一方、東京での拘置所ではある父娘が再会していた。
「お父様・・・」(桜花)
「あぁ、ごくつぶしか・・・」(木松悪斗)
そう、木松悪斗、桜花父娘である。木松悪斗は元側近(裏美)の仕業でインサイダー取引をした罪で警察に捕まったのだが、今度は同じく元側近の猪波(花樹の父親)による猪波の母(花樹のおばあちゃん)の殺人に加担した、ということで再逮捕されてしまったのである。そんななか、自分の娘(次女)である桜花がその父に会いにきたのである。
だが、開口一番、木松悪斗は自分の娘の桜花に向かって大声で怒鳴った。
「ふんっ、いくらごくつぶしとはいえ、私を笑いにきたのだろう、この落ちぶれた父を見にな!!いや、元父だったな!!」
木松悪斗は猪波とは違い自分の罪を認めていた。仕組まれたとはいえ、インサイダー取引をしたことには間違いがなかったため、それについては投資のプロとしてやっていはいけないことだったと木松悪斗は認めていたのである。そして、そのせいで自分の投資グループを裏美に奪われてたことで自分は落ちぶれてしまったと自覚していたのである。ただ、それでも自分の信念は曲げておらず、
(しかし、「勝利こそすべて」、それは間違いではなかった。私が裏美に負けたから私はすべてを失ったのだ!!だから、それ自体間違いではなかった・・・)
と、自分の信念を使って自分の罪を認めてしまったのである。
そんな父に対し桜花は、
「私からすればお父様は落ちぶれいません!!」
と鼓舞しながら言うと、木松悪斗、そんな桜花に対し、
「どうして私が落ちぶれていないと言えるのかね。お前の友達である娘(花樹)のおばあさんを殺すのを手伝ったのだぞ。それでも落ちぶれていないとはいえるのか?」
と聞き返す。実は、木松悪斗、猪波(花樹の父親)が花樹のおばあちゃんを殺すのを手伝っていた。詳しくいうと、殺人に使ったフグ毒とトリカブト毒の調達、殺人現場となった病院の提供など、殺人のお膳立てを行ったのである。ただ、そのことについては木松悪斗は認めていた。そのため、いつ釈放されるのかわからない、だからこそ自分はもう落ちぶれてしまった、と木松悪斗はそう思ったのである。
だが、そんな元気のない木松悪斗、自分の父親に対し桜花は元気よくこう答える。
「だって、私の父は木松悪斗自身その人だからです!!いくら殺人を手伝ったとしても、インサイダー取引をしたとしても、自分の父親なのは変わりないのです!!そんな父だからこそ、私を認めてほしいのです!!」
それは桜花の切ない願いであった。これまでは桜花は自分の父親である木松悪斗に自分を認めてもらおうとしていた。それは今や仲間である梅歌や松華をだましたとしてもである。結局、桜花は自分の父親ではなく、梅歌、松華を含めたAqoursメンバーから認めてもらうことで、そして、昏睡状態から脱した自分の母親のおかげで自分自身を解放したのである。だが、それでも桜花には心残りがあった。それは、実の父、木松悪斗から認めてもらうことだった。たとえ、ほかの人から認めてもらったとしても自分の父親から認めてもらっていない、そのことが桜花にとって心残りであったのだ。
そんあ桜花は、自分の父、木松悪斗に対しさらに詰め寄る。
「お父様、私はたしかにお姉さま(旺夏)よりも優れていないと思います。ですが、私の力でラブライブ!に優勝することができました!!今回の冬季大会は力及ばず2位でしたが、それでも頑張ってきたのです。さすがに父が言ってきた、「勝利こそすべて」という考え方ではなく、「楽しむことがすべて」、その考えでやってきましたが、それでも父に誇れる成績を残すことができたのです。だからこそ、私を認めてください、お父様!!」
桜花は桜花なりに頑張ってきた。さすがに「勝利こそすべて」という考え方ではなく、「楽しむことがすべて」、その考え方でもってやってきたのだが、それでも、前回は優勝、今回は2位というラブライブ!にてかなり優秀な成績を残したのはまぎれもない事実だった。
だが、そんなは桜花に対し木松悪斗はこう反論した。
「ふんっ、所詮、音楽はただのお遊びだ!!スクールアイドルというのもアイドルの真似事じゃないか!!そんな大会に勝ったところでなんの意味もない!!無意味なんだ!!」
木松悪斗は音楽をただのお遊びとしかみていなかった。なので、スクールアイドルもただのアイドルの真似事である、という認識だった。もちろん、そのスクールアイドルの甲子園であるラブライブ!すらも木松悪斗にとってみればただの遊びの大会としか見ていなかったのである。
そんな木松悪斗に対し桜花はこう訴える。
「たとえそうだとしても私はAqoursを、みんなを信じて自分の力を出し切ったのです!!そのことを認めてください!!そして、私のことを認めてください!!」
桜花からすればたしかに自分の力でもってラブライブ!に優勝、もしくは2位になったのである。だが、それ以上に、梅歌、松華を含めたAqoursの力も絶大だったのである。さらに、桜花がAqoursのみんなを信じたからこそこの成績を残した、ともいえた。ただ、それすら父は認めてくれない、桜花はそう思っては、自分の父、木松悪斗にモノ申したのである。
その桜花の言葉、であるが、木松悪斗、
(ふんっ、それは単なる戯言だ!!)
と一瞬思ったのも束の間、木松悪斗は自分の敗因についてつい考えてしまった。
(とはいえ、私には圧倒的な力を持っていた。それなのにAqoursはそんな私に戦いを挑んできた。そのAqoursは桜花がAqoursを頼ったように相手を信じて集団で攻めてきた。そのため、私は負けたのだ。それくらい、人を信じる、というのはときに強大な敵すら倒すくらいの力をもつものなんだろうな・・・)
そう考えたのか、桜花に対し、木松悪斗、こんな言葉を送った。
「とはいえ、ほんの少しだがお前のことは少し認めてやろう。まぁ、この私を倒したのだからな」
この木松悪斗の言葉に、桜花、
「あ、ありがとうございます!!」
とお礼を言うとともにその場を去ろうとした、そのときだった。木松悪斗、その桜花に対しこの言葉を送った。
「まぁ、頑張れな、桜花・・・、私の分までな・・・」
なんと、木松悪斗、いつもの「ごくつぶし」「役立たず」と言っていた桜花のことを初めて下の名前で呼んでくれたのだ。これには、桜花、一瞬うれしくなって、
「はいっ、お父様!!」
とご機嫌な返事をしてしまう。自分のことをちょっぴり認めてもらっただけでなく自分の名前を初めて呼んでもらった、その嬉しさでいっぱいだったのだ。それは桜花にとって自分のことをついに認めてもらった、そのことを示すものとなった。
だが、このとき、桜花には引っかかるものがあった。それは・・・、
(でも、最後の「私の分まで」と言っていたけど、一体どうして・・・)
そう、最後の言葉、「私の分まで・・・」と言ったことだった。これには、桜花、ある心配をする。
(まさか、お父様・・・)
そのためか、桜花の気持ちは、うれしさ半分、心配半分というちょっと複雑な思いになってしまった・・・。
その桜花は複雑な気持ちのなかで帰っていくと木松悪斗はあることを考えてしまった。
(仲間として信じるか。これまでなかった考えだな・・・)
そう、これまで木松悪斗は仲間を信じる、そのことをしてこなかったのである。ITバブルのとき、自分の力でもってIT会社を作ったもののより大きな会社にのっとられた、そのこともあり、人を仲間として信じることができなかった・・・というか、これまで自分一人でやってきたのである。そのため、人を仲間として信じることを木松悪斗はしてこなかったのである。とはいえ、少なからず自分の投資グループにおいて裏美と猪波という信頼していた側近もいたが、裏切ったら徹底的につぶす、そんなドライな考えをしていたため、仲間とはいえなかった。そのため、仲間として信じる、そのことを木松悪斗はこれまでやってこなかったといえばそうともいえた。
そして、木松悪斗はその考えに基づいてか、こんな風に考えるようになった。
(それに、なんか、「勝利こそすべて」という考えに疲れてしまった・・・。あまりに勝利を追及するあまりすべてを失ってしまった・・・。それはあの沼田が言っていた通りになったな・・・)
そう、木松悪斗は勝利のみを追及するのに疲れてしまったのである。さらに、勝利のみを追及するあまりすべてを失った、そう考えるようになったのである。そのことはあの沼田がラブライブ!延長戦前に行われたAqours側に立つ月生徒会長との最後の勝負のときに沼田に言われたことだった。それが、今、現実になったのである。その意味でも木松悪斗は勝利を追及することに疲れたとも言えた。
そして、木松悪斗はこう考えるようになってしまった。
(そう考えると、これから先、生きる意味がない気がしてきた・・・。私はすべてにおいて負けてしまったのだ。人生を諦めるしかないのかもしれない・・・)
木松悪斗自身生きる意味を見失ってしまった。木松悪斗はこれまで「勝利こそすべて」の信念のもと、多くのものと戦ってきた。だが、Aqoursという小さな敵に負けたことで木松悪斗はすべてを失ったのである。それに、仲間という存在も今はいない、のに加えて、戦いの連続がゆえに人生に疲れてしまったのである。その意味でも木松悪斗はこれから先の人生を諦めようとしていたのである。
そんな木松悪斗に、後日、1枚の手紙が送られてきた。その手紙の差出人は桜花だった。その手紙には桜花からの「絶対に来てください」という文言とともに1枚のチケットが入っていた。そのチケットとは・・・、「Aqours卒業生さよならライブ」・・・、だった・・・。
一方、そのころ、裏美はというと・・・、
「なんでこの私が逃げまわらないといけないんだ!!」
と隠れながらも文句を言っていた。というのも、裏美、木松悪斗から投資グループを乗っ取ったものの、ものの3か月でその投資グループを潰してしまったのだ。そのとき、多くの借金をしてしまったのである。そのため、その借金取りから逃げるために各地を転々とし逃げまわっていたのである。
そんななか、裏美、ついに借金取りに見つかってしまった。その際、
「私はあの投資グループの代表だぞ!!どっかいけ!!」
とにらみつけたものの、その借金取りから、
「そのグループの借金をしたのはお前だろ!!早く返しやがれ!!」
と逆に怒られる始末。そして、裏美はどっかに連れ去られてしまった。
その後、裏美の姿を見るものはいなかった。ベーリング海でカニ漁、もしくはマグロ漁などいろんな噂が流れがどれすら確証はもてなかった。ただ、借金は返しているらしく、どこかで生きているのはたしかだった・・・。
そして、桜花はある人の見舞いにも行くことになった。その人とは・・・、
「お姉さま!!」(桜花)
そう、桜花(はな)の姉、旺夏だった。自分のことを下に見ていたとはいえ、桜花からすれば旺夏は姉そのものだった。そのため、桜花はときどき旺夏の見舞いに行くことにしていたのである。その旺夏であるがいまだに東都大学病院で入院していた。インターハイ女子サッカー県大会決勝で受けたダブルタックル(それも左右両サイドから挟んでのタックル)により左足靭帯を破壊されてしまい一生車椅子生活になるのでは、とも医師から言われていたのである。そのため、姉の旺夏自身、
「もう生きる意味なんてないんだ・・・」
と生きることすら絶望するくらい落ち込んでいた。
そんな旺夏に対し桜花はいつもこんな元気づけをしていた。
「お姉さま、諦めないでください!!きっとなんとかなるはずです!!」
桜花にとって旺夏は唯一の姉である。その姉が絶望している、だからこそ元気をだしてほしい、そう思っていつも元気づけようとしていたのである。
だが、そんな桜花に対し旺夏はいつも、
「ほっといて!!どっかにいって!!」
と突き放そうとしていた。というのも、旺夏、いつも元気づけようとする桜花に対し、
(もうどっかにいって!!私はもうなにもできない、どうすることもできない、そんな人なのだから・・・)
といつも絶望を感じては、ほっといてほしい、もう関わらないでほしい、そう思っていたのだから・・・。
だが、今回の桜花はいつもとは違っていた。今回も桜花のことをあしらおうとする姉旺夏に対し、
(いつも絶望を感じて生きているお姉さま、そのお姉さまのために今日は来たのだから・・・)
と思ったのか1枚のチケットを桜花は旺夏に差し出してはこう言い出してきた。
「お姉さま、絶対に来てください!!今度、お姉さまの思いを変えるためにも、いつも絶望に満ちたお姉さまを変えるためにも絶対に来てください」
これには、旺夏、
「そんなに私に関わらないで!!」
と言い返すと、桜花、そんな言葉すら無視して、
「それならはるかさんとハヤテさんにお願いするだけですから!!」
といたずらそうに言い返す。これには、旺夏、
「えっ、あの2人は・・・」
と気がひいてしまう。というのも、いつも絶望している旺夏に対し、はるか、ハヤテ、ともに、
「ほら、元気をだして!!」(はるか)
「少しは体を動かしたほうがいい!!」(ハヤテ)
といつも元気づけようと病室に来るのである。なので、旺夏にとってこの2人はとても苦手にしていたのである。
その2人の名前を桜花は出してきた、ということで、旺夏は仕方なく、
「はいはいわかりました。でも、もしくだらなかったらその場から去るからね!!」
と嫌々になりながらも行くことを了承してしまった・・・。
その後、桜花はうれしそうに病院をあとにすると旺夏は残されたチケットを見た。そこにはこう書かれていた、「Aqours卒業生さよならライブ」と・・・。
数日後、桜花は静真のスクールアイドル部の部室にいた。その部室にはホワイトボードに「さよならライブまであと〇日」というカウントダウンの紙が貼っていた。Aqours卒業生さよならライブ、それは今度卒業する3年生、千歌、梨子、曜のためのライブであり、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネが3月上旬に行った九州への卒業旅行で決まったものだった。ただ、この旅行はなんか奇妙な事件に巻き込まれたような気がなくもないのだが・・・。
それはともかくとして、そのさよならライブの開催の地は沼津駅前であった。そう、そこは1年前に新生Aqoursお披露目ライブが行われた場所であった。そのお披露目ライブでは、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネが、当時、新生Aqoursと呼ばれていた6人での初めてのライブであった。そして、今回のさよならライブはそのお披露目ライブと対となすライブとして、千歌、曜、梨子の卒業を記念するライブであった。ちなみに、総合プロデューサーは今度卒業する(曜のいとこの)月から全権を委託され生徒会長になった(ヨハネと同じ中学に通っていた同級生の)あげはであった。あげははAqoursのマネージャーをしつつ生徒会長をして親友の東子とシーナとともに静真を盛り上げていた。そのあげはも千歌たちのさよならライブ開催の提案にこれまで静真のために活躍してくれたAqoursの千歌たち3年生の卒業を祝うために賛成、静真の生徒総出でこのライブの準備をしていた。もちろん、このライブの準備のためにAqoursも夜遅くまで練習をしていた。
とはいえ、「部長だから」といちはやくスクールアイドル部の部室に来ていた外のグランドをみてこう思っていた。
(今頃お父様のところにもあの手紙が届いているだろう。これで賽は投げられた。お父様とお姉さまは、今、生きる意味を見失っている。ならば、この私が2人に生きる意味を見出さないといけない!!このさよならライブはそのためのライブでもあるのだから!!)
そう、桜花は自分の父親である木松悪斗と姉旺夏に生きる意味を見出そうとしていたのである。2人は、今、生きる意味を見失っていた。このままだと2人は生きることすら諦めてしまうかもしれない、そんな2人のためにも桜花はこのさよならライブを通じて生きる意味を再び見出してほしい考えていたのである。果たして、その方法とは・・・。
と言いつつ、桜花、すぐに行動に移る。このあと、千歌たちが集まり9人でライブに向けての話し合いをしていた。その最中、突然、桜花はみんなにあるお願いをした。
「みんな、お願い、この9人で歌う最後の曲は私に作曲させてほしい!!」
これには、ヨハネ、
「えっ、梨子じゃダメなの!?」
とびっくりすると松華からも、
「9人最後の曲だからこそ梨子さんにお願いするべきでは・・・」
と異論がでてしまう。
ただ、それでも桜花は頑として、
「一生のお願い!!私に9人最後の曲を作曲させて!!」
と言い続けていた。
そんな桜花をみてか、千歌、
「なんか桜花ちゃんにも理由があるんだよ」
と言っては桜花に対しこう尋ねてみた。
「桜花ちゃん、その理由を教えて?」
この千歌の問いに桜花は包み隠さず話した。
「この曲は生きる意味を見失った人たちに対する応援歌にしたい。そして、この2年間におけるAqours、浦の星、静真の集大成にしたい!!千歌、梨子、曜、ルビィ、花丸、善子、梅歌、松華、そして、卒業してしまった、ダイヤ、鞠莉、果南、それに私たちにかかわった人たち、みんなの曲にしたい!!」
そのことを聞いて、みんな、はっとする。。生きる意味を見失った人たち、それはあの人たちのことを指しているとわかったからだ。その人たちは、「勝利こそすべて」という悪夢によりすべてを失い生きる意味を見失った、いや、その人たちを含めて、このご時世により生きる意味を見失った世界中のみんなに対して送る曲であると千歌たちはわかったのである。それは、この2年間、Aqoursとして活動してきた12人(卒業生のダイヤたちを含めて)、いや、その12人に関わった、浦の星、静真、その人たちに関わったすべての時間の集大成の曲にしたい、そんな桜花の純粋な想いからのものでもあった。
そんな桜花の言葉に千歌をはじめとする8人は深くうなずく。8人とも同じ意見だったようだ。そして、千歌はこう宣言した。
「それじゃ、9人最後の曲は桜花ちゃんに作曲をお願いするよ!!」
これには、桜花、
「みんな、ありがとう!!」
とお礼を言うととおに梨子に対しあるお願いをする。
「あと、梨子にお願いがあるのだけど、新曲を作ってほしいの、14人で歌う曲を!!」
これには、梨子、
「うん、わかった!!作ってみるね!!」
と深くうなずきながら言った。
こうして、さよならライブに向けて桜花と梨子は新曲を作ることになった。それはこのさよならライブがみんなに送るAqoursからの最高のプレゼントになることを意味していたのかもしれない・・・。