ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

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Moon Cradle 第8話

 臨時理事会終了後、木松悪斗は沼田にPTA会室に呼ばれた。突然のことで動揺を隠せない木松悪斗。不安のなか、木松悪斗はPTA室へ行き沼田と対峙する。すると、沼田は木松悪斗の方をにらみ怒声を上げた。

「木松悪斗理事、あれはどういうことだね?この俺に刃向かうつもりか!!」

これには木松悪斗、すぐに反論する。

「いや、そのつもりはありません!!ただ、あの浦の星が、あの小原家が、静真を裏切った、そのことが許せなかったからです!!今後の静真のことも考えて統合に反対しただけです!!」

ただ、これには沼田、おもわず、

「木松悪斗、浦の星との統合はすでに決定済みだ!!12月に小原家から統合に向けた申し出があった。だから、俺は、歴史ある浦の星、そして、そこに通う生徒たちのために浦の星と静真の統合を決断した。そして、この2ヶ月、俺は迅速に統合作業が捗るよう、小原家と一緒に骨が折れるような交渉を、沼津市、静岡県、さらには国などの関係各所でやってきたのだぞ!!それを、「浦の星が、小原家が静真を裏切った」、そんなしょうもない理由で無駄にしたいのか!!えっ、どうなんだ!!」

と、木松悪斗に向かって大声で怒鳴る。が、これには、木松悪斗、

「浦の星、さらには、小原家、本当に静真を裏切ったのですよ!!統合先である静真に寄付をしないなんて、浦の星は、小原家は、静真に対して無礼なことをしているのですよ!!私がわざわざ用意した静真の理事の椅子を、浦の星の理事長は、平気で蹴ってしまったのですよ!!これこそ、静真への完全なる裏切りの証拠です!!」

と、沼田に反論。しかし、興奮している木松悪斗に対し、これまで怒声で応戦していた沼田は一呼吸し、心を落ち着かせた上で冷静に答えた。

「木松悪斗よ。静真に寄付するかどうかは先方さん、小原家の自由です。それに、浦の星の理事長が誰かわかりますか?小原家の当主ではありませんよ。その当主の娘さん、それも浦の星の3年生です。まだ、高校3年生が理事長をしているなんて普通に考えればありえない話です。ですが、それが現実に起きているのです。じゃ、なんで、高校3年生の娘さんが浦の星の理事長をしているのですかね?その理由ですが、あらかた、浦の星の統廃合、廃校を阻止したかったのでしょうね。でも、結局、その娘さんの念願だった廃校阻止はできませんでした。が、それでも、その娘さん、理事長さんは一生懸命頑張って廃校を阻止しようとしていました。その努力は結果的には無駄に終わったかもしれませんが、それでも、その娘さん、理事長さんからみたらいい経験になったと思いますよ。そして、高校3年生である以上、これから先、自分が叶えたい夢だってあるのでしょうね。そして、この1年で得た経験を糧にして、その夢に向かって一から頑張る、そんな姿を思い浮かぶことができます。だからこそ、木松悪斗、あなたが勝手に決めた未来、静真の理事という決められた未来を提示し、それを断った、自分の思い通りにいかなかった、そんな理由で裏切ったと判断した、その考え方自体が誤りではないのでしょうかね」

浦の星の理事長だった小原鞠莉のことを褒めつつも、木松悪斗に対しては自分自身の考えが間違いではないかと諭す沼田。だが、それでも、木松悪斗は、

「いや、結果的には浦の星の理事長は自分が用意した静真の理事の椅子を蹴った!!小原家は、わざわざ、私たち静真が浦の星を統合してあげるというのに、そのお礼の寄付すらしない!!それって、浦の星が、小原家が、静真を裏切った証拠になるのですよ!!」

と、自分の考えに固執する。

 この沼田と木松悪斗の押し問答であるが、さすがの沼田もとても忙しい身であり、わざわざ時間を作ってまで臨時理事会に参加したのに、木松悪斗のせいで静真にとって大変なことになりかけたのを、沼田の力によって、なんとか、月たち生徒会と木松悪斗たち部活動保護者会両方の面目が立つような、ある意味、グレーゾーンともいえる、もしくは、玉虫色ともいえる、そんな結論に導いたのにも係わらず、それでも木松悪斗が納得していないこと、それに沼田はうんざりしていた。そのためか、「これでは時間の無駄だ」、そう判断した沼田は木松悪斗に対し、強く警告した。

「木松悪斗よ、今日は廃校寸前だった静真を救ってくれた恩、そして、木松悪斗たちが浦の星との統廃合を阻止するために裏で流した噂かもしれないが、保護者から「浦の星との統廃合によって静真の部活動に悪影響がでる、だから、統合を止めよ」、という意見書がPTAに多く届いたこと、それを鑑みて、今回は俺が動いた。が、次はないと思え、木松悪斗!!」

その強い警告のあと、沼田は興奮している木松悪斗に対し、ある忠告をだした。 

「そして、木松悪斗よ、1つ忠告しておく。結果だけで物事を見るな!!そして、勝つこと、勝利することに固執するな!!結果だけで物事を見ることは、全体のある一面だけを見ているに過ぎない。結果とは、途中のある行程があって初めて成立する。その行程を無視して結果だけ見てしまうと、その行程を見て初めてわかることすら見つけることもできなくなるぞ!!さらに、勝つことだけに固執してしまうと、失敗して初めてわかることすら無視してしまい、いや、失敗したときのリカバーすらできなくなるぞ!!だからこそ、木松悪斗、忠告しておく、結果だけで物事を見るな、勝つこと、勝利することだけに固執するな!!」

 だが、この沼田の忠告に、木松悪斗、

「ご忠告、ありがとう。でも、私、木松悪斗は、私の信じる道しか興味ありません!!投資の世界では、勝つことこそ正義、勝つことこそすべて、なのです!!それは世の中にとってとても重要なことなのです!!勝利こそ正義!!さらに、努力、友情、そして、もっと大切なのは勝利、なのですからね!!」

と、沼田に対し怒りながら反論すると、そのままPTA室を去っていった。これには、沼田、

「木松悪斗よ、俺は確かに忠告したぞ!!あとは俺の忠告を木松悪斗がどう受け取ってくれるかだ・・・」

と、PTA室を出ていった木松悪斗の後姿を見ながら言った。一方、木松悪斗、はというと、

(沼田さんよ、ご忠告、ありがとう。でも、私の考えは変わりませんよ。結果こそすべて、勝利こそすべて、それこそこの世界の理、なのですからね)

と、心の中で自分の信念を貫くことを決めてしまう。

 

 この沼田と木松悪斗のやり取りのあと、沼田は次の仕事先へと移動するため、時間をおかずに急いで静真本校の校舎を出ようとしていた。その沼田と沼田を迎えに来たハイヤーのあいだで、突然、

バサッ

と、沼田とハイヤーのあいだを遮るように少女が出てきた。これには、沼田、

「渡辺月生徒会長、なにごとです?」

と、沼田とハイヤーのあいだを遮った少女こと月に遮った理由を尋ねた。それには、月、

「なんで分校のかたちをとることにしたのですか?浦の星の生徒たちは統合先である静真での学生生活を楽しみにしているのですよ!!それを台無しにするなんてなんでですか?」

と、逆に沼田に尋ねる。すると、沼田、

「たしかに、浦の星の生徒たちからすれば、分校のかたちをとることで、本来楽しみにしていた静真での学生生活を奪ってしまう、とても残念なことかもしれない。しかし、統合により静真の部活動がだめになる、そう考える保護者も多いのも事実。その保護者の声を保護者全員の代表である、このPTA会長の、俺、沼田が代弁しただけにすぎない。そして、生徒会長以下生徒会が代弁した生徒たちの声と俺が代弁した保護者の声の両方を比較した場合、もっとも尊重すべき、そして、すでに浦の星との統合作業が最終段階であることを踏まえた上で、生徒からの声を主軸に置きつつ、統合反対である保護者の声をも取り入れた結果、浦の星との統合は維持しつつ分校のかたちをとることに決めたのだ」

と、わかりやすく分校策をとった理由を答えた。さらに、沼田は月に言った。

「そして、その浦の星分校についても無限にずっと続くわけじゃない。保護者たちが浦の星の生徒たちに対する誤解が解けたら、部活動に対する士気が低い、お遊び感覚で部活をしている、そんなに思われている浦の星の生徒が静真の部活動に参加しても、その保護者たちが心配していること、部活に対する士気の低下、部活内での対立、といった静真の部活動そのものへの悪影響、弱体化が起きないことを認識してくれたら、浦の星分校と静真本校を統合することを約束しよう」

この沼田が言ったことに、月、おもわず、

「じゃ、具体的にどんなことをすればいいのですか?どんなことをすれば、統合反対の保護者たちが納得してくれるのでしょうか?」

と、沼田に尋ねる。が、これには、沼田、

「それはな、月生徒会長、自分で考えて実行していくしかない。この俺でさえその答えを知っているわけじゃないからな」

と、答えると、月、

「そ、そんな~」

と、がっかりしてしまう。

 が、この月の姿を見た沼田、すぐにあることを言った。

「そんな月生徒会長のために俺なりのヒントをやろう。それはな、この統合反対騒動が起きたそのものの原因、いや、この静真の部活動そのものが抱える問題の原因、それが、「部活動とはなにか?」、「部活動をする上で1番大事なものとはなにか?」、その答えを静真にいる人たち、生徒、先生、保護者、全員、誰も知らないからだ。もちろん、月生徒会長、あなたもね」

この沼田のヒントに、月、

「それって、勝つこと、なの・・・、勝利こそすべて・・・、なの・・・」

と、沼田の言っていることへの答えがなになのか悩んでしまう。

 その月を見てか、沼田、

「それはどうかな?でも、静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうよりも、誰もが気づかずに実践しているかもしれないよ」

と、優しく月に教える。これには、月、

「?」

と、不思議がる。それを見ていた沼田、その月の隙をつき、急いでハイヤーに乗り込む。そして、

「月生徒会長、はやくその答えを見つけてね。それじゃ、さらば!!」

と、月に別れを告げてその場を離れた。これには、月、

「うわっ、沼田のおじちゃんにやられた~」

と、がっかりするも、すぐに、

(でも、沼田のおじちゃんが言っていた、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で一番大事なものとはなにか?」、の答えっていったいなんだろう?)

と、心の中でその答えがなにか悩んでいた。

 

 と、いうわけで、ハイヤーに乗って次の仕事先に行く沼田だが、その車中であることを言った。

「月生徒会長も木松悪斗と同じことを言っていたな。「勝利こそ正義」、「勝利こそ絶対」、「勝利すること、勝つことこそすべて」、というよりも、日本人って、「勝つこと」「勝利すること」だけに固執してしまう気がしてしまう。たしかに、慣用句のなかには、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉がある。言葉どおり、「勝つことこそ正義、負けれた悪・・・」の意味だけど、日本人の考え方はそれに近いかもしれない。そして、勝つ、勝利、という結果だけを見て、日本人は判断を下す、そのように見えてしまう。「その途中で起きたこと、発生したことなんて気にしない、勝てればそれでいい」、そう日本人は考えているかもしれない。もしくは、その途中の過程を意図的に無視して、結果論だけで、勝つことだけで判断しているのかもしれない。が、その結果だけ、勝つことだけで物事を判断すると間違いの元になる。それは歴史が証明しているのかもしれない」

 そして、さらに、沼田は続けて言った。

「そして、日本人は勝つこと、勝利することに固執するあまり、勝った事実、勝利した事実を美化してしまう、それが、たとえ、あとになって最悪な結果につながろうとしても。その例が大相撲かもしれない。横綱の貴乃花、そして、稀勢の里は怪我をしているにも係わらず横綱がゆえに強行出場した。そして、その怪我のなかでその場所で優勝を果たした。たしか、貴乃花のときは、そのときの総理が「感動した!!」って総理大臣杯を渡すときに言っていたな。この2人の優勝についてはこのあとすぐに美談になってしまった。怪我をしての優勝、たしかに、それは、日本人から見れば怪我しているにも係わらず「勝利した」「優勝した」という事実があったからこそ美談になったといえるかもしれない。しかし、それが美談で終わればよかったのかもしれない。けれど、現実はそうとはいかなかった。この2人の横綱はそのときの怪我が原因でこのあとも怪我に苦しんでしまった。そして、結局、その美談となった優勝から程なくして引退を決断せざるをえなかった。それって、横綱2人からすれば最悪の結末になったのかもしれない。さらに、甲子園でも、エースといわれる投手が全試合、全イニングを投げ続けて優勝したほうがいいという考えを持つ人が残っているかもしれない。たしかに、エースが全試合、全イニングを投げ抜いて優勝すれば、それは凄いといえるかもしれない。さらに、全試合、全イニング投げきる、そんな酷なことを成し遂げて「勝利した」「優勝した」こと、それが美談として後世に残るかもしれない。しかし、その「優勝」という美談の代償として、その投手はその際に体を酷使した結果、プロ野球選手になると短命に終わってしまう、大成しないケースもあるかもしれない。もし、それが正しければ、その若者にとって最悪の結末を迎えたのかもしれない。そう思うと、日本人は勝つこと、勝利することを美化してしまう。いや、勝つこと、勝利することに感動を覚えてしまい、それを得るために、勝利という美酒、いや、感動を追い求めてしまう傾向があるかもしれない。そして、それが、無理してまで、将来のことすら無視してまで、勝つこと、勝利することに固執してしまうことにつながっているのかもしれない。そう考えてしまうと、はたして、これからを生きる上で、将来有望な若者たちにそれを無理やり押し付けてしまうのは如何なものだろうか?そして、それを今もしているのなら、これからの日本という国の行く末が不安や心配でいっぱいになってしまう、と考えてしまうのは俺だけだろうか?」

 そして、沼田はこう言って話を締めた。

「さて、月という少女、「勝利こそ正義」、「勝利こそ絶対」、「勝利すること、勝つことこそすべて」、という日本人の心の根底にある考えに固執せず、本当の答え、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で1番大事なこととは?」という問いの本当の答えにたどり着くことができるかな?その答えを知る上で、月生徒会長、浦の星の生徒たちと交流すること、それが今、大事ではないか。だって、その答えは「静真の者にはわからないが、浦の星の者にとっては自然となにも気づかずにでているもの」だから・・・」

 

 臨時理事会があったその日の夜、月は自宅の自分の部屋のベッドの上でねっころがっていた。そのとき、月からはこんな言葉が出ていた。

「沼田のおじちゃんが言っていたことの答え、なんだろう?」

沼田から出された問いの答えについて真剣に悩む月。それでも、今の月からしたら、「部活をすること」の意義を知らない、今の月からすれば、その答えをだすことは難しかった。

 が、そんなとき、

プルル プルル

と、月のスマホが鳴る音が聞こえてきた。月のスマホ、それは、カメラ性能、映像編集など、世界中のどのスマホのなかでもダントツの高性能さを持つハイスペックスマホだった。そのスマホ、月が生徒会長に選ばれたときのお祝いに月の両親から贈られたものだったが、月にとってその高性能さをうまく使いこなしていない、そんな意味でちょっと残念すぎるスマホだった。

 そのスマホの呼び鈴に、月、

「はいはい、出ますよ~」

と、だらしない声をだして電話にでる。すると、そこから聞こえてきた声は・・・。

「月ちゃん、私たち、やったよ!!ラブライブ!に優勝したよ!!これで浦の星の名前をラブライブ!の歴史に深く刻み込むことができたよ!!」

と、ラブライブ!に優勝したことで喜びあふれている曜の声だった。この声を聞いた月、あることをひらめく。

(そうだ、そうだよ!!浦の星にあって静真にないもの、その答えを見つけるには、この僕が浦の星の生徒たちと行動を共にすればいいんだ!!そして、その答えを探してくれる存在、それが、曜ちゃんたちAqoursかもしれない!!僕、決めたよ、曜ちゃんたちAqoursと行動を一緒にする!!そして、沼田のおじちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で1番大事なこととは?」、その答えを曜ちゃんたちAqoursと一緒に見つけてやる!!)

 

                               つづく

 

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