とはいえ、新学年部活動報告会でのライブ、新生Aqoursのライブは、大失敗に終わった。その事実はどんなことがあっても覆ることはできなかった。そして、このライブの失敗により、月が独断専行で行った木松悪斗への反抗、そして、静真本校と浦の星分校の早期統合を図ろうとする計画も失敗に終わった。「静真の部活動は全国大会の常連といえる部活を数多く抱えるくらい実力がある」という力の論理に対し、「ラブライブ!という全国大会に優勝するくらいの実力」があるAqoursをそのままぶつける、そんな力の論理でもって対抗する、そんな月の考えだったが、力の論理に対して力の論理で対抗したとしても、もし、その力の論理がただの空論であったら、対抗しようにも対抗できずに潰されてしまうだけだった。それよりも、沼田が言った問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なものとは」、それを答えることを無視してまで押し切ろうとした月であったが、今回は、完全なる敗北、となってしまった。
そんなわけで、月、報告会終了後・・・、
「本当にごめんなさい~」
と、生徒会室でナギなどの生徒会役員たちの目の前で泣いて謝っていた。部活動報告会終了後、今後のことについて生徒会内で話し合うため、月とナギなど生徒会一同は生徒会室に集まっていた。そして、始まってすぐに月がナギたち生徒会役員たちの目の前で自分が独断で誰とも相談せずに実施した愚作に対して、自分以外の生徒会役員全員に迷惑をかけてしまったことを泣いて謝っていたのだった。
この月が泣いて謝っている姿に、ナギ、
「たしかに、私たちに何一つ相談せず、独断専行で行動した月生徒会長の行為は許されざることです・・・」
と、月に叱ると、月、
「本当にごめんない~」
と、再び泣いて謝る。これを見た、ナギ、
「でも、それは、月生徒会長が私たちのため、浦の星の生徒たちのためにやったこと。その心意気は、私たち生徒会役員一同、みんな、認めています。そして、それにおける一連の行動については誰も攻めませんよ」
と、勝手に独断専行した月の心意気、その行動については誰も攻めないことを月に告げる。このナギの言葉に、月、
「みんな、本当にありがとう!!」
と、ナギたちみんなに御礼を言った。
が、それでも、生徒会役員の1人が、現状を冷静に分析して言った。
「それでも、現状からいえば、私たちにとってとても不利な状況です。月生徒会長が独断専行した作戦が失敗に終わっただけでなく、浦の星の生徒であるAqoursのライブが失敗に終わったことにより、浦の星の生徒たちに対するイメージは前よりももっと悪化しました」
これを聞いた月、
「本当にごめんなさい~」
と、またまた泣いて謝るが、冷静に現状を分析する役員は、
「そんな月生徒会長はさておき・・・」
と、言って、月のことはほっといてしまい、次へと話を続ける。
「で、この現状を木松悪斗が見逃すはずがありません。絶対に攻勢をかけてくるはずです。浦の星の生徒たちに対する不信感、それを保護者だけでなく生徒たちにまで広げてくるでしょう。しかも、保護者たちだけでなく、生徒たちまでこう考えるでしょう、「あの浦の星の部活のなかでも全国大会で優勝できる、そんな実力を持つ、といわれていたスクールアイドル部Aqoursの実力、それが、自分たちが想像していた、いや、求めているものよりもとても低い実力でしかない、それが、今回のライブで証明された、そして、実力があると見られていた部活が低レベルとすれば、浦の星の部活動も全体的に低レベル、実力もない、お遊び感覚で部活をするくらい部活動に対する士気が低い、そのことが証明されたのと同じである、よって、部活動に対する士気が低い浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すれば、間違いなく悪影響がでてしまう。だから、それを防ぐためにも分校の統合は絶対させない!!」、って」
この冷静な分析に、月、
「うう」
と、顔を引きずってしまう。さらに、その役員の冷静な分析はさらに続く。
「それに対し、私たち生徒会が中心の統合推進派ですが、月生徒会長の作戦の失敗で、静真の生徒・保護者たちに対しては逆に浦の星の生徒たちに対する不信感を増大させる結果を招いてしまいました。なので、これ以上私たちが、「統合して浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加しても悪影響なんてでない」って言っても、誰も信じてくれないでしょうね。まるで、ハーメルンの笛吹きみたいに・・・」
そして、ついに、その役員の冷静な分析は佳境を迎える。
「そう考えたとき、これ以上私たちがどう動いても、今以上に不利になってしまうのが自明の理です。なので、表面上はなにもせずにこのまま時を待つのが得策だと思います」
この生徒会役員の冷静な分析に、月、
「でも、それだったら、木松悪斗が浦の星の生徒たちに対する不信感を静真の生徒たちのあいだに広がるのを手を加えてなにもせずに見ているだけにならないかな?」
と、その役員に反論する。すると、その役員はすぐに言った。
「たしかにその通りですね」
これには、月、
「それだけはやりたくない!!なにもせずに木松悪斗のやりたい放題にさせるなんて、絶対、嫌!!」
が、その役員はだだをこねる月を見て、
「なんか、そんな月生徒会長を見るなんて初めてです。とても面白いですね」
と、笑いながら言うと、月、
「笑うなんて、失礼です!!」
と、怒ってしまう。そんな怒った月の表情を見て、その役員、すぐに、
「それは失礼しました、月生徒会長」
と、謝ると、月、
「それならいいんだけど・・・」
と、少しふくれっ面になる。
そんな月を見てか、その役員、すぐに、
「でも、表面上はなにもしません。しかし・・・」
と、少しためる。これには、月、
「しかし・・・」
と、ついつられて言うと、その役員はそのあとに言った。
「しかし、木松悪斗から見えないところ、裏側において、私たち生徒会は行動を開始します。木松悪斗が見ていない裏側にて、私たち生徒会が暗躍することで、来るべき日、木松悪斗に反抗できる日に備えて、その準備を行います!!」
これを聞いた、月、
「影で暗躍!!なんか、かっこいいかも!!」
と、目をキラキラさせながら言った。これを聞いた、ナギ、すぐに、月に対して非礼とも言えることを言った。
「で、月、生徒会長、影で暗躍するため、失礼で申し訳ございませんが・・・、私、ナギから命じます。月、生徒会長、あなたの生徒会長としての権限を、すべて剥奪、します!!」
これを聞いた、月、おもわず、
「え・・・」
と、目が点になってしまう。それを見た、ナギ、すぐにあることを宣言した。
「そして、これから先・・・、というか、当分のあいだ、この私、ナギ、が、月生徒会長に代わり、会長代理として、生徒会長業務を行います!!」
このナギの宣言に、月、
「え・・・、僕、生徒会長を解任されたの?これって、ナギたちのクーデター・・・?」
と、これまで自分を信じてついてきてくれたナギたちから反逆されたと思ってしまい、すぐに、
「ナギのバカ~!!なんで僕に反逆するの~!!」
と、ナギの胸を叩く。これに対して、ナギ、すぐに釈明する。
「月生徒会長、いや、月さん、これは一時的な処置です。表向きは月生徒会長のままです。ですが、そのまま生徒会長であり続けたら、月さんの裏での行動に制約がかかってしまいます。そのため、生徒会内では生徒会長の任を解き、月さんの裏での行動に制約をなくして、自由に行動してもらいたい、と、思い、そうしました」
と、月の生徒会長職の任を解く理由を話す。これには、月、
「それを聞いていたら、この僕になにかをさせたい、そんな考えがみえてくるよ」
と、ナギの言葉に隠された真実を見抜く。これには、ナギ、
「正解!!やっぱり、月さん、静真一の才女ですね!!」
と、月を褒める。が、月、そのナギのお褒めの言葉を無視して話を進める。
「で、ナギが僕にやらせたいことって、何?」
と、ナギに尋ねる。これに、ナギ、月にあるお願いをする。
「月さん、お願いです、Aqoursを、あのときのAqoursに、昔の、元気よく踊っている、あの「ラブライブ!」決勝で優勝したときの、そんな、本当の姿をしたAqoursを取り戻してやってください!!」
これには、月、
「えっ、ぼ、僕が、昔のAqoursに、本来の姿のAqoursに戻す!!なんで?」
と、ナギに質問する。これに、ナギ、すぐに、
「私たち生徒会のなかで、Aqoursメンバーと接点を持っているのは、月さん、しかいません。そして、本来の、昔のAqoursの姿を取り戻したとき、きっと、今の現状、私たち生徒会、そして、浦の星の生徒たちが不利になっている、そんな現状を打破できる、そんなきっかけを作ってくれる、と、確信しているからです!!」
と、今日のライブの失敗で浦の星の生徒たちでなく、自分たち生徒会が不利となっている現状を作ってしまった、Aqours、そのAqoursを今でも信じているナギたち、その姿に、月、
「なんで、僕たち生徒会を不利に陥れてしまったAqours、そして、僕、をなんで、今でも信じているの?」
と、自分の疑問をナギにぶつける。
すると、ナギははっきりと言った。
「それは、昔のAqoursに、本来のAqoursに戻れば、あの沼田のじっちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、それに答えることができるからです!!たとえ、今回のライブが成功していても、「それは全国大会で優勝するほどの実力を持つ、とても士気が高いAqoursのメンバーだけの話であり、ほかの浦の星の生徒たちは士気が低い」と見られては今と同じ状況が続くと思います。そして、もし、静真の部活動が不振に陥ったとき、それは「士気が低い浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したからだ」って、木松悪斗たちから言われてしまうのが自明の理です。で、そんな状況に陥ると、私たち、いや、静真において、浦の星の生徒たちを守る手立てがありません。それよりも、今回の失敗により心に深い傷を負ってしまったAqoursを、月さん自ら癒すとともに、本来のAqoursの姿に、元気に、一生懸命、パフォーマンスをする、本来のAqoursの姿に、月さんの手で戻してやってください!!そして、そのAqoursと一緒に、沼田のじっちゃんが言っていた問い、その答えを導いてやってください!!だって、沼田のじっちゃんが言っていたでしょ、「静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうか、誰も気づかずに実践している」って」
これには、月、
「ナギ・・・」
と、少し感動する。と、ナギは月に対してあることを言った。
「そして、その沼田のじっちゃんからの問い、その答えを、私たち静真の生徒たちが知ったとき、絶対に静真はぜったいに変われる、と、思います!!そして、この分校問題なんて簡単に解決できると思います。だから、月さん、Aqoursと一緒に沼田のじっちゃんが言った問いの答えを絶対に見つけてください!!」
このナギの言葉に、月、
「ナギ・・・」
と、感動して涙を流しながらナギに抱きつく。これに、ナギ、
「月さん、あなたがAqoursと一緒に行動しているあいだは、静真のこと、生徒会のことは心配しないでくださいね。月さんがいないあいだ、この私、ナギが立派に生徒会長代理を、月さんの影武者役を立派に務めてあげますからね」
と、泣いている月の頭をなでなでしながら優しく言うと、月、すぐに、
「でも、それだと生徒会が・・・」
と、自分がいないあいだの生徒会のことを心配する。これには、ナギ、
「月さん、そんなに心配しないでください。これでも、このナギ、あの静真一の才女、才色兼備、文武両道と誉れ高い、月さんに認められてこれまで立派委に生徒会副会長を務め上げました。私にはその自負があります。だから、月さん、このナギを信じてください」
と、月の心配をなくさせたい、そんな気持ちで答えた。これに、月、
「うん、わかった!!ナギ、副会長、いや、ナギ、生徒会長代理、あなたに生徒会を任せます!!」
と、ナギをことを認めた。これに、ナギ、
「月さん、認めていただきありがとうございます」
と、月に御礼を言った。
そのナギ、月に突然あるお願いをする。
「で、月さん、実は、ある決意を示してもらいたいのですが・・・」
これには、月、
「その決意って?」
と、ナギに尋ねる。すると、ナギ、あることを言う。
「それはですね・・・、(ごりょごりょ)・・・、もちろん、私、ナギをはじめ、生徒会役員一同、その覚悟のつもりです」
これには、月、
「でも、それって、自分の将来において不利に働いてしまうよ。僕はともかく、ナギたちまでその覚悟をみせるのはちょっと・・・」
と、ナギたち生徒会役員一同の心配をするも、ナギ、すぐに、
「それなら大丈夫ですよ。だって、月さんと一緒なら絶対になんでもやり遂げることができますからね!!」
と、月に絶対の信頼をしていることを言うと、月、
「そ、それはどうも・・・。でも、ナギたちもその覚悟を決めているなんて聞いたら、僕、ナギたちに「やめて」なんて言えないよ。わかったよ、僕もナギたちと一緒にその覚悟、決める!!そして、ナギたち、僕がいないあいだ、静真のことを任せるね!!」
と、笑顔で答えた。
そして、月はナギたちに言った。
「じゃ、僕は今日のライブの失敗で深く傷ついている曜ちゃんたちAqoursをなぐさめてくるからね。あとのことは任せたよ!!」
その後、月は千歌たちAqoursのところに行くため、生徒会室をあとにした。
その月がいなくなった生徒会室にはナギたち生徒会役員がまだ残っていた。そのなかで、ナギはあることを言った。
「さぁ、月生徒会長はいなくなりました!!ここからは私たちのターンです!!さあ、このナギ、一世一代の晴れ舞台、見せてあげましょう!!」
このナギの言葉のあと、生徒会長代理になったナギを筆頭に生徒会役員一同はある部屋へと向かった、これから起こる、ナギ、一世一代の晴れ舞台、それを見せるために・・・。
ナギたち生徒会役員一同が目指した場所、それは・・・。そのナギたち、その部屋の扉を開いた瞬間、
「女子サッカー部と弓道部は予算アップでよろしいかな?」
と、部活関連の予算の可否について採決をとっている理事たちの姿があった。そう、ナギたちが向かった部屋、それは、静真の会議室、であった。ちょうど、その会議室で、2018年3月期の定例の通常理事会が行われていたのだった。今回は、前の臨時理事会、とは違い、毎月1回定期的に行われる通常の理事会であった。そして、この日の議題だが、静真の部活動に関する予算、それを静真の数多くある部活にどう振り分けるか、だった。静真の部活動に関する予算であるが、静真の部活の多くがインターハイが行われる夏でもって3年生が引退したりするので、それにあわせて、9月から来年の8月までの1年間を1つの期間として1年間の予算が作られている。とはいえ、静真の部活動、特にスポーツ系の部活においては普通の部の予算に加えて、木松悪斗からの多額の寄付金を原資にした部活動強化費も支給されていた。その部活動強化費だが、主に、最新のトレーニング機器の購入・維持管理費、優秀なコーチ・トレーナー陣の給与を含めた費用に使われて・・・というより、それだけに使われているといっても過言はなかった。そして、それ以外の・・・、部の地方遠征費用や合宿費用などの費用はその部のもとからの予算から捻出される。が、女子サッカー部みたいに、チーム強化のためによく地方遠征や合宿を行くと瞬く間に部の予算を使い切ってしまう。そのため、各部活の1年間の予算については事前にその年の3月期に行われる通常理事会にて部活動全体の予算のうちどの部活にどう分配するかを話し合い、各部の大まかな予算を決めることになっていた。その後、静真での生徒の活動のうち、部活動関連(の予算)を担当する部活動連合会、それ以外(この場合、(部活動全体の予算を含めた)生徒活動に関する全体的な予算)を担当する生徒会のあいだで各部の詳しい予算が決められるのである。
で、今日行われた部活動報告会であるが、このあとに行われる3月期の通常理事会、そこで各部の大まかな予算が決定されるため、各部とも、そのまえに少しでも自分の部に多くの予算を獲得できるよう、大まかな予算配分を直接決める理事たちに対して猛烈にアピールするための場として出演していたりする。なので、部活動報告会、実は、陰ではより多くの予算配分を獲得するために、各部とも熾烈な競争を繰り広げていたのである。特に、木松悪斗の多額の寄付金を原資にしている(スポーツ関係の各部を強化するために使っている)部活動強化費、がもらえない、文化系の部活においてはそれが死活問題にもなっていた。
で、ナギたち生徒会一同がその通常理事会が行われている会議室に入室したときには、その各部への予算配分の話し合いは終わりを告げようとしていた。あの報告会でとても高い注目度を集め、それに見合うだけの発表をした女子サッカー部と弓道部、その部の予算を倍増することを決めたところだった。むろん、過去1年間の実績もあるが、報告会で、あのAqoursを、徹底的に痛めつけた?それに対する木松悪斗からの報奨金、という趣もあった(むろん、理事全員を牛耳っている木松悪斗の強い働きかけもあったが・・・。また、名誉のために言うが、木松悪斗の娘でAqoursを意図的に苦しめようとした旺夏が部長を務める女子サッカー部とは違い、弓道部は意図的にAqoursを苦しめたわけではなく、ただ、自分たちの出来ることを発表しただけだった・・・)。
そして、ナギたち生徒会役員一同の入室を見計らってか、理事の1人である木松悪斗はある議題を理事たちに持ち出した。それは・・・。
「と、ここで、私から提案です。それは、浦の星分校の件、です」
この言葉に、ナギ、
(ついに本題に入ったか・・・)
と、心の中でつぶやく。そうとも知らず、木松悪斗はある提案をする。
「さて、浦の星分校について、ですが、ただでさえ静真本校の経営が大変なのに、来月からは浦の星分校も面倒を見ないといけない。これだと、静真を経営している私たちの負担も大きくなってしまいます。それに、分校となる旧小学校の改装費用代もばかになりません。そこで、私から提案があります。浦の星分校にかかる費用、そのすべてを、浦の星の生徒とその保護者たちに負担させましょう!!」
この木松悪斗の提案に理事たち、
「そうだ、そうだ!!」「浦の星の生徒とその保護者たちに全額負担させるべきだ!!」
との声があがってくる。
とはいえ、実は、この木松悪斗の提案、自分の懐を暖めるためのものだった。実際には、浦の星分校にかかる費用のうち、その一部は浦の星の生徒の保護者が支払う授業料やその他の学費で賄うことになっていた。が、その分では賄えない費用(オーバー分)については、浦の星分校創設を提案した沼田、それと、浦の星の大スポンサーだった小原財閥が負担することになっていた。で、木松悪斗の提案だが、提案内容を見てみると、「沼田と小原財閥の負担分も浦の星の生徒とその保護者たちに負担させる=浦の星分校の費用全額を静真の生徒とその保護者たちが負担する」、そう捉えられることができるかもしれない。が、木松悪斗の考えはそうではなかった。浦の星分校、その沼田と小原財閥の負担分、それはそのまま沼田と小原財閥に負担させるつもりだった。では、浦の星の生徒とその保護者たちから「沼田と小原財閥の負担分」と称して集めたお金はどうするのか。それは、理事たちがもらう給与、それを増額する際の原資にしよう、そう、木松悪斗は考えていたのだ。理事たちの給与を上げること、それを裏で理事たちに対して確約さえすれば、理事たちも木松悪斗の提案に賛成してくれる、そう考えていた。それどころか、木松悪斗、裏でそのことが起こっているなんて知らない、そんな浦の星の生徒の保護者たちに、沼田と小原財閥の負担分も自分たちで負担しないといけない、そう思わせようともしていた。これにより、浦の星の生徒たちの保護者たちは小原財閥に対しての不満を溜め込むようになり、それが結果的に小原財閥に大ダメージを与えるきっかけになる!!そう、木松悪斗は狙っていたのだ。ちなみに、浦の星分校にかかる費用のうち、浦の星の生徒の保護者たちが負担する分では賄えない費用については沼田と小原財閥が負担することは、臨時理事会の次の日に浦の星分校の場所を記した地図が載っているメール(千歌たちがその分校に向かう際、曜が見ていたメール)と一緒に伝えられていた。そのため、浦の星の生徒の保護者たちはそのことを知っていたので木松悪斗はその妙案?を思いついたのである。
そんな木松悪斗、理事たちから好感を得ている、そう思ってしまい、調子に乗ってしまったのか、ある無理難題を言ってしまう。
「でも、よく考えたら、浦の星の生徒の保護者たち、あの潰れてしまった浦の星に通わすほどのお金しかなかったのかもしれませんね。だって、もう少しお金があれば、この静真、とても優秀な学校である、この静真に通わせることができたのですがね・・・。あっ、いいこと、考えつきました。そんな、お金がない浦の星の保護者たちが(浦の星分校にかかわる費用のうち)負担できない分を浦の星の生徒たちに負担させましょう。そうですねぇ、静真が公認する会社でバイトをしてもらいましょうかねぇ。授業の時間を大幅に削って、その分をバイトの時間にしましょう。もちろん、浦の星の生徒たちのバイト代は全額静真がもらいますがねぇ。ハハ」
この木松悪斗の考えだが、もちろんそれを実行したら法律違反になってしまうだろう。学生とは勉強するのが本分である。それなのに、その勉強するための授業の時間を大幅に削り、その分、木松悪斗の(「沼田と小原財閥の負担分」と称して集めたお金で自分を含めた理事たちの給与を増額させるための原資にしたい、その)ためにバイトに明け暮れさせるなんて、そんなどっからどうみても児童搾取になってしまう。それはまるで、授業なんてせず、そこに通う生徒たちに違法に働かせようとしていた、どこかの日本語学校と同じようなものである。が、ここは静真の帝王こと木松悪斗がすべてを牛耳っている?静真である。木松悪斗の言うことは絶対・・・なのである。
が、そんな木松悪斗に対し、ナギが反論する。
「でも、それだと、あとで大変なこと、起きませんかねぇ?」
そう、ナギが指摘しようとしたことは前に述べた法律違反についてであった。その法律違反により静真に警察が踏み込まれたことにより静真そのものがなくなってしまう、そんな結果を迎えてしまうのでは、それをナギは心配していた。
が、そんなナギの心配をよそに、木松悪斗はあることを言う。
「それがどうしたのっていうんだね?そんなの、誤魔化せばいい、って、話だぜ!!バイトをさせている理由については、「社会授業の一環で」、って、言えばいいだけのことさ!!そんなこと、静真にとって朝飯前ってことですぜ!!」
これには、ナギたち生徒会一同、ただただ、
「・・・」
と、唖然とするしかなかった。それ以上に木松悪斗の口は止まらなかった。
「あっ、そうだ、浦の星の生徒たちに特別な授業を、「反省」という名の授業を受けてもらおう!!これまで間違った選択をしてきた、その「反省」をしてもらう授業だ!!そうだなぁ、内容としては・・・、「なぜ、「浦の星の入学」という間違った選択をしてしまったのか」「なぜ、「この静真に反抗する」、という間違った行動をしてしまったのか」、いや、「なぜ、この「木松悪斗様に対して反抗する」という間違った選択をしてしまったのか」、とかね。これによって浦の星の生徒たちはこの社会に必要な従順な僕(しもべ)になることができるのだから、浦の星の生徒から見ても、とても役に立つこと、間違いなしだぞ!!」
この木松悪斗の発言、もう、小原財閥の逆恨みを通り越して、浦の星の生徒たちに対するイジメ、としかみえなくもなかった。浦の星の生徒たちの人権、人格すら踏みにじる、そんな風に見えなくもなかった。が、その木松悪斗の言動に、理事たちも、
「そうだ、そうだ!!」「その案でいこう!!」
と、木松悪斗の言動に賛成する。いや、賛同するしかなかった。だって、木松悪斗に逆らうこと、すなわち、静真の帝王である、木松悪斗、から、理事をクビ、いや、この沼津に住めなくなることを意味していた。なので、理事たちも仕方なく木松悪斗に賛同していた・・・が、それでも、理事たち、図に乗りすぎだった。
この木松悪斗の言動、そして、それに賛同する理事たちを見たナギ、
(このままだと、静真がダメになってしまう。しかたがない。それなら、あれを使おう!!私、ナギをも含めた、生徒会役員みんなの思い、覚悟を、ここで繰り出そう!!)
と、ある決意を胸に行動を起こした。それは、ナギが、
バシッ
と、あるものを理事たちの席のまえに突き出すと、あることをナギが言った。
「このナギをはじめ、生徒会一同は、その、木松悪斗理事の提案に、反対、します!!」
すると、木松悪斗、ナギに対し、
「ナギ生徒会副会長、お言葉ですが・・・、一生徒であるあなたには、この理事会での発言権はありません!!よって、いくら、私の提案に不満があったとしても、それを拒否する権利はありません。理事の多数決でのみ案件の可否が決まります。もっとも、月生徒会長、自分の最終兵器であったAqoursが、今日のライブで失敗したことにより、あまりに自信喪失に陥ってしまった、みたいですね。だから、月生徒会長、今では生徒会室の隅っこにひきこもってしまった、そのために、仕方なく、副会長である、ナギ君が出てきてしまった。それが、現状・・・、でしょかねぇ」
と、ここにいない月にも失礼なことを言う。これに、ナギ、
(なにが生徒会室の隅っこに引きこもっているですって~!!月さんはそんな弱腰じゃない!!今は、Aqoursと一緒に極秘任務をしているところなんだ!!私だけならともかく、月さんの悪口を言うなんて、絶対に許せない!!)
と、怒り心頭になる。が、
(とっ、ここで一呼吸、一呼吸。ここで落ち着かないと木松悪斗にのせられてしまう。ここは冷静に、冷静に・・・)
と、深呼吸して落ち着きを取り戻す。
そして、
(よしっ!!月さん抜きで自分たちだけで考えた、必殺のあれを繰り出すか)
と、覚悟を決めると、木松悪斗に対してこう言い放つ!!
「木松悪斗理事、あなたの提案に対し、これを突きつけます!!」
と、先ほど理事たちの前に突きだしたものを再び持ってはもう一度、
バシッ
と、理事たちの前に再び投げつけた。この投げつけたもの、それに対し、理事の1人が、
「これはなんだね?」
と、ナギに尋ねる。すると、ナギは言った。
「これは、木松悪斗理事の提案に対する、私たち生徒会一同の、決意表明です!!」
このナギの言葉を聞いたのか、理事たちはナギが自分たちの前に投げつけたものを開く。すると・・・。
「な、なんだね、これは!!た、退学届じゃないか!?」
そう、退学届であった。その退学届について、ナギが説明する。
「私たち生徒会一同は、来月4月、新学期が始まる日までに浦の星の生徒たちに対しての、静真本校と浦の星分校の統合を含めた、処遇の改善を求めます。もし、それが叶わない場合、月生徒会長を含めた生徒会役員全員、静真を退学する覚悟でいます!!」
そう、ナギたちは自分たちの退学をかけて、静真本校と浦の星分校の統合を含めた、千歌たち浦の星の生徒たちの処遇の改善を求めたのである。ただでさえ、浦の星の生徒たちは、山の中の分校、それも、改装工事が終わるまで1つの教室で70~80人もの生徒が一緒に勉強する、そんな普通ではありえない悪い環境におかれているのだ。それに加え、先ほどの木松悪斗の法律違反すらしている提案まで通れば、もっと環境が悪化してしまう。それを防ぐため、自分たちの退学をかけてまで浦の星の生徒たちの処遇の改善を求めたのである。
が、これに対し、木松悪斗はこう考えてしまう。
(ふふ、ナギ副会長がだした退学届、これは使えるな。まず、この退学届を受理しよう。そして、4月の新学期が始まる日までは、生徒会は浦の星の生徒たちの処遇改善に向けて一生懸命に行動するだろう。でも、生徒会率いる統合推進派は今回のAqoursのライブの失敗で完全に修復不可能な大ダメージを被り、圧倒的な不利になってしまった。こうなると、この不利な状況を覆す、そんな一発逆転な方法なんてあるわけがない)
と、ナギたち生徒会の現在の状況を分析した上で、木松悪斗はあることを考えつく。
(それならば、まず、今は生徒会役員全員の退学届を受理しよう。ただし、退学届に書かれている条件、浦の星の生徒たちの処遇改善は反故しよう。ナギ付加会長は退学届に書かれた期限、4月の新学期が始まる日までに静真本校と浦の星分校の統合を実現しようと思っているはず。でも、沼田がだした統合の条件、「浦の星の生徒が静真の部活動に参加したら悪影響がでてしまう」という静真の保護者たちが持つ(浦の星の生徒たちに対する)不信感を払拭する、それをたった1ヶ月で達成するのは困難。そう考えると、あの、私にとって目の上のたんこぶみたいな、月生徒会長率いる生徒会全員が退学するのは確実。もし、そうなるなら、今度新しくできる新生徒会は、私の娘、旺夏を頂点にした、私にとっての傀儡政権にしてやろう。こうなれば、生徒側も私にとって意のままに操ることができる!!よって、私の静真での実効支配はより完璧なものになる!!)
そして、最後に、木松悪斗、これも付け加えた。
(でもって、4月の新学期が始まる日まで、こちら(木松悪斗率いる分校推進派)はなにもしない、と、ナギ副会長は考えているけど、こちらはこちらで動きますよ!!浦の星の生徒たちに対する不信感、もっと広げますよ!!さらに、浦の星の生徒たちの処遇も悪化させますよ!!浦の星の生徒たちの自由や権利なんてなくて当然!!もっと悪化させて、浦の星の生徒たちやその保護者たちの不満は、ぜんぶ、小原財閥に向けさせますからね!!そうなれば、小原財閥は大ダメージを被りますからね!!私にとって、あの裏切り者、小原財閥を倒す絶好の機会、到来、です!!)
と、木松悪斗、ちゃっかり自分の手を汚さずに小原財閥に責任を擦り付けること、それにより、小原財閥に大ダメージを与えること、それも忘れていなかった。
と、いうわけで、こんな皮算用を考えだした木松悪斗、すぐに、
「その退学届、私としても受理したいのですが、みなさん、どうでしょうか?」
と、ナギたちの退学届を受理する旨を示すと同時に理事みんなの意見を確認しようとすると、
「木松悪斗様が言うなら・・・」「私も・・・」
と、木松悪斗の言葉に賛成の意を示す。これを見た、木松悪斗、すぐに・・・。
「理事全員の賛成を得たので、退学届を受理・・・」
「ちょっと待った~!!」