんかで消したりしないし、ちゃあんと報酬も払うんだしさぁ……♦︎」
安心しなよ。立ち止まってくるりと振り向いたヒソカからはもう、発していたオーラは消え失せていた。
「だったら、いい……。さっさと依頼主のところへ急ごう」
薄気味悪い奴だ。ヒソカと目を逸らしたアベンガネは、足早に先を歩く。
「はいはい……♠︎」
自分より先に前に出たアベンガネの背を見やりながら、ヒソカは微かに笑うように頬を動かして言った。
「そこ、右ね♠︎」
──某日。ヨークシンシティで、最も名の知れたサザンピースに、奇妙な生物の一部が持ち込まれた。
条例に触れる未登録生物の疑いがある為、リストには載せられず、公共機関にタダ同然で持っていかれる位ならと、許可証を持つハンターを限定に、裏で取引きが行われていた。
この生物の一部というものは、一見して昆虫の足に非常に似ている。
しかし、大きさがあり得ない。他の昆虫には無い特徴として、普通なら鉤爪は2本だが、これは6本もある。まるで、人間の指のようだった。
一部を買い取り調べた者達の結果によれば、この奇妙な生物は、『キメラアントの女王蟻』と酷似しているという。
キメラアントとは、第一級隔離指定種に認定されている、
非常に危険で貪欲。旺盛な食欲。摂食交配という特殊な産卵形態をとる虫で、個体によっては好き嫌いが全く違い、別名『グルメアント』とも言う。
だが、従来のキメラアントの女王蟻は、10㎝程度のサイズであるのに対し、今回持ち込まれた奇妙な生物の大きさが、2m以上あると推測され、急遽、本体の回収が急がれた。
それは、体長2mもある女王蟻が人間をターゲットにした場合、必ず村や町単位の集団失踪事件が起きる事を、危惧されたからであった。
ハンター
二人で住むには少し狭かった家の中を改造したり、試験前に暮らした日々と同じような時間を過ごして、早四ヶ月。
「あったぞ二冊目!」
パソコンのモニター画面を指差して、ハールが声を上げた。
「本当?」
「ああ、間違いない」
ハールの隣に駆け寄り、モニター画面を見つめるアリシアの瞳は、感動と喜びに輝いている。
実はアリシアの大事にしている本が、三部作で構成された小説であるという事がわかった。
アリシアは読むのに時間をかけていた。途中で繰り返しをし、先日やっと読み終えると、この本に初めて続きがあるのに気付いたのだ。
ハールにその事を伝え、代わりに調べてもらうと、この小説が発刊されたのは1990年。もともと発行部数が少なかったらしく、現在は三部作とも絶版されているという。
一作目は出回っている事も極たまにあるらしいが、二部、三部はレア扱い。探してもなかなか見つかりはしない。
レアとしての価値が上がったのは、三部作を書き終えた作者が謎の失踪を遂げ、曰く付きの作品として今も一部のコレクターに人気があるからである。
続きをどうしても読みたくなったアリシアは、電脳ページの情報を頼りに、残りの二冊をハールに協力してもらいながら探していた。
そして今回見つけた情報によれば、ヨークシンシティで年に二回行われている、『
「行ったら買えるかしら?」
「どうだろうな。五日後だから、今から準備してヨークシンシティに向かおう」
こうしてアリシアは、心配だから付いて行くと言うハールと一緒に、再びヨークシンシティへと向かった。
「ヨークシンの街の中って、とても賑やかなのね」
リンゴーン空港から車で直行し、久しぶりのヨークシンに立つ。以前は廃墟の仮宿で留まっていた為に、街の中に実際足を踏み入れるのは初めてである。
「ほら、あっちだ」
人集りがある先に目を移せば、大きな高いビルの建物に、『古本屋祭』と垂れ幕が掲げられているのが見えた。
老舗なだけあって、建物の造りも歴史を感じさせる古さが伺える。
以外にも驚いたのが人の多さ。なんと世界中から、本好きのコレクターが掘り出し物を求めてやって来るらしい。
「いらっしゃいませ! 何かお探しですか?」
特選古書即売のコーナーでうろつくアリシアとハールの元に、店の主人が声をかけて来た。
「この本の続きを探しているの」
アリシアは店主に例の本を尋ねながら、自分の大事にしている本を差し出して見せる。
「おや、これはこれは。珍しいのお持ちで」
店主はアリシアが持つ本を珍しそうに見つめながら、『そういえば……』と申し訳なさそうな顔をして告げた。
「あなた方が来る前に、もう出ちゃいまして……」
どうやら一足遅かったらしい。レア品の為、一冊限定だったその本は、アリシアとハールが来る10分程前に売れてしまったそうだ。
「残念だったな」
「……ええ」
古本屋から出て来たアリシアは、しょんぼりと肩を落としていた。
「仕方ないさ、あんた以外にも欲しかった奴がいたって事だ。また探して見つければ良い」
「そうね、そうするわ」
売れてしまったものは忘れ、次を探そう。ハールの言葉に少しだけ気を取り直し、アリシアは笑みを浮かべる。
「折角ヨークシンまで来たんだ。買い物したり、何か食べたりしよう」
何もしないで帰るよりかは、色々楽しんで帰ろう。ハールの提案に乗ったアリシアは先ず、ファッション系の店が連なる通りに向かった。
流石、お洒落で華やかな街である。ショーウィンドウに飾られた衣服は、どれもこれもセンスが良い。
「その店にするか? じゃあ俺は向かいの店に入るから、終わったら連絡をくれ」
「わかったわ」
ハールと一旦別れたアリシアは、一番初めに気になったロリータファッションショップに入り、甘ロリやゴスロリ、クラシカル系などを何点か選んで購入する。
以前は買い方さえもわからなかったのに、ハールにお金のやり取りを改めて学んでからは、一人で店の中に入るのにも緊張しなくなった。
店の外に出たアリシアは、商品の入った紙袋を両手一杯に持ち、合わせて買った装飾品や靴の箱を地面に置いて、これらをどうやって一人で持って行こうかと考える。
──クローゼットに入るかしら?
一緒に住む際に用意してくれた、アリシアの部屋のクローゼットの中は、真新しい服や靴で溢れかけていた。
こうやって大量に購入するのだから、溢れてしまうのだが……。
実はアリシアは、ヒソカからプレゼントされていた服や装飾品などを、つい最近まで使い捨てにしていたのだ。その原因は、勿論ヒソカにある。
アリシアの為に何百着も用意し、毎日新しいものを着せ替え人形のように着用させていたヒソカは、一度でも袖を通した服は全て処分。着るのも許さない。
森で暮らしていた時は、そんな事を一切してはいなかったのだが、ヒソカにそうやって教えられて過ごすうちに、『服は使い捨て』という、一般常識からズレた認識を持つようになってしまっていた。
ハールに指摘された今では、『ベルはそんな事をしない』と肝に銘じ、使い捨てはしていない。ただ、何度も着ようとは思えず、結局捨てる代わりに溜まっていく一方であった。
「……あ」
終わったら連絡をくれと言われていたのを忘れるところだった。アリシアはケータイを取り出し、ハールに『買い終わった』とメールを送る。
『もう少し時間がかかる。すまない』
返事は直ぐに返って来たが、合流はまだ出来ないらしい。
……さて、どうしたら良いか。荷物となってしまった紙袋や箱と睨めっこをしながら、再び考えるように唸るアリシアの前に、満開の笑みを浮かべて誰かが現れた。
「奇遇ですね!」
その人物は、ハンターに認定された日に空港でぶつかってしまった、ストライプ柄の背広を着た男だった。
「あなたは……」
「こんな所でまた会えるとは思っていませんでした!」
こんな偶然、本当にあるんですね。キラキラした笑みを見せながら、男はアリシアの足元に置かれている箱や紙袋に目を向ける。
「おや、お一人で買い物ですか?」
「友達を待っているの」
「こんな所で待たなくても、あのカフェで待てば良いのに」
男が指差す方向には、一軒のお洒落なカフェが。
「箱はボクが持ちますから、アリシアさんは紙袋を」
「え、ええ。ちょ……!」
唐突にひょいひょいと箱を持ち上げ、先にすたすたと歩いて行ってしまう男を、アリシアは慌てて付いて走った。
「何か頼みますか?」
アリシアはカフェで、何故かよく知らない男とテーブルを挟み、向き合うような形で座っている。
「すいません、エスプレッソをお願いします。アリシアさんは?」
「じゃあ、わたしはオレンジジュース……」
店員を呼んで注文をした男は、決して爽やかな笑顔を絶やさない。
「アリシアさんはヨークシンによく来るんですか?」
「……まだ二度目よ」
「へえ、そうなんですか」
自然に受け入れてしまっていたアリシアは、目の前の男に少々戸惑っていた。この男は何故、名前を知っているのだろうか。まだ教えてもいないのに。
間もなくして、注文したエスプレッソとオレンジジュースが運ばれて来た。男はエスプレッソの入っているカップを口にする前に、黙り込んでしまっているアリシアを視界に入れて問いかけた。
「どうしたんですか?」
「あ……あの、何でわたしの名前を知っているの?」
男は笑みは崩さずに数秒黙った後、右手で頭を押さえながら声を上げた。
「あァ〜〜! どうもすいません。そういえば、まだご挨拶してなかったですね!」
ハハハと、申し訳なさそうな顔で言う男は、改まった姿勢に直る。
「ボクは、パリストン=ヒルと申します。どうしてあなたの名前を知っているのかという疑問なんですが、それはですね……」
自らをパリストンと名乗る男は背を丸め、内緒話をするように口元に手を当てると、アリシアだけに聞こえる声で告げた。
「実はボク、ハンター協会の関係者なんです」
「……ハンター協会の、カンケイシャ?」
アリシアも同じく小声で訊き返せば、パリストンは人の良い笑顔を浮かべて頷いた。
「初めて会ったあの日、受験生だったあなたの事は既に情報に入ってました」
「だから『近い内にまたお会いしますから』って、言ったの?」
記憶を振り返るアリシアは、あの時のパリストンの言葉を思い出し、その事について問いかける。
「ボク、そんな事言いましたっけ?」
「ええ。言ったわ」
覚えてないなぁ。パリストンは困ったように薄く微笑むと、脈略も無しに突然、話を別なものへと切り替えた。
「すいません。アリシアさんにお訊きしたいんですが、あなたは何故、ハンターになろうと?」
本当に唐突である。
わたしは……。
始めはただ、ベルの気持ちを知りたくて同じ事をしてみたかった。ハンター試験を受け、合格してプロハンターとなったアリシアは、今でも自分とベルを重ねたり、憧れたりする。
ベルがハンターを目指したのは、普通の一般人が入る事を許されていない国や地域に入るのが目的で、世界の財宝発掘ハンターや、賞金首ハンターといったような専門分野を目指す為ではない。
アリシアも同じく、専門のハンターになるなど考えてはいなかった。ベルや世界を知る事で、それよりももっと、別の何かの思いが芽生えていたからだ。
「ベルと同じ事をすれば、わかると思ったわ」
「ベル……? もしかして、『彼女は知らない世界で』の"ベル"ですか?」
そうよ。アリシアはこくりと頷いた。この思いをどんな言葉で表せば良いのか、相手に上手く伝えられるのかどうかわからない。
「わたしって、本当は何の為に存在してるんだろうって、知りたくなったの。だからその理由がわかりたくて、なろうとしたのかも」
それを聞いたパリストンの微笑みは、いっそう深くなった。
「なる程、存在意義ですか」
「存在、……いぎ?」
「あなたがこの世界に生きる理由、重要性、生み出される価値の事ですよ」
信頼するような人の良い笑顔を浮かべて、パリストンはアリシアを真っ直ぐに見つめる。
「アリシアさん。あなたの存在には意味があり、誰も知らない本当の価値がある──と、ボクは思うんです」
気を許してしまいそうな爽やかな笑みで、パリストンが言った。
「それを見つけてみませんか? ボクと一緒に」
「あなたと、一緒に?」
「はい。ボクを信じてくれませんか?」
なんて答えれば良いのだろうか。そもそも信用して良いのかどうかもわからない。アリシアには、パリストンを計り知る事が出来なかった。
「知りたいんですよね? "ベル"に道が開けたように、あなたにも必ず道は開ける。あなたが存在している意味を、ボクなら見つけ出せますよ?」
その言葉は、まるでトドメの一発だった。アリシアの心臓は波のような動悸を打ち、僅かに唇を震わせる。
──知りたい。思うままに答えれば、パリストンは満足気な表情を見せた。
「今ですね、極秘に調査している事があるんですが、それが手に入れば、あなたに是非協力して頂きたいなぁって思ってますんで」
「協力?」
「今はまだ何も教えられないんです。あ、そうだ。ホームコードをお持ちですよね?」
使い道は無いだろうと思っていたホームコードを伝えると、『偶然にも会えて良かったなァ』と、パリストンが席から立ち上がった。
「今日の事はご友人には内緒でお願いします。なんせ秘密裏に動いてるものですから」
また連絡させて頂きますね。さり気なく伝票を手に取ったパリストンは、アリシアの前から去る途中、何かを思い出して舞い戻って来た。
「そうそう。これ、良かったら受け取ってくれませんか? お近づきの印に。喜んでくれると嬉しいんですが」
「え?」
「では、ボクはこれで失礼しますね」
キラキラした微笑みを残して、今度こそパリストンが去って行った。
──これは、プレゼント?
有無を言わさずに目の前に置かれたそれは、羊皮紙の包み紙で包装された何か、である。アリシアは数秒見つめた後、括られた赤い紐をゆっくりと解いて見る。
──あ!
パリストンから贈られたのは、なんと二部作目の『希望の国』だった。アリシアはその本を胸に抱くと、大急ぎでカフェを飛び出し、辺りを見渡してパリストンを探した。
「いない……」
姿は何処にもなかった。せめてお礼を言いたかったが、パリストンに連絡する手段が今は無い。
──『連絡する』って言ったから、また会えるのよね?
本を抱き締める力を更にぎゅっと強めたそんなアリシアのもとに、慌ただしくハールが駆け走って来た。
「アリシア! 電話にも出ないから心配したぞ!」
「あらハール。もう用事は終わったの?」
どうやらハールは、アリシアがパリストンと一緒にいる時から電話をかけていたらしい。今更だがケータイを見てみれば、電源が切れてしまっている。あまりにも繋がらずに心配になって探し回っていたところ、漸くアリシアを発見したのだそうだ。
「今さっき終わらせた。……買った服は何処だ?」
「大変、お店の中だわ」
カフェにそのまま置いて出てしまった事を思い出し、再度店の中に戻ろうとすれば、後ろを付いていたハールが、アリシアの胸に抱かれた本に気付いて呼び止めた。
「それどうしたんだ?」
「あ、これは……」
パリストンの事を言いかけそうになって、アリシアは慌てて口籠った。『内緒』なのだから、ハールには話せない。
「……そう、親切な見知らぬ人に貰ったの! 本当に、偶然。中身がまさかこの本だって知らなくて急いで追いかけたんだけど、見失ってしまったのよ」
「
怪しまれてはいないだろうか。ただ、全部が嘘ではない。パリストンの事と、それに関わる話だけは伏せておいただけだ。以前、メルサの事をヒソカに内緒にした時とは違う後ろめたさを感じながら、アリシアはハールと共にカフェへと戻って行った。