ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

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Moon Cradle 第2部 第7話

 が、そのライブの内容は、月の期待、いや、観客たち、静真の生徒・保護者たちが持つ、(ラブライブ!に優勝するほどの実力を持っている・・・であろう)本来のAqoursへの、とてもとても高い、富士山くらいの期待、をも裏切るものとなる。

 この静真の部活動報告会で披露する曲は「夢で夜空を照らしたい」。今のAqours、新生Aqoursが歌うことができる、唯一の曲。そう、本来のAqours、ダイヤ、果南、鞠莉、もいる、本来のAqours・・・じゃなくても、その3人がいなくても歌える曲、そして、その3人がAqoursに加入する前、その曲のPVが大人気となり呼ばれた、東京のスクールアイドルの大会で、突きつけられた「0」という悲しい現実を千歌たち1・2年生6人が知ることとなった、そんなきっかけを作った曲・・・、その曲を、この報告会で歌うことになるなんて、今の、新生Aqours、にとってなんか運命を感じてしまう、かもしれない・・・。

 とはいえ、名乗りのあと、この曲のフォーメーションの位置につく千歌たち新生Aqours6人。が、本来のAqours、9人のAqoursのとき、とは違い、千歌たち6人はどこか硬い表情になっていた。それはまるで、とても小さな勇気を振り絞ろうにも、たった6人という、9人のときとは違い、とても大きなステージが・・・、いや、とても広い、心配、不安という海、底なし沼が広がっており、その海、沼にはまってしまった、千歌たち6人はそんな表情をしていた。特に、ルビィは、姉ダイヤに助けを求めようとするも、とうの姉ダイヤはここにはいないので、ルビィの不安、心配はどんどん深みにはまろうとしていた。それでも、ルビィが持つ、とても小さな勇気が、その深みにはまらないように踏みとどめていた。

 が、そんなとき、

ガチャッ

という音がステージ上に響き渡る。その音は、千歌が髪につけていた、三つ葉のヘアピン、それが千歌の髪から外れてしまい、そのままステージの床に落ちた音だった。が、これが、千歌たち6人の、新生Aqoursの、そして、月の、木松悪斗に対する反抗の崩壊、をも呼び起こす、そんなきっかけとなってしまった。それまでルビィが持っていた、心配、不安、という海、底なし沼が広がらないように、深きところに沈まないように、していた、小さな勇気という防波堤、ネットは、この音により、

(あっ)

というルビィの思いと一緒に崩壊していった。そして、ルビィ、

(お、お姉ちゃん、助けて、助けて~!!本当に助けて~!!)

と、もうここにはいない姉ダイヤに助けを呼ぼうとするも、もちろん、姉ダイヤが助けてに来ることない、その現実により、不安、心配という海、沼の深きところまで沈んでいった。

 が、それは、ルビィ、だけではなかった。この千歌のヘアピンが落ちた音が聞こえたことがきっかけとなり、花丸、ヨハネ、はおろか、ライブ前、平然そうに見えていたが、心のなかでは不安でいっぱいだった、梨子、そして、曜、までもが・・・、

(なんか、心配と不安でいっぱいだよ~!!(曜))

(私も、不安と心配に飲み込まれてしまう~!!(梨子))

と、心配、不安の渦に飲み込まれてしまった。

 しかし、ただ1人、千歌だけは、

(ここは私がなんとかしないと!!)

と、持てる小さな勇気を振り絞り、1人で頑張ろうとする。が、所詮は空元気、から起きた気持ちだったため、今、千歌の心の中で起ころうとしている、不安、心配、それがあいまって、ラブライブ!決勝のとき、みたいなキレキレのダンス・・・ではなく、なんか、ダンス初心者、のやるような、あまりにキレがない、いや、ただのロボットみたいなダンスになってしまった。

 と、こんな具合に、本来のAqoursが持つ、ハイレベル、かつ、まるで楽しんでいるかのようなパフォーマンス、ダンス・・・とは思えない、本当に素人レベルのパフォーマンス、ダンス、歌を、今のAqours、新生Aqours、がしてしまったのだ。これには、月、

(あっ、わかった・・・気がする。この違和感、それは、Aqoursが本来持っているパフォーマンスの凄さだ!!いつもなら、なんかものすごいキレがあって、ダイナミックに見える、言葉では言い表すことができないほどの凄いパフォーマンスを見せていたよ、昔のAqoursは・・・。でも、今のAqoursは・・・、まるで、何かに怯えているのが、こじんまりしていて、とても緊張しているのか、とても表情も、ダンスも、硬い雰囲気だし、パフォーマンスも小さい。それはまるで、いつものAqoursが打ち上げ花火なら、今のAqoursはしけってできない手持ち花火・・・)

この月が気づいたこと、それが、今のAqours、新生Aqoursの現在の姿なのだ。たとえ、練習しているときは完璧であったとしても、本番となれば、練習のときみたいに完璧に踊れる・・・なんてことはないものなのだ。特に、練習のときに完璧だと思っていた、ところが、実は、ただのメッキでしかないこともあったりする。むろん、それがただのメッキであると気づく人は非常に少ない。が、いざ本番のむかえると、ただのメッキが剥がれてしまい、練習のときに気づかず、ただのメッキで覆われていたところ、弱点、がいきなり出てくることがある。で、本来であれば、その弱点をフォローするほどのリカバー能力が必要なのだが、緊張状態、特に、失敗すら許されない場面だと、そのリカバーをするをすることくらいの心の余裕なんてない、そのため、弱点をリカバーできず、むしろ、弱点だけが強調されることになる、それが、今の、新生Aqours、に起きていた。実際、今さっきの練習のときでも、新生Aqoursとしては完璧に踊れたのだ。月もこれを見て、「大丈夫!!」と、太鼓判を押していた。が、今の新生Aqoursは、極度の緊張により、練習時に見せた完璧なパフォーマンスは影を潜め、ただ、心配と不安という深き海、沼の底に沈んでしまったためか、本当にぎこちない、素人のパフォーマンス、とも見えるものしかみんなの前で表現できずにいた。なので、これこそ、今の、新生Aqoursの実力である、そう観客である、静真の生徒・保護者たちは見ていた、のかもしれなかった。

 と、いうわけで、ライブ直前の練習とは違う、まるで、素人同然のパフォーマンスをしている、新生Aqoursの真実、本来のAqoursとは違う姿に気づいた、月、おもわず、

(このままじゃやばい!!絶対にライブは失敗に終わる!!このままじゃ、Aqoursのイメージが・・・、イメージが・・・。浦の星の生徒たちのイメージが・・・、イメージが・・・)

と、これまた、千歌たちと同じく、不安と心配が月の心の中でも起きては、それに満たされようとしていた。さらに、月、

(このままだと、僕の、僕の計画が・・・、静真本校と浦の星分校を統合させる、そんな計画が・・・、曜ちゃんたちと一緒に楽しい学校生活を送るという夢が・・・、夢が・・・)

と、自分が持つ願望が足元から崩れていく、そんな気がしてきた。

 そんな絶望のなか、月はついにある事実に気づく。それは・・・。

(あっ、たしか、曜ちゃん、さっき、「新生Aqours」って言っていたよね。もしかして、それが、今のAqoursの姿、なんだ!!本来のAqoursとは違う、新生Aqours・・・。だからなのか!!本来の、以前、映像で見た、本来のAqoursの実力、それが今でも残っている・・・、そう、僕は思っていた。けれど、今のAqours、新生Aqoursは・・・、本来のAqoursの力・・・なんてない・・・、まだ赤子のような存在・・・なのかもしれない・・・。だって、人前で見せるといった、本番のステージって・・・これが・・・はじめて・・・だから・・・)

そう、千歌たち新生Aqoursとしてははじめてのステージ、そのなかで、千歌たち6人は、ダイヤ、果南、鞠莉がいないことにより、不安、心配という海、沼にはまり込んでしまい、「ダイヤたち3年生がいなくなった」ことで、0に戻ってしまった、そう錯覚してしまったがゆえに、本来の100%もの実力をだすことすらできず、いや、不安、心配が体中を支配してしまったがゆえに、本当の実力の10~20%も満たないパフォーマンスしかだせずにいたのかもしれない。

 こんな情けないステージ(Aqoursファン、こんな表現をしてしまい、本当に申し訳ございません!!)に、月、

(もうやめさせないと!!じゃないと、曜ちゃんたちが、新生Aqoursのみんなが、立ち直れなくなる!!)

と、この、新生Aqoursのライブをやめさせようと、ボクシングでいうところの、セコンドが白いタオルをリングに投げてはギブアップさせる、そんなことをしようと動こうとする。月、突然、実行委員に向かって、

「実行委員、すぐにこのライブをやめ・・・」

と、そう言いかけた、その瞬間、あることが起こった。それは・・・。

 と、ここで物語の舞台はステージへと移る。

(もう、心配と不安で体がいっぱいだよ~!!本当に、本当に、お姉ちゃん、助けて~!!)

と、必死に姉ダイヤに助けを求めつつも、ついには不安と心配が体を支配されてしまった、ルビィ。こうなると、いつ、ルビィが崩壊してもおかしくなかった。そのルビィの不安、心配は、花丸、ヨハネの1年生はおろか、千歌たち2年生にまで波及してしまい、さらに、それが、6人同士で不安、心配を増大しあいあうことになった。このためか、新生Aqours全体のパフォーマンスはさらに悪化することになり、さらに、千歌たち6人の不安、心配は、観客たちである、静真の生徒・保護者たちにも伝播してしまう。

 そんな状況のなか、ついにそのときが、誰も気づかないうちに訪れようとしていた。

(どうしよう~、どうしよう~)

と、不安と心配に支配されてしまったルビィ、突然、ダンスのキレすらもなくなる。それどころか、ルビィ、足元がふらついているかのように見えてしまった。その足元がふらついている、そんなとき、ルビィの目にあるものが飛び込んできた。それは・・・。

(あっ、テープの切れ端!!)

そう、ステージの床に貼っていたテープ、だった。アイドルや演劇などのとき、立つ位置(ポジション)を示すためにわざとテープを貼る。それが新生Aqoursのライブのときに残っていたのである。ただ、本来なら、そのテープなんて無視するか、事前に取り除けばいいのだが、新生Aqoursの場合、あまりの緊張にそのテープを除去することを忘れてしまい、さらには、心に余裕すらないために、そのテープを無視することすら無理だった。そして、そのテープにルビィが気づいた、のだが、ダンスのいきおいあまって、ルビィ、そのテープを踏みつけてしまう。すると、

「えっ!!」

と、ルビィ、そのテープが剥がれていく、と同時に、足を滑らせてしまう。その結果、ルビィ、大きくこけてしまった。これくらいなら、すぐに挽回できたりする。が、運の悪いことに、そのルビィがこけた先に、花丸とヨハネがいたのだ。なので、大きくこけてしまったルビィのいきおいは、その花丸、ヨハネにも襲い掛かることになり、

「くはっ!!」「ぐびっ!!」

と、花丸とヨハネが言ってしまうくらい、3人揃ってステージ上に倒れこんでしまった。その瞬間、月、

(あっ、やっちゃった・・・。もう、これで・・・、終わった・・・、なにもかも・・・。浦の星の生徒たちの明るい未来が・・・、僕の計画が・・・、そして、僕の夢が・・・)

と、これまで、月の心の中で描いていたものすべてが崩れ去ることを自覚した。これまで、月自身が描いていた皮算用、それが、すべて崩れていく、そんな気が、月にはしていた。

 とはいえ、たとえ、1度失敗しても、それをリカバー、挽回するくらいのパフォーマンスを見せればいいのだが、そんな、リカバー、挽回できるくらいの心の余裕は、今の新生Aqours、特にルビィたち1年生コンビの3人にはなかった。ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、SaintSnowの理亞も、今の新生Aqoursのルビィみたいに大きくこけてしまった。夏季大会決勝で8位に入賞できるくらいの実力を持っていたSaintSnowであったが、このときの理亞のアクシデントをリカバー、挽回するくらいの力を発揮することはできなかった。1度の失敗により、理亞は立ち直れきれないほどの精神的なダメージを食らってしまったのだ。そのため、必死にその失敗を挽回しようにも、逆に気持ちに焦りがでてしまい、逆に、ダンスなどのパフォーマンスが悪化することにつながってしまう。結果、理亞はその失敗を挽回することはできずに最終予選は終了、最終予選敗退という理亞にとってとても辛い現実を突きつけられてしまう。そして、それがのちに、あのSaint Aqours Snowという奇跡の合体ユニットができるきっかけになる、函館のクリスマスライブの出来事、そして、理亞が新しく作るスクールアイドルユニットにとって大きな影響を与えることになった。それくらい、1度の失敗をほかでリカバー、挽回することはとてもたくさんの労力、実力を要するものなのである。が、そんな実力、今の、緊張のあまり、不安、心配の海、沼に沈みこんでしまった、千歌たち新生Aqours、にはなかった。そのため、千歌たち新生Aqoursは、そのあとも、みんなを感動させるには程遠い(あとでSaintSnowの聖良が言うところの)ラブライブ!決勝で見せたパフォーマンスの10~20%以下のパフォーマンスしか見せることができなかった。こうして、Aqoursのイメージは、静真の生徒・保護者たちを中心に、まえより悪くなる、そんな結果を生み出してしまった。

 

 で、この新生Aqoursのパフォーマンス、それを見ていた観客たちこと静真の生徒・保護者たちであったが、新生Aqoursのライブが始まる前、

「なんでも、ラブライブ!っていう全国大会に優勝するくらいの実力があるんですってね~」

「ほほ~、それは凄い実力の持ち主だな。あの浦の星の部活の1つだなんて、あの初戦敗退続きので、お遊び感覚で部活をしている、あの、浦の星の部活動のなかで全国大会で優勝できるくらいの実力を持つ部活とは、なんか楽しみだな」

と、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの実力を見に来ていた静真の生徒・保護者たち。そのラブライブ!という全国大会で優勝する、そんな実力を持つ、それはきっと、「勝利こそ正義」「勝利することがすべて」という静真の部活動の理念にも一致する、そう思っているがゆえに期待度は高かった。そんななかで、そんなAqoursの噂話をしている静真の生徒・保護者たち、その姿に、

「なに思っているのかなぁ、みんな。まるで、自分たちが、Aqoursの昔からの応援者、なんて顔をしている、そんな風に見えてしまうよ。でも、ヨハネちゃんだったらそんなの、気にしないよね!!」

と、辛口に静真の生徒・保護者たちのことを批評しつつも、ヨハネに対しては絶対の信頼を寄せている彼女、それは、月が臨時理事会前に生徒全員から統合賛成の署名を集めていたとき、少し署名するのをためらう1年生の生徒たちに対して真っ先に月の策、署名に賛成の意思を示した、そして、ヨハネが中学時代のときの同級生だった、稲荷あげはであった。彼女は中学時代、中二病全開のヨハネに対し、本当の友達になりたい、と、思っていた。が、ヨハネはすぐに登校拒否を起こして中学校に来なくなったため、あげはは仕方なくヨハネと友達になることを諦めてしまった。が、あげはが静真に入学して少し時間がたったある日、Aqoursが公開したPV「夢で夜空を照らしたい」にヨハネが出ていることを知ったあげは、すぐにAqoursのPVを見てみると、

「あっ、ヨハネちゃんが出てる!!」

と、興奮してしまう。そのPV、そして、夏に行われた沼津市の夏祭りにゲスト出演したAqoursの「未熟Dreamer」、それを直接見たことにより、あげははAqoursの大ファン、とりこになった。

 こうして、あげははラブライブ!夏季大会静岡県予選に東海最終予選、さらに、冬季静岡県予選に浦の星の学校説明会、東海最終予選に秋葉ドームで行われた冬季大会決勝まで、現地参戦するくらいのAqoursのおっかけ、もとい、大ファンになっていく。で、実は、あの奇跡のユニット、Saint Aqours Snowがライブをした、あの函館のクリスマスイベントにも現地参戦していたりする。なので、あげは、Aqoursだけでなく、SaintSnowのファンだったりする。

 そんなあげはをよそに、新生Aqoursのライブが始まる。が、あまりに緊張しすぎているのか、ぎこちすぎるダンス、あまりうまくない歌声など、パフォーマンスが悪い新生Aqoursの姿に、観客である静真の生徒・保護者たちからは、

「あれが浦の星が全国に誇れる部活、スクールアイドル部Aqoursの姿ですの?」

「なんか、期待したものよりとても悪い気がします・・・」

と、思っていたものよりも期待外れだったという声が次第に大きくなっていく。これには、あげは、

(本当のAqoursはこんな実力じゃない!!本当は、かなり凄いんだから!!)

と、現地で直接Aqoursのライブを見ているのからこそ本当のAqoursの実力を知っている、そんなあげはからこそ言える言葉、で、あったが、そのあげはとしても、今日の(新生)Aqoursのライブに、

(でも、たしかに、いつもよりパフォーマンスが悪い気がします。なんか・・・足りない・・・気が・・・)

と、いつもと違うAqoursの姿に不思議がるあげは。が、ライブが進むなかで、あげは、突然、

(あっ、わかった!!)

と、本来のAqoursと今のAqoursの違いに気づく、それは・・・。

(そういえば、今のAqoursメンバーの人数、もとより少ない!!いつもだったら9人いるのに、今は6人しかいない!!たしか、ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、の3人がいない!!もしかして、3人がいないから緊張してしまい、それでパフォーマンスが悪くなったんだ!!)

なんと、たった数分見ただけで今のAqoursの弱点を見抜いてしまうとは、やっぱりAqoursの大ファンのことだけはある、あげはは・・・。

 そのあげはであったが、時間が進むごとに不安、心配という海、沼の深きところに沈んでしまい、どんどんパフォーマンスが悪くなる新生Aqoursの姿に、

(もうやめて!!やめてあげて!!)

と、これ以上ライブをしてまでイメージを悪くなる姿を見たくないのか、必死にライブ中止を心の叫び声として言おうとするが、言う勇気が出ず、声として実際に発することはできなかった。

 そんななか、新生Aqoursのパフォーマンスに、突然、異変が起こる。ダンスの最中、ルビィが大きく転んでしまう。それにつられて、花丸とヨハネもルビィに巻き込まれる形で3人一緒に倒れこんでしまった。これを見ていた観客たちこと静真の生徒・保護者たちは、

「こんな小さなステージで大きく転ぶなんて、なんて実力のない部活ですわね」

「こんなもの、静真の部活だったら恥知らず、ですね!!」

「実力なんてまったくないじゃないか!!」

と、新生Aqoursを酷評する人が多くなっていった。そして、ついには、

「これだと、あの木松悪斗様が言っていた通り、ですわね。初戦敗退が続く中で唯一全国大会で優勝した、それくらい実力が高い、浦の星が誇る部活、スクールアイドル部がこんな低レベルな実力しかないなんて。と、いうわけだから、全体的に浦の星の部活動は低レベル、お遊び程度で部活をしている、部活動に対する士気が低い、と、いうのは本当の話ですね!!こんな、部活動に対する士気が低い、浦の星の生徒たちが、士気が高くて高レベルの実力もある、そんな、静真の部活に参加したら、絶対に士気低下、対立などが起きて、しまいには、静真の部活動そのものに悪影響を及ぼしますね!!」

と、いう声が静真の生徒・保護者たちのあいだで大きくなっていった。期待度が高い分、その期待を裏切るようなことが起きたときに受けるマイナス分も大きくなってしまう。それはこのときのAqours、新生Aqoursにも起きてしまった。千歌たち(新生)Aqours、ラブライブ!優勝という実績があるがゆえにライブ前の期待度はとても高いものだった。しかし、今回のライブでは、千歌たち新生Aqours、ラブライブ!優勝のときに、本来のAqours、が見せたときよりも非常に悪いパフォーマンスを見せてしまったために、Aqoursの、そして、浦の星の生徒たちのイメージに与えるマイナスのダメージははかりしれないものになってしまったのだ。こうして、静真の生徒・保護者たちが持つAqoursの、浦の星の生徒たちに対するイメージは悪化してしまった。そして、それは、木松悪斗が広めた考えを助長させる結果になってしまった。

 だが、1人だけ、その新生Aqoursの姿を見て幻滅しなかった少女が1人いた。

(いや、絶対になにか理由がある!!こんな悪いパフォーマンスになった理由が!!私、絶対に信じる、きっと、あの、ラブライブ!優勝のときに見せたパフォーマンスはよみがえるって!!彼女たち、Aqoursの実力なら!!たとえ、だれもがAqoursのことを信じなくても、この私、あげはは、絶対に最後まで信じる!!そして、それを信じて、私、今から行動する!!昔の凄いAqoursが戻ってきたときのための、みんなに見せつける、そのためのステージ、それを造るって!!)

あげはだった。あげははどんどんAqoursに見切りをつけていく静真の生徒・保護者たちを尻目に、これからのAqoursを信じ続けること、そして、これからのAqoursが活動できる場所を用意しよう、と、心の中で決意した。

 

 そして、この新生Aqoursが見せた、とても悪いパフォーマンス、そして、それにより、Aqoursに期待していた静真の生徒、保護者たちが次々とAqoursのことを見限っていく様子、それを喜んでいる人がいた。

(さぁ、どんどん悪いパフォーマンスを見せてくれ。それによって、浦の星の、浦の星の生徒たちのイメージをどんどん悪くなる。それは、すなわち、この私、木松悪斗の希望を叶えることになるのだ!!あの裏切り者、小原財閥、そして、その分身である、浦の星、に大ダメージを与えることになるのだ!!さらに、分校状態はずっと続く。それによって、私の、静真に対する負担も少なくなる!!浦の星の生徒だけを静真に入れたら、その際に起きる負担の追加分、私が損してしまうからな!!だからこそ、自分の負担が少なくて済む分校方式はずっと続く、それよって、分校に出資している小原財閥の負担も続き、それがのちに大きなボディーブローのようにじわじわ効いてくる。私にとっては一石二鳥って言えるんだ!!だからこそ、Aqoursのみなさん、どんどん悪いパフォーマンスを見せてくれ!!)

そう、木松悪斗だった。自分の希望を叶える、その意味でも、今のこの状況は、木松悪斗にとって嬉しいことだった。これにより、自分が盟主の分校推進派の勢力はどんどん拡大しいきおいづけることができるのだ!!こうして、月たち生徒会が中心となっている統合推進派の息の根を止めることができる、そう木松悪斗は考えていた。

 そして、ルビィがステージの床に残っていたテープを踏んだことで大きく転び、その拍子で花丸、ヨハネを巻き込む形で倒れてしまった、そのとき、木松悪斗、つい、

(これは傑作だ!!悪いパフォーマンスのうえに大げさに転ぶなんて・・・。これで、Aqoursというグループは回復不可能な大ダメージを被ることになったな!!これで、Aqoursのイメージは地に堕ちた、もう復活することはないだろう。さらばだ、Aqours!!)

と、自分のまわりにいる、Aqoursのことを見限ろうとしている静真の生徒・保護者たちと一緒に、Aqoursの最後?を見届ける、そんな気持ちになっていた。と、同時に、

(でも、なんで、ステージの床にテープが残っていたんだ?あの赤い髪の生徒(ルビィ)には悪いが、これも運命だと思ってくれ)

と、ルビィが大きく転んだ原因を作ったあのテープがなぜステージの床に残っていたのか、不思議そうに思っていた。

 

 対して、こちらはステージ袖。そこにはAqoursの勇姿を見ようと、Aqoursのライブの前の演目に出演していた弓道部部員たち、そして、女子サッカー部部員たちがいた。もちろん、そのなかには、あの女子サッカー部の部長で木松悪斗の長女、旺夏の姿もあった。で、その旺夏、悪いパフォーマンスを見せる新生Aqoursの姿を見て、

(これが月生徒会長が言っていた、Aqours、の真の姿ですか。片腹痛いですね!!なんていう低レベルなんでしょうか!!これなら、私自ら潰す必要なんてないですね。勝手に自滅してますわね。さぁ、これで、月生徒会長率いる統合推進派も風前の灯火ですわ。そして、お父様の天下が、私の望みどおりの、なにをしても許される、そんな世の中になりますわ。ほほほ)

と、これからくるバラ色の未来を想像しつつ、月、そして、新生Aqoursが苦しむ姿を想像しながら笑っていた。

 が、そんななか、大きく派手に転ぶルビィの姿を見て、旺夏はあることを思う。

(でも、あんなステージの床に残っていたテープで大きく転ぶなんて、あの赤毛の生徒(ルビィ)、お笑いの道に進んだら、立派なボケになれるだろうに。でも、そんなの、この私、旺夏が許しませんよ!!だって、この旺夏、以上に幸せになるのは許しませんわよ!!この旺夏、この静真の、いや、沼津の、いや、日本を支配するために生まれてきたのですからね!!)

と、自分こそ絶対である、そんな認識を示してしまう旺夏、その自画自賛のなかで、旺夏、そのテープについて、あることを思ってしまう。

(でも、あの床に残っていたテープ、実は、この私、旺夏がそのテープを剥がすのを忘れていた・・・なんて、今になっていえるわけ、ないですわね・・・)

と、とある重要な真実を心のなかで暴露してしまう。そう、ルビィが大きく転ぶ、その原因となったステージの床に残っていたテープ、実は、女子サッカー部の演目の際、撤収する前に旺夏が剥がし忘れていたテープだった。そのテープ、旺夏が3つのシュートを披露する際、旺夏が立つ場所を示す目印として貼ったテープだった。旺夏はそこに立ち、3つのシュートを軽々と観客の目の前で見せた・・・のだが、本来なら、そのあとで旺夏が剥がさないといけなかったのが、その旺夏、剥がすのを忘れてしまったのだ。で、その後、弓道部の演目へと続くのだが、弓道部部員は全員、そんなに動いていないため、そのテープの被害は起きなかった。対して、弓道部の次の演目は新生Aqoursのライブ、で、今回のライブで披露した「夢で夜空を照らしたい」、この曲はほかのAqoursの曲と違い、そんなに動かない、のだが、それでも、ステージ全体を使ってパフォーマンスする。そのため、運悪く、ルビィがそのテープの被害を被ってしまったのだ。が、ルビィが受けた被害に対し、その原因を作った旺夏、はというと、

(まっ、これも運命ですわね。いや、この私、旺夏にたてついた、その天罰ですわ!!)

と、まったく悪げない、いや、むしろ、その被害をルビィが被ったのは当たり前である、そんな気持ちだった。

 

 そして、新生Aqoursの失敗を笑う少女が1人、観客席のなかにいた。

「あれがAqoursか。たわいもない。あんなのに父様も姉様も振り回されているなんて、なんて情けない!!」

と、自分の父、そして、姉、そして、Aqoursを侮辱する言葉を口にする少女。そして、その少女、さらに、

「あんな弱腰なAqours、私の力ですぐにでも潰せるものですわ!!」

と、新生Aqoursを潰す、なんてむごいことを平気に口にしてしまう。

 そして、この少女はある決意を口にしてしまう。

「この私が、Aqoursを、潰してみせますわ、それも、スクールアイドルとしてね!!」

この少女の決意が、のちに、Aqoursに、そして、SaintSonw の理亞たちに牙となって襲い掛かる・・・かもしれない、たぶん・・・。でも、今、一つだけ言えることがある。それは、この少女の決意が、のちに、月、Aqours、木松悪斗、旺夏、そして、理亞たちをも巻き込む、大騒動、いや、この物語、いや、この長い序章を含む、この壮大なる物語におけるターニングポイントの1つになるとは、このときの少女、いや、この物語の登場人物全員が、このとき、誰も気づくことはなかった、たぶん・・・。

 

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