が、沼田の文書にはそんな母親の心配していることについての答えも書いていた。それは・・・。
「でも、「みんなと一緒に部活動を楽しむ」ことで浦の星の生徒たちと同じように部活動に対する士気が低下してしまうと心配している保護者の方々もおるかもしれない。が、それは間違いである。むしろ、部活動を楽しむことで、自分の能力、技術、心、そのすべてが成長し、部活をもっと好きになる、もっと好きになりたいからもっと楽しもうとする、そんな好循環を生むのだ。だからこそ、楽しむことで部活動に対する士気が下がるわけではなく、むしろ、部活動に対する士気があがるものなのである。さらに、他校との戦いの場においてもそんな仲間と一緒に部活を楽しむ者同士戦うことで熱いバトルが起きる。部活動が好きでみんなと一緒に楽しもうとする、それは相手との関係も一緒のことがいえる。戦う者同士その戦いを一緒に楽しもうとする。が、それだけではお互いともに馴れあいになってしまう。これでは勝負がつかない。ならばどこで勝負をつけるか、それは、これまで自分が仲間たちと一緒にやってきたことで成長してきた、自分の能力、技術、心、さらに、「楽しいこと」「部活が好きであること」、その気持ちの強さ、である。そのために、戦う者同士はお互いのことをリスペクトしつつも自分が持つものすべてを賭けて全力全開で死力を尽くしてのバトルを行おうとする。それはそうしないと戦う相手に失礼だから、というのもあるが、そうすることでとても発熱したバトルとなる。だからこそ、「楽しむこと」「好きであること」は部活動に対する士気低下につながることにはならない」
が、この沼田の言葉を見ても、母親、
「本当かな?」
と、逆に心配になってしまった。
が、沼田の文章の続きがあった。それを読むと、母親、
「はっ!!!」
おt、驚いてしまった。なんと沼田の文章の続きにはこう書いていた。
「もし、それが本当かどうか疑問に思っている方がおりましたら添付された動画ファイルその1を見てほしい。この動画はある戦いを撮ったものである。参考になるだろう」
この沼田の言葉に、母親、娘である女子高生と一緒にタブレットの画面を見ながらメールに添付されていた動画ファイルその1を再生してみた。
すると、突然、
トゥトゥ トゥートゥートゥー トゥトゥ トゥートゥートゥー
と、いきなり音楽が鳴り出したではないか!!で、そのタブレットの画面に映る少女2人組を見て、女子高生、はっとする。
「あっ、これって・・・、Saint Snow・・・」
そう、タブレットに再生された動画に映っていたのは、なんと、Saint Snow、だった。これには、女子高生、母親、ともに、
「なんか自身に満ち溢れている・・・」(母親)
「いや、私にはなんか楽しそうにみえるし、それでも全力全開で死力を尽くしているように感じるよ・・・。それどころか、Saint Snowの2人とも、スクールアイドルが好きであることを前面にだしているような気がする・・・」(女子高生)
と、Saint Snowの、全力全開で、死力を尽くしている、けれども、自信に満ち溢れており、それでいて、戦いそのものを楽しんでいる、いや、それ以外に、Saint Snowの2人ともスクールアイドルが好きであることを全面にだしている、そんなステージに圧倒されていた。まさに、圧巻のステージ、いや、沼田が言う「楽しむこと」「好きであること」、それを体現しているステージだった。
そして、Saint Snowの曲が終わる。このとき、女子高生、
(あんなに全力全開の圧巻のステージ、なのに、まさか笑顔で楽しんでいる・・・。でも、これで終わり、と思うとちょっと寂しいかな・・・)
と、これまで見たことがないステージが終わることにちょっと寂しさを感じていた。
が、動画にはまだ続きがあった。突然、
トゥ トゥトゥートゥトゥトゥ トゥトゥトゥ トゥトゥトゥトゥー
という曲の始まりととおにどこか見たことがあるスクールアイドルがパフォーマンスを始めた。こにれは、女子高生、すぐに、
「あっ、このグループって、Aqours!!」
と、今、パフォーマンスをしているグループがAqoursであることに気づく。と、同時に、
「で、でも・・・、Aqoursってたしか、報告会のときにダメダメだったはず。それなのに、今見ているのはそれとは別人・・・。これって一体・・・」
と、絶句していた。女子高生がもつAqoursのイメージはあの部活動報告会で見た(新生)Aqoursの、不安・心配の深き海・沼に陥ってしまいダメダメなパフォーマンスをした姿だった。が、今、その女子高生の前で繰り広げられているAqoursのパフォーマンスはその報告会のイメージすら払しょくするくらいの圧巻のパフォーマンスだった。さらに、
「そして、Aqoursも全力全開で死力を尽くしてパフォーマンスしているのに・・・笑顔・・・楽しんでいる・・・」
と、これまた絶句してしまう。そう、AqoursもSaint Snowと同様、全力全開で、死力を尽くしている、それなのに、笑顔、この戦いそのものを楽しんでいる、そんな風に見えていたのだ。
そして、曲が終わると同時に動画も終わった。そのとき、女子高生は大声で、
「す、すごい・・・。Saint SnowにAqours、圧巻のステージだったよ。それに、2組とも相手のことを認め合いつつも手加減なんてしない、全力全開、死力を尽くしてのパフォーマンス、それを2組とも繰り広げていた。それでも2組とも戦いそのものを楽しんでいた。私、こんなステージ、いや、戦い、見たことがないよ!!とても感動したよ!!これが沼田のじっちゃんが言っていたことなんだね!!」」
と、この戦いの感想を言いつつも沼田が言っていることを理解していた。
一方、母親はというと、
「うん、そうだね。あなた(女子高生)の言う通りだわ。あんな圧巻とした、それでいて、戦いを一緒に楽しもうとしている、そんな戦いは見たことがないよ・・・。これが沼田殿が言いたかったことなのね・・・。お互いをリスペクトしつつ全力全開の死力を尽くした、それでいてそれすら楽しんでいる、そんな戦いだったね。そして、これが沼田殿がいう、「楽しむこと」「好きであること」のすごさなんだね・・・」
と、娘である女子高生と沼田の言うことに同意していた。このとき、母親、
(私はこれまで木松悪斗様の考え、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、が正しいと思っていた。けれど、この戦いを見て初めて知った、「楽しむこと」は遊びでもなんでもない、むしろ、「楽しむこと」こそとても重要なんだね。みんなと一緒に楽しむ、そして、部活がもっと好きになる。こうして仲間たちと一緒に成長していく、「慈愛の心」を育てることにもつながる。そして、その者同士が戦うとき、お互いのことをリスペクトしつつ、全力全開の死力を尽くした戦いをする、そのなかでその戦いを楽しもうとしている。そう考えると、「楽しむこと」が持つ莫大なパワーを感じてしまうよ・・・)
と、沼田が言う「楽しむこと」のすごさを痛感していた。さらに、
(それに、沼田殿の言う通り、戦いを楽しみながらも白熱した戦いを繰り広げているあたり、AqoursとSaint Snow、同じスクールアイドル部という部活だけど、ともに部活に対する士気が高いとみえる。いや、それ以上だよ・・・。これだと日頃から部活動に対する士気が高いようにみえる。こう考えるだけで(沼田殿が言う通り)「楽しむこと」は士気低下につながらない、いや、それ以上に士気がどんどん高くなっていようにみえるよ・・・)
と、自分が持つ疑問が解消されたように感じられた。
が、このとき、娘である女子高生はこんなことを言った。
「お母さん、あのね、Aqoursって浦の星のスクールアイドル(=生徒)だよ。でも、たしか、木松悪斗様、「浦の星の生徒は部活動に対する士気が低い」って言っていなかったけ?」
これを聞いて、母親、はっとする。
(あっ、たしかに、木松悪斗様は「浦の星の生徒は部活動に対する士気が低い」って言っていたよね。けれど、今のAqoursが浦の星の生徒だとするとそれ自体違うことになる。浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低いわけじゃない、逆に士気が高いことになる・・・)
そう、ここで、母親、木松悪斗の考えが違うことに気づく、「勝利こそすべて」、その信条でのみしか部活動に対する士気が高くならない、だからこそ、それを信条としている静真の部活動はそれに対する士気が高い、これまでそう思っていた母親、が、沼田の文書と添付されていた動画により、「楽しむこと」を信条にしても部活動に対する士気を高めることができる、それが浦の星の生徒たちにも言える、そのことに・・・。
母親、このことを受けて、娘である女子高生にこう話した。
「ねぇ、もしかすると、浦の星の生徒たちって逆に(部活動に対する)士気が高いのかもしれないね。私たち、勝利のことがばかりこだわりすぎて「(初戦敗退続きの)浦の星の生徒たちは(部活動に対する)士気が低い」と勘違いして浦の星の生徒たちのことを見下していたのかもしれないね・・・」
と、反省の弁を言いつつも浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が高いことを認めた。これには女子高生も、
「うん、そうかもね・・・」
と、母親に同意していた。
ただ、沼田の文書はまだ続きがあった。女子高生、さらにその先を読む。
「動画を見てわかったと思う。「楽しむこと」「好きであること」、それは部活動に対する士気を下げるどころか高めるものである。さらに、その者同士の戦いはお互い相手のことをリスペクトしつつ全力全開の死力を尽くしつつも白熱した、そして、お互いとも楽しいと思える戦いとなる。そして、この戦いはお互いともに得るものは大きい。この戦いによって、お互い、自分たちの心などすべてをさらに成長させることができる。また、この戦いを教訓にさらに自分たちを磨こうとするだろう。戦いを通じて、心技体、すべてを向上させることができる、それこそ、「楽しむこと」「好きであること」の無限のパワーだといえる。
一方、勝つことだけに執着してしまうとそんなことなんて起きないかもしれない。「勝った」「負けた」だけの気持ちしか起きないのかもしれない。むしろ、負けたことで挫折しもう2度と立ち上がることができなくなるかもしれない、そんな危うさすらはらんでいる。だからこそ、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」という考えについては沼田としては疑問に残ってしまう」
この沼田の文書を見て、母親、あることを悟った。
(た、たしかに沼田殿の言う通りかも。私たちはこれまで木松悪斗様の言う通り、「勝利こそすべて」、勝つことのみに執着していた。けれど、学校というのはいろんなものを学び成長させる場所。娘(女子高生)もその学校で仲間たちと一緒に、心技体、すべてを成長させてきた。けれど、「勝利こそすべて」という考えがあると社会にとってとても大切なもの、「慈愛の心」、を育てることができない。もしかすると、それによって娘はほかの人のことを見下すような大人に成長するかもしれない。けれど、「みんなと一緒に楽しむ」、それを心掛けることで「慈愛の心」を含めて娘はとてもいい大人、人のことを思いやる大人に成長できるのかもしれない。そう考えると、沼田殿の言う通り、学校でも部活でも「みんなと一緒に楽しむこと」「好きであること」がとても大切なんだね・・・)
そして、母親は娘である女子高生にこう言った。
「ねぇ、もしかすると、私たち、木松悪斗様の考えに縛られていたのかもしれないね。部活だけでなくすべてにおいても「勝つこと」を優先してきた。そのためにとても大切なもの「慈愛の心」を育てることができないばかりか心そのものを成長させることができなかったのかもしれないね。だからこそ、人として成長していくには、沼田殿の言う通り、「楽しむこと」「好きであること」、それがとても大切なのかもしれないね」
これには娘である女子高生も、
「うん、わたしもお母さんと同じ考えだよ!!」
と、激しく同意していた。
そして、沼田の文書はついに終わりを迎える。
「少し長かったが最後まで読んでもらえて感謝しておる。これには私の手紙は終わる。今日、家族でこのことを話し合ってみたらどうかな。それは、今後、自分たちの子どもの育て方にとても役に立つかもしれない。
私の話は以上だ。それではこれにて失礼する。
2018年3月○○日 沼田」
ついに読み終わった、そう思った女子高生、母親に対してある決意を語った。
「わ、私、この文書を見て自分の考えが愚かだと思ったよ。私、もっと部活を、みんなと一緒に部活を楽しもうと思う!!もっと部活(テニス)のことを好きになろうと思う!!そして、みんなと一緒にもっと成長していきたい!!立派な大人の女性になりたい!!」
これには母親も、
「うん、そうだね。私もあなたと同じ思いだよ。あなたのやり方で部活のみんなと一緒に部活を楽しんで成長していきなさい!!」
と、優しく答えた。
が、実は沼田の文書はまだ続きがあった。これには、女子高生、
「あっ、まだ手紙に続きがあった!!」
と、驚くと、その文書の続きを言った。
「追伸
今、浦の星の生徒たちは来月(4月)初旬、沼津駅南口付近にて新生Aqoursお披露目ライブを開催しようとしている。それに向けて浦の星の生徒たちの士気はとても高まっておる。が、規模が巨大フェス並みとなるため、人材が不足しておる。あんな素晴らしいステージを繰り広げた、浦の星、いや、来年度からは静真を代表するAqoursのライブである。とても素晴らしいものになるだろう。なので、もし、新生Aqoursと一緒に、浦の星のみんなと一緒に素晴らしいライブにしたい、一緒に楽しみたい、そう思える者がいたら、静真高校生徒会、もしくは、稲荷あげは君率いる「静真Aqours応援団」まで一報を頼む」
これを見た瞬間、女子高生、すぐに、
「わ、私、私もこれに参加してみたい!!みんなと一緒に新生Aqoursの素晴らしいライブを作りたい!!」
と、なんと、新生Aqoursお披露目ライブ、その準備への参加を表明してしまう。さすがに母親からは、
「でも、テニス部はどうするの?」
と、少しだけ心配そうに部活について心配そうに言うも、女子高生、すぐに、
「それは大丈夫だよ!!だって、今、部活、休みだもん!!」
と、元気よくこたえた。まぁ、これには理由があって、このとき、静真の部活動のほどんどがお休みだった。なぜなら、(木松悪斗の多額の寄付金を使って)静真の部活動棟の改修工事を行っていたからだった。部活動棟にあるトレーニングルームを含めての全面的な改修工事になるため、その改修工事期間となる春休みのあいだ、部活は自主練が中心となっていた。なので、沼田、それを逆手にとって静真の全校生徒に新生Aqoursお披露目ライブ準備の参加を呼び掛けたのだ。そんなわけで、
「それだったらあなたの意思を尊重するわ」
と、母親もそれについて承諾、こうして、女子高生のお披露目ライブの参加はすんなりと決まった。
が、文書の追伸はもう1つあった。それを母親が読む。
「追伸2
添付ファイルその2はある男の本性を暴いたもの、そして、ある少女がその男に対して戦いを挑み、さらに、この私、沼田によってその男が論破された動画である。参考程度に見てもらいたい」
で、母親、添付ファイルその2の動画を再生すると、
「お前たち、静真高校の生徒たちは勝利を目指すため、日夜、勉強や部活、スポーツに打ち込むべきなのだ!!そして、そのあかつきにはすべての勝利を自分を育ててくれた静真にささげるべきなのである!!」(木松悪斗)
「でも、本当のところ、静真での生徒たちの手柄はすべて木松悪斗様のものになるのでしょう!!だって、木松悪斗様は静真の大スポンサーで、静真のなかで1番権力をお持ちの方なのですから・・・」(月)
「う~ん、たしかにその通りだ!!だって、この俺こそ静真の中で1番偉いんだから!!」(木松悪斗)
と、木松悪斗が月に対して自分の本性をさらけ出したシーンや、
「それって、もしかして・・・、「楽しむこと」「みんなと一緒に楽しむこと」・・・ですか?」(月)
と、沼田の問いに月が答えるシーン、そして、
「つまり、「部活動とは楽しむことがすべて」「部活動にとって一番大事なものとは、その部活が好きであり、みんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していくこと」なのじゃ!!」(沼田)
と、沼田が木松悪斗を論破するシーンが流れていた。そう、この沼田の文書には、あの延長戦のライブ会場として月が運営会社に申請していた「ラグーン」屋上の使用、それをめぐる月と木松悪斗の戦いの出来事、いや、あの日の会議室の出来事を撮った動画が添付されていたのである。この動画、なんと、鞠莉と沼田がグルとなって撮影したものだった。沼田はあの日、「ラグーン」運営会社の会長に対し秘密裏に会議室の何か所かに隠しカメラの設置するように依頼、運営会社の会長はそれに従い会議室の何か所かに隠しカメラを設置した。で、その隠しカメラを使って月と木松悪斗の戦い、その一部始終を撮影していた。さらに、鞠莉、自分のスマホの無料通話アプリを起動させつつもこっそり自分の服にも隠しカメラを仕込んで木松悪斗の言動をすべて撮影していたのだ。それらを編集したのがこの添付された動画その2であった。
むろん、kれには、女子高生、
「あ~、月生徒会長、カッコ良すぎです~。あの報告会のときはちょっと失望したけど、この動画を見ていると、月生徒会長のこと、もっと応援したくなっちゃうよ・・・」
と、凛々しい姿をした月にホレボレするも、とうの母親はというと、
「う、うそでしょ・・・。木松悪斗様、静真を自分のものにしようとしていたのね・・・。だから、私たちに「勝利こそすべて」という考えを押し付けたわけね・・・」
と、木松悪斗の本性を見て木松悪斗に失望してしまった、そんな思いを感じていた。と、同時に、
「それに比べて、沼田殿、とてもお忙しい身なのに、静真のこと、学生のみんなのことをとても大事にしていたのね・・・」
と、沼田の静真における偉大さをあらためて実感していた・・・。
と、そんなわけで、静真高校のテニス部に所属している女子高生に沼田のメールが届いて家族のあいだで大きな話題になったわけだが、沼田、これと同じメールを静真の全校生徒に送っていた。
で、沼田、このメールのために月と鞠莉にあるお願いをしていた。月には月が撮っていたラブライブ!決勝延長戦の動画を渡すようにお願いした。これに対し、月、沼田に対し、この動画、月自身が納得がいかないような編集をしないよう釘を刺していた。もちろん、沼田もそのことを重々承知していたため、この動画をまったく編集もせずにそのままメールに添付していた。なので、静真の学生全員、月が撮影したラブライブ!決勝延長戦の動画をみることができた。むろん、Saint SnowとAqours、お互いをリスペクトしつつも全力全開で死力を尽くしてのバトルは静真の学生たちのだけでなくその保護者たちのハートすら揺れ動かすものとなった。また、鞠莉には事前に「ラグーン」の会議室に隠しカメラを数台設置することを伝えた上で鞠莉の服の中にも隠しカメラをつけてもらうように依頼、それらの隠しカメラで撮ったものを沼田自ら編集した動画を自分のメールに添付した。とはいっても、ほぼノーカットの動画だったため、木松悪斗の発言、もとい、暴言すらもばっちり映っており、悪意ある編集はしてないものの、それでも沼田が木松悪斗を論破する展開までもがばっちり映っていたので、どちらかというと動画の内容自体は木松悪斗にやや不利な内容になっていた。そして、この沼田の文書である。こうなると、このメール、月にとってとても有利になる、そんな内容といっても過言ではなかった。
であるが、そこに沼田のある想いが隠されていた。沼田、このメールを静真の全校生徒に送るとき、こんなことを考えていた。
(このメールは別に木松悪斗を批判するものではない。このメールを読んで木松悪斗の考えの方が素晴らしい、木松悪斗の考えを信じる、と、思っても別に構わない。しかし、わしからすれば、少しでも日本が明るい未来へとつながれば、と思ってこのメールを静真の全校生徒に送った次第である。今、日本だけでなく世界において「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」という考えがはびこっている気がする。が、その考えがはびこり続ければきっと、敗者、弱者などは排除され、また、一度でも敗者、弱者などになれば這い上がることできない、そんな世の中になってしまう。選ばれた者のみが謳歌する世界、それほど恐ろしい世界なんてない。才能があるから、お金があるから、ただそれだけで勝者になるならきっと不条理な世界になってしまう。敗者、弱者の子というだけで勝者、強者になることを許されずずっとが這いつくばる生活を強いられる、結果、生きることすら諦める、そんなことが起きてしまう。それだけは絶対にダメだ!!才能がなくても、お金がなくても、少し要領が悪くても、努力すれば報われる、そんな世界であってほしい。そんな意味でも、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の許される世界でなく、正直者は救われる、「めんなと一緒に楽しみながら成長する」「自分がやることを好きになって楽しみながら一歩一歩前に進んでいく」、そんな世の中になってほしい。それこそ、日本の、いや、世界の明るい未来へとつながるのだから・・・)
沼田にとって静真に通う学生は全員自分の大切な子どもたちである、が、その大切な子どもたちが「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の名のもとに他人を排除する、見下す、そんな大人になってほしくない、沼田はそう思っていた。そのためにも少しでも沼田にとって大切な子どもたちがもう1度そのことについて考え直してほしい、できれば、「みんなと一緒に楽しむ」「やっていることが好きになる」、そんな考えにシフトしてもらい、結果、これが、寛容さ、謙虚さ、を持った大人へと成長してほしい、と、思って沼田はこのメールを全校生徒に送ったわけなのである。
とはいえ、沼田、このメールを送ったあと、あることにちょっと後悔していた。それは・・・。
(あっ、しまった!!このメールの内容、月生徒会長にかなり有利に働いてしまうのではないか。となると・・・、木松悪斗、この先、静真においてとても苦しい状況に陥るかもしれない・・・。こりゃ、やりすぎたかも・・・。そして、明日、月生徒会長とあげは君も大変な思いをするかも・・・)