こうして、木松悪斗、仕事面においてはリーマンショックを乗り越えるどころか自分たちにとってとてもプラスに変えてしまうほど絶好調・・・であったが、プライベート麺においては最悪であった。それは木松悪斗とその奥さんとのあいだに深い溝ができた・・・、いや、それによってその奥さんの身に大変なことが起きたからであった。静真に投資することを決めてから1年後、木松悪斗は自分の奥さんを呼び出し激怒しながらこう言ってきたのだ。
「お前、なんで私に隠れてあのごく潰し(桜花)を音楽教室に通わせているんだ!!いいか、いつも言っているが、音楽というのはたんなるお遊びの1つでしかすぎないのだ!!そんなお遊びのために無駄なお金を使うなんてもったいないではないか!!そんな無駄なお金があるのならそれを私の役に立つようなことを、桜花にそのための教育をするために使え!!」
そう、ついに木松悪斗の奥さんが木松悪斗に黙ってやっていたこと、桜花が音楽教室に通わせていることがバレてしまったのである。桜花には音楽の才能がある、それを伸ばすために木松悪斗の奥さんは桜花を音楽教室へと通わせていた。だが、夫の木松悪斗は音楽そのものをただのお遊びだと認識しており、それをするくらいなら桜花に自分の役に立つような教育をするように迫ってくるほどだった。なので、その奥さんは夫に黙って自分のポケットマネーで桜花を音楽教室へと通わていたのだが、それがついに夫の木松悪斗にバレた・・・。
だが、そのこと自体、木松悪斗は自分の奥さんの裏切り行為とみえていた。だって、自己中心的、自分しか信じていない、そんな木松悪斗が心を許した、そんな数少ない相手の1人である奥さんが自分に黙って自分の考えと反する行動をしていたのである。なので、木松悪斗、自分の奥さんに対し、続けて、
「それに、これは私に対する裏切り行為である。お前は私の考えに反した行動をした。よって、私はそれを私の裏切り行為とみなした!!いいか、お前、許されざることを長年に渡ってやってきたのだ。それ相応の覚悟はできているのか?」
とまるで圧迫面接をしているがごとく怒り狂うように言ってきた。
だが、木松悪斗の奥さんも黙っていない。大事な娘、桜花のたmにも、とばかりに反論。
「あなた、旺夏にサッカーの才能があるように桜花には音楽の才能があるのです!!その才能をのばすことこそ、あの子にとって大事なことなのです!!それをわかってください!!」
だが、そんな反論、木松悪斗、聞く耳持たず。いや、桜花のことなんて1ミリも考えず、逆に自分のことばかり考えては、
「そんなもの、関係ない!!あんな役立たず(桜花)のために役に立たないことをさせるなんてお金の無駄だ!!それよりも私の役に立つことをさせたほうがいい!!いいか、よく聞け、これは命令だ!!家長である私の命令だ!!いますぐあのごく潰し(桜花)がいく音楽教室に対し辞めるように伝えろ!!そして、これからは私の役に立つように教育しなおせ!!」
むろん、これには、木松悪斗の奥さん、
「それは桜花がかわいそうです。考え直してください!!」
とまた反論しようにも、木松悪斗、聞く耳持たず。それでも、奥さん、
「あなた、お願いです・・・」
と言おうとした瞬間、その奥さんの身に大変なことが起きた。なんと、奥さん、それを言おうとすると、
プツン
という音がその奥さんのなかで響き渡ってしまい、それとともに、
バタンッ
と突然倒れてしまったのだ。これには、木松悪斗、
「おい、お前、大丈夫か?」
と自分の奥さんに声をかけるも返事せず、いや、意識すらなかった。
こうして、木松悪斗の奥さんは病院に緊急搬送されすぐに入院となった。そして、意思から、
「あなたの奥さんですが、体に以上は見つかりませんでした。ですが、かなりのストレスがあったせいか、精神的に自分の意識すらシャットアウトしている状態です。このままだとあなたの奥さんはずっと寝たままの状態になってしまいます。奥さんが目を覚ますのはいつになるのか、それはこの私ですらわかりません・・・」
と言われてしまう。どうやら、木松悪斗の奥さん、夫である木松悪斗からかなりのストレスを受けていたのである(特に子どものことについて)。そのかなりのストレスのために奥さん自ら自分の意識をシャットアウトしたようだ。そのため、奥さんがいつ目を覚ますのか誰もわからない、そんな植物状態みたいなところまで奥さんの状態は悪化していたようだ。
そんな植物状態に近い姿となった奥さんを見て、その奥さんの子どもである桜花は、
「お母さん、目を覚まして!!昔みたいに私と一緒に音楽教室に行って私と一緒に楽しんで!!」
と涙を流しながら寝ている母に向かってこう訴えてきたのである。桜花は音楽に触れていくうちに音楽のことが好きになっていた。そして、桜花は音楽の才能があった。なので、音楽が好きになっていけばいくほど音楽の才能を伸ばすことができ、さらに音楽のことが好きになる、そんな好循環を生んでいた。だが、それでも、自分の父親である木松悪斗は、桜花は自分にとって役に立たない、そんな「ごく潰し」「役立たず」、と評してはそう言い続けたのである。ただ、たとえそうであったとしても桜花がへこたれずに頑張ってこれたのは自分の母親が父に黙って桜花を音楽教室に通わせていたからであった。音楽教室の時間こそ桜花が唯一心休まる、いや、それどころか、自分の好きを言える、そんな時間だった。それが母親の昏睡によってその時間すら父から奪われる、そのことを桜花は自覚していたのだ。
だが、そんな桜花の訴えむなしく桜花の母親こと木松悪斗の奥さんは目を覚ますことはなかった・・・。
その後、桜花を含めた木松悪斗一家の生活は一変した。まず、木松悪斗は静真への投資と妻の入院を機に住処を東京から沼津へと移した。そうしたほうが旺夏が静真に入学したときに通いやすくするため、そして、沼津に全国有数の女子サッカージュニアチームがあり、そこに旺夏を加入させるためであった。
また、これを機に自分の経歴において木松悪斗は沼津出身であると詐称することにしたのだ。木松悪斗にとって北海道での子ども時代は黒歴史、苦しみでしかなかった。そんあ黒歴史を封印すべく自分は沼津出身である、と詐称したのである。まぁ、自分の妻が沼津出身であること、これまで木松悪斗の経歴は誰にも話していなかった、なのだが、それだと自分より上の者と付き合う(特に財政界)ときの妨げになることもあり、ここで「自分は沼津出身である」と言っていればたとえ詐称としてもそこまで詮索されることはないだろう、という木松悪斗の判断によるものだった。
さらに、まだ眠り続けている自分の妻を沼津郊外の自分の息がかかった病院へと転院させた。そうした方が木松悪斗本人のことを誰かに調べられたとしても自分のからのストレスにより植物状態になった妻のところまで手がのびることなんてない、と木松悪斗が考えたからだった。
そして、特に変わったのが桜花の生活であった。これまでは母の後ろ盾もあり、自分の好きな音楽を(自分の父に黙って通っていた)音楽教室の場にてめいいっぱい楽しむことができていた。だが、その母親の後ろ盾を失った今、桜花にとってそれは地獄の始まりの金がなる瞬間でもあった。まず、木松悪斗は桜花から桜花が一番好きな音楽を取り上げた。木松悪斗にとって音楽はただの遊びとしか見ていないため、これ以上、桜花に音楽教室を通わせる義理なんてなかった。そのため、妻が昏睡状態に陥ってすぐに桜花は木松悪斗によって音楽教室を辞めさせられた。さらに、ここにきて、家族全員沼津に引越したものだから、桜花にとって周りにいる人たちはみな知らない人ばかり、音楽教室なんてどこにあるかわかならい、いや、自分の父親によって音楽そのものをさせてもらえなかったのだ。それも徹底的にである。なので、桜花は昔みたいに自分の一番好きな音楽を楽しむことなんてまったくできなかった。あったとしても学校の音楽の時間のみ。まさに桜花にとって毎日が、木松悪斗に監視させられている、それが地獄でしかなかった・・・。
また、桜花に対して木松悪斗は無理なことを次々と要求していった。木松悪斗曰く、
「これまで桜花を甘やかしすぎた。これからは旺夏みたいに私の役に立てるように教育しなおす」とのこと。その言葉通り、木松悪斗は桜花に対し無茶な要求をした。たとえば、桜花に対し数学の勉強ばかりさせては東大入試並みに難しいテストをさせたり、全国模試1位を獲るようにと桜花に求めてきたり。なかには、木松悪斗の得意分野である投資やパソコンのプログラミング、それも普通の大人ですら難しいことを木松悪斗は桜花に求めてきたのだ。むろん、それらはすべて桜花にとって酷なことだった。それでも桜花は、
「自分もお姉さん(旺夏)みたいに父のために役に立たないとなにをされるかわからない・・・。そんなの、嫌!!」
という嫌々な気分となりながらも必死になって頑張った。だが、いくら頑張っても木松悪斗が求めるレベルには達することはできなかった。そのため、決められた期日までに木松悪斗が求めるレベルに達していないことがわかると、毎日、自分の父親である木松悪斗から、
「この「役立たず」が!!そんなことなんてできないのか!!少しは旺夏を見習え!!旺夏は私が求めるレベルに達しているんだぞ!!それに比べてお前はそのレベルにすら達していない!!それをなんていうかわかるか?それを、「役立たず」「ごく潰し」というのだ!!それを毎日言わせるつもりか!!いいか、わかったか、私が求めるレベルに達しない限り、お前は「役立たず」「ごく潰し」なんだ!!」
と言われ続けた。そのため、桜花、その父親からの言葉を聞くたびに、
(私は役立たず、なんだ・・・。私なんて生きる資格なんてないんだ・・・。父からは怒られてばかり、貶されているばかり・・・。それくらい、私は、「役立たず」「ごく潰し」、なんだ・・・」
とどんどん自分のことを卑下していく、いや、自分自身を否定続けては自分の存在意義すら否定するようになっていった・・・。そして、父からの言葉、そのものを桜花は次第に鵜呑みにするようになった・・・。
こうして、桜花はこのあと地獄の日々を・・・、自分の好き、音楽、をさせてもらえないばかりか父木松悪斗から「役立たず」「ごく潰し」などといった桜花のことを軽蔑するような言葉攻め、いや、父からばかりか、
「自分は今や日本を代表する女子サッカー選手になったんだ!!お父様の役に立っているんだ!!」と将来の日本代表と言われるようになり「もう私は日本代表である」と高をくくっている、プラス、日本の女子サッカー界のトッププレイヤー(と旺夏は思っている)になったことで父親である木松悪斗の役に立った、そう思い込んでいた桜花の姉の旺夏からも、
「桜花、いや、この「役立たず」「ごく潰し」、お前なんて私の前からさっさと消えろ!!」
とただたんに桜花のことを軽蔑する言葉を言われるようになり、前以上に、いや、
「私はもう死にたい・・・、死んでどっかにいきたい・・・」
と桜花の状況は最悪の道、自殺、へと転がり込むようになっていった。
一方、木松悪斗はというと、日本有数の投資グループとして日本市場を席巻、静真においても自分の投資によって静真の部活動が活発化、結果、多数の部活が全国大会に出場、いや、なかには旺夏率いる女子サッカー部がインターハイで全国制覇するくらいにまでになり、静真の名は全国にとどろくようになった。そして、部活動の活発化により静真のブランドイメージが上がったこともあり、木松悪斗は静真の部活動に所属している生徒の保護者の集まり、静真高校部活動保護者会の会長として、同じく、静真の部活動に所属している生徒たちの連合体、部活動連合会の旺夏とともに静真の部活動を完全に掌握・・・、いや、それ以上に、静真の大スポンサーであることをいいことに静真の理事会に自分の息のかかった部下たちを多数送り込んでは静真の理事会を完全支配、こうして、静真の創立家の末裔である沼田に代わり木松悪斗が静真における全権力を掌握することとなった。そのため、静真においては木松悪斗には逆らえない、いや、そればかりか、木松悪斗の信条、「勝つことこそすべて」、勝利絶対至上主義、が静真のなかで完全にはびこってしまう、そんな状況に陥ってしまった・・・。