翌日・・・。
「はいっ、ここでさっと脱いで!!」
月の言葉が教室内にこだまする。ここは山の中にある浦の星分校の一教室。ここでは、翌日早朝の本番にそなえて延長戦の通しのリハーサルが行われていた。とはいっても、実質的にはお披露ライブのこともあり、延長戦の練習は今日1日しかできない・・・ことになっていたが、それでも、Aqoursとしてはこれが、今の9人としての最後の練習になる、ということで、9人全員張り切っていた。
ちなみに、延長戦の下準備であるが・・・。まずは作詞作曲班・・・、
「ねぇ、梨子ちゃん、ここの歌詞、こう変えたらどうかな?」(千歌)
「うんうん、とてもいいかも!!でね、千歌ちゃん、それだったら、そのところ、こう編曲したいのだけど、いいかな?」(梨子)
「うん、それ、いいかも!!」(千歌)
と、すでに作ってあった「ブラメロ」の歌詞、曲を延長戦用に少しずつ編曲などしていた、自分たちの想いを理亜に、そして、この延長戦をみないけど、それでもこの地球に住むみんなに伝えるために・・・。そして、ダンス班・・・、
「果南、ここはこうあるべき!!イタリアで得たこの黒きまがまがしいダンスさばきをここに入れようぞ!!」(ヨハネ)
「善子、うん、いいかも!!あと、そこ、別に黒くまがまがしくないから!!」(果南)
「そこ、ツッコミ、いらない!!あと、善子、じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)
「ははは・・・」
と、ヨハネと果南が中心となってもとから作ってあったダンスにイタリアで得たダンス技術を融合させることでよりいいものに仕上げようとしていた。で、ダイヤ、ルビィといったメンバー2人が抜けてしまい花丸1人にしかいなかった衣装班であるが・・・、
「まる1人だけで大丈夫だったずら!!とても簡単だったずら!!」(花丸)
と、花丸1人で9人分の衣装の仕立て直しと事前に月から指示を受けていた1・2年の上着の加工を終わらせていた。で、実際のところ、事前に作られていた衣装についてはこれまで大事に保管されていたこともあり、そこまでほつれなどがなかったこと、たとえきつい練習などにより少し体形が変わったとしても大丈夫なように曜が少し余裕をもたせて作ってあったこと、さらに、月の指示した加工もボタンの付け替え程度で済んだこと、極めつけに、裁縫が得意はルビィの手伝いをしていくうちに花丸の裁縫の技術も磨かれていったこともあり、花丸1人で対応することができたのだ。そう考えると、花丸、かなりすごい少女、なのかもしれない・・・。
そんな具合にたった1日であるが、延長戦の下準備も順調に進めることができ、その日の夜には月の加勢に来ていた、鞠莉、ルビィ、曜、ダイヤ、もそれぞれの班に合流、延長戦の下準備を終わらせて・・・、
「あっ、いいこと、思いついちゃった!!今夜、浦の星分校でみんなと、合宿、しちゃおう!!」(千歌)
と、千歌、突然の発案により、なぜか浦の星分校で、Aqoursメンバー9人、合宿をすることになってしまう。で、なんで千歌がこんなことを言いだしてしまったというと・・・、
「だって、μ'sもラブライブ!決勝の前日、学校で合宿していたんだもん!!」(千歌)
と、いうことです・・・。ただ、その裏では月が千歌のこの案を実現させるために急遽関係各所との調整を図っていた、というのは言うまでもない。月、お疲れ様・・・。
そんなわけで、急遽、浦の星分校に集まったAqoursメンバー9人は最後の衣装合わせをしつつ最後の追い込みをかけていた。作曲作詞班の千歌、梨子、鞠莉は全体を通しての曲の最後の調整、ダンス班の曜、ヨハネ、果南もダンスの最後の手直しを、衣装班のルビィ、花丸、ダイヤは最後の衣装合わせによって補正が必要なところの手直しをしていた。
そして、本番前日といった本日、すべての下準備が終わったAqoursメンバー9人は早朝から延長戦の関係者、月、よいつむトリオ、あげは、東子、シーナ、その全員を集めて、本番に向けて最初で最後の練習を、ここ、浦の星分校の一教室で行っていた。だが、「ブラメロ」の歌詞やダンスはすぐに覚えるわけではない・・・とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、それについては大丈夫?だったようだ。なぜなら、昨日の夜・・・、
「さぁ、一晩でこの曲(「ブラメロ」)の歌詞とダンス、覚えるよ!!」(果南)
と、鬼教官!!の果南指導のもと、たった一晩・・・というか、一夜漬け、でAqoursメンバー全員、「ブラメロ」の歌詞とダンスを覚えてしまった。なお、この果南のスパルタ教育に各メンバーはというと・・・、
「うぅ、頭からなにが出てきそうじゃない・・・」(ヨハネ)
「果南さん、もしかすると、変なスイッチがはいってしまった、そのような気がします・・・」(ダイヤ)
「ハハハ・・・」(曜)
と、いろんな意見が出てきているみたい・・・。
といった具合に地獄の一夜漬けで「ブラメロ」の歌詞とダンスを覚えたAqoursメンバー、最初から全力で練習をしていた。ただ、この練習については、
(さぁ、覚えてtomorrow(明日)はついにラストライブで~す!!だからこそ、このpractice(練習)も全力でいくで~す!!そして、今を一生懸命enjoy(楽しむ)ので~す!!)(鞠莉)
(私、これで9人での練習も最後だと思うととても悲しいよ。でも、だからこそ、私、一生懸命頑張る!!だって、悔いを残したくないからね!!そして、最後の最後まで一生懸命楽しむ!!)(曜)
(これが(9人での)最後の練習ずら!!でも、悲しくないずら!!だって、この9人といつも一緒に練習することができる、そう思えるからずら!!だから、全力でいくずら!!そして、みんなと一緒に、今、このときを、楽しむずら!!)(花丸)
と、この練習が9人にとって最後の練習になるからこそ全力で練習する、昨晩の地獄の一夜漬けの疲れすらみせない、いや、それを含めて、今を楽しもう、一生懸命に楽しもう、そんな心意気をしていた。
で、そのおかげか、基礎的な練習すら全力投球のAqoursメンバー、たった短時間で全体的な通し練習ができるようにまでになると、今度は、月、よいつむトリオ、あげはたち3人、を入れての本番を想定した通し練習に入る。月は早朝からの練習の最初からAqoursメンバーと一緒にいたこともあり全体的な曲の流れをすでに掴んでいた。そのため、
「ねぇ、鞠莉ちゃん、そこ、ちょっとはやいかも」
「善子ちゃん、そこ、ワンテンポ、遅れているよ!!あと、花丸ちゃん、善子ちゃんにつられている!!」
と、的確な指示を出す。これには月から指摘を受けたAqoursメンバーからも、
「わぉ、ミステイク!!みんな、ソーリーソーリー、で~す!!」(鞠莉)
「月、それはすまないことをした。次からは、瞬間移動、致します!!あと、善子じゃなくてヨハネ!!」(ヨハネ)
「これまたいけなかったずら!!ごめんずら!!」(花丸)
と、月の的確な指示に従う。こうして、月の的確な指示のもと、Aqoursメンバーは少しずつより良いものへと進化させていった。
そして、ついに月が考え出したパフォーマンスのところに突き進む。
「はいっ、ここで脱いで!!」
この月の掛け声のもと、1・2年メンバーは上着を脱いだ。ただ、それと同時にフォーメーション、各メンバーの立ち位置も変わるため、動きながらの脱衣となる。が、このとき、
「きゃっ!!」
と、突然、あげはが声をあげる。と、同時に、
バシッ
という人と当たる音が聞こえてくると、すぐに
ドテッ
という人が倒れこむ音も聞こえてきた。さらには、
「いてっ!!」
と、ヨハネの悲痛な叫び声が聞こえてくる。これには、月、
「あげはちゃん、善子ちゃん、大丈夫?」
と言うと、あげはとヨハネ、2人のことを心配する。でも、2人から、
「うん、大丈夫!!で、ヨハネちゃんも大丈夫?」(あげは)
「ふんっ、そんなもの、このヨハネからすれば微々たるものだぞ!!それよりもちゃんと前を向いて動きなさい!!じゃないと、また同じこと、起きるからね!!」(ヨハネ)
「ヨハネちゃん、本当にごめんね!!」(あげは)
と、2人ともとくに怪我とかしていないみたいだった。これには、月、
(ふ~、よかった・・・)
と、一安心する。
と、いった具合に、全力投球のAqoursメンバー9人とそのメンバーとタイミングをあわせようとするあげはたち3人によいつむトリオ、ここにいる全員で行っていた通し練習は滞りなく進んでいった。最初はある目的のためにライブに介入するあげはたち3人、その介入するタイミングがずれていたのだが、練習を進めるうちに少しずつタイミングが合うようになり、夕方になると、
「はいっ、あげはちゃんたち、入って!!」(月)
「はいっ!!」(あげは)
「そうそう、あげはちゃん、そのタイミング!!」(月)
「あげは、ばっちりじゃないか!!このヨハネ、あげはのこと、認めるぞ!!これぞヨハネの眷属なり!!」(ヨハネ)
「あっ、ヨハネちゃんから褒めららた!!とても嬉しい!!でも、眷属って・・・!?」(あげは)
「あげは、それは気にしないほうが・・・」(シーナ)
と、Aqoursとあげはたち3人のタイミングがばっちり合うようになっていった。
こうして、明日早朝の本番に向けての練習は夜遅くまで浦の星分校で行われた。最後には・・・、
「うん、とてもばっちりだね!!」
と、プロデューサー役の月が太鼓判を押すくらいばっちりとしたものになった。あとはこの分校でみんな一緒に寝泊まりし、明日早朝、「ラグーン」屋上においての最終リハーサルと本番を残すのみとなった。が、この練習を通じて月はあることを考えていた。それは・・・。
(今日、曜ちゃんたち(Aqoursメンバー)9人は全力でもって練習していた。9人にとって最後の練習、それってとても悲しいことだよね。もう9人で練習できない、その寂しさがあってもいいと思うけど、だれもそんな感じがしない。たしかに、この9人での想い出、想い、キズナ、という宝物が心の中にある以上、ずっとつながっていけるけど、現実的にはもう練習することなんてできない、それってとても寂しい、と、思ってもおかしくない。けれど、今日の練習中、9人とも笑顔で練習していた、寂しさなんてまったく感じさせないくらいに・・・。この9人の(練習中の)想いってなんだったの・・・)
そう、今日の練習中、Aqoursメンバー9人はずっと笑顔だった。9人にとって、現実的に、最後の練習、なのに、そこからくる寂しさなんて感じさせない、それくらいの笑顔だった。これには少し戸惑いを感じてしまった月、ついには・・・、
(もしかして、これも「楽しむこと」からくるものなの!!それくらい「楽しむこと」というのはみんなが練習中ずっと笑顔になるくらい強い魔力を持ったものなの!!)
と、昨日の「ラグーン」の会議室で、木松悪斗、そして、沼田、に対して月が言った言葉、「楽しむこと」、その言葉が持つ膨大な力についてつい考えてしまう。なので、月、
(それくらい、「楽しむこと」、とてもすごいものなの!?本当にそうなの!?)
と、「楽しむこと」、それが持つ魔力に驚きと戸惑いを感じていた。
一方、本番を明日早朝に控えたAqoursメンバーはというと・・・、
(ついに明日が、私たちの、スクールアイドルとしての、そして、Aqoursとしての、最後のライブになります!!でも、私、これが最後だと思っておりませんわ!!だって、私たちは心の中にある宝物を通じてずっとつながっている、ずっと一緒だってわかっていますから!!だからこそ、明日は、全力で、そして、悔いが残らない、とても楽しいライブ、見せてあげますわ!!)(ダイヤ)
(この9人で歌うのも明日で最後。私はこれまでこの9人で歌うための、いや、一緒に楽しむためにAqoursの曲を作ってきた。それも明日で最後。でも、私、寂しくない!!だって、ずっと心の中にある宝物を通じてずっとつながっていけるもの!!それに、これから私が作る曲だって9人で一緒に歌い続けてくれるはず、心の中の宝物を通じて!!だからこそ言える、明日、絶対に楽しいライブにしてみせる、って!!)(梨子)
(お姉ちゃん(ダイヤ)たち3年生とは最後のライブになっちゃったよ~。もし、これまでのルビィだったらきっとそれから逃げ出してしまったかも。だって、最後だと思ったらとてもいやな気分になるから・・・。でも、今のルビィは昔のルビィじゃない!!たとえお姉ちゃんと離れ離れになったとしても、心の中の宝物を通じてずっとつながっている、そのことに気づいたから、たとえ最後のライブになったとしても寂しくないもん!!ずっとずっとルビィたち9人は、Aqours、なんだ!!だからね、お姉ちゃん、そして、理亜ちゃん、このルビィの姿を見てください。たとえ最後のライブであっても寂しい顔なんてみせない、絶対に、みんな楽しい、そう思える、そんなライブにしてみせるから!!だからね、ルビィ、こう言うね、「みんな一緒に、ガンバルビィ」!!)(ルビィ)
と、Aqoursメンバー全員、明日の本番に向けて絶対に楽しいライブにしてみせる、そんな力強い心意気を感じさせていた。
こうして、絶対に楽しいライブにしたいと意気込むAqoursメンバー、対して、その「楽しむこと」、その言葉が持つ魔力に驚きと戸惑いを感じている月、それぞれの想いを見せつつ、ついに夜は明けようとしていた・・・。
そして、翌日早朝・・・。
「はいっ、最終リハーサル、おわりっ!!あとは本番を残すのみだよ!!それまで、各自、休憩!!」
と、「ラグーン」の屋上では月の掛け声がこだましていた。今は4時30分ごろ。あともう少しで延長戦本番を迎える。その本番となる時刻は今日の日の出の時間、5時40分ごろ。なので、それに向けて浦の星分校で仮眠をとったあと、午前3時ごろから延長戦のAqoursのライブ会場となる「ラグーン」屋上にて最終リハーサルを行ってきたのだ。そして、月の最終リハーサルの終了を告げる声とともに最終リハーサルは終わりを迎えた。あとは本番を残すのみとなった。これには、Aqoursメンバーみな、
(さぁ、私たち最後のライブ、絶対に後悔が残らないように、とても楽しいライブを目指して頑張るからね!!)(果南)
(やることはやった。あとは、千歌たちの想い、Aqoursみんなの想い、それを、理亜ちゃんに、そして、みんなに届けるだけ!!さあ、楽しいライブ目指して、やるぞ!!)(千歌)
(くくく、ついにヨハネの真の姿をみせるときがきたぞ!!迷えるリトルデーモン10号(理亜)を明るい未来へと導くため、このヨハネ、一肌脱ごうぞ!!)(ヨハネ)
と、延長戦本番に向けて、(今の)Aqours9人本当に最後のライブに向けて、絶対に楽しいライブにしよう、と、意気込んでいた。
また、このライブで重要な役目を担っていたあげはたち3人も、
「さぁ、あとは本番を残すのみ!!絶対に頑張るぞ!!」(あげは)
「「「オー!!」」」(あげは、東子、シーナ)
と、気合をいれていた。
そんななか、この延長戦、(Aqours側の)プロデューサーである月はというと・・・、
(最終リハーサルを見ている限り心配するものはなかった。いや、むしろ、絶対にすごいライブを見せてくれる、そう思えてしまうほどだった。やっぱり、Aqours、すごいよ・・・)
と、最終リハーサルでみせたAqoursのすごさに、実感、いや、感嘆、していた、とともに、
(でも、「楽しむこと」、それと、「部活動」、それってどんな関係性があるのかな?)
と、数日前に「ラグーン」の会議室で木松悪斗たちの前で言った言葉、「楽しむこと」、それと、月がつい「楽しむこと」と答えてしまった沼田の問い、「部活動(とはなにか)」、その関係性について悩んでいた。そのなかで、月、あることを思い出す。
(あっ、でも、Aqoursって、たしか、浦の星の部活の一つ、だったよね・・・。たしか・・・、浦の星女学院スクールアイドル部、って・・・)
そう、Aqoursはたしかにスクールアイドルではあるが、それと同時に浦の星の部活の1つでもあった。そして、2月の臨時理事会のあと、沼田が月に沼田の問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で1番大切なこととはなにか」、そのヒントを言っていた、「でも、静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうよりも、誰もが気づかずに実践しているかもしれないよ」って。
だが、そのヒントによってか、月、
「でも、たとえ浦の星の部活の1つであるAqoursと「楽しむこと」を結び付けたとしてもね、どう考えればいいのか・・・)
と、浦の星の部活の1つであるAqoursと沼田の問い「部活動とはなにか」、それに「楽しむこと」、その3つの関係性のことでずっと考えてしまっていた。いや、それだけでなく・・・、
(それに、部活といったらどこかの学校と勝負することになる。それって、勝つこと、が重要になるのでは?それって、「楽しむこと」、とは真逆のことになるのでは?)
と、勝負と「楽しむこと」の関係性すら悩んでしまう。
と、いうわけで、月、本番がはじまるまで、
(「楽しむこと」、Aqours、部活、勝負、勝利・・・)
と、5つの言葉の関係性についてついつい考え込んでしまっていた。