「どうなっているんだ!!」
突然自分の前に現れた木松悪斗にこれまで自分がしてきたこと、それらに対する責任をどうとるのか、それを言われたことでたじろいてしまう裏美、そのためか、
「あ、あの・・・、木松悪斗様・・・、これには深い事情が・・・」
と、なぜか言い訳を言おうとしてしまう。まさかの木松悪斗の登場に、裏美、頭の中が真っ白になってしまったようだった。
だが、すぐに木松悪斗は態度が変わってしまう。木松悪斗、突然、こんなことを言いだしてきた。
「と、裏美のこれまでの行動についてはあとできつくお仕置きするとして・・・」
この木松悪斗の言葉に、裏美、
「ほっ」
と、胸をなでおろした・・・のだが、そんなことお構いなしに、木松悪斗、ついに本題に入る。
「さて、今は「ラグーン」の屋上で行われるAqoursのライブの件のほうが先だ!!今回、俺がここに来たのはそのライブを阻止するためだ!!」
で、この言葉のあと、裏美、
「うぉ~、木松悪斗様、すごいです!!」
と、なんと、木松悪斗にゴマをすり始めてしまった。が、木松悪斗、そんあ裏美のことなんてほっといて話を先に進める。木松悪斗曰く、
「もし、このライブが成功に終わった場合、Aqoursの、そして、月生徒会長の勢いはさらに加速する!!そうなってしまうと誰もそいつらを止めることができなくなる!!いや、そのあとに控えている新生Aqoursのお披露目ライブの成功にもつながってしまう!!そうなってしまうと俺が反対してきた静真本校と浦の星分校の統合も実現してしまうだろう。だからこそ、このライブは死んでも阻止しないといけない!!」
むろん、ここでも、裏美、
「よっ、木松悪斗様、すごいですね!!」
と、よいしょする・・・も、木松悪斗、完全無視!!
そして、木松悪斗、ついにこれに対する決意を事務所にいるみんなに知らしめた。
「この戦いこそ天王山なり!!ここで、Aqoursの、月生徒会長の息の根を止めて見せる!!」
この木松悪斗の決意に、裏美、
「すごいですね、木松悪斗様!!」
と、よいしょする・・・も、木松悪斗から、
「って、そんなに俺のことをよいしょするなら俺のためにもっと働け!!」
と、裏美に激しいツッコミ!!これには、裏美、
「は、はい!!」
と、背筋をピンとしてしまった。
と、そんわわけで、木松悪斗、裏美に対しビデオカメラを用意するとすぐに事務所にいる全員に対し事務所内に響くような大声でこう言った。
「いいか、今から相手(「ラグーン」の運営会社)に向けてビデオメッセージを送る。そのビデオメッセージは相手がひれ伏すぐらいの迫力ある動画になるだろう。だからこそ、お前ら、俺様の迫力ある動画になるように加工しろ!!」
そして、それから1時間後・・・。
「また裏美様から反対意見が来ました!!」
ここは「ラグーン」の運営会社、今日は朝から同じ内容のメールを大量に送られ、また、同じ内容の電話が大量にかかっていた。その内容とは、「Aqoursのライブの使用申請を即刻却下せよ!!」、そう、裏美が陰で運営会社に大量のメールと電話攻勢をかけてきたものだった。と、言いつつも、ただ「却下せよ」「やめろ」の一点張りであり、月と運営会社の会長が一緒にいた早朝に運営会社の会長が言っていた通り、反対意見やクレームがあるならそのちゃんとした理由を提示する、てことなんてなく、ただ「却下せよ」「やめろ」の文言しかないため、運営会社としてはこれらのメールや電話をただあしらっているだけ、門前払いの状態だった。
しかし、無視続けていたことによりより状況が悪化した。なんと、今度は裏美名義の反対意見・クレームのメール・電話が大量にくるようになった。ただ、そのメール・電話の内容は前と同じ、反対・クレームの理由なんて提示しておらず、ただ、「却下しろ」「やめろ」の一点張り。けれど、すこしよくなってきた?のか、「もし却下しなければ裏美のの名において・・・」と裏美の権力でもって運営会社を従わせることをちらつかせてきたのだ。また、「静真高校部活動保護者会の名において断罪する」ともいってきたのだ。それはまるで、権力の名において相手を従わせる、そんな脅しに感じられていた。
だが、実はこれ、運営会社からすれば、「裏美って誰?」「ただの高校の保護者たちの集まりの団体がこんなことを言っているの?」といったレベルでしかみていなかった。だって、裏美は木松悪斗の腹心とはいえそこまで名が通っているわけでもなく、運営会社の会長からしたら、「あぁ、木松悪斗様の腰ぎんちゃくね」としか思っていなかったし、部活動保護者会にしても静真において絶大なる影響力を持っていたとしても静真の外では(その保護者会の会長である木松悪斗以外は)そんなに影響力を持っているわけではなかった。そんなわけで、裏美名義の反対意見・クレームも、運営会社、無視し続けた。
が、ここで運営会社に大変なことが起きてしまった。裏美からの大量のメール・電話に運営会社の全従業員で対応した結果、なんと、日常業務に支障がでてしまったのである。そんわけで、運営会社、大量のメール・電話攻勢をしかける裏美に対し警告文を送ったのである、「もしこれ以上するなら警察に訴える」と。で、この警告文を送ってから大量のメール・電話攻勢はやんだ。これでようやく終わった・・・と運営会社としてはほっと一息をつくことができた、そう思っていた。
が、それから1時間後、またもやその裏美からメールが届いたのだ。これには、運営会社の役員、
「もし同じ内容であるなら警察に訴えてやるぞ!!」
と、勢い込んでしまう・・・が、そのメールの差出人を見て、運営会社の役員、びっくりする。
「えっ、このメールの差出人、木松悪斗様だと・・・」
そう、メールの差出人の名義は木松悪斗になっていたのだ。が、運営会社の役員、少し冷静になると、
(たしか、裏美様は木松悪斗様の部下だったよな。なら、裏美様、勝手にご主人様の名を語ったに違いない!!)
と、たかをくくってしまった。
が、そのメールを開いた瞬間、これまでたかをくくっていた役員をはじめまわりにいた人たちの血の気が引いた。なぜなら、そのメールには1つのビデオメッセージが添付されていた。それ以外はなにもない。これまで送られてきたメールみたいに「却下しろ」「やめろ」な文字もない、本当にビデオメッセージが1つだけ。これには運営会社の役員やそのまわりにいた人たち、なにかがあるのではないかと不審がるも、そのビデオメッセージを見ないといけない、と、思ったのか、そのビデオメッセージを再生した。
すると、画面いっぱいに大男が出現し怒声でこう言いだしてきたのだ。
「俺の名は木松悪斗!!その木松悪斗の名において命ずる。いいか、今すぐにでも渡辺月の「ラグーン」屋上の使用申請を却下せよ!!渡辺月、および、静真高校生徒会、そして、浦の星の生徒たち、Aqours、はすべて世に潜む悪なり!!悪は滅せるべきなり!!そんな悪と手を組むのであればあなたの会社は地獄へと陥るでしょう。いや、これ以上悪が広がらないためにも、この俺、木松悪斗、の名をおいて悪とともに、断罪、いや、滅亡、することになります、悪と組むのであれば。だからこそ、この俺が命じる、今すぐ渡辺月の使用申請を却下せよ!!」
渡辺月の使用申請を却下しろ、それは以前、裏美が送っていたものと同じであった。が、それとは別のものがそのメールにはあった。それは・・・木松悪斗本人がクレームをいれてきたことだった。これには、運営会社の役員も、
「おい、あれって木松悪斗本人じゃないか・・・」
と、顔面真っ青になってしまう。いや、そこにいる者すべてが顔面真っ青になっていた。なぜなら、木松悪斗自身が出てきて直接命じている、と、いうことは、この命令自体絶対な力を持っている、そのことを意味していたから。運営会社の役員はおろかそこにいる者すべて知っていた、木松悪斗の命令に背いた者たちの悲惨な末路を。沼津の経済界のヒエラルキー(階級)において1番トップにたつ沼田、2番目の小原家はどちらかというと穏健的な考えのもと物事を進めるため、そこまで強制的な命令を出すことはない。が、それに比べて3番目の木松悪斗は自分の思い通りにならないと気が済まない、いわば、わがままなところがあり、木松悪斗の名のもと、強制的な命令を連発していた。で、それに従わない場合、いや、自分にとって気にくわない場合、自分の名のもと、断罪、いや、粛清してきたのだ。それが大きな会社であれ、小さい会社であれ、個人であれ、その犠牲者は何百人を超える。なので、この「月生徒会長の使用申請を却下せよ」という木松悪斗の命令に背くと木松悪斗がなにをしてくるのか恐ろしくて考えることすらできなかったのだ、運営会社の役員とその従業員からしたら・・・。
しかし、そんなとき、ある従業員があることを口にした。
「あっ、でも、(木松悪斗より権力がある)沼田殿が守ってくれるじゃないですか?」
そうである。先述の通り、裏美が「静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの手助けをするな」と言って沼津のお店・会社・団体に圧力をかけていたものの、すぐに沼田が「そうなった場合、この沼田が助けてやる」と言って裏美の命令を無効化してことがあった。で、今回も、もし、木松悪斗がこの会社を潰しにかかろうとしてもきっと沼田が助けてくれる、その従業員はそんな淡い期待をしていたのだろう。
だが、運営会社の役員のある一言で淡い期待が泡となって消えた。
「たしかにそうかもしれない。しかし、今回は前とは違う。以前、裏美様が出してきたものは木松悪斗様の名を借りたはったりだった。しかし、今回は木松悪斗本人が直々に命令している。この動画は本物だ!!合成でもなんでもない。木松悪斗様は本気だ!!もし、木松悪斗様の命令に背いたらこの会社でさえ潰しかねない・・・」
たしかに運営会社の役員の言う通りである。裏美が木松悪斗の名を借りて沼津のお店・会社・団体に圧力をかけてきたときは裏美の単なるはったりだった。が、今回は木松悪斗が本気になれば自分たちの会社すら躊躇なく潰せる、そんな恐ろしさをこの動画から感じさせていた。
さらに、運営会社の役員はあることも付け加えた。
「それに、いくら沼田殿がいるから大丈夫といっても、沼田殿は多忙だ。すぐに我らを救いに来るとは考えにくい・・・」
そう、沼田は日本を代表する企業グループ「沼田グループ」の会長、もとい、総帥、である。なので、沼田、とても多忙だったりする。そんな沼田がすぐに自分たちを助けに来る、とは思えなかった。
そんなわけで、運営会社の役員、まわりにいる従業員は、今、頭を抱えていた。本当であればなんの反対意見・クレームがなければ月の使用申請は受理される。だが、その申請に木松悪斗自ら反対意見・クレームを入れてきたのだ。この場合、規定であれば、運営会社を含めた三者の話し合いにより受理されるか決定するのだが、木松悪斗はそれすら無視し、一方的に「却下しろ」と、言ってきているのだ。それも、もし、この申請を却下しなければ自分たちの会社を潰すことすら言ってきている、いわば、脅迫めいたものをちらつかせているのだ。さて、自分たちの会社を潰される覚悟で規定通りに話し合いを行うか、それとも、自分たちの会社を守るため、木松悪斗の脅迫に屈して月の使用申請を却下するのか、残酷な選択をしないといけない、と、運営会社の役員とその従業員はみな苦しんでいた。
であったが、運営会社の役員、この2つの選択肢ではないもう1つの選択肢を選んでしまった。
「あっ、そうだ!!こんな重要な案件、(運営会社の)会長にお願いしちゃおう!!」
あらら・・・。たしかに運営会社の役員の言うことも一理ある。この案件はもう役員たちに任せることができないくらい大きくなっていた。会社の存亡にかかわる、とても大きな案件だ、なので、ここは運営会社で一番偉い、というか、総責任者である会長に任せるしかない、と、いうことである。
そんなわけで、運営会社の役員はすぐに会長のところに行き、この案件、つまり、月の屋上使用申請からここまでの経緯と木松悪斗から脅迫を受けていることを話した。で、これを聞いた運営会社の会長、
「う~ん、ちょっと考えさせてくれ・・・」
と、言って少し考えだした。
(う~ん、まさか、あの木松悪斗が暴挙に出るなんて考えもしなかった。それくらい、木松悪斗は渡辺月生徒会長や静真高校生徒会、それに浦の星や小原家を恨んでいるみたいだね。でも、おいそれと木松悪斗に屈してしまったら、それこそ末代の恥!!とはいえ、木松悪斗の命令に背いてしまうとこの会社ごと潰しにかかるだろう。それくらい木松悪斗はやるって言ったら徹底的にやってしまう。う~ん、困った、困った・・・)
たとえ百戦錬磨の運営会社の会長であったとしてもなにをしでかすかわからない、まるで暴走するイノシシみたいな木松悪斗への対応に苦慮していた。
が、そこはやっぱり百戦錬磨の運営会社の会長だった。ついにあることを決める。
(とはいえ、ここで木松悪斗という若造に屈しては、私、だけでなく、会社のプライドに関わってしまう。ならば、ここは規定通りにしよう・・・)
運営会社の会長、こう思ったあと、すぐに役員に対しこう命じた。
「役員よ、ここは規定通り、私たち(「ラグーン」の運営会社)を含めた三者での話し合いでその申請を受理するか決定する!!全責任はこの私が持つ!!木松悪斗様なんかにこの会社を潰させるわけにはいかない!!お前たちを路頭に迷わせることはさせない!!」
この運営会社の言葉に、役員からは、
「うわ~、会長、やっぱりすごいです~」
と、感嘆な声をあげていた。
と、いうわけで、運営会社の言う通り、木松悪斗の脅迫には屈せず、規定通り、屋上の使用申請を出した月、それに反対している木松悪斗、そして、「ラグーン」の運営会社とその会長、その三者による話し合い、その路線でいくことになった。そのため、月、木松悪斗、両方に、「今日の夕方、月生徒会長の屋上使用申請についての話し合いを行います」旨のメールを送ることになった。
そんななか、運営会社の会長はある心配をしていた。
(たしかに月生徒会長と木松悪斗との話し合いになったが、きっと、話し合いの場には木松悪斗本人が登場してくるだろう。そうなると、自分たちに有利になるように恫喝めいたことをしてくるに違いない、木松悪斗は・・・9
その心配はある意味当たっていた。実際、木松悪斗と交渉する場合、木松悪斗は必ず自分にとって有利な流れになるように、まず、最初に恫喝めいたことをしてくるのである。これによりほとんどの相手方はひるんでしまい、結果、木松悪斗に有利な条件で契約を結ぶことが多かった。むろん、その恫喝すら効かない相手もいる。木松悪斗、そのときはあの手この手を出してはこれまた自分に有利な条件で契約を結んでいた。とはいえ、今回も必ず、木松悪斗は最初から恫喝めいたことをしてくるに違いない。対して、月も静真高校の生徒会長である。が、それ以外は単なる高校生でしかない。そんな相手にまったく躊躇なく恫喝しまくる木松悪斗はある意味、悪魔、としか言えなかった。
そんなわけで、運営会社の会長、これに対して、ある保険、をかけることにした。
(もし恫喝めいたものを木松悪斗がしてきたら、それはもう話し合いじゃない。単なる脅しの場だ。ならば、そうならないようにあの人に来てもらおう。そうすれば、少なくとも話し合いの場が荒れることはなくなるだろう)
と、思った運営会社の会長、すぐにある人に電話をかけた。
「もしもし、私、「ラグーン」の運営会社、その会長です。実は・・・にお話がありまして・・・」
一方、そのころ・・・、
「ねぇ、こんな演出にしたいの。どうかな?」
ここは浦の星分校。ここで月はAqoursメンバー全員とあげは、東子、シーナ、それに、よいつむトリオ、を集めて今朝「ラグーン」の屋上で撮った動画を見せていた。
で、この動画を見たルビィ、
「うん、これだったらインパクトがあるね!!」
と、驚きの声をあげると、千歌も、
「この演出だけでも私たちの想いを理亜ちゃんに届けることができるね!!」
と、喜んでいた。さらには、
「It’s Great!!」(鞠莉)
「ふふふ、堕天使らしい演出だわ!!」(ヨハネ)
「これこそAqoursの最後にふさわしい、いや、新しい旅立ちにふさわしい演出だね!!」(曜)
と、Aqoursメンバーから大絶賛を受ける。
また、月はあげはたち3人にこんなことも言った。
「で、この演出は、あげはちゃん、東子ちゃん、シーナちゃん、この3人の働きがとても重要だよ!!映像としては見えないけれど、Aqoursとのタイミングなどがとても重要だったりするからね!!」
これにはあげはたちも、
「この私たちがこんな重要な役目を担うなんてとても光栄だと思います!!」(あげは)
と、喜んでいた。
そんなAqoursメンバーやあげはたちの言葉に、月、ついこう思ってしまう。
(あぁ、そんなみんなの笑顔を見ていたら、僕、なんか嬉しいよ。こんなに楽しい時間が続いたらいいな。でも・・・)
だが、すぐに月の表情は暗くなってしまう。と、すぐに月はAqoursメンバーみんなにこんなことを言った。
「ただ、この演出は1日に1回だけ、日の出のときしかできない演出だし、この演出はあの「ラグーン」の屋上でやること前提ですることになっている。でも、まだ「ラグーン」の屋上使用申請が受理されていない限り、この演出ができるとは限らないし・・・」
で、月、このとき、屋上の使用申請についてこう考えていた。
(たしかに普通なら使用申請を出せば十中八九受理される。けれど、これはAqours最後のライブ、それも「私的な」ライブだ。ならば、あの男が黙っているはずがない。絶対に動くはず・・・)
そう、この月の屋上使用申請にかみついてくる輩がいることを月は想定していた。それは月にとって最大の敵、ともいえた。その敵がついに月に牙をむいてくることは月も重々承知していた。
そして、月の予想は当たってしまった。
「You Gut Mail!!」
と、月のスマホからメールが届いたことを知らせる音が聞こえてきた。これには、月、
(ついにきたか・・・)
と、ついにそのときがきた、と、悟ると、そのメールをすぐに開き、その内容を確認すると、月、Aqoursメンバーにこう言った。
「ついに決戦のときがきたみたいだよ!!今日の夕方、場所は「ラグーン」の会議室。ここで「ラグーン」屋上の使用申請についての話し合いがある。そこで、あの男と決着をつけてやる!!」
このとき、月はこう思っていた。
(ついにきたんだ・・・、あの男・・・、木松悪斗との再戦のときが・・・)