そんななか、ついに本番がきてしまった。午後5時ごろ、
(うぅ、なんか頭のなかで5つの言葉がぐるぐる駆け巡っているよ・・・)
と、月、考え続けたのか、少し疲れた様子だった。だが、月は本番となればすぐに本気モードになれる子、なので、
(でも、ついに本番だ!!プロデューサー自ら頑張らないと!!)
と、月、気合を入れなおし、今は延長戦のプロデューサーとしてこの延長戦をやり抜くことを決意する。
そして、月は自分のスマホをポケットから出す。月のスマホはとても高性能だった。が、これまではその高性能さを発揮する機会がなかった。それは、つまり、その高性能は無駄であった、といえるかもしれない。が、今回、この延長戦を撮るにあたり、月のスマホの高性能さがついに発揮することになるだろう。なぜなら、今回の延長戦、「私的」とはいえ、AqoursとSaint Snowの本気の勝負、となる。なら、相手であるSaint Snowに対して迫力あるライブをみせる必要がある。しかし、普通のスマホだとそれが伝わらないかもしれない。それならビデオカメラの方がいいのだが、月のスマホはそれに負けないくらいの映像を撮ることができる。いわば、月のスマホは、今、その高性能さを発揮できる機会を得たことになる。まわりから無駄だと思えるものも無駄だとはいえない、それを証明しているのかもしれない、月のスマホは・・・。
とはいえ、月、自分のスマホをAqours側に向けると自分のスマホ画面を見る。その画面にはこの延長戦用にカスタマイズされた生配信用のアプリ、その画面が表示されていた。メインとなる画面には自分のスマホで撮っているものを、その画面の下に表示された小さな画面には別のスマホで撮っているものを表示されている。そして、そのアプリは、Aqours、よいつむトリオ、聖良、そして、Saint Snow側にいるある人物のスマホとリンクしていた。
その月のスマホであるが、今、月のスマホの画面にはそのスマホのインカメラで撮っている自分の姿のほかに(小さい画面の方に)聖良のスマホで撮っているものが映っていた。その聖良側で動きがあった。最初はなにも映っていなかったのだが、聖良、自分のスマホを動かしたのか、突然、理亜の姿が映ってしまう。
そして、これが合図となった。月、このとき、
(ついに始まった!!さぁ、ここ1番の大勝負、絶対に成功させてやる!!)
と、こちらも意気込みつくと、ハイテンションで、月、大声でこう叫んだ。
「それでは、これより、ラブライブ!決勝延長戦を行います!!」
このハイテンションな月のボイスに小さな画面に映る理亜は唖然とあるも、月、そんなことを気にせずに、さらにギアをあげてこう叫びだした。
「決勝に残った2組を紹介しましょう!!」
この月のハイテンションな叫び声に、よいつむトリオ、
「すごい」「のりのりじゃん」「負けそう・・・」
と、弱気になってしまう。とはいえ、よいつむトリオもこの延長戦を行うために裏で頑張っていたのだ。本来、「ラグーン」の屋上は地元アイドルのライブ会場として使われたこともあったが、早朝での利用はこれまでやったことがなかったので屋上の照明だけでAqoursのライブを行うのは心もとないものだった。いや、そればかりか、音響用の機材の用意などもしないといけなかった。それをよいつむトリオはあげはたちに音響用の機材の扱い方を教えながらやってきたのだ。なので、よいつむトリオも立派な延長戦のメンバー、なのである。だからね、よいつむトリオ、そんなに自分たちのことをひけめに捉えないでね・・・。
とはいえ、月、そんなよいつむトリオの声とは関係なく、ついにテンションMAXになると、延長戦に出場する2組を紹介した。
「浦の星からあらわれた超新星!!初の決勝進出ながら実力はトップクラス!!スクールアイドル、Aqours!!」
この月の言葉とともにAqours9人が画面いっぱいに飛び出す!!
「「「「「「「「「オー!!!!!!!!」」」」」」」」」
・・・なんだけど、1つのスマホにAqoursメンバー9人全員を、それも超接近して自分たちを撮っているため、どうしてもぎゅうぎゅう詰めに見えてしまう・・・、それでも、この延長戦にかける想いはとても強いため、そんな状況でも元気いっぱいの表情をしていた、Aqoursメンバー9人とも・・・。
そんなAqoursを見つつ、月は延長戦に出場するもう1組も紹介する。
「そして、もう1組は、北の大地が生んだスーパースター、Saint Snow!!」
この月の言葉のあと、聖良は理亜に向けてこんな言葉を送った。
「今から私たちだけのラブライブ!決勝を行います・・・」
この聖良の言葉のあと、聖良は理亜に延長戦用の衣装を差し出すと、もし決勝に進出していたら披露する曲を2人で決めていたことを言うと、その衣装を理亜に私、聖良、とても重要なことを理亜に話した。
「もし、Aqoursと競うことになったら、決勝のステージに立つことができたなら、あなたに伝えようとしていた(ことがあります)」
これには、理亜、
「お姉さま・・・」
と言っては聖良に抱き着いてしまった。このときの理亜はとても苦しんでいたのだ。あることが原因で理亜はとても苦しんでいた。なぜなら、ある理亜の行動により、クリスマスのときのSaint Aqours Snowの合同ライブのあと、理亜がたった1人で新しく作ったスクールアイドルユニット、その仲間たちが次々と理亜から離れていったのだ。そして、ついには、理亜、たった1人になってしまった。この一連の流れのなかで、理亜の心中にはイタリア旅行に行く前のルビィと同じ心情があったのかもしれない。いや、それ以上に、理亜は暗闇という深淵の奥底に沈みこんでいたのかもしれない。なぜなら、その原因となるものは理亜自身が引き起こしたものだったからだった。その負い目ゆえに理亜は新しく仲間になった人たちに対しあるときを境にある行動をとるようになる。が、その理亜の行動により次々と離れていく仲間たち。それにより、理亜はルビィ以上の暗闇に陥ってしまった。そして、そんな暗闇を抱えたまま、理亜は今日まで生きてきた・・・のだが、今、目の前にいる聖良の言葉を聞いて、理亜、その深淵なる闇から離れることができる、そう感じ取ったのかもしれない。なので、このときの理亜は聖良のことを、天使、だと思ったかもしれない。
そんな聖良に抱き着く理亜のもとにとても大事な盟友の言葉が聞こえてきた。
「(ルビィと)一緒に進もう、理亜ちゃん!!」
そう、ルビィの声である。理亜にとってルビィはいろんな共通項を持つ、いや、盟友ともいえる存在だった。そして、ルビィは理亜より先に1人前の少女として成長を果たしていた。そんなルビィから理亜に対し意外な言葉が放たれた。
「ラブライブ!は遊びじゃない!!」
この言葉、いつもは理亜がルビィに、いや、Aqoursに言うセリフである。これまで、真面目に、一生懸命に、ラブライブ!を目指してきた理亜、そんな理亜だからこそ言える言葉、それを今度は逆にルビィが言ってきたのだ。これには、理亜、そして、聖良、も驚く。
が、このルビィの言葉に、理亜、ついに覚悟を決めたようだった。理亜、これまで苦しい表情をしていたのだが、ルビィの言葉で、一転、いつもの、真面目で、なにごとにも真面目で、どんあことでも、真剣に、本気で、全力をもって取り組む、そんな表情に変わった。と、同時に、画面越しに見えるAqoursに向かって、理亜、聖良、2人そろって宣戦布告した。
「歌いましょう!!」(聖良)
「うん!!」(理亜)
「2人で、このステージで、Aqoursと全力で!!」(聖良)
そして、ついに延長戦の火ぶたが切って・・・、
「あっ、ちょっとすいません。そのまえに、私たちの準備、してきますから、ちょっとまってください!!」(聖良)
ガクッ
この聖良の言葉に、Aqours、月、よいつむトリオ、ともにこけてしまう。たしかにそうである。理亜に黙って聖良はある人物とともに延長戦の準備をしてきたのだ。なので、理亜、このとき、まだ延長戦の準備なんてしなかったのだ。そんなわけで、Aqoursはすでに「ブラメロ」用の衣装を着ているのだが、Saint Snow側は、聖良は学校の制服姿、理亜にいたっては日課である朝のランニングをするためのジャージ姿だった。それに、ラブライブ!決勝用に用意していた曲とはいえ、聖良としてもその曲の歌詞やダンスを理亜の一緒に再確認することも必要だった。そういうことなので、Saint Snow側としてはAqoursと全力をかけたライブを繰り広げるための準備の時間が必要だった。で、そのことに気づいた延長戦の(Aqours側の)プロデューサーである月も、
「それはたしかに(理亜ちゃんにとって)突然の出来事だからね。全力をかけたステージを繰り広げるための準備は必要だね」
ということで、そこにいる全員の了解を得てSaint Snow側の準備のための時間を設けることにした。とはいっても、この時間については、月、この延長戦のプログラムを組み立てる段階ですでに組み込まれていたので、プログラムの進行についてはそこまで影響はなかった。
ではあるが、Saint Snow側ではある問題が残っていた。それは・・・。
「ところで、お姉さま、私たち、Saint Snowのステージ(ライブ)を撮る方はいるのですか?」
と、理亜、聖良に尋ねる。たしかにそうである。Saint Snow側は今のところ、聖良と理亜の2人しかこの場にはいなかった。その2人は、このあと、ライブを行うので、この戦いはいわば、リモートでの戦い、となる。なので、Aqours、Saint Snow、両方ともライブの様子を撮影するスタッフが必要となる。でAqours側には月やよいつむトリオがいる。でも、Saint Snow側は・・・、そこを理亜は指摘したのだった。
が、聖良はその点についてすでに手を打っていた。聖良、理亜に対し、
「それなら心配ありません。すでに助っ人は呼んでおります」
と言うと、その助っ人がいる方を向いて理亜に対してこう言った。
「○○さん、出てきてください!!」
その理亜の言葉のあと、物陰からある少女が出てきた。その少女、聖良と理亜が通っている学校の制服を着ていた。で、その少女は聖良と理亜に対しこう告げた。
「聖良先輩、呼んでいただきありがとうございます。そして、理亜さん、お久しぶりです」
で、この少女を見た瞬間、理亜、びっくりしたのか、ただただ唖然となってしまい、その拍子に、
「あっ、あなた・・・」
と、言葉に窮してしまった。その少女であるが、聖良にとって1番の親友であり、聖良が悩んでいるときや困っているときにはいつも聖良を助けてくれていた、それでいて、Saint Snowの活動を、2人の活躍を、裏から支えていた。そのため、まわりのみんなから、Saint Snow第3のメンバー、とも言われていた、その少女は・・・。そして、その少女も理亜と同じく自分の心に深き深淵なる闇を持つ者だった。この少女と理亜との関係とは・・・。それはまた別の機会に話すことにしよう。
そんなわけで、Saint Snowがライブの準備をしているあいだ、Aqoursと月、よいつむトリオ、それに、あげはたち3人は最後の打ち合わせをしていた・・・のだが、このとき、月、
「で、なんでここに沼田のじっちゃんと(「ラグーン」の運営会社の)会長がいるわけ!?」
と、ここにいなくてもいい客、沼田とこの「ラグーン」の運営会社の会長がいることにツッコミを入れる。だって、この2人、月、ここに呼んでいたわけではなかったのだ。けれど、なぜかここに2人は来てしまっていたのである。
で、この月のツッコミに対し、運営会社の会長はというと・・・、
「オホホホ・・・」
と、ただ笑っているだけ。逆に沼田はというと・・・、
「まぁ、別に気にせんでもよい!!来年度からの静真の生徒になる者たちの晴れの舞台をみん来ただけだからな!!そんなに気にするな!!」
と、月に自分たちのことなんて気にしないように言う。これには、月、
「はぁ、そうですか・・・」
と、半場諦めた表情で言った。
そんなときだった。下から、
ボコ ベタ ガチャン ガチャガチャ
と、なにか物騒な物音が聞こえてくると、つづけて、
「ギャフッン!!」「あれ~~~!!」「覚えていろよ!!」
と、つい最近聞いたことがあるような人たちの声が聞こえてきた。が、この捨て台詞みたいな声と一緒にその物騒な物音はピタリとやんだ。これには、月、
(ところで下でなにが起きていたんだ・・・)
と、少し気になるも、すぐに、
(でも、もうすぐ延長戦のステージが始まる。そのためにも今はこのライブのことだけ考えないと!!)
と、延長戦のことだけを考えるようにした。
ただ、このときの沼田、この物騒な物音を聞いてあることを考えていた。
(ふんっ!!あんだけ来るな、って、言っていたのに、ここに来たなんて、あとできつい罰を与えないとな!!)
どうやら、沼田、下から聞こえてきた物騒な物音となにか関係性があるみたいのようだ。だが、それでも、沼田、
(まぁ、それは後回しにして・・・)
と、それについては後回しにしつつ月に対してある思いを投げかけていた。
(さて、月生徒会長、AqoursとSaint Snowの真剣勝負、おぬしならどうみるかな?スクールアイドル部とスクールアイドル部、同じ部活の真剣勝負、本気のバトル、そのなかで月生徒会長は知ることができるかな、「部活動」と「楽しむこと」、その関係性、そして、そのなかで部活動にとってとても大切なものとはなにか、をね・・・)