ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

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SNOW CRYSTAL 序章 第22話

 翌日、

「ついに理亜さんもAqoursの仲間入りなんだね・・・」

と、あつこは温泉に入りながら理亜のことを考えていた。ここは函館の奥座敷、湯の川温泉。函館を走る路面電車の終点の地でもあり、湯治を兼ねて、多くの函館市民、観光客、湯治客がこの温泉に集いていた。で、あつこは、毎週、自分の古傷、スティグマの湯治を兼ねてこの湯の川温泉につかりにきていた。で、あつこ、温泉につかりながら理亜のことを考えていたのだ。理亜のAqours加入の件、あつこの発案とはいえ、聖良がダイヤたちにそのことを伝えた、これで聖良や理亜も安心できる、そう、あつこは思っていた。

 だが、そう考えたとき、あつこ、

(でも、そう考えると、なんか自分のことを思いだしてしまいます・・・)

と、自分のスティグマを見ながら昔の自分を思いだそうと・・・、いや、なぜか自然と自分の過去を・・・、自分にとって辛いときのことを思いだしてしまった・・・。

 

「優勝、おめでとう!!」「将来有望な選手だ!!」

「いや、未来の金メダリストだ!!」

12歳のとき、あつこはフィギュアのジュニア大会で優勝した。あつこのまわりにいる同級生はすでに第二次性徴に入っており大きく成長していたがあつこにはまだきていなかった。だが、それでものびのびと演技、高難易度のジャンプを跳んだこともあり、あつこは日本有数のジュニア大会で優勝することができた、そのことについて、当時のあつこは、

(私、フィギュアの世界でもっともっと頑張る!!そして、いつかは、オリンピックで、金メダルを取る!!)

 だが、そこがあつこの、フィギュアにおける頂点、となった・・・。この日を境にあつこの体は急成長を遂げる。あつこもついに第二次性徴を迎えたのである。男性ほどではないが日に日に大きくなっていく体、さらに、女性特有のもの、胸も大きくなっていった。そのため、

(あれっ、このジャンプ、先日まで跳べていたのに、なんか跳べない・・・。なんか、これまでの感覚にズレが生じている・・・)

と、これまで跳ぶことができたジャンプが急に跳べなくなったりと、あつこ自身困惑するくらい、これまで掴んでいた(ジャンプや演技の)感覚にズレが生じてきてしまっていた。が、そんなこと、あつこのまわりにいる大人たち、それについて知らない、もしくは、無視しているのか、あつこに対し、

「おい、あつこ、なんでこれまで跳ぶことができたジャンプが跳べなくなっているんだ!!先日まで簡単に跳べただろ!!ほら、跳んでみろ!!」

「お前、練習をさぼっていたから跳べなくなったんだ!!休まず練習しろ!!」

と、あつこの苦労すら知らずに檄を飛ばしていた。

 だが、その大人の言葉を鵜呑みにしたあつこは今以上にたくさん練習をするも、日々変わるあつこの体、それにともなって感覚のズレが大きくなっていく。あつこの努力は凄いものだったが、あつこの体の成長はそれをも上回るものだった。いくら感覚のズレを修正しても次の日にはまた感覚にズレが生じてしまう・・・、いや、大きくなっていった。

 そんなこともあり、あつこ、

「うぅ・・・、また大会で上位に入れなかったよう・・・」

と悔し涙を流すくらいあつこのフィギュアの成績は下降線をたどることとなった。と、同時に、まわりの大人たちから、

「もっと練習しろ!!」「もっと根性をだせ!!」

「練習が足りないんだ!!日々鍛錬あるのみだ!!」

と、あつこのことなんて考えなしに、ただ、あつこの努力不足、練習不足として、あつこにとって辛い、とてもきつい言葉攻めをしていた。

 とはいえ、あつこのまわりにはきつい言葉を言い放つ大人たち以外にも同じ世代の人、同級生などがいるはず。特に同じフィギュア選手なら同じ境遇なので相談しやすいはず・・・なのだが、あつこにとってみればそうではなかった。なぜなら・・・、

(私のまわりにいる同じ歳の子は、みな、私と同じフィギュアの選手。私からみたら、みなライバル!!だから、お互いのことをあまり干渉されたくないと思っているに違いない・・・)

なんと、あつこ、まわりにいる同じ歳の子はみなフィギュアの選手、だったためか、「みんなライバル」という認識が強かった。なので、お互いのことはあまり干渉したくないしされたくもない、そんな認識をあつこはもっていた。あと、あつこはこれでも12歳のときにジュニアの大会で優勝をしている。そこからくる意地、というか、その栄光が逆にまわりの同じ歳の子たちからあつこを遠ざける要因ともなっていた。

 そして、あつこにとって幼馴染の聖良については、あつこ、

(それに、聖良は、自分の夢、スクールアイドルになって頂点に立つ、その夢に向かって邁進している。そんな聖良に心配をかけたくない・・・)

と、このとき、すでにスクールアイドルとしての夢を叶えるべく頑張っている聖良に心配をかけたくない、その一心で聖良に相談できずにいた。

 そんなこともあり、誰にも相談できずにきつい大人たちからの言葉攻めもあってか、あつこ、

(大人たちの言う通り、もっと練習して、もっと頑張って、昔みたいないい成績を、昔みたいな栄光を、昔みたいに勝ち続ける、そんな選手にならないと!!)

と、大人たちの言葉を鵜呑みにして自分を極限まで追い込もうとしていた。そのため、普通ならしないような人間の限界を超えたと思えるくらいの練習をあつこはするようになる。これには、大人たち、

「これを続けていたらきっと体が壊れてしまうのでは・・・」

と、あつこのことを心配する声もあがるも、それ以上に、

「もっと練習しろ!!俺が小さいときはきつい練習をした。だからこそ、俺はとてもいい成績を残すことができたんだ!!だからこそ、もっと練習しろ!!」

と、練習をもっと強要する声が多かった。

 だが、それがあつこにとって最悪の事態を招いてしまう。それは中学3年のある大会での出来事だった。この大会で、あつこ、

(これこそきつい練習の成果だよ!!今日はこれまで以上にいい出来!!)

と、これまでの不審な成績がうそみたいだと思えるくらいいい演技をしていた。あのときまでは・・・。

 そして、最大の見せ場、最後の大ジャンプに差し掛かったとき、あつこに異変が起きる。ジャンプを跳びにいった瞬間、

(あれっ、体が・・・いうことを・・・きかない・・・)

なんと、ここにきて、限界を超えた練習の疲れがどっときたのか、それとも、限界を超えた練習を続けてきたツケがここできたのか、わからないが、あつこ、自分の体の制御が突然きかなくなってしまう。と、同時に、あつこの体のバランスも崩れてしまう。ジャンプ失敗、そう誰から見ても明らかな状況・・・、それでも、あつこ、

(私の体・・・動いて・・・ちゃんと・・・動いて・・・)

と、諦めずに自分の体を制御しようとするもできず・・・、あつこの体は一瞬宙を舞うとそのまま、

どしんっ!!

という音とともに氷の上にたたきつけられてしまった。

 だが、あつこの悲劇はこれでは終わらなかった・・・。大ジャンプを跳ぶ瞬間に体のバランスを崩し、そのまま氷の上に落下したこともあり、跳ぼうとしたときの勢いがまだ残っていたのだ。そのため、あつこの体はそのまま氷の上を滑るように、いや、絶望への道へと滑り落ちるようにある場所へと突き進んでいた。これには、あつこ、

(止まって、止まって!!)

と、自分の体が止まるように願うもあつこの体は止まることがなかった。

 そして、

ガタンッ!!

という鈍い音がスケートリンク内に響き渡る。そう、あつこの体は跳んだときの勢いのまま、スケートリンクの壁にぶつかってしまったのだ。そのため、

(い、痛い・・・、痛いよ・・・)

と、あつこは苦しみに満ちた声を心のなかに響き渡らせていた。いや、それ以外にも・・・、

「血、血よ!!」

と観客が叫ぶくらい、あつこのいる場所には血が広がっていた。どうやら、ぶつかったときにあつこが履いていたスケート靴のブレードの歯がもう一方の足に触れてしまい、それによってあつこの足のふくらはぎを切ったようだ。

 こうして、あつこはすぐに緊急搬送され病院で入院する羽目になった。診療結果は体の何か所かで複雑骨折、それに、ふくらはぎを何センチも縫う大ケガ。これには、あつこ、

(うぅ、どうして・・・どうして・・・)

と、悲痛に満ちた気持ちになってしまった。

 だが、あつこの悲劇はそこでは終わらなかった。大ケガをしてしまい悲痛に満ちた気持ちになっていたあつこ、そんなあつこの傷跡に塩を塗るがごとくまわりの大人たちからあつこにとって冷酷に満ちた、失望ともとれる、そんな言葉をあつこに浴びせてしまった。

「とても期待していたのに・・・」「期待外れもいいところだ!!」

「こんな大ケガをするなんて、本当に根性が足りないからだ!!」

あつこの悲痛に満ちた気持ちを逆なでするかのごとく浴びせらえる冷酷な言葉たち、これにより、あつこ、

(もうフィギュアなんたやりたくない!!この大事故で私はなにもかも失ったんだ!!過去の栄光も、フィギュアにかける思いも、すべて、すべて、なっくなったんだ!!)

と、これまでのものを全て失った、そんな絶望に満ちた思いになってしまった。また、

(もう誰のことも信じられなくなった・・・。私の気持ちなんて気にせずに、ただ、自分の言いたいことだけを私に押し付ける、そのな人たちなんて、もういや!!)

と、ある人以外の人の言うことを信じることができなくなってしまった。また、人付き合いについても誰に対しても角が立たないように接するようになってしまった・・・。

 そんな絶望の底に・・・、深き深淵なる闇に閉じ込められてしまったあつこ、であったが、このとき、そのあつこに救いの手が差し伸べられた・・・。

「あつこ・・・、あつこ・・・、私です・・・、聖・・・」

 

と、そんなときだった。

「痛っ!!」

というあつこの声とともにあつこは目を覚ました。これには、あつこ、

(あっ、ついつい、気持ちよくて、私、眠っていたみたい・・・)

と一瞬そう思ってしまう。どうやら、あつこ、温泉の気持ちよさでつい眠ってしまったようだ。で、今さっき、浴槽のふちに頭をぶつけたことでようやくあつこは目を覚ました、というわけである。

 だが、今さっきまで眠っていたあつこ、つい、今さっきまで見ていた夢について、

(でも、今さっきまでみていた夢、本当にリアルな夢・・・、いや、私がこれまでやってきたこと、それがまるで走馬灯のごとく流れていたな・・・)

と、自分のスティグマを見ながらそう思った。どうやら、自分の辛い過去を振り返り始めたときについ眠ってしまったので、その流れのまま、自分の辛い過去が夢として走馬灯のごとく流れたようだ。ただ、その夢、いや、自分の辛い過去を振り返ると、あつこ、こんな考えが浮かび上がってくる。

(なんか、あの大事故のせいで私はフィギュアという大きな柱を失った。すべてを失った、そのときの私と自分のミスで姉との大事な夢を叶えることができず、それにより今でも苦しんでいる、そんな理亜さん、なんか似ている気がする・・・)

そう、あの大事故ですべてを失ったと思ってしまったあつこと自分のミスで姉との大事なな夢を叶えることができず、そのときの悔いにより今でも苦しんでいる、そんな理亜、それがなんか似ている気がしているようだ、あつこは。

 とはいえ、これ以上長湯すればのぼせてしまう、と思ったあつこはすぐにあがるとそのまま更衣室へと移動した。そのときだった。突然、あつこの着替えを置いてあるロッカーから、

ブルブル ブルブル

という音が聞こえてきた。これには、あつこ、

「あっ、電話だ!!」

と、自分のロッカーから自分のスマホを取り出す。どうやら、「ブルブル」という音はあつこのスマホに電話がかかてきたことを教えるマナーモードのバイブ音だったようだ。

 そして、あつこ、すぐに通話ボタンを押しては、

「はい、蝶野あつこですが・・・」

と電話に出る。すると、スマホのスピーカーから、

「あつこ、私、聖良です!!」

と、電話の相手、聖良がこう言うと続けて、

「あつこ、今すぐ私の家に来てください!!理亜のAqours加入について決まったようです!!」

という声が聞こえてきた。これには、あつこ、

(ついに決まったんだね、理亜さんのAqours加入について!!)

と思うとすぐに、

「聖良さん、わかりました。すぐに行きます!!」

と言っては電話を切り、自分の服を着るとそのまま聖良の家へと急ぐことにした。

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