エスパー・ボール・ピュア   作:五億人に一人のラッキーガイ

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ゆっこの設定をかなり弄り回しているので、こんなの俺の知ってるゆっこじゃない!って方はブラウザバック推奨です。


堀裕子

 公園で、一人スプーンを睨んでいた。

 たとえかなわぬ夢だとわかっていても、諦めきれなかった。

 『ホンモノの超能力者になりたい』

 むかしからそう思い続けて結局はこんなところまできてしまった。

 いつだったかも覚えていないほど前にテレビで見たんだ。

 超能力の力でみんなを笑顔にする人を。

 今思えばただのマジックだったのかもしれない。

 でも、それでも私は(あこが)れた。

 自分の超能力で誰かを笑顔に出来るような、そんな人になりたいと思ってしまった。

 オカルト系の書籍を買い漁ったり、実際に超能力者だという人を見に行ったりもした。

 正しい努力だったかはわからないけど、私が思いつくことはなんでもやった。

 それでも.....私に超能力が目覚めることはなかった。

 いくら眼力を込めてロウソクを見つめても、火の一つも起こすことはできない。

 どれだけ念じても、トランプの裏側を見通すことはできない。

 ただわかったのは『私には超能力者としての才能がない』という悲しい現実だけ。

 わかってしまった今でさえ、こうしてスプーンを曲げる練習をしているのだから、私はいったいどれほど未練がましいのだろうか。

「.....ハァ」

 誰もいないところで一人悲しくスプーンを力技で曲げる自分を、どうしようもなく情けない奴のように思ってしまう。

 いや、実際にどうしようもなく情けない奴なんだろう。

 自分で不可能だと決めておいて、それでいてまだ(すが)ろうとしているのだから、周りからみた私はさぞや滑稽(こっけい)に見えることだろう。

 私の手の中に残った(いびつ)に曲がったスプーンまでもが、まるで私を嘲笑(あざわら)っているかのようで.....。

 半ば自暴自棄(じぼうじき)になっていた私は、手に持っていたスプーンを思い切り地面にたたきつけた。

 カツン。

 小さな音を鳴らしながらスプーンが公園の砂場に落ちていく。

 わざわざ超能力を使って探そうとしなくても大丈夫ですと言わんばかりに、スプーンは夕陽を受けて輝いていた。

 今のナイーブな気持ちになっている私には、それが私のなかの超能力を否定しているように感じられた。

 お前の超能力はここにあるスプーンを見つけることすらできはしないのだ、と。

 そう、言われているようだった。

「やっぱり.....ダメなのかな.....」

 どうしようもなく弱音が出てきてしまう。

 自分が超能力を使える姿が、全く想像できない。

 見えてくるのは、曲がったスプーンを指差されて笑われる惨めな私。

 会場からは私を嗤う声が聞こえる。

 そんな結末ばかり、想像してしまう。

 成功の形もわからないのに、私は何処へ向かっていると言うのだろうか。

 砂場に落ちたスプーンを拾い上げる。

 何度も繰り返してきたはずのその行動も、今日はやけにぎこちなくなってしまう。

 しゃがんで砂場に手をつく。

 私の手元には、小さな雨が降っていた。

 どうしようもなく抑えられなくなったソレはどんどん大きくなり、やがて土砂降りの大雨となった。

 ただ涙を流すことしかできないことが『超能力なんて使えるわけがない』っていう証明になったみたいだ。

 私なんかじゃあ超能力で誰かを笑顔にすることなんてできない。

 それを突き付けられたような、思い出したような気がして、涙がとめどなく流れる。

 そんな時。

 涙で(かす)む目の前を、黄金の輝きが通過した。

 私の目の前を通り過ぎた()()は砂場の中心で回転をしている。

 生まれてこの方一度も見たことのないソレは砂に小さな渦を作り出した。

 渦はどんどん大きくなっていき、一つの円となって回転を始める。

 大きくなった回転は砂を伝わり、私の今手に取ろうとしていたスプーンを大きく空へ向かって弾き飛ばした。

「あっ!!」

 スプーンは夕陽をバックにして回転しながら飛んでいく。

 思わぬ出来事に啞然(あぜん)としていると、弾かれたスプーンをキャッチする手があった。

「なにをしてたかは判らねぇが、ここは子供たちが遊ぶ公園だ。あんまり小さい子たちに示しのつかねぇことはするもんじゃあないぜ、お嬢さん」

 男の人はそう言うと、私にスプーンを差出してきた。

 おそらくさっきまでの一連の状況を起こしたであろうこの男の人は、いったいなんなのだろう。

「あ、すみません.....ありがとうございます」

「わかりゃあ良いんだ。今後、こういう事はあんまりするなよ」

 男の人は砂場に落ちている鉄球を拾うと、私に背を向けて歩き出した。

 そうか!

 さっきの黄金の輝きはあの鉄球だったんだ!

 もしかしたら、あれを見れば私も超能力が使えるようになるかもしれない!!

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

「んあ?どうした。なんか俺に用でもあるのかい」

 再び私の方へ振り返った彼の手の中には、確かに先ほど拾ったであろう鉄球が収まっていた。

 あの鉄球に触れてみたい。

 そうすることで、私の中の『何か』がかわる、そんな予感があるッ!

「私にその鉄球を触らせてくれませんかッ!」

「これはただの鉄球だ。アンタが思うようなことはなにも起こったりはしねえぞ」

 目の前には緩やかに回転する鉄球。

 しかもさっき、普通ではありえないことをおこした鉄球だ。

 それを「なにもない」と言われて「はいそうですか」とはならない。

「ちょっとくらいいいじゃないですか。絶対に壊したりしませんから!!」

「なんでそんなに必死になってんのかは知らんが、ありもしない事を幻視するのはやめろ。『過度な期待はするな』だ」

「貴方こそ、どうしてそんなに頑なに触らせてくれないんですか!?こうなったらもう力ずくですッ!」

 (ぬか)に釘な状況にしびれを切らした私は、彼の持っている鉄球を奪い取りました。

 そして手に持った鉄球をよく観察しようとした..........。

 

 

 

 

 

「待て!回転は、まだ続いているぜ!!」

 

 

 




ジャイロは7部のなかで一番カッコいい。異論は認めます。
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