そして、ついに理亜・花樹組の出番となった。ステージ袖に立つ大会スタッフから、
「函館聖泉女子高等学院理亜・花樹組、準備をお願いします」
ともうすぐ出番であることを伝えられると花樹と理亜の隣にいたあつこから、
「理亜さん、花樹さん、もうすぐ出番です。頑張って・・・」
と声援が送られると、理亜、
(こころあのステージ、やっぱり凄い・・・。私と姉さまとのSaint Snowに負けないくらいの盛り上がり・・・。こころあ、やっぱり、スクールアイドルの申し子、と言われるだけのことはある。でも、私も負けない。こころあの2人以上に、スクールアイドルを楽しんで、スクールアイドルを好きになって、絶対に凄いパフォーマンスをみせる!!そして、1位通過を狙う!!)
と心のなかで誓う一方で・・・花樹の方を見ては、
(でも、今の花樹に対して、私・・・、このステージでスクールアイドルにおいて大事なこと、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を伝えることが・・・、教えることが・・・、できるだろうか。いや、それ以上に・・・、花樹、昔の私みたいに・・、「勝つこと」のみに固執してしまい焦りを感じて満足がいくパフォーマンスができない・・・、なんてことが起きないだろうか・・・)
と花樹に不安を感じていた。
一方、花樹はというと・・・、
(俺は必ずこころあ以上のパフォーマンスをする!!そして、絶対に勝つ!!スクールアイドルにおいて「勝つこと」が1番なんだ!!そうじゃないとおばあちゃんとの約束を守れないのだから!!)
とあくまで「勝つこと」に執念をみせていた、自分の首にぶら下げている十字架上のペンダントを強く握りしめながら・・・。
そんな2人を隣で見ていたあつこは、このとき、ある種の不安を感じていた。
(見る限りでは、2人とも、そこまでこころあのステージにおけるダメージはなかったと思います。ですが、それ以上に、理亜さんと花樹さん、2人に徹底的な違いが、スクールアイドルにおけるスタンスの違いがはっきりと現れたかもしれません。理亜さんはあくまで「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を考えてパフォーマンスをすると思います。対して、花樹さんは1年前の理亜さんと同じ、「勝つこと」を重視してパフォーマンスをすると思います。もし、このままの状態で2人がパフォーマンスを続けていたら、きっと、どこかでほころびが出てしまいそうです・・・)
そう、このとき、花樹と理亜、2人にはスクールアイドルにおけるスタンスに違いがみられるようになったのだ。理亜は過去の経験からあくまで「スクールアイドルを楽しむ、すきになる」ことを重点にパフォーマンスする、対して、花樹は「勝つこと」のみ追求しようする、こうなると理亜と花樹の思いははまったく別々の方向に進んでしまう、結果、2人のあいだにすれ違いが起きてしまい2人のステージに悪影響が出てしまう、そうあつこは思ったのである。
だが、それと同時にあつこにはある種の・・・、
(でも、私はなにもできません・・・。だって・・・、私は・・・、ただの2人のマネージャーだから・・・。私が弱虫のせいで・・・、私が2人みたいにステージでパフォーマンスできないばかりに・・・、私がなにもできないばかりに・・・、理亜さんと花樹さん、2人に迷惑をかけているのですから・・・)
ある種の諦めに満ちたものを感じていた、自分の足に残るスティグマを触りながら・・・。
そして、理亜と花樹、2人がステージにあがるとそれに合わせていつものハイテーションな女子レポーター兼司会者が2人のことを紹介する。
「続きして~~~、前回のラブライブ!冬季大会ではおしくも最終予選敗退・・・。しかし、その後、ラブライブ!覇者Aqoursとの一騎打ちとなったラブライブ!延長戦ではAqoursと互角の勝負をした北の覇者!!今回は新しいユニットとしてついに参戦!!函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部、理亜・花樹組!!」
この瞬間、観客席の方を見る理亜。すると・・・、
(あっ、私たちのことを応援しに来た学校の人たちが少ない・・・)
そう、理亜たちを応援しに来ていた学校の関係者や生徒があまりにも少なかったのだ。いや、そのなかには・・・、
「ねぇ、あの猪鹿蝶のステージって本当に凄いの・・・。信じられないのだけど・・・」
「まぁ、凄いんじゃない・・・、あんまり知らないのだけど・・・」
と、理亜たちの応援のために来ていた・・ようにみえない生徒たちもいた。これには、理亜、
(まぁ、今、最終予選が行われている場所が札幌だから仕方がないかも・・・)
と妙に納得してしまう。そう、前回の最終予選は函館アリーナで行われていたのだが、今回の最終予選は札幌にある札幌アリーナで行われていた。理亜たちが通う聖女は函館にある以上、ここ札幌に理亜たちを応援しに来る生徒たちが少なくても仕方がない、そう理亜は思っても仕方がなかった・・・。だが、それでも理亜たちを応援しに来る学校の人たちが少ないことはある種のなにかを感じさせてもおかしくなかった・・・。
とはいえ、もう理亜と花樹のステージは始まろうとしていた。理亜、花樹に対して声掛けを行う。
「花樹、いく!!全力、出して!!全力で、パフォーマンス、して!!」
これに呼応してか、花樹、大きな声で、
「はい、わかりました、理亜さん!!オ・・・、花樹、勝利に向けて、全力で、頑張ります!!」
と返事をすると自分達のポジションにつき歌い始めた。
第5話 挿入歌 「Loser(敗れし者たち)」
なんで俺は負けたんだ!!
(この負けには価値がある!!)
俺はこの勝負に負けた!!
(私はこの勝負に負けた)
俺は勝つ気でいたんだ!!
(私も勝つ気でいた)
だから負ける気なんてなかった!!
(私も負ける気がなかった)
でも 負けてしまったんだ!!
(でも 負けてしまった)
最初の方は上々、なにもほころびもなく、むしろ、完璧なパフォーマンスだった。ただ、このとき、2人のなかである種のすれ違いが起きていた。理亜、このとき、
(ここまでは順調。これならいける!!いや、この曲を通じて花樹にスクールアイドルにとって大事なものを伝えるチャンスかも!!)
と、今こそ花樹に大切なことを伝えるチャンスだと思い、花樹の心に対して、
(花樹、花樹、この曲を通じて一番大事なことを伝える!!)
と呼びかけを行うも、
(あれっ、花樹の心につながらない・・・。花樹・・・、花樹・・・)
と何度も何度も心のなかで呼びかけるも花樹の心にはつながらなかった。
一方、花樹はというと・・・、
(ここまでは完璧!!ならば、もっと、心を燃やして、もっともっと、心を熱くして、今まで以上のパフォーマンスを、あの理亜さんに負けないくらいのパフォーマンスをして、こころあに、絶対に、勝ってやる!!こころあよ、桜・・・、俺の実力をみろ!!おばあちゃん、俺の姿、見ててくれ!!)
と自分の心をたぎらせては勝利の二文字目指して突き進もうとしていた。いや、理亜の呼びかけすら気付かずに勝利への執念だけをみせていた・・・。
なんで俺は負けたんだ!!
(負けても仕方がない)
負ける要素なんてなかった
(なにが負けた原因でもあったかも)
なのになんで負けたんだ!!
(負けても仕方がなかったかも)
勝つことこそ大事なのに!!
(でも この負けに価値があるんだ)
ここまでは完璧・・・だったが、ここにきて、ついに2人のあいだにほころびがでてしまった。理亜は、
(いくら呼びかけても花樹の心につながらない・・・。いったいどうすればいいわけ・・・)
と少し焦りを感じつつも、
(それでも、私は、姉さまから、ルビィから、教えてもらった、「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、それを貫きたい!!「勝つこと」だけに執着していたら、きっと、また絶望を感じてしまう。それはもういや!!こころあ以上に、ルビィたちAqours以上に、スクールアイドルを楽しんで、スクールアイドルを好きになって、私たちが1番だって言わせたい!!そして、そのあかつきには・・・、ラブライブ!優勝・・・、姉さまとあつことの夢を叶えてみせる!!)
と、「姉聖良とあつことの夢、ラブライブ!優勝を叶えたい!!」、そんな理亜のなかにある深淵なる闇をみせつつも、昔の理亜みたいな「勝利こそすべて」の考えではなく、延長戦などを通じて知った「楽しむこと」「好きになること」、それを目指していく、そんな心意気であった・・・。むろん、
(それに、この思いを絶対に花樹に伝えたい!!)
という、それでも花樹にそのことを伝えることも忘れずに・・・。
一方、花樹はというと・・・、
(まだまだ大丈夫!!どこもミスなんてしていない!!あともう少しで曲が終わる!!最後まで、俺、絶対に、「勝つ」ためにも、全力全開で、パフォーマンス、する!!「勝利こそすべて」、なんだ!!「勝利」、その二文字が大事なんだ!!)
と、ここにきてまで勝利に固執し続けていた。いや、それ以上に・・・、
(じゃないと・・・、おばあちゃんとの約束が・・・、誓いが・・・、果たせなくなる!!ラブライブ!優勝は絶対に叶えないといけないんだ!!そのためにも、俺、勝ち続けないといけないんだ!!絶対に・・・、絶対に・・・、おばあちゃんとのためにも・・・、勝たないといけないんだ!!)
と、首にぶら下げた十字架上のペンダントを見ながらそう心をたぎらせていた・・・。
だが、そのときだった。あつこ、理亜と花樹を見て、はっとする。
(あれっ、今、一瞬、2人のパフォーマンスにズレが見れた!まさか・・・、私の心配していたことが・・・、起きたわけ・・・)
なんと、一瞬だが、理亜と花樹の2人のパフォーマンスにズレが生じたのだ。その瞬間、審査員席にいる1人の審査員の目が「ギラリッ」と光ったのがあつこには見えた。ただ、これには、あつこ、
(ま、まさか、この一瞬のズレを審査員が見逃さなかった、ということ・・・。ま、まさかね・・・)
とある意味ショックを受けていた。
ただ、それでも理亜と花樹はそのことを知らずにそのままサビへと進んだ・・・。
この世は勝つことがすべて
(勝ち負けなんて関係ない)
勝たなければ意味がない!!
(負けても意味がある)
勝ち続けないといけないんだ!!
(いつかは負けることもある)
勝つことがすべてなんだ!!
(負けてもいいんだ)
そして、曲が終わった・・・、そおn瞬間、会場中から、
パチパチパチパチ
という大きな拍手が湧き上がった。一瞬のズレがあったにせよ、こころあに負けないくらいのパフォーマンスをみせた理亜と花樹。これには、2人とも、
(ふ~、なんとかやりきった・・・。姉さま、ルビィたち、私、最後までやった。「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、その信念のもと、やりきった気がする・・・)(理亜)
(ふ~ん、これこそ俺が追い求める完璧なパフォーマンス!!これで絶対に勝った!!いや、「勝利」の二文字しかみえない!!)(花樹)
と、「自分たちはやった」、そんな達成感を感じていた、2人ともその思いは近いもの・・・。
だが、あつこは違っていた。2人のステージを見て、
(2人とも凄いパフォーマンス!!あのこころあにも引けを取らないものだったはず!!)
と褒めつつもサビの前に一瞬みせた2人のズレに対し、
(でも、完璧じゃなかった・・・。あのズレがどう審査員に影響を与えるかわからない・・・。それに、会場の盛り上がりに関してはこころあの方が上。それも影響しなければいいのですが・・・)
と一抹の不安を感じていた。たしかにあつこの言うことも一理ある。たしかにあの一瞬のズレを除けば理亜と花樹は完璧なパフォーマンスをみせた。だが、ただそれだけだった。一方、こころあは会場を盛り上げていた。果たしてそれが審査にどう影響しているか未知数である。でも、あつこにとってみれば、その一瞬のズレも会場の盛り上がりもなにかしら審査に影響がある、そう思えてしまうものだった・・・。だって・・・、あつこは・・・、中3まで・・・フィギュアスケートの世界で・・・多くの審査員から・・・ジャッジを受けて・・・採点されていたのだから・・・。
そして、あつこの心配は当たってしまった・・・。全部の演目が終わり、ついに結果発表・・・。
「今回のラブライブ!夏季大会北海道最終予選、結果は・・・、
3位 ○○高校○○
2位 函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部 理亜・花樹組!!
1位 大総大学付属札幌高校スクールアイドル部 こころあ!!」
この瞬間、こころあの2人から、
「ここあ、やったのです!!またもや1位です!!」(こころ)
「どうだ!!ここあたちからすればこれが当たり前なのだ!!」(ここあ)
と大喜びの表情。対して、理亜、
「う~、悔しい!!まさか、あのこころあにまたもやまけるなんて・・・」
と悔しい表情をみせた。
とはいえ、上位3位までがラブライブ!決勝に進出できるため、理亜はすぐに気持ちを入れ替えては、
「でも、前回の大会(前年度の冬季大会)とは違ってここで終わりにならなくてすんだ。決勝では絶対に、こころあに、そして、Aqoursに打ち勝つ!!そして、ラブライブ!優勝、してやる!!」
とこころあの方を向いてはこう宣言した。もちろん、これには、ここあ、
「おお、理亜たん、よく言ったぜ!!でも、ここあたちだって負けないでしゅ!!」
と少し嚙みながらも受けて立つつもりで言った。
だが、そのときだった。花樹がいきなり大声でこう叫びだした。
「なぜこころあに負けたんだ!!オ・・・、花樹も、理亜さんも全力全開でパフォーマンスをした。それなのに、なんで、なんで負けたんだ!!」
これには、理亜、
「花樹・・・」
と心配そうに花樹の方を見る。
すると、1人の審査員が花樹の前に出てきては、
「花樹さん、その質問にお答えしましょう」
と言ってはこころあと理亜・花樹組の差について説明と始めた。
「こころあ、理亜・花樹組、ともに完璧なパフォーマンス、ステージ、でした。ですが、2つだけ違ったところがありました。1つは理亜・花樹組の曲のとき、サビに入る直前に、一瞬、2人のパフォーマンスにズレが生じていました。完璧なパフォーマンスをしている場合、1つのちょっとしたズレでもかなり目立つものです。それを私は見逃しませんでした。そして、こころあは自分たちだけではなく会場にいる観客たちと一緒になってこのラブライブ!を盛り上げようとしました。その意味でも審査にプラスに働きました。その2点により二組に差が生まれたのです」
この審査員の答えに、あつこ、
(まさか、私が不安に感じていたことが現実に起きるなんて・・・。私、マネージャー、失格、なのかなぁ・・・。私、これまでマネージャーとして2人と一緒に頑張ってきた。ただ、それだけ・・・。私は2人になにもしていない・・・、いや、してこなかった・・・。2人のお世話をしているだけ・・・、2人の練習メニューを作ってそれをさせているだけ・・・。2人のサポートしか・・・、ただのお世話しか・・・、していないだけ・・・。積極的に2人に関与していない・・・。それでいいのかな・・・)
と自分のこれまでの行いを自問自答していた。あつこはこれまで積極的に2人に関与してこなかった。花樹のことは理亜にまかせっきりだった。ただの2人のサポーターでしかなかった。けれど、それでいいのか、あつこはそう自分を攻めていた。だが、このとき、
「痛っ!!」
とあつこの足に響くものをあつこは感じた。その痛みを感じたとたん、あつこ、はっとする。
(そうだ!!私にはスティグマがある・・・。このスティグマがある限り・・・、理亜さんと花樹さんには深く関与できない・・・。私が動けば、きっと、このスティグマが開く。そうなれば、私、どうすることもできなくなる・・・、絶望する・・・。だから・・・、私、2人んは深く関与できない・・・)
こうしてあつこは黙ってしまった・・・。
一方、審査員の答えに、花樹、
「なんなの、その理由!!花・・・、俺は、「勝つ」ために一生懸命やっただけ!!理亜さんも一生懸命やった!!なのに、なんで、なんで、勝てないんだ!!なんで勝つことができないんだ!!」
と大声でこう叫ぶとここあから、
「花樹っち、スクールアイドルにとってとても大事なものを忘れているぜ!!」
と言われてしまう。これには、花樹、
「それは「勝つこと」だろ!!「勝つこと」こそ1番大事じゃないわけ!!」
と大声でここあに言い返すと、ここあ、すぐに言い返す。
「花樹っち、それは違うぜ!!それよりもっと大事なものが・・・」
そう、ここあが言った瞬間のときだった。突然、ここあの言葉を遮るように、花樹、
「1番大事なことは「勝つこと」!!どんなことがあっても「勝利すること」が1番大事なんだ!!」
という大声で叫ぶとステージから走り去ってしまった・・・。
そんな花樹の一連の流れを見ていた理亜、ついにあの思いに、達してしまう・・・。
(花樹は私が思っている以上に「勝つこと」に執着している・・・。こうなってしまうと、私、花樹をどう導けばいいのかさらにわからなくなってしまった・・・。いったいどうすればいいわけ・・・。このままだと、私たち、またも空中分解、してしまう・・・。いったいどうすればいいの・・・、姉さま・・・)
そして、理亜は、天を見上げてはここにいない姉聖良に助けを求めようとしていた・・・。
こうして、波乱のラブライブ!夏季大会北海道最終予選はついに終わった・・・。だが、この最終予選を通じて、理亜、花樹、あつこのなかでうごめくそれぞれの闇は増大してしまった・・・。果たして、続くラブライブ!夏季大会決勝は一体どうなってしまうのだろうか・・・。ただ1つだけ言えること、それは、その決勝、ここにはいないルビィたちAqoursすら巻き込んだ大騒動が起きてしまう、そのことだった。
と、いうわけで、次回、ラブライブ!夏季大会決勝、ぜひお楽しみに・・・。
To be continued
Next Story is
KAZYU said 「I’ll definitely win!!」