マチ=コマチネは、とある場所に呼び出されていた。
「──そういう事だ。手間をかけるが、ヒソカにはお前が伝えてくれ」
奥の上座に座るリーダーらしき若い男は、正面に離れて立っていたマチを見つめながら言った。
「別に手間なんかじゃないよ。団長の命令だし」
「お前が言えばアイツも喜んで来るだろう」
団長と呼ばれたリーダー格の男は、そう言って薄い笑みを見せる。
「そう言うけどさ、アイツがちゃんと真面目に来た例しあった?」
「ないわね」
男の離れて横に立つ、鷲鼻に特徴のある女がきっぱりと言った。
「今は天空闘技場だって?」
「うん。……そうね」
「あら、何? その一瞬嫌な顔。何かあったの?」
女は、マチの一瞬の表情を見逃しはしなかった。
まあね。マチは面倒くさそうな深い溜息を漏らし、この場にいる皆に説明をした。
「アイツ、女を連れ込んでる時にあたしを呼んでさ。こっちは見たくないもん見せられて、本当迷惑なんだよ」
「それはご愁傷様なこった」
不思議な形の帽子とマントを着用している男が口元を小さく緩ませながら、『どんな女だった?』と、興味津々な様子でマチに問う。
「随分と興味あるのね」
そんな男をジト目で睨んだマチは、嫌味を込めて返してやる。
「そりゃあなくは無いだろ? あの変態じみた野郎を相手にするんだから。で、どうなんだよ?」
……くだらない。マチは眉間に皺を作り、またも深い溜息を吐いた。
「──でも」
何かを思い出しながら、若干躊躇い気味に小さく呟いたマチに、鷲鼻の女が『何よ』と反応を示す。
「いや、ちょっと思い出した事があってね。別に言うつもりなんて更々なかったんだけど、ちょっと気になる女だったから……」
「マチ」
リーダー格の男がマチの名を呼ぶ。
「お前の気になった事は全て教えてくれ」
「……わかった。ヒソカが連れ込んでた女がさ、見たこともない目の色をしてたんだよ」
「目の色?」
マチはこくりと頷いた。
「目の中に星が見えたんだ。無数のね」
「星──?」
"瞳の中の星"に反応したリーダー格の男は、それを聞いた途端にひとり考えに耽る。
「後、そいつが勝手に話しかけて来た時にも変な事があってさ、これはちょっとわからないんだけど。なんかそいつから、今まで嗅いだ事のない匂いがしたんだよ。甘い匂いっての? だけどお菓子の甘い匂いじゃない。あれは──」
マチがあの時の甘い香りを思い出そうとすれば、それに答えるかの如く、リーダー格の男はポトリと雫のように呟いた。
「
「ミムノイチゾク?」
鷲鼻の女が男に訊き返す。
「マチ。もしかしたらその女は、『魅夢の一族』かもしれない」
「だからなんなの? そのミムノイチゾクって……」
けれど決して、その問いには答えてくれなかった。男は数秒黙ると、マチに目線だけを向けた。
「もう一つ頼みがある」
「──頼み?」
7月10日。
バスルームに入ってから出るまで、終止ヒソカがいつも以上に愉し気な顔である事にアリシアは気付いた。時折ヒソカはどこか遠い目をして、何かを思い出しながらニタニタと笑っているのだ。まるで、ハンター試験から帰って来たあの日のようである。
「アリシア」
暫く物思いに耽っているように見せた後、ヒソカは不意にアリシアの名を呼んだ。
「どうしたの?」
「今日試合があるんだけど、これで見るかい?」
ヒソカが指さすのは、テレビの画面である。
「試合……」
アリシアは一呼吸置くと、『会場で見たいわ』と答えた。
「ボクは嬉しいけど、平気かい?」
「ヒトには慣れてきたの。まだ少し自信はないけど……でも、きっと平気よ」
大丈夫だと笑って見せれば、ヒソカもそれに合わせて微笑み返した。
「今回の試合は絶対会場で見て欲しかったんだ♦︎ キミが見に来てくれるなんて、本当に嬉しいよ♠︎」
ヒソカは自分の顔をアリシアの顔に近付けると、息がかかる程の距離を保ちながらこう言った。
「試合に勝ったらさぁ、ボクにプレゼントをくれるかい?」
「え?」
「忘れちゃったのかな? キミが言ったんだよ? ボクに何かプレゼントしたいって♠︎」
「あ、ごめんなさい。そう、だったわね」
アリシアは忘れてしまっていたが、思い出したかのように『どんなプレゼントが欲しいの?』と、改めて欲しい物をヒソカに問うた。
「それは……」
ヒソカは、アリシアの胸の真ん中辺りを人差し指で押し当てる。
「キミ、かな♥」
「──わたし?」
アリシアは首を傾げた。それは一体どういう意味なのだろうか。うーんと唸りながら困った顔をすれば、ヒソカは『さて、ボクはもう行かなくちゃ♠︎』と言って、アリシアから離れていった。
「いってらっしゃい」
「いってきます♦︎」
ヒソカが試合の為に部屋から出て行った後、クラシカルロリータの赤いワンピースに着替えながらアリシアはひとり、ヒソカへ送る予定であるプレゼントの内容について考えていた。
「……プレゼント、かぁ」
思いつく限りの事をいくら考えても、アリシアにはヒソカの言った意味が全く理解出来ない。
気になるけど……。
一先ずは試合を観に出なければ。プレゼントの内容を考えながらずっと部屋の中に篭ってはいられない。アリシアは一旦これを頭の隅に置くと、フードマントを着用してから会場へと急いだ。
──前よりたくさんのヒトだわ。
イルミと一緒に行って以来の闘技会場の熱気は、凄まじいものだった。
やや緊張しながら買ったチケットを持ったアリシアは、入りきらない程の観客達の中を通り抜けてから、やっと席に着いた。
──もうすぐかしら?
そわそわと緊張した面持ちで辺りを見渡せば、周りに座る観客達から『ヒソカが勝つ』や『対戦相手が勝つ』など、それについてああだこうだと言い合う声が、倍耳に入ってくる。
それ程までに今日の試合は、観客達から注目された対戦なのだろう。
〔ゴン選手VSヒソカ選手! いよいよ注目の一戦が始まろうとしております!〕
始まりを告げるアナウンサーの第一声は、観客達の大歓声を沸き起こした。
「あ!」
相手の選手が先に登場した。アリシアは思わず驚きの声を上げる。ヒソカの対戦相手であるゴンは、アリシアに初めてハンバーガーなるものを教えてくれた少年であったのだ。
「相手があの子だったなんて……」
まさかのゴンであった事に、アリシアは驚きと不安を隠せない。そして、反対側のゲートから現れたヒソカに観客達の興奮はヒートアップ。罵倒や応援など、様々である。
アナウンサーによる情報によると、ヒソカは現在9勝3敗。勝てばフロアマスター。負ければ地上落ちの分け目の勝負という。
オーラが……。
二人が対峙した時、ヒソカから禍々しいオーラが溢れ出した。
「ポイント&KO制! 時間無制限、一本勝負! ──始め!!」
例の如く、審判による開始の合図で試合が始まる。先に動いたのは、ゴンだ。素早い動きでヒソカに攻撃を仕掛けるも、余裕のヒソカは難無くと避けている。それでも尚攻撃を止める事のないゴンではあったが、ちょっとした隙を突かれてヒソカからの攻めを受けてしまった。
「クリーンヒット! 1ポイント、ヒソカ!」
審判の言葉に会場が沸いた。あまりの大歓声に驚いたアリシアは、思わず両手で耳を塞いでしまう。
す、すごい……!
熱気とオーラに満ち溢れた闘技会場でまた気分を悪くしてしまいそうになったが、ヒソカの為に何とか堪えた。試合を会場で観ると言ったのは自分であるし、何よりゴンの事が気にかかる。
──大丈夫かしら。
ヒソカの試合の様子を天空闘技場で耳にした限り、必ず対戦相手は重傷または屍と化しているという。
──あの子も死んでしまうの?
ゴンを心配しながらもヒソカに勝利してほしいと思っているアリシアは、複雑な心境を持ったまま、この試合を息を飲んで見守っていた。
「まだボクは、開始位置から動いてさえいないんだけどねェ……♦︎」
ヒソカはこの試合を楽しんでいる様子である。それは、自分が格上だと自覚しているからだろう。
歯を食い縛り、拳を握り締めるゴンは再度ヒソカに向かって走った。反対方向へと移動し、ステージに敷き詰められていた石板を剥がすと、ヒソカの前に壁の如く立て上げる。そして勢いを付けたジャンプ蹴りをし、その石板を砕き割った。
〔出たぁーー! ゴン選手の石板返しぃーー!!〕
砕かれて石つぶてになったそれが、ヒソカ目掛けて飛んで行く──が、つぶては当たらない。ヒソカがそれを殴って落としていたからだ。
だが、ゴンは当てる為に石板を砕き割ったのではなかった。つぶてを殴り落としているその一瞬の隙を狙い、素早く背後に回り込んだゴンは、不意をつかれて気づかなかったヒソカの左頬に一発くらわせたのである。
──あ!
「クリティカル2ポイントッ! ゴン!!」
ゴンにポイントが入り、観客の大歓声が上がった。そんな中、左右にいた観客が『甘い匂いがする』と言っているのが聴こえてきたが、アリシアは特にそれを気にはしなかった。
さて、これでポイントはひっくり返り、2対1のゴンがリードとなる。ヒソカは開始から全く動かなかったその場から移動し、薄く笑みを浮かべてゴンのもとへと歩み寄る。
ゴンは自分のポケットの中に手を突っ込むと、中から何かを取り出し、丸いプレートのような物をヒソカに手渡した。
〔今のは一体何だったんだーー!? わからーーん!〕
二人だけにしかわからない何かのやり取りを終えると、お互いに攻撃の構えを取る。
「念について、どこまで習ったんだい?」
試合中にも関わらず、ヒソカは念の話をゴンにし始めた。『基礎は全部』ゴンがそう答えれば、『キミ、強化系だろ?』と、ヒソカは言い当ててみせた。しかし、これはあくまで推測である。
「な、何でわかったの?」
素直で正直なゴンから返ってきた反応に頬を緩ませながら、自分で考案したオーラ別性格分析でゴンを分析し、強化系で単純一途と診断。ヒソカ自身は変化系で、気まぐれで嘘つきだと言う。
変化系は強化系と正反対で相性は良いとの事。ただし、気まぐれな変化系は、大事なものがあっという間にゴミへと変わるのだそうだ。
「……だからボクを失望させるなよ、ゴン♠︎」
目の先にいるゴンを見据えながら、ヒソカのオーラが揺らいだ。素早いヒソカの攻撃がゴンに当たり、反動で転げたところをヒソカが蹴り上げようとした。
間一髪。避けたゴンは無事であった。──が、その衝撃により、床の石板が観客席にまで飛んでいったのである。石板はアリシアの頭上を通り過ぎ、上の方で物凄い音を立ててぶち当たっていた。
〔な、何というキック力でしょう! 石板を観客席までけり飛ばしましたぁー!〕
ヒソカの攻撃は止まらない。ゴンはそれを受けたり避けたりで必死の様子である。
「クリティカルヒソカ! プラスポインッ! 3ー2!」
気付けば、あっという間に再逆転していた。
「かかっておいでよ♥」
「やだね! 作戦中っ!」
息を切らしたゴンが、この状況に焦りの色を浮かべている。
「無理にでもこっちへ来てもらおうかな……♥」
そう言うと、ヒソカは人差し指を一本立てて見せた。
あれって……。
凝を使ってヒソカの指に注目すると、その指から何かが伸びて、ゴンの左頬にくっついているのが見える。自然と凝を使いこなせていたアリシアも気付かぬ内、先程のオーラ別性格分析の際に飛ばしてつけていたらしい。
「ンフフ……♦︎」
ヒソカが人差し指をクイッっと軽く曲げれば、吸い寄せられるようにゴンが引っ張られた。
〔ゴンがヒソカに引き寄せられるーーーー!!〕
ヒソカのもとまで引っ張られたゴンは、自分の意思とは反対にヒソカの拳を受け入れてしまった。
「これ、"
アリシアには『自分を守る為に、系統や念能力は秘密にするんだよ』と言い聞かせていたのに、ヒソカ自身は簡単に自分の念能力について明かしてしまった。明かした能力が全てではないにしても、知られたところで何ともないのか、または自分の能力の強さに自信があるのかもしれない。
観客達の凄まじい歓声が会場に広がった。ゴンはその場にダウンし、両手と膝を付いている。
「クリティカル&ダウン!! プラス3ポインヒソカ!! 6ー2!!」
めげずに立ち上がったゴン相手に、ヒソカは闘いを中断させて三択問題出したが、答えは三択以外の四番目。ゴンを揶揄って面白がりながら少しの時間を取った。試合はヒソカの勝利目前。さあ、戦闘再開──となった時である。
ゴンは逃げもせず、自らヒソカに向かって行ったのだ。殴る、殴る、殴る。まるでサンドバッグかパンチングボールのように。ゴンの行動全てを全身に感じ、異常な欲情に駆られたヒソカはなんとも言えない恍惚な顔を浮かべて
「うわあぁぁぁーー!!」
妖怪か変態か。不気味たる表情のヒソカ。ゾッと背筋を凍らせたゴンは、これでもかと言うくらいにヒソカの顔面を一点に集中して攻め込む。
〔おおーー!? ラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュ! 猛ーラ~〜〜ッシュ!〕
なすがままに殴ら続けたヒソカの口角が裂けるかの如く上がった。ヒソカが握り締めた左手を動かせば
「両者クリティカル! プラス2ポインートッ! プラスダウンポイント1ヒソカ! 9ー4!!」
審判の判断は、ヒソカへポイントを上げたのだった。
「直ぐに起きたよ! ガードだってしてたじゃん!」
必死に訴えるゴンに審判は首を横に振るだけ。観客達は一斉にブーイングを投げた。
ゴンに対して不利なジャッジが見える中、後1ポイントダウンや更なる攻撃を受ければ、ゴンの負けである。
「くくくく……、油断大敵だよ、ゴン♦︎」
ヒソカは左手をゴンから見て右に指差すと、『右の方を見てごらん♠︎』と告げた。勿論、素直に右を向いたゴンの左頬には石つぶてがぶつかり、予期せぬ衝撃によって床に倒れてしまった。
「あ、ゴメンゴメン♣︎ ボクから見て右の方だった♠︎」
ゴンが審判に文句を言っていた隙を狙い、ヒソカは左手のオーラを石に投げつけていたのだ。そしてすかさず
「ダウン&クリーンヒット! プラス2ポインッ11ー4!! TKOにより、勝者ヒソカ!」
大いに盛り上がりを見せた試合は、ヒソカの勝利で終了した。アリシアはヒソカが満足気な顔で微笑みながら闘技会場を去って行く姿を見つめながら、暫く唖然としたまま動けないでいた。
──あの子が、ゴンが死ななくて良かった。
親切にしてくれたゴンの顔が浮かぶ。一緒にハンバーガーを買ってくれたあの日の出来事を再度思い出し、ゴンが死ななくて本当に良かったと、心から胸を撫で下ろした。
一方、アリシアがまだ、会場から動けないでいたその間である。試合を終えて自室に戻って直ぐ、軽くシャワーを浴びてバスルームから出たヒソカは、窓際にもたれて待っているマチに気付く。否──、浴びている最中に既にマチが来ている事はわかっていた。
「……ふふ♥ 待たせてしまったかな?」
ヒソカは側まで近寄ると、ねっとりとした目でマチを妖しく見下ろした。そんなヒソカに応える素振りなど一片も見せず、マチはヒソカをじろりと見上げながら云う。
「伝令の変更」
その一言に、ヒソカの笑みはピタリ止まった。
「8月30日正午までに、『暇な奴』改め、『全団員必ず』ヨークシンシティに集合」
「……団長も来るのかい?」
「恐らくね」
マチはヒソカから離れると、背を向けてドアの前まで歩く。
「今までで一番大きな仕事になるんじゃない? ──今度黙ってすっぽかしたら、団長自ら制裁にのりだすかもよ」
「それは怖いね♠︎」
去ろうとしてドアノブに手をかけようとしたマチは、一度その手を止めて振り向いた。
「それともう一つ。あんたが連れ込んでる女、アイツも『連れて来い』……だってさ」
「アリシアの事かい? 何で団長が?」
「いけなかった? 伝えたんだよ。部屋にこういう女がいたって。女の特徴言ったら何でか団長が突然、アイツも連れて来るようにって」
「……うーん♣︎ 意味がわからないんだけど?」
「何よ、云われて困るような相手だったの?」
「別に♥ でもさぁ、何故団長が?」
「知り合いなんじゃない?」
「アリシアと団長が知り合い?」
「さぁね。詳しくはよくわからないけど、『ミムノイチゾクかも』とだけしか言わなかったから」
「ミムノイチゾク……?」
後は団長に直接訊けばわかることでしょと、再びマチはドアノブに手を伸ばす。
「了解♥ ……ところでさ、マチ、どうだい今夜♥ 一緒に食事でも?」
しかしマチは完全スルーを決め、さっさっと部屋から出て行ってしまった。
……残念。ヒソカは、ついさっきマチから聞いた事を頭の中で振り返りながら考えていた。
「ふぅん……♠︎ 何故アリシアを?」
"ミムノイチゾク"というのも聞き覚えがなく、一体どういう理由があって『連れて来い』なのか、ヒソカには全く検討がつかない。
「──まあ、いいや♦︎」
ヨークシンシティに行っている間、何処にアリシアを置いておこうかという手間が省ける。細かい事は団長自ら説明してもらおうと、ヒソカはカーテンを少し開いて窓から見える空を眺めた。
アリシアがやっと部屋に戻った頃、ヒソカはまだバスローブ姿のままだった。ソファに座りながらローテーブルの上でひとり、トランプタワーを作って待っていたのだ。
「おかえりアリシア♠︎」
「ただいま!」
完成したトランプタワーから目を離し、少し息が乱れたアリシアにヒソカは目をやった。
「走って来たのかい?」
「ええ。ヒソカにおめでとうって言いたくて」
「わざわざ息を切らしてまでなんて、嬉しいなぁ♦︎」
アリシアは最後まで試合を生で見れた喜びと、周りの熱狂にまたも驚いた事を、若干興奮気味で語り始めた。
「それでね、わたし、あのこが死んでしまうんじゃないかって少しハラハラしていたの」
「ゴンを殺すつもりは今のところ無いからねぇ♠︎ 今回は新たに成長も知れたし……くくくっ、本当に愉しかったよ♦︎」
「本当に嬉しそうね」
「うん♠︎ ボクはゴンが大好きだから♦︎」
アリシアは好きという単語の深い意味がわからなかった。けれど何となく、ヒソカとゴンは知り合いであって、友達という感覚で好きなのかもしれない。心の中でそう自己解決させていた。
「アリシア」
先程まで試合の話しの雰囲気であったこの場の空気を、テレビのリモコンのボタンを押すようにヒソカは切り替える。
「隣においで♦︎」
自らが座るソファに誘うと、アリシアは素直にヒソカの横へと座った。その時にふわりとまた、例の香りがヒソカの鼻腔をくすぐる。
「勝ったらのプレゼントだけど……」
ヒソカに言われて、アリシアは思い出した。
「その事なんだけど、よく意味がわからなかったわ。一生懸命考えたのよ。でも思いつかなくて、……わたしに出来る事なの?」
「ふふ、勿論♦︎」
ヒソカはアリシアの髪の毛を指で遊びながら、そっとその指先で首筋を撫でた。
「くすぐったいわ」
するとヒソカはソファから立ち上がり、突然アリシアを抱き抱えた。
「ヒソカ?」
微笑のまま、ヒソカはその足でベッドルームに向かって行く。
「ねぇ、プレゼントどうしたら良いの?」
ベッドに寝かされたアリシアは、自分の上を覆いかぶさって来るヒソカに、もう一度問いかけてみる。
「言っただろ? プレゼントは、キミ♦︎」
「……わたしを、どうするの?」
理解出来ずに困り果てているアリシアに、ヒソカはやっと答えた。
「キミを、──食べる♥」
次回は注意。
久々にこの回での原作、旧アニ、新アニと見てみました。