ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

38 / 250
Moon Cradle 第3部 第7話

「どうして、僕を曜ちゃんたち(新生Aqours)の連れ添いに選んだんですか?」

開口一番、月は一緒にいる聖良に向かって怒るようにいった。月としては思いがけないことだったからだった。このとき、月、

(なんで僕を選んだんだよ!!もし、曜ちゃんたち新生Aqours6人と一緒に鞠莉ちゃんたち3年生3人を探すのであれば、鞠莉ちゃんのことをあまり詳しくない僕より、Aqoursのライバルであり、面識のある聖良さんと理亞ちゃんが適任なのに・・・)

と、思っていた。あっ、ちなみに、今、月と聖良と理亞はホテル小原沼津淡島所有の船「シャイニー号」に乗って沼津市街地へと向かっていた。鞠莉‘sママに無理やり・・・というより拉致に近い形でホテル小原沼津淡島に連れてこられた千歌たち6人、聖良・理亞、そして、月。しかし、ホテルに到着したときにはすでに夕方・・・、それから大ホールでの出来事・・・だったので、すべてが終わるときにはすでに空は暗くなっていた。というわけで、鞠莉’sママの計らいで家の近くまで「シャイニー号」で送ってもらうことにしたのだった。なのだが、千歌たち新生Aqours6人はイタリアでの旅行計画を練るため、今夜は千歌の家に泊まって作戦会議・・・、というわけで、内浦の船つき場で千歌たち6人は降りてしまったのだ。なので、今、シャイニー号に乗っているのは、沼津市街地の近くにある住宅街に住んでいる月と、このあと沼津駅から新幹線で宿がある東京に戻る聖良と理亞、その3人しかいなかった。

 で、この月の発言に聖良はすぐに答えた。

「それはね、月さん、あなたが新生Aqoursをよみがえさせる、その大任を任せるのにうってつけだからです!!」

この聖良の言葉に、月、

「え~!!」

と、大きな声をあげる。すると、隣にいる理亞が、

「う、うるさい!!」

と、怒鳴るとそのまま、

「うるさい・・・」

と、言っては眠ってしまった。理亞、今日はいろんなことがありすぎて疲れて眠ってしまっていたのだった。そのためか、月の大きな声に反応したのか、「うるさい!!」と、月にどなったもののそのまま眠りについてしまったのだった。

 この理亞の寝言のあと、月は改めて聖良に聞く。

「僕のどこが適任なのですか?」

すると、聖良は月を選んだ理由を言った。

「理由は3つあります。1つは、あなた、イタリアに住んでいたこと、ありますね!!」

この聖良の言葉に、月、

「えっ、なんでわかったの!!」

と、驚いてしまった。これまで聖良どころか大親友の曜以外の千歌たち新生Aqoursメンバーにも言っていない事実・・・、それは・・・。

(僕、たしかにここ沼津に来る前、イタリアに住んでいた・・・)

そう、月、実は沼津に引っ越してくる前、イタリアに住んでいたのだ。そのため、日本語、英語以外にイタリア語も堪能、だったりする。さらに、千歌たち新生Aqoursのメンバー、聖良と理亞、月、この9人のなかでイタリアのことをよく知っている人物でもある。その意味でも道案内役としてはうってつけであった。ただ、このことについてはこれまで曜以外の誰にも話していないため、月にとってみれば・・・、

(この聖良って子、まさか、僕の個人情報を・・・)

と、聖良を疑ってしまう。まさか、ストーカー・・・とも思える発言、と、考えてしまう月。

 それに対し、聖良は月がイタリアに住んでいたことがわかった理由を言った。

「月さん、誰にも昔自分がイタリアに住んでいたことを言っていないのに、なんで私、聖良がわかったのか、疑問に思えるでしょう。それはですね、月さんの言葉を発するときの口の動きから判ったからです。「r」の発音のとき、月さん、知らないうちに舌を巻いて発音していますよ。それを見て、私、月さんが昔イタリアに住んでいたことがわかってしまいました!!」

そう、英語などで言葉を発する際、イタリア語なまりが強い人は「/r/」の発音のとき、イタリア語の特徴的な巻き舌で発音しがちになってしまうのである。月もイタリアから沼津に引っ越してから長い年月が経つものの、それでも小さいときから住んでいた、イタリア、そのときに身につけたイタリア語の影響はいまだに月の発音に影響を与えていたのだ。そんなこまかいところまで見てしまう聖良について、月、思わず、

(うわ、聖良さん、凄すぎ・・・。僕、もう聖良さんのまえでは嘘なんていえない・・・)

と、聖良の凄さに脱帽するしかなかった。

 とはいえ、たしかに聖良の言うとおり、イタリアの道案内だけなら月が適任・・・であるが、それでも、新生Aqoursをよみがえさせる大任を月が務める理由としては弱めである。でもって、聖良、2つ目の理由を月に言う。

「2つ目は、千歌さんたち6人、私(聖良)と理亞、そして、月さん、この9人の立ち位置です」

立ち位置・・・、これについては、月、

(立ち位置?どういうこと?)

と、少し考え込んでしまう。聖良はそんな月の疑問を解決するため、すぐにこのことについて解説した。

「今回、千歌さんたち新生Aqoursは不安と心配の海・沼の奥底に沈みこんでいます。でも、私と理亞だと千歌さんたち6人に近づきすぎてどうしても千歌さんたちに同情してしましいます」

そう、内浦の砂浜で千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスを客観的に評価した聖良・・・ではあるが、実際に新生Aqoursをよみがえさせるとき、どうしても同情的になってしまう、なぜなら・・・。

(私(聖良)と理亞、あまりに千歌さんたちと長い時間を共に過ごしてしましました。人間、こうなると、なにかするとき、そのものに甘くなってしまいます。こうなると達成できるものも達成できなくなります・・・)

と、聖良、こう考えての発言だった。長い時間を共に過ごしていると、人はどうしてもそのものに同情してしまう・・・かもしれない。聖良はそれを危惧したからの発言だった。

 その聖良、月にあることを話す。

「でも、月さん、あなたなら、千歌さんたちと一緒に過ごした時間は短い。たとえ同情的になっても、そこまで甘くはならないでしょう。むしろ、より客観的に物事を判断、より効果的な方法でよみがえさせることができると思います」

この聖良の言葉に、月、おもわず、

「そういうものなの・・・」

と、少しツッコミをいれようとしていた。

 であるが、聖良、月のツッコミを無視して言葉を続ける。

「そして、月さんの場合、以前、今の新生Aqoursの状況と同じ状況に陥ってしまった、そう私は感じていました。その経験を千歌さんたちに伝えることができれば必ず新生Aqoursをよみがえさせることができるでしょう」

この聖良の言葉に、月、

(えっ、僕、そんな経験、していたかな?)

と、なにかを思い出そうとするも思い出せず、

(う~ん、う~ん)

と、頭をひねってしまう月。

 そんなときだった。突然、月の脳内にあるビジョンが映し出される。

(「月ちゃん、忘れないで!!たとえ、離れていても、月ちゃんの心の中に、私、ずっと居続けるんだよ!!」)

この言葉に、月、思わず、

(だ、誰、僕に話しかけるのは!?)

と、誰か月を呼ぶ声がだれか周りを見渡す。が、誰もいない。それでも、月の頭の中には誰か知らない、いや、月がよく知っている人物の声が聞こえてくる。

(「月ちゃん、月ちゃん!!でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ず~と、永遠に、大切な友達なんだよ!!」)

(「だからね、別れはね、すべてが終わる、ゼロに、もとに戻る、なにもなくなる、ってわけじゃないんだよ!!」)

この言葉を聞いたのか、月、

(あっ、もしかして、僕、意図的にこの言葉を封印、していたのかもしれないね。もしかすると、この封印を解く必要があるかもしれないね。聖良さん、そのことを教えてくれたのかもしれないね・・・)

と、考えるようになる。3年生がいない千歌たち新生Aqours、心の底から聞こえてくる言葉、どこか、似ている、そんな想いからだった。

 そして、月は昨日の誓い、自分の力で新生Aqoursを生まれかわらせること、を思い出すと、ある決意をみせる。

(そうだ、昨日、僕、決めたんだ。僕の心の中にある、忘れかけていた、それでいてとても大切なもの、その衝動こそ今の僕、そして、新生Aqoursに必要なはず!!そして、その衝動をもって新生Aqoursをよみがえさせる、と、心のなかで決めたんだ!!だからこそ、僕、曜ちゃんたち新生Aqoursと一緒にイタリアに行く!!そして、絶対に新生Aqoursをよみがえさせてやる!!)

このつきの決意は、

(あっ、月さん、なにかあることを決意した、そんな表情をしています)

と、聖良が思うくらい、これまで見せたことがないくらいの凛々しい表情を月はしていた。

 と、凛々しい表情の月であったが、すぐに、本題、なぜ聖良は月を新生Aqoursが鞠莉たち3年生3人を探しにイタリアに行く旅、そのお供に推薦したのか、その残されたもう1つの理由について、

「あと、もう1つ理由があるってことですけど、なんですか?」

と、聖良に尋ねる。すると、聖良、すぐに答えた。

「あと、月さん、あなた、なにか悩んでいますか?」

これについては、月、嘘をついても聖良ならばれると思い、そのまま、今悩んでいることを話す。

「たしかに悩んでいます。これは曜ちゃんたち新生Aqoursの不調の原因ともつながっています」

そして、月が今悩んでいることを聖良に話す。自分の高校、そして、浦の星との統合を控える静真、その静真は昔から部活動が盛んであり、全国大会に出場する部活も多いこと、今年の2月、突然静真の大スポンサーである木松悪斗が「万年初戦敗退、そのため、部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が全国大会出場するくらい部活動が盛んであり、そのため、部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加したら、士気低下、対立によって静真の部活動全体の質が落ちてしまう」と言い出して浦の星との統合を白紙撤回しようとしたこと、それについては月たち生徒会のお陰でなんとか阻止したもの、木松悪斗に賛同する保護者たちも多く、その「木松悪斗が言っていること=保護者の声」がなくならない限り浦の星の生徒は別途用意した分校に通うことになったこと、それを阻止しようとラブライブ!という全国大会で優勝するくらい実力があるAqoursの力を借りてまで保護者の声を打ち消そうとし、昨日、部活動報告会で(新生)Aqoursのライブをしたものの、とてもパフォーマンスが悪く、それにより、より浦の星の生徒に対する印象が悪くなったこと、を。

 そして、最後に、月は聖良に対し、あることを言った。

「そして、分校方式を決めた沼田のじっちゃん、あっ、静真のPTAの会長で、創立家の末裔、それでいて、静真のなかで一番偉い人ね、そのじっちゃんから、保護者の声をなくすためのヒント、問いを提示されたんだ。「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」この問いについて、僕も考えているんだけど、なかなか答えが見つからないんだ~」

この月のことばに、聖良、

(ふ~ん、「沼田のじっちゃん」という人、かなりの策士、ですね。こんな問い、普通の人ならあまり考えつかないものですね。それでいて、この分校問題を解決する、かなりいい問い、だと思います)

と考えると、月にすぐにあることを尋ねた。

「そういえば、その部活動報告会のとき、なにか変わったこと、ありませんでしたか?」

これには月、

「う~ん、特には・・・」

と、なにもなくて悩んでしまう。突然聞かれたことなのか、少し悩むも、それならばと昨日のことについて思い出そうとする、月。すると、

「あっ、たしか、木松悪斗の娘で女子サッカー部部長の旺夏があること言っていたよね」

と、そのとき、旺夏が言っていたことを思い出す。と、同時に、

「あっ、聖良さん、たしか、今年のインターハイで優勝した女子サッカー部の部長(木松悪斗の娘!!)がこんなこと言っていましたよ」

と、月が言うと、そのときの旺夏のマネをする。

「静真の部活動、それは、「勝つことこそ正義」、なのです!!」

そのマネのあと、月はこう言葉を続けた。

「その言葉を考えると、どうしても、「勝利こそ正義」「勝利こそすべて」と聞こえてしまいます。僕の耳がおかしいのでしょうか?」

この月の言葉に対し、聖良、

(あっ、これって、2年前のラブライブ!のときと同じ状況・・・ですね)

と、今静真の部活動で起きていることと2年前にラブライブ!で起きたことが同じであることに気づく。

 そして、聖良は月に対し、あることを伝える。

「私にはその沼田のじっちゃんの問いに答えることができないかもしれません」

これには、月、

「え~!!なんでもお見通しの聖良さんですらわからないなんて~!!」

と、がっかりする。

 が、そんな月に対し、聖良は、

「それでも、ヒントぐらいなら言えるかもしれませんね」

と、言うと、そのヒント、2年前にラブライブ!にて、スクールアイドル界にて起きたことを話し始めた。

「実は、千歌さんたちAqoursが優勝したことがあるラブライブ!、そして、スクールアイドル界、なんですが、今から2年前、ある悪しき考えがスクールアイドル界ではびこっていました」

その聖良の言葉に、月、

「えっ、あの元気で明るいスクールアイドル界で!!」

と、驚いてしまう、みんな楽しく一生懸命なパフォーマンスをしているスクールアイドル界において悪しき考えはびこっていたことを。これについて、聖良は解説を始める。

「その悪しき考えとは、「スクールアイドル勝利至上主義」です。スクールアイドルにとって勝利こそすべて、勝つことこそ一番大事である、そんな考えがはびこっていました」

この聖良の言葉に、月、

(あれっ、これってうち(静真)と同じ状況・・・)

と、聖良の言っていることと自分の高校、静真が同じ状況に気づく。

 その月の思いを受けてか、聖良の解説は続く。

「その勝利至上主義により、その当時、いつも上位にいるスクールアイドルたちは下位のスクールアイドルたちを見下す風潮すらありました。私としてはその風潮は嫌でした。A-RISEやμ‘sみたいになりたい、そう思っていた私、ですから、その考え、その風潮がなくなるまでスクールアイドルになるのを控えていました。さらに、ヘリのなかで私が言っていた、初代Aqoursが東京のスクールアイドルのイベントのまえに鞠莉が怪我をしたのも、その勝利至上主義によって上位のスクールアイドルから見下されるのが嫌だったのも1つの理由である、と、鞠莉から聞いております」

これには、月、

(えっ、鞠莉さん、「スクールアイドル勝利至上主義」の犠牲になったの!!でも、なんで、今、「勝利至上主義」の考えがなくなったのだろう?)

と、疑問に思うようになる。

 それを受けてか、聖良はこう言った。

「でも、あるレジェンドスクールアイドルグループにより、その考えは打破されることになります」

この聖良の言葉に、月、つい、

「そのグループとは・・・?」

と、聖良に聞く。

 そして、聖良はついにあのレジェンドスクールアイドルの名前をあげる。

「スクールアイドル勝利至上主義、勝者が敗者を見下す風潮、それを打ち砕いたのは、そのグループ名は、「オメガマックス」!!」

そのグループ名に、月、おもわず、

「オメガマックス・・・」

と、復唱してしまう。この月の姿を見てか、聖良の話は続く。

「オメガマックス、あのμ‘sを輩出した高校、音ノ木坂学院最後のスクールアイドルグループ。高坂雪穂、綾瀬亜里沙、秋葉愛、代々木はるか、神宮はやて、京城みやこ、矢澤こころ、矢澤ここあの8人組のグループ。そのグループですが、当時スクールアイドル界にはびこっていた「スクールアイドル勝利至上主義」ではなく、スクールアイドルを心から楽しむことを前面に出したグループでした。最初は別々のグループとして対立したり、活動を邪魔されたりと紆余曲折をしつつもひとつのグループとして成長し、ついにはラブライブ!決勝まで進出、「勝利至上主義」の権現で絶対的王者だった福博女子大学付属のスクールアイドル、カリスマ的リーダー中州天率いるK9と対決しました。結果は・・・」

この言葉に、月、

「結果、どうなったのですか?」

と、聖良に尋ねると、聖良、すぐに答えた。

「結果、スクールアイドルを心から楽しむことで最大限のパフォーマンスをみせたオメガマックスが勝利し、そのエキシビジョンで福博女子の校長で天の母親、中洲博子が放った刺客、μ‘sすらも撃破、みごとにオメガマックスは「勝利至上主義」を打ち破ったのです」

 この話に、月、

(勝利至上主義を打ち破る・・・、それほどの実力があったオメガマックス・・・。でも、聖良さんの言葉の中には(オメガマックスに関して)勝つことに執着していない、そんな話し方だった・・・。むしろ、楽しむ・・・ことを強調している・・・そんな感じがします・・・)

と、思ってしまう。そのためか、これにはもうちょっと深堀しない、と、月はそう考えるようになった。

 そこで、月は聖良に対しある質問をぶつける。

「聖良さん、さっきから「楽しむこと」を強調しておりますが、そこはどうなんでしょうか?」

 が、そんなときだった。

ゴトンッ

と、なにかにぶつかった、そんな音が聞こえてくると、船員から、

「さぁ、着きましたよ」

と、沼津港についたことを聖良たちに教えにきてくれた。

 と、同時に、聖良は寝ている理亞を抱っこすると、

「今日は楽しかったです。今度はゆっくりお話しましょうね。またね」

と、聖良、そう言ってはそのまま船の外に出て帰ってしまった。

 このとき、月、船から去っていく聖良の背中を見て、あることを考えていた。

「楽しむこと・・・、それってとても大切なことなの・・・」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。