そして、沼田は自分の話へと戻った。
「木松悪斗が言う戦うこと、勝つこと、とは、ただ勝ちにいくだけのもの。それに対し、わしが言う、戦うこと、勝つこと、とはそれとはまったく違うものだ!!それはな、ただ勝ちにいくのではなく、お互い相手のことをリスペクトしつつ、自分たちが持つものすべてを賭けて全力全開で戦い打ち勝つもの、なんじゃよ!!」
「楽しい」「好き」、この気落ちによって日々のきつい練習にも耐え、自分たちが持つものすべてを高めあった同士なら自然と相手のことをリスペクト(尊敬)する。そう、お互いが、相手の実力、熱意、頑張り、その他もろもろ、そのすべてを認め合ている、こうなれば、お互い、相手のことをリスペクトしつつ、自分たちが持てる力そのすべてを賭けて勝負しようとする。だって、お互いいくつもの失敗、挫折を味わいながらも「好き」「楽しい」という最強の気持ちでもって自分たちのすべてを最強なまでに引き上げた者同士じゃ少しでも手を抜けば負けてしまうのは目にみえている。だからこそ、お互い自分たちが持つものすべてを賭けて死力を尽くそうとする。その戦いこそ沼田のいう戦い、であった。
さらに、沼田はその戦いによる勝利についても力説した。
「そして、この戦いの果てにあるもの、それこそ、「意味のある勝利」なのじゃ!!自分たちが持つものすべてを賭けて死力を尽くして得た勝利、それはこれまで苦しい想いで頑張ってきた、「好き」「楽しい」という最強の気持ちで自分たちが持つものすべてを高めることができた、そんな自分たちに対する勲章、といえることができるのじゃ!!いや、自分たちの頑張りがみんなから認められた、その瞬間、といってもいいだろう!!」
さらにさらに、沼田は勝負に負けたチームについても語った。
「また、負けたほうも負けたほうで得るものが大きい。たしかに負けたかもしれない。けれど、死力を尽くして戦ったんじゃ、負けたことに対する悔いなんてないかもしれない。いや、むしろ、すがすがしいものを感じているのかもしれない。そして、負けた者はこう思っているかもしれない、この負けをバネに「好き」「楽しい」という気持ちともにまた頑張っていける、今度こそ自分の力で勝ってみせる、ってね!!」
人というのはお互いのことをリスペクトしつつ自分たちがもつものすべてを賭けて全力全開で死力を尽くして得た勝利ほど最古のご褒美はないのかもしれない。だって、自分たちのすべてを賭けて勝負し勝ったことでこれまで自部たちがしてきたつらい練習などが勝利というかたちで実を結んだ、それを実感することができるのだから。そして、その達成感こそ部活をする上でとても重要だったりする。なぜなら、この経験で、さらにこの達成感をまた得たい、そう思ってさらに自分のすべてを磨こうと思うから、さらに、それが「好き」「楽しい」の好サイクルにより人をさらなる高みへと昇らせることになるのだから。「ただ勝つ」ことだけを目指すものとは違い、このときの勝利は人をもっと進化させることができる、それこそ、沼田のいう、「意味をもつ勝利」、であった。
また、この勝利には負けたほうにもメリットがある。それは、負けたとはいえ、自分たちが持てる力をすべて出し切った、戦ったのである、たとえ負けて悔しい思いがあるのかもしれない。が、それでも、自分たちはやりきった、という思いのほうが強いかもしれない。さらに、この敗北そのものが自分たちにとっていい経験になる。なぜなら、人はこのような敗北をしたとき、なぜ負けたのか、その理由をすぐに分析し、それを次に活かそうとするからだ。さらに、この敗北を教訓に人はさらに自分を磨こう、と、成長しよう、と、頑張ることができるのだ。それは、今まで自分たちが目指したもの以外にもいえる。さらに、その敗北によって今まで自分たちが目指していたものへの道が閉ざされたとしてでもいえることである。人というのはたとえ目指していたもの、夢への道が潰えたとしても、なにかのきっかけにより、また別のもの、別の夢を目指すことができる生物である。そこで活かされるのは、これまで目指してもの、その夢の道の途中で得た経験、だったり、想い、キズナ、だったりする。なので、敗北したという経験そのものが自分たちにとってまた別のかたちで強力な武器となることができるのだ。そう考えると、勝っても負けても、「意味のある勝利」を目指して、魂と魂のぶつかり合い、勝負することこそ意味をもつのかもしれない・・・。
そんなわけで、あまりに長かったが、ようやく、沼田、今回のまとめにはいった。
「と、言った具合に、わしは「部活とはなにか」「部活をする上で一番大事なものとは」についてざっと言ってきたが、これらについてはこうまとめたいと思う。
部活動というのは学生が部活そのものが好きになり、部活のみんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していく、そんな貴重な場である!!つまり、
「部活動とは楽しむことがすべて」
「部活動にとって一番大事なものとは、その部活が好きであり、みんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していくこと」
なのじゃ!!
そして、そのなかで学生たちは自分たちが持つ未知のパワー、いや、パワーの原石をみんなと一緒に楽しみながら磨いていくことで、「(部活が)好き」「みんなと一緒にもっと楽しみたい」、そんな最強の想いとともに自分たちが持つものすべてを成長させていくのじゃ!!さらに、たとえ、同じ志をもつ者同士が死力を尽くして戦って勝ったしても、負けたとしても、お互いに意味をもつものとなるのじゃ!!それはな、
「勝ったことで、これまでやってきた苦労が報われた、そんな達成感を得ることができ、それが、自分たちにとって自分たちが持つ力をさらに高めようと思う、そんな起爆剤になるんじゃぞ!!そして、負けたとしてmこ自分たちが持つものすべてを賭けたこと、死力を尽くしたことでやり切ることができた、この敗北そのものがいい経験となった。それがこれから進む道において強い武器となる」
と、いうことなんじゃよ!!」
と、強気でまとめた沼田、であったが、つい本音が漏れてしまう。
「まぁ、本当のところ、相手同士、お互いをリスペクトしつつも自分たちが持つものすべてを賭けて、全力全開、死力を尽くして行う戦いというものは、第三者、死力を尽くした戦いを見に来ている者からしても手汗握る展開にハラハラするものなのじゃよ!!いや、そこにいる者すべてがその戦いを楽しみながら見ているものなのじゃ!!で、その者とは、野球、サッカー、でいうところの監督やマネージャー、試合のアナウンサー、ボールキーパーなど、スクールアイドル関連だと、プロデューサーやマネージャー、スタッフなどじゃ。白熱握る戦い、いや、戦いじゃなくても、路上ライブやちょっとしたお祭りのような小さな催し、学園祭や体育祭といった学校行事、スクールアイドルフェスティバルや沼津夏祭りのような大きなイベントでもそのことはいえる。そこに関わる者すべてがそれに対して「好き」であると同時に「みんなと一緒に楽しみたい」と思うことができるのであるなら、たとえどんな困難があっても必ずやり遂げることができる、必ず成功する、といえるだろう。そして、たとえ最初それについて「好き」でなくても、ただやることになったからやるだけ、と思っている者がいたとしても、まわりのみんなからそれに対して「好き」であり、その者たちと一緒にそれをやっていくうちにそれに対して、「楽しい」、そんな気持ちが生まれてしまえば、その者も自分が知らないうちにそのものが「好き」になってしまい、しまいには、「みんなと一緒にそれを楽しみたい」、と思えるようになるものなんじゃよ!!それほど、「好き」「楽しい」の好サイクルによる影響力はとても強いものなんじゃよ!!いや、人を、人類を、進化させるためにはその好サイクルこそ必要だといえるのじゃぞ!!」
人というのはまわりのものの影響を強く受けることでそのまわりの色に染まりやすいものである。たとえば、まわりに強い者がおり、その者が弱い者をいじめていれば、それに抗う強い意志がないかぎり自分もその弱い者をいじめたり、たとえそうでないとしても、自分は関係ないとばかりその弱い者を無視する傾向がでやすい。むろん、その逆もある。まわりの者がやっていることにあまり興味がないと思っている者がおり、その興味がない者がまわりの者と一緒にそれをするとしよう。もし、そのまわりの者がそれを行うことがとても好き、であれば、そのまわりの者は楽しみながらそれをやっていることになる、こうなると、興味を持っていない者もそのまわりの者たちが楽しくやっているのを見てその者もなぜか楽しく思えてきてしまうものなのである。こうして、それをまわりの者と一緒に繰り返していくうちに、それについて最初は興味をもっていなかった者も自分が知らないうちにそれを好きになってしまい、同じ好きもの同士であるまわりの者と一緒に楽しいことをもっとしたい、そんな気持ちになることで自ら進んでそれを行ってしまう、そして、それをさらに好きになってしまう、そんなことが起きるだろう。そう考えてしまうと、「好き」「楽しい」の好サイクルは沼田の言う通り、たとえ好きでないものすら「好き」という色に染めてしまうほど強い力を持っている、ともいえる(むろん、その逆もしかり、なのだが・・・)。
そして、それは月にも当てはまる。月はスクールアイドルについてあまり知らなかったのかもしれない。だって、最初、千歌たち新生Aqoursを宿敵である木松悪斗を倒すためだけの道具として使おうとしていた?のだから。が、月自身がAqoursとのイタリア旅行を通じて千歌たちAqoursメンバーと触れ合うことで、少しずつ、Aqoursのこと、スクールアイドルのことがどんどん「好き」になっていったのかもしれない。そして、今、月はそんなとても好きなAqours、スクールアイドルのために、もっとみんなと一緒に楽しみたい、と思うあまり、ラブライブ!決勝延長戦の(Aqours側の)プロデューサーを引き受けたのかもしれない。むろん、そこに至るまでの過程のなかで月は成長することができた。最初、大親友である曜と一緒に学校に通いたい、それゆえに、宿敵である木松悪斗を倒すことのみを考えていた。が、今では、Aqoursのみんなと一緒に素晴らしいステージを作りたい、みんなと一緒にスクールアイドルを楽しみたい、と思えるようになってきた。むろん、それはお披露目ライブを行おうとしているよいつむトリオやあげはたちにも当てはまる。不安・心配という深き海・沼にもがき苦しんでいた千歌たち新生Aqours1・2年のため、少しでも静真本校と浦の星分校の統合を認めてもらいたい、そのためによいつむトリオら浦の星の生徒たちとあげはたち静真Aqours応援団は新生Aqoursのお披露目ライブを行えるように行動を開始した。最初のうちは夢物語のようだったが、それでも必死になって行動した。そして、その行動がもとで少しずつ形となっていった。さらに、Aqoursがスペイン広場でのライブを成功させたことで新生Aqoursのお披露目ライブは現実味を帯びるようになると、今度は沼津の人たちが、協賛、ライブへの出店などのかたちで新生Aqoursのお披露目ライブを応援するようになった。その人たちの根底にあるもの、それは、Aqoursのことが好き、スクールアイドルのことが好き、だからこそ、沼津のみんなと一緒にこのライブを楽しみたい、そんな気持ちかもしれない。そんな意味でも、「好きであること」「みんなと一緒に楽しむこと」という気持ちはとても大切だといえる。
なのだが、沼田、ついうっかり、あることを言ってしまった。
「まぁ、人というのは、そんな「努力・友情・勝利」という三要素が入った物語が好きだもんね!!それに、相手をリスペクトしつつすべてのものを賭けて、全力全開で、死力を尽くして戦う、というシチュエーションはとても燃えるもんだよね!!さらに、最初、まったく力がなかった主人公が仲間たちと一緒になって力をつけていき、最後、大きな偉業を成し遂げる、といった物語、みんな、とても好き、だもんなぁ!!」
この沼田の発言には、会議室にいるみんな、
ガクッ
と、こけてしまった。沼田のじっちゃんよ、それ言うたらあかんでしょ・・・。
と、おちゃめなことを言った沼田に対し、沼田の隣にいた(「ラグーン」の運営会社の)会長はこの沼田の持論を受けてこう発言した。
「まぁ、ちょっとおちゃめな沼田殿はほっといて(「ほっとくな!!」by沼田)、私も沼田殿の意見に賛成だ。学校というのは学生たちがいろんな経験をしていくうちに自分の力などを成長させていく場所、そして、部活動とはそれをする上でもうってつけの場所である。そして、部活動において、学生たちはその部活でやること、いや、部活動そのものが好きであり、そんな好きなもの同士、日夜、楽しみながら切磋琢磨しながら部活をやることでいろんな経験を積むことができ、それによって自分たちが持つ能力や心などを成長させることができる。こうして、学生たちはそんな経験をしていくことで一人前の大人へと成長、社会へと羽ばたくことができるようになるのだ。だが、木松悪斗の考え、ただ勝つこと、のみを目指してしまうと、勝つことにのみ執着してしまうことになる。そうなると、学生たちは一人前の大人へと成長することを忘れてしまう。そうなれば、その学生たちは子どもの心のままで社会に進出することになる。こうなってしまうと、学生たちはおろか、日本の種界全体がおかしくなってしまう。私はそれを危惧している。だからこそ、私は沼田殿の考えに賛成であり、沼田殿の判定は妥当だと考えておる」
沼田の持論を援護する運営会社の会長・・・、しかし、この男はこの2人が言うことになびかなかったようだ。
「ふんっ!!そんな説教、この私には効きませんよ、この木松悪斗様にはな!!」
そう、木松悪斗である。あんなに沼田が力説していたのにも関わらず、自分の考えに固執してしまっていたのである、木松悪斗は。そんなわけで、木松悪斗、持論を展開する。
「言っておきますが、今の世の中は「勝利こそすべて」なのですよ!!負け、すなわち、人生の終わり、なんですよ!!それは人が生まれたときから、誰かとの競争、戦いに晒されているからですよ!!そして、生き残るためには他人との競争、戦いに勝ち続けるしかないのですよ!!負けたらそこでゲームオーバー、再び這い上がることなんてできなくなる!!それは自分の子ども、子孫にも影響する!!、その家計は未来永劫底辺を這いずり回るしかない!!だからこそ、勝ち続けることがとても大事なんですよ!!」
が、そんな木松悪斗の持論に対して、沼田、ばっさりと切る。
「だからこその学校であり部活なのだ!!学校での経験、特に部活動を通じて得た経験、想い、キズナ、というものは一生の宝物としてずっと学生たちの心の中に残っていく。そして、その宝物を通じてずっと仲間たちとつながっていけるし、厳しい社会を生き抜く糧にもなる!!さらに、ことと場合によってはそれにより社会のなかで躍進することだってできる!!「好き」であること、「みんなと一緒に楽しむこと」こそ、子どもたち、学生たちにとってとても大切なことなのじゃ!!」
沼田の力強い言葉・・・だったのだが、自分の考えにのみ固執している木松悪斗の心に響いたわけでもなく、
「そんなもん、この私には関係ない!!おれの言うことが正しいのだ!!」
と、自分の考えのみを主張、そればかりか、
「ふんっ、こんなわからずや、頑固爺めっ!!こうなったら、力づくで(月の屋上使用申請受理を)止めてやる!!」
と、言っては自分の手元にある書類を取り出す。そこには・・・、
「使用申請受理却下書」
そう、木松悪斗、最悪の場合に備えて屋上の使用申請受理却下の書類をちゃっかり自作して用意していたようだ。そして、それを、今、木松悪斗は使おうとしていた。もし、「ラグーン」運営会社の会長がそれに捺印したら、半場強制的に月の屋上使用申請受理が却下されてしまう。そんなわけで、木松悪斗、
「裏美、旺夏、あの親父(運営会社の会長)を拘束しろ!!」
と、自分の隣にいる裏美と旺夏に運営会社の会長を拘束するように命令!!すぐさま、裏美、旺夏、目にもとまらぬ速さで運営会社の会長を拘束すると、
「それじゃ、(運営会社の)会長、捺印してもらいますからね~」
と、木松悪斗、一歩ずつ、悪人のオーラを出しながら運営会社の会長へと近づいていった。