ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

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Moon Cradle 第2部 第3話

 数十分後、千歌たち6人と月はいつもの今川焼き屋に来ていた。ここは千歌たちが沼津駅近くの貸しスタジオで練習する際、帰りによく寄っていたお店であった。1個100円という高校生にとってリーズナブル、それでいておいしい今川焼き、疲れた体を甘い食べ物でいたわる、それが簡単にできる場所だった。

 で、この今川焼き屋に移動する際、曜は月と会話を弾ませていた。これには、千歌、少し嫉妬してしまう。が、ものの数分でその今川焼き屋に到着してしまう。その今川焼き屋の前に置かれていたベンチに千歌、曜、梨子が座ると、少し間をおいて、月、いきなり、梨子に対し褒める。さらに、千歌、ルビィ、花丸、善子の名をあげ、いつも曜と会えばAqoursのことをよく話題にすることを話す。これには、曜、少し照れてしまう。

 が、いきなり、ここでルビィがあることを月に尋ねる。

「それと・・・、分校のこと・・・」

これを聞いた月、曜を除く千歌たち5人に分校問題が起きた理由を話す、静真は昔から部活動が盛んであること、その中で全国大会に出場できる部活も数多くあること、静真に通う生徒の保護者(父母)の一部に「静真の部活動に浦の星の生徒たちが参加したら、士気の低下、対立により、部活動そのものに悪影響がでてしまう」ことを危惧する声があること、と。これにより、千歌たち5人も、(むつたちが話していたことと月が話したことを統合して)「「(部活動に対する士気が低いと思われている)浦の星の生徒が、(部活動が盛んで全国大会に出場できる部活を数多くある=部活動に対する士気が高い生徒たちも多い)静真の部活動に参加したら、士気の低下、対立により、部活動そのものに悪影響がでてしまう」、その保護者の声が多く、その声に押される形で浦の星の生徒たちは分校に通うことになった」ということを理解した。

が、月は曜を含めた千歌たち6人には分校問題、そのさわりしか伝えていなかった。その裏では、統合によってすべき(と、勝手に木松悪斗が思っていた)静真への多額の寄付をしなかった小原財閥、それに、浦の星に回復不可能なダメージを与えるための、木松悪斗の悪巧みがあること、それについては、月、千歌たち6人には伝えていなかった。これについては、月自身、木松悪斗の魔の手から曜たちAqours6人を守りたい、そんな気持ちからしたことだった。あまり深くかかわってしまうと、きっと、木松悪斗が曜たちAqoursを潰しにかかるとするだろう、それをさせないためにも、と、いう、月の親心だった。が、これがのちのち、それが起きてしまうのだが、それにはついてはのちのちの話である。

 とはいえ、分校問題について、千歌たちも悩んでしまう。しかし、曜はそれについて一言。

「実は(月と)相談していたんだ」

実は、曜、仲見世商店街のはずれの小道から今川焼き屋に行くまでの間、千歌たち5人より先に月から分校問題とその原因について月から聞いており、それについて、今さっきまで月と相談していたのだ。

 そこで、曜はある結論を出す。それを千歌たちに話す。

「その人(静真の保護者たち)が気にしているのは、浦の星の生徒が(静真の)部活でも真面目にちゃんとやっていけるのか、ってところだと思うの」

曜、静真の保護者たちが浦の星の生徒たちに対して不信感を持っている原因、それが先ほどの曜の言葉、だと考えていた。たしかに、曜の答えも一部正解だったりする。初戦敗退が続く浦の星の部活動、その結果だけ見た場合、浦の星の部活動を実際に見ていない静真の保護者たちからすれば、「初戦敗退が続くほど浦の星の部活動の実力は低い=浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い、お遊び感覚でしている」と思われてもしかたがない、そう、曜には思えてしまっていたのだ。むろん、木松悪斗の悪巧みからなのだが、木松悪斗は次の構図を静真の保護者たちに埋め込んでしまっていた。

「初戦敗退が続く→浦の星の部活動の実力が低い→浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い→もし(生徒の部活動に対する士気が高い)静真の部活動に(士気が低い)浦の星の生徒が参加すれば士気低下・対立が起きる→静真の部活動に悪影響がでる」

でも、曜からすれば、浦の星の生徒たちが静真の部活動でも真面目にちゃんとやっていけること、それを静真の保護者たちに対して証明さえすれば、それにより、この構図は壊れる、そう、考えていた。

 そして、月はあることを言う、この分校問題を、この構図を壊す案を。

「だから、(浦の星に)実績のある部活もあるよ、と、証明できればいいんだよ」

だが、この月の言葉に曜を除く千歌たち5人は、浦の星にそんな実績がある部活があったか悩んでしまう。が、そのなかで、梨子はあることに気づく。

(あっ、1つだけあった、全国大会に優勝した、そんな実績を持つ部が1つだけ・・・)

その部の名を思い出した梨子、悩む千歌を見て、一言。

「あるでしょ!!」

その言葉に曜はその部の名を梨子は思い出したことに気づき、梨子の言葉に続いて言った。

「全国大会で優勝した部活が1つだけ・・・」

その言葉に千歌やルビィたちもその部活の名を思い出した。その部活の名は・・・。

「浦の星女学院スクールアイドル部Aqours」

そう、千歌たちの部活である。浦の星の部活の中で唯一、全国大会で優勝した部活、スクールアイドル部。それを受けて、曜はある提案をする。自分たちの部、スクールアイドル部が、静真の保護者たちに対して、浦の星の生徒たちが、静真のどの部活にも負けないくらい、真面目に、本気で、部活をしている、そのことを証明すればいいのでは、と。これにはついては千歌、すぐに曜の提案に乗る。

 で、曜の提案した、静真の保護者たちに自分たちスクールアイドル部がそのことを証明してみせる、そのステージについてだが、これについて、月、

(ついにここまで曜ちゃんたちを導くことができた。あとは、僕がその曜ちゃんの案を実行できるステージを、曜ちゃんたちに伝えるだけだ!!)

と、意気込んでしまう。実は、月、曜がその案を提案する、そのところまで、自分のシナリオ通りに曜たちを導いていたのだ。最初から月の手の上で動かされていたのである、曜たちは。月としては、曜たち浦の星の生徒たちには1日でもはやく浦の星分校ではなく、静真本校に通ってもらいたい、1日でもはやく分校方式を解消したい、と、思っていた。でも、それには乗り越えないといけない壁がある。それは、「静真の部活動に浦の星の生徒が参加したら悪影響がでる」という静真の保護者の声。その声を打ち消す1番手っ取り早い方法、それが浦の星で唯一(ラブライブ!という)全国大会で優勝した千歌たちスクールアイドル部Aqoursが、本気で、真面目に、部活をしている、活動していること、(そして、みんなに感動を与えること、)それを証明すればいいのである、それも、その声の元凶である静真の保護者たちが持っている、浦の星の生徒たちに対する不信感、それを一度に払拭するくらいの力で。それはまるで、「静真の部活動は盛んであり、全国大会に出場できる部活も多い。だから、静真の生徒の(部活動に対する)士気が高いし実力もある」という、木松悪斗が言う力の論理に対し、月も、「浦の星のスクールアイドル部は全国大会で優勝した。浦の星の部活はそれくらいの実力がある!!いや、浦の星の生徒たちの部活動に対する士気はどの静真の部活にも負けない!!」、と言う力の論理で対抗しているかのように。そして、その月の力の論理を証明すればきっと分校問題も解決できる、と。このときの月はそう考えていた。

 が、月はこの時点であることを見落としていた。あまりに急ぎすぎたのか、それとも、あまりに短絡的だったのかもしれない。たしかに、千歌たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの力でもってすれば、きっと、静真の保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭し、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら悪影響がでる」という保護者の声を打ち消すことができただろう。だが、そのとき、「浦の星の生徒たちの部活動に対する士気、真面目さ」、それを証明したのは千歌たちスクールアイドル部Aqoursだけ、それ以外の生徒については違うかもしれない、いや、Aqours以外の浦の星の生徒の部活動に対する士気は低いかもしれない、という疑惑を感じる保護者たちも少なからず残ってしまうかもしれない。そして、静真本校と浦の星分校が無事統合されたあと、もし、静真の部活動が不振に陥ってしまったら、必ず、その残っていた疑惑が確信へと変わってしまうかもしれない。そうなると、「浦の星の生徒たちの部活に対する士気が低い→静真の部活が不振なのは浦の星の生徒たちが静真の部活動に入ったことで静真の部活動に悪影響を与えたからだ」という構図が再燃しかねない。だって、この構図を浦の星の生徒たちが自ら証明してみせた、と、浦の星の保護者たちが見てしまうから。さらに、「浦の星との統合後に静真の部活動が不振に陥る→その原因って(木松悪斗が言っていた)統合後に静真の部活動に参加した浦の星の生徒たちの士気が低いからだ→「(木松悪斗が言っていた)浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら静真の部活動に悪影響がでる」それが証明された」と、静真の保護者たちは、「静真の部活動が不振に陥った」、その結果と、木松悪斗が静真の保護者たちに植え付けた浦の星の生徒たちに対する不信感と合わさったことにより、そう判断してしまうだろう。こうなってしまうと、(浦の星の生徒たちを不幸のどん底に落としたい)木松悪斗の完全なるターンを迎えてしまう。木松悪斗、これに乗じて浦の星の生徒たちを駆逐するかもしれない。でも、この状況になってしまうと、曜たち浦の星の生徒たちを守る人なんていないのである、静真の部活動の不振の元凶だから、と、静真の保護者たち、いや、その関係者全てがそう考えているから。静真の関係者の大多数が「浦の星の生徒たちを駆逐せよ」と声を大にして言ってしまい、浦の星の生徒たちを養護する人たちも少数のため、養護したいが言うと自分も迫害を受ける、そう思うと声をあげることすらできない。このように、月の考えた力の論理で木松悪斗に対抗することについてはそんな悲惨な状況に陥る危険性をはらんでいたのである。

 ただ、こんなふうに、結果だけで物事を見てしまう、静真の保護者たち、を含めた、静真に係わる者すべて、本当のところ、沼田が言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、その答えを言えるのだろうか、いや、言えない、いや、誰も知らない。それが、この分校問題、いや、それを含めて、静真における一番の問題点、なのかもしれない。その沼田の問いの答え、それが、静真におけるいろんな問題点をすべて解決してくれるのかもしれない、分校問題を含めて。だが、この時点において、その沼田の問いの答えを知る者はいなかった、月はおろか、あの沼田まで。でも、その沼田の問いの答えを知っている、いや、知らなくても知らないうちに実行している人たちがいた。それが曜たち浦の星の生徒たちである、かもしれない。その浦の星の生徒たちと一緒に行動すればきっと沼田の問いの答えを見つけることができる、そう沼田は考えていた。それを臨時理事会後、月に伝えたのだ。が、その沼田の思いなど無視してしまい、力には力にもって対抗しようと月は考えていた。が、力を追い求める者の末路、それは、滅、である。力を追い求めるあまり、その力に飲み込まれ、いや、その力に酔いすぎてしまい、結果的にその力によって滅する運命だったりする。それは、月にしろ、木松悪斗にしろ、である。そして、結果論だけで物事を見て結論をだす、その危うさ、そのことに月と木松悪斗、この2人は、いや、静真に係わる者全員が気づいていないかもしれない。そして、それを正すために必要なもの、それが沼田の問いの答え、なのかもしれない。

 とはいえ、曜たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの力でもって静真の保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭したい、その力を証明する場所、それを曜たちは追い求めようとしていた。これに対し、月、ここぞとばかりに、

「ライブもいいけど・・・」

と、曜たちにある提案をする、それは、3日後に静真の大講堂で行われる「新年度部活動報告会」、そこで千歌たちAqoursがライブを行い、静真の保護者たちに対して実力を見せつけること、そして、浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が高く、真面目に、本気で、部活をしていることを証明してみせること、を。たしかに、この報告会には静真の部活動に参加している生徒の保護者も数多く見に来るのだ。だって、わが子の晴れ舞台だから。数多くある静真の部活動、そのなかにはマイナーな部もあったりする。その部にとってこの報告会はこの1年で唯一みんなの前で活躍できる場だったりする。その生徒を見に数多くの保護者たちが報告会がある講堂に集まる。でもって、静真が誇る大講堂は、その数多く集まる保護者たち全員を収容できるほどのキャパを持っていた。その多くの保護者たちの目の前でAqoursのライブを行い、千歌たちスクールアイドル部Aqoursの実力を静真の保護者たちの目の前で見せつければ、きっと、このAqoursのライブを見てくれた静真の保護者たちの考えも変わり、それにより、保護者たちの声、浦の星の生徒たちに対する不信感も一掃され、無事、分校問題は解決する!!そう、月は考えていた。

 そして、その月の提案に対し、千歌たちからも、

「うん、それ、いいね!!」

と、二つ返事でOKを出してしまった。月の策略にまんまとひっかかった千歌たちであるが、千歌たちからすれば、それが浦の星の生徒たちを救う、唯一の方法、最善の方法、だと思ったから月の提案にすぐにOKをだしたのだ。

 

 月が千歌たちAqoursと初めての邂逅を果たした翌日、月は静真の部活動をしている生徒たちの連合体、部活動連合会の連合会室にいた。「部活動報告会」、それを主催しているのは、静真の生徒たちの学校での活動のうち、部活動関連を担当している部活動連合会だったりする。ただ、この報告会で活躍次第では部の予算が決まってしまうことがあるので、その予算を担当している月たち生徒会も少なからず関与していたりする。なので、その生徒会の長である月が「部活動報告会」のために部活動連合会の連合会室にいてもおかしくなかった。いや、生徒会長という権力を使い、部活動連合会が主催する「部活動報告会」に介入することもできるのである。実際、月は自分の権力を使って、今、まさに報告会に介入しようとしていた。

(よしよし、連合会会長の旺夏はいないな!!部活動報告会に介入するなら今だ!!)

そう思った月、出来たばかりの報告会のプログラム表(仮)を見てあることを考えた。

(このプログラムなら、ここに曜ちゃんたちのステージを無理やり入れ込んだらいいかもしれない)

そう、月がここに来た理由、それは、曜たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursのライブの時間を無理やり報告会のプログラムに入れ込むためだった。とはいえ、事前に報告会の担当役員にはAqoursのライブの時間をとっておいて欲しい、と、月は依頼をしていた。ただし、Aqoursの名前は伏せられていたが・・・。なので、Aqoursが静真の生徒・保護者の前でライブをする時間はすでに確保されていた。しかし、どの時間でAqoursのライブを行うのかそれはあとで月が指示することになっていた。そして、そのライブの時間を指定しに月が連合会室を訪れていた、というわけである。

 で、月が注目した時間、それは静真の部活の中でマイナーな部活の発表が続く時間帯だった。軽音楽同好会、キャンプ同好会、などなど。特に軽音は普通の高校ではメジャーなところが多いが、スポーツ系の部活が多い静真においては、軽音はどうしてもマイナーだったりする。で、月はそのマイナーな部が続く時間帯のプログラムの順番を確認する。

「キャンプ同好会、軽音楽同好会、女子サッカー部、弓道部、・・・」

これを見た、月、にやりと笑うと、すぐに、

(軽音楽同好会の次が女子サッカー部か。こりゃ、このプログラムの順番の間にAqoursのライブの時間を入れたらとても効果的かも・・・)

そう、軽音楽同好会はAqoursのライブと同じく音響設備を使うことが多い。なので、軽音楽同好会のあとにAqoursのライブをすれば音響設備を準備する手間が省けたりする。さらに、女子サッカー部は去年のインターハイで全国優勝しており、静真における(報告会での)注目度も1番高かったりする。なので、その女子サッカー部を見に多くの静真の生徒・保護者たちが大講堂に集まる。なので、女子サッカー部の前にAqoursのライブを行えば、女子サッカー部を見に来てくれた静真の保護者(それも多数)にアピールすることができる。そう考えた、月、すぐに、

「あの~、この軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだに、例の、僕が言っていた演目を設けたいのだけど・・・」

と、報告会のプログラム編成を担当している役員に言うと、その担当役員はすぐに、

「それはいいのですけど、軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだで本当に良いのですか?」

と、月にもう一度確認する。なぜなら、女子サッカー部という部活動報告会一番の目玉の直前だったからだった。一番の目玉である女子サッカー部の直前に行うこと、それは、女子サッカー部の前座になることを意味している。さらに、女子サッカー部を見に多くの静真の生徒・保護者が大講堂に集まる。そのため、その大多数の人の前であまりに緊張しないか、それを心配しているのである。

 が、月はそれでも承知の上だった。だって、その大人数の人の前に立つことがあっても、曜たちAqoursなら、それすらも跳ね返してくれる、そう確信していたから。部活動報告会の観客の数とは比べ物にならないくらい、2万人以上もの観客が入る秋葉ドーム、そこで行われた「ラブライブ!」で優勝したのが、曜たちAqours、である。なので、部活動報告会での緊張なんて、Aqoursなら、関係ない!!、と、月は考えていた。それより、より効果的に数多くの静真の保護者にAqoursの勇姿を見せるには絶好の時間である、そう考えた、月、

「ああ、それでいいよ。でね・・・、この時間に発表する部活はね・・・」

と、その担当役員のところに行き、その時間帯に発表する部活の名を告げる。

「浦の星女学院スクールアイドル部Aqours・・・だよ・・・」

これを聞いた担当役員、

「えっ、あの、Aqours!!」

と、大声をあげる。その担当役員、Aqoursのことを知っていた。いや、静真の生徒のなかでAqoursの名前を知らない生徒はいなかった。沼津において、今をときめくスクールアイドルグループだった。あの「ラブライブ!」で優勝したこと、それが1番大きかった。その、Aqoursの、そのライブが、浦の星の統合先である静真で見られる、たとえ、わずかな時間でも。それを気に良くした担当役員、すぐに、

「わかりました!!その時間帯の枠、確保しました!!」

と、月に報告する。これに、月、

「ありがとね!!」

と、その担当役員に御礼を言った。ちなみに、その担当役員、あまりの嬉しさに、なにも考えずに月の指示通りに動いた、わけではなかった。月の狙い通り、軽音楽同好会の次にAqoursのライブを行うことで音響設備の準備をする時間を少しでも削ることができる、そう考え、軽音楽同好会の次にAqoursのライブを行うことを決めたのだった。

 で、このとき、月はあることを思ってしまう。

(旺夏、僕のために道化を演じてくださいね!!)

そして、月、にやにや笑うと、連合会室をあとにした。

 

 だが、そう問屋が卸さないのがこの物語である。夕方、木松悪斗の長女で部活動連合会の会長である旺夏が連合会室に立ち寄っていたのである。実は、旺夏、今日一日、沼津にあるサッカー場で対外試合を行っていたのである。相手は沼津にあるJリーグのサッカーチーム、そのユースチームであった。同じ年齢とはいえ、男と女、対格差がありすぎる。さらに、プロサッカーチームのユースである。その差は歴然!!それでも引けをとらない試合を旺夏率いる静真高校女子サッカー部はしてきたのだ。結局引き分けで終わったものの、そのユースチームに負けないくらいの実力を持っていたのだった。このように、静真高校女子サッカー部は男性のプロチームと試合を続けることで着実に実力をつけてきた。女子去年のサッカー部、その結果、去年のインターハイで念願の初優勝を果たしたのである。

 と、女子サッカー部の自慢話はこれにくらいにして、そのユースチームとの試合を終え、静真に帰ってきた旺夏、明後日に行われる報告会のプログラムを確認するために連合会室に立ち寄っていたのである。で、そのプログラムを見た旺夏。すると、ある演目を見つける。それはこれまで見たことがない部活の名だった。

(浦の星女学院スクールアイドル部Aqours・・・)

この名に気づいた旺夏、すぐに、報告会のプログラムの編成を担当したあの役員を呼ぶ。すると、すぐに、

「このプログラム、すでに決定稿ですか?」

と、その担当役員に尋ねる。すると、その担当役員、

「はい、これが決定稿ですが・・・」

と、言うと、旺夏、すぐに、

「その決定稿、白紙に戻しなさい!!」

と、その担当役員に命ずる。これには、担当役員、

「でも、そうしたら、明日のリハーサルが行えなくなるのですが・・・」

と、小声で言うも、旺夏、

「これは、連合会会長である、この私、旺夏の命令です!!従いなさい!!」

と、一喝する。これには、担当役員、

「は、はい・・・」

と、しょんぼりしてしまう。

 とはいえ、このまま報告会のプログラム編成を白紙に戻したまま翌日に持ち越してしまうと、翌日、つまり、報告会前日に行われる報告会のリハーサルが行えなくなるのは自明の理。そこで、旺夏、すぐにある場所に電話する。すると、数秒後、

「なにかね、旺夏?」

と、どす黒い声が旺夏のスマホから聞こえてくる。その声に対し、旺夏、

「あっ、お父様、旺夏ですわ」

と、その旺夏の電話相手、こと、木松悪斗に自分の名を伝える。そして、旺夏、木松悪斗に、

「実はこうなっていて・・・」

と、明後日に行われる報告会、その軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだに浦の星の部活であるスクールアイドル部Aqoursの発表の場が突然設けられていることを伝える。これを旺夏から聞いた、木松悪斗、

(ほほう。これは(統合推進派の)渡辺月生徒会長の差し金だね)

と考えると、すぐに、

「それは確かに驚いてしまったよ。まさか、月生徒会長、今、(沼津の中で)1番ときめいているアイドルグループ、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursを担ぎ出すとはね・・・」

と、月の行動に感服してしまう。これを聞いた、旺夏、

(なんだって!!あの、月生徒会長、あの、Aqours、を担ぎ出すなんて!!これは、どんな手段も選ばない、ってことを意味しているのよね、月生徒会長!!)

と、月の行動にご立腹の様子。

 が、そのとき、木松悪斗は旺夏にある指示を出す。

「旺夏、この月生徒会長の悪巧みを阻止しないといけない。そのためにも、この演目をここに移動させて・・・」

で、この木松悪斗が出した指示を聞いた旺夏、

(な、なんて凄い考えなんでしょう。その指示通りなら、月生徒会長の悪巧みを潰すだけでなく、月生徒会長、いや、浦の星にも大ダメージを与えることにもなる!!こうなれば、分校方式はずっと続く、安泰すること、間違いなし!!ああ、やっぱり、お父様、最高ですわ~!!)

と、父木松悪斗に惚れ惚れしてしまう。

 と、いうわけで、旺夏、プログラム編成の担当役員に木松悪斗の指示通りにプログラム編成を変更するように命令する。このとき、旺夏、

「これは、私の父、木松悪斗様が出した命令です!!もし、命令どおりに動かなかったら、あなた、この静真、いや、沼津はいられませんからね!!」

と、その担当役員に脅しをかける。実は、木松悪斗の名で脅しをかけること、この担当役員、いや、静真高校の生徒たちにとって、1番効果的だったりする。沼田ほどじゃない、が、それでも、静真において絶対的な権力を持つ木松悪斗、その名は静真に通う生徒すら知っていた。そして、その木松悪斗に逆らうこと、それは、静真、いや、沼津において、死を意味しちゃう。そのことを知っているからこそ、この担当役員も旺夏の命令には逆らえなかった。ちなみに、その旺夏の脅しに屈しない生徒たちもいた。それが、月たち生徒会の面々である。月という絶対的生徒会長に付き従う、それが生徒会の面々だった。

 とはいえ、旺夏の命令どおりに動いた・・・、というよりも、プログラムの演目の順番を少しいじっただけなのだが、その担当役員は改めて完成したプログラム表を旺夏に見せる。すると、旺夏、

「あぁ、これでいいですわ。これを決定稿にしなさい!!」

と、その担当役員に命令すると、その担当役員はこの修正したプログラム表を決定稿にした。このとき、旺夏はあることを思ってしまう。

(月生徒会長、私の代わりに道化になるのはあなたですわ!!)

 

 

 

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