Past Saw Of two Persona   作:ヨウ氏

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原初の闇編
原初の闇 前編


「犠牲になるのは世界か、貴方か…」

「…?」

「私達はフォトンがあるかぎり…選び続けなければいけない………」

 

激闘の末シバを倒したエストとマトイ

 

「どういうこ……っ………!?」

「エスト!?」

自分の中に黒い意思が奔流となって流れ込む。破壊、滅亡、闇、それらが自分の意思を黒く染めていく

「なんだ…っ…これ……」

「エスト…どうしたの?しっかりして!」

マトイの声も塗り潰されて聞こえない

 

『原初の闇はただそこにあるもの…シバが消えた今、次に貴様に宿るのは確実…』

【仮面】が悟っていたように言葉を溢す

(そう…か…これ…が全ての破滅意思というのなら…!)

『そうだ、滅びすものの無い場所へ…』

「全てが生まれる前まで…!」

「時間遡行!?待って!何処まで戻る気なんだ!エスト!」

シャオが止めるが答えている暇はない

「エスト…待って!」

マトイに手を伸ばされ、一瞬思いとどまる

(ごめん…約束…破っちゃうな…)

 

最後に見たマトイの顔が、妙に頭に焼き付いた

 

 

 

 

 

 

 

そうして平和は訪れ、アークス全体としては喜んだが、一部の者は深く悲しむ結果となった。

 

 

 

「マトイさん…帰還しませんね…」

「…僕らがかけられる言葉は無い、今はただマトイを待とう」

悲しみながらも仕事を投げ出すわけにもいかないシエラとシャオは未だ帰還しないマトイを見ながら事後処理に追われていた

 

「僕らは今出来ることをやろう」

「そうですね…ってあれ?マトイさんに誰か近づいてます」

「シエラ、こっちにも誰か来るみたいだ」

 

 

 

~sideマトイ~

 

「…………」

 

マトイは茫然自失としたままふらふらとナベリウスを歩いていた

 

「……あれ…わたしなにを」

 

本人も気づかないうちにある場所へたどり着いていた

 

「ここって…」

 

そこはかつてエストとマトイが約束をした森の中のあの場所だった

 

「エスト……私怒ってるんだから…どっちかを置いていったりしないって約束したよね…絶対…言ったよね………あ…そっか…エストは私を見捨てたんだね…だって目の前であんなことするんだもん…」

 

「そっか…見捨てられたんだ………私…………」

膝から崩れ落ちる

 

「こんなことになるのなら……最初からエストと出会わなきゃ良かった…!」

今まで抑えてきた涙が溢れる

 

「約束…したのに…絶対って言ったのに…!」

 

「…私にも時間遡行ができたらエストとの出会いを無かったことにできるのになぁ…」

 

「その言葉は一番の裏切りだぞ、マトイちゃんよ」

「え…?」

顔を上げるとそこには白髪の少年、ユウキが立っていた

「なんだ…ユウキくんか…帰還させに来たのなら放っておいてよ…」

 

「…さっき、時間遡行が出来ればって言ったよな」

「言ったけど…」

「出来ると言ったら?」

 

「え…?」

 

 

 

 

「連れてきたぜ」

ユウキに連れてこられたのはとある研究所だった。

 

「ん、ご苦労。なら準備を最終段階に進めようか」

「説明が足らんぞ、彼女が戸惑っている」

そこにはなんとなくエストに雰囲気の似た黒いキャスト、ヴィレンと一見幼女の研究者らしき見知らぬ人が待っていた

 

「おっとそうだった、私はテュール、時間はあまり無いから関係に述べよう。エストを救う、そにために協力してほしい」

「久しぶりだなマトイ、…今の心情の中、急で非常に悪いが俺からも頼む」

 

「どういう、こと?エストを助けられるって本当…?」

「それは僕から説明しよう、マトイ」

「シャオくん…」

 

「まず結論を述べよう、エストを救うことは不可能じゃない。」

「…!」

マトイの顔に少し光が戻る

 

「ただし、ほぼ賭けに近い。まずヴィレンがエストのコピーであることは知ってるはずだ」

「それは…知ってるけど」

 

「ならヴィレンにも時間遡行が出来る素質がある…と仮定してテュールがある装置を作ってくれた。それがこの[マターカード]、時間遡行の片道切符だ。ヴィレンにはこれを使ってエストを追ってもらう」

「往復は流石の私でも無理だったよ、これもシャオの協力あっての成果さ」

 

「それでもこれは大きな希望さ。そしてこれを使うためにマトイ、君の力が必要なんだ。シオンの縁者である君がいて初めて[マターカード]は起動する」

「でも…どうやって…?あんな大量のダーカー因子…エストと私でもどうにも…」

 

「俺はフォトンを完全に消滅させることが出来る力がある、これで原初の闇を…」

「消せるの!?」

「いや、はっきり言おう、無理だ。この力は命を削る、死ぬまでやっても一割も削れないだろう」

「じゃあ…どうやって」

「ここからが賭けだ、俺はエストの意識を呼び覚ますために全力で原初の闇を消しにかかる。…あとはエスト次第だ」

 

「死ぬ気、なの?」

「元はと言えばエストから分かれた命、エストに返すのも悪くない」

「そんな…」

「成功すればその世界での俺は死なずに済む、それではダメなのか?」

「でも…」

 

「なら、お前はどうなんだ、エストを救うのか、救わないのか」

「それは…私だって出来るならそうしたいよ!」

「なら答えは一つだ、やるぞ」

 

「あー……一応私、エストの製作者…親に当たる存在なんだけどさ、マトイ」

「えっ…そうなの!?は、はい!」

「私の最高傑作にして最愛の息子、エストを頼むよ」

「……はい!」

「いい返事だ、それじゃ、世界にバグを起こしにいこうか」

 

 

 

~sideヴィレン~

 

エストは全知存在にとって特別な存在らしい、ならば俺は本来、全知存在からすればイレギュラーなのだろう。

「準備完了だ、何時でも始めてくれ」

かつてエストのコピーであることに苦悩したこともあったが、俺は俺だ、それは今も変わらない。しかしオリジナルをコピーである俺が救う、か…こんな面白い最期なら本望だ。

「コピーとはいえ…自分で自分の息子が死にに行く装置を作るとはね…私もマッドサイエンティストの仲間入りかな…」

「逆に考えろ、息子を救うための装置だ、何も気に病むな」

「…そうかい、ありがとね」

 

覚悟は、決まった

 

 

「お、お義母さんこっちも準備出来ました!」

「ふふ、よし!始めようか!」

 

シャオが演算、マトイがマターカードの起動を補助

程なくして自分の体に異変が起こる

「…っ!…これが…」

「エストのそれとは違って半分強引な物になる、耐えるんだ」

 

まるで自分という存在を別の時間へと引っ張り投げるような感覚、それがどんどん強くなっていく

「…エストを…お願い!」

「了解!」

答えると同時に俺は過去へ、エストのいる原初の空間へ飛んだ

 

 

 

~sideエスト~

 

これが正しい選択、世界は救われ、歴史はこれからも紡がれる、そうだろ?

 

そう、そして原初より歴史を識る存在として、万事は此処より始まりて…此にて、終わる

 

これで良かったんだ、世界が救われるなら…

 

 

 

 

 

 

「本当にそうか?」

 

 

…でも…それでも……皆と一緒に未来へ進みたかった…

 

…しかし…これより先の未来へ貴方が失われてはならない、さあ、手を伸ばして、掴め。貴方の紡いだ歴史が光となる!

 

暗闇の中伸ばした手が、何かを掴む

「…やっと目覚めたか、案外早かったな」

「ヴィレン…どうやって!?いやどうして…」

「コピーより不甲斐ないオリジナルを起こしに来た、他に理由が必要か?」

「…そうだな」

「確かに不甲斐ない…こんなので諦めるなんて俺らしくない!」

そうだ、俺は何度だって

 

「…ならば立て、お前のいない未来は色々と面倒だ」

「…ああ!今度は俺自身の未来含めて…守ってみせる!それが『守護輝士』だからな!」

こうやって立ち上がって来たんだ!

 

「後は…全てに片を付けろ…俺が出来るのはここまでだ…」

ヴィレンの存在が消えゆく

 

「ヴィレン…?まさか原初の闇を消すために力を…」

「全ては無理だと思ってたが…俺の存在まで使えばお前を完全に目覚めさせるくらいは出来たようだ…な…安心しろ、俺はお前が諦めた未来から来た。お前が諦めなければ全て解決する……じゃあな…」

そう言い残すとヴィレンは消滅した

「…尚更、無事に帰らなきゃいけないじゃないか」

ヴィレンが消えて手が離れたことで再び空間を落下する、が

 

 

「守護輝士…!」

 

「それに…」

ハリエットの呼び掛けでよりハッキリと光が見える

 

「エスト…!」

 

「俺にはこんなにも」

ヒツギが俺と原初を切り離す

 

「エスト!!!!!」

マトイが手を掴み、落下が止まる

 

「未来を紡ぐ仲間がいるんだ、負けないさ」

 

 

 

 

つづく

 

 


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