一方、そんな鞠莉‘sママの行動については露知らず、千歌たち6人と月はフィレンツェに行く列車に乗ってフィレンツェへと移動していた。
そんななか、月はある少女のことを思っていた。それは・・・。
(ルビィちゃん・・・)
そう、ルビィであった。あの静真での部活動報告会でのライブの失敗のあと、あの今川焼きのお店でみせたルビィのがっかりした顔、そこには「お姉ちゃん・・・」とつぶやくほど姉ダイヤにすがりたい、そんなルビィの姿があった。それを陰から見ていた月、そして、姉ダイヤのいるイタリアのヴェネチアに行き、実際に姉ダイヤに会ったことで、もうこれで安心、もうお姉さんを離さない、そんな明るい表情を見せたルビィの姿、しかし、突然ルビィのそばを去っていった姉ダイヤの姿に絶望を感じさせるくらいの表情を見せたルビィ、それについて、月、
(ルビィちゃんにとってお姉ちゃんであるダイヤさんの影響力って強いんだね。いや、姉ダイヤさんへの依存度が高いのかもね)
と、考えてしまう。と、ともに、
(でも、いつかは必ず別れがくるもの。それがルビィちゃんにとっては今ではないかな)
と、考えてしまう。が、それについて、月、
(でも、別れって本当に悲しいものなのかな?)
と、別れについて考えてしまう。本当に別れとは悲しいものなのか、それについて考える月。
そんな月、ふとあることを思い出そうとする。
(そういえば、僕にも、その経験、あったかな?)
月は自分にとって別れを経験したことがあったか思い出そうとする。なぜなら、
(もしかすると、あのフラッシュバック、僕になにかを気づかせるようとしているのかもしれない。そして、それを思い出すことでルビィちゃんを救えるかもしれない・・・)
そう、月にときどき起きるフラッシュバックである。月はときどき曜に似た少女から、
「月ちゃん、忘れないで、たとえ、離れていても、月ちゃんの心のなかに私はずっと居続けるんだからね」
と、呼びかけられる、そんな記憶がフラッシュバックのようによみがえてくるのである。それは、あの部活動報告会の放課後、たそがれる千歌たちを見て、断片的だが、それを思い出すとともに、今の千歌たちに必要なものかもしれない、月はそう思えるようになった。そして、イタリアに来る前、月は、その少女が曜であると認識する。そして、それを思い出すことが必要ではないか、と、月は考えるようになった。
(あのフラッシュバック・・・、たしか・・・、あれって・・・)
と、月、少しずつだがそのフラッシュバックの記憶をよみがえさせようとする。が、なかなか思い出すことができない。
(う~ん う~ん)
と、必死に思い出そうとする月。でも、それでも思い出すことができない。
と、そんなとき、
「月ちゃん!!」
と、月のことを呼ぶ声がする。それに気づいた月、振り向くと・・・。
「曜ちゃん・・・」
そこにいたのは曜だった。曜はすぐに月に言う。
「そんなに考え込んだりして。もしかして、悩み事?」
これには、月、
「いや、なんでもないよ」
と、軽く否定する。
そんな月の表情を見てか、曜はすぐに話題を変える。
「ねぇ~、月ちゃん、私たちって小学校や中学のときってよく遊んでいたよね」
これには、月、
「うん、そうだね」
と、相槌を打つ。これに、曜、
「あのときって本当に楽しかったよね」
と、昔のことをしみじみに思い出す。これに、月、
「うん、そうだね」
と、ここでも相槌を打つ。そんな月を見てか、曜はすぐに、
「そう考えると、1度別れたのに、また一緒に旅をする、楽しいことができる、これってなんか奇跡だと思えてくるよ」
と、再び月と一緒に楽しいことができることに感動していた。
が、月、ある曜の言葉に反応を示す。
「えっ、1度別れた・・・」
その月の言葉を聞いた曜、すぐに、
「うん、そうだよ。たしか、中学3年のとき、私、髙飛び込みでとてもいい成績を残していたじゃない。だから、部活動が盛んな静真高校に推薦入学が決まっていたじゃない。でも、私、みんなの反対を押し切って千歌ちゃんたちがいる浦の星に入学したじゃない・・・」
それを聞いた月、
「えっ!!」
と、驚いてしまう。と、同時に、
(たしかにあったような気がする・・・)
と、そのときのことを思い出す。
それは月と曜が中学3年のときのことであった。成績優秀な月、髙飛込みでかなり優秀な成績を残していた曜、2人とも静真高校への推薦入学を決めていた。これには、月、当時、
「また曜ちゃんと同じ学校に通えるんだ!!嬉しいなぁ」
と、喜んでいた。
が、ある日、突然、曜が月に意外なことを伝える。
「月ちゃん、ごめんね。月ちゃんと一緒に静真に通うことができなくなっちゃった・・・」
これを聞いた月、
「えっ、なんで!!みんな、曜ちゃんが静真に行くこと、喜んでいたのに!!」
と、驚くとともに、曜に対し、
「なんで!!なんで!!なんで!!」
と、曜に詰め寄る。
これには、曜、
「だって、(もう1人の大親友の)千歌ちゃんのことが大好きだから・・・。だから、私、浦の星に入る!!」
これを聞いた月、すぐに、
「なんで千歌ちゃんって子をとるの!!僕のこと大好きじゃなかったの!!」
と、曜に迫る。なぜなら、
(この大親友である僕、ではなくて、まったく知らない、千歌って子、をなんで選んだの!!僕たち大親友、でしょ!!本当の姉妹、いや、双子みたいな、そんな強いキズナで結ばれた僕たちでしょ!!それをまったく知らない子のために静真を入るのやめるの!!)
という曜に対しての強い反発があったから。月にとって曜は大親友、いや、同士、だと思っていた。それなのに、なんで、千歌という月にとってまったく知らない子をとるのか、それに対する反発があったからだった。また、これとは別に、
(それに、曜ちゃん、髙飛び込みの日本代表として世界で大活躍できる、それくらいの能力を秘めているのに、その能力を磨くために、部活動が盛んな静真高校の推薦入学を受けて合格したのに、部活動としては無名の浦の星に行くなんて・・・)
という思いもあった。髙飛び込みの選手として、夏の大会、そして、国体でかなり優秀な成績を残していた。そのため、将来、世界大会でもメダルがとれる、それくらい期待有望な選手であったのである、曜は。なので、部活動が盛んで全国大会にいく部活も数多い、スポーツ優秀校である静真に入れば絶対に世界を狙える髙飛び込みの選手になれる、そんな期待がまわりからはあった。しかし、曜はそのまわりの期待を裏切ってまで、千歌という友達が大好きだから、という理由で浦の星を選んだのである。それは、まわりからすれば裏切り行為と思えたのかもしれない、月には。
しかし、曜はその月の言葉に対し、
「たしかに、月ちゃんにとって裏切りになるかもしれないけど・・・」
と、前置きしつつ、自分の想いを月に語った。
「でも、私にとって千歌ちゃんはとても大切な存在なんだ!!」
この言葉に、月、
ガーン
と、傷ついてしまう。まさか、自分以上に千歌という子が好きって断言されたから、だった。それはこれまで曜にとって一番の親友はこの自分、月であると思っていたから。なので、曜の先ほどの告白は月にとって回復不可能な大ダメージを与えた。
そんな月とは裏腹に曜は笑いながら自分の想いをさらに語った。
「私、聞いたんだ、千歌ちゃん、お母さん、お姉ちゃん2人、も通っていた浦の星に入学するのが夢だったんだって。でも、千歌ちゃんが通う浦の星は廃校の話が何度も出るくらい生徒数が少ないんだって。それに、千歌ちゃんが浦の星に入学したとしても、千歌ちゃんが知っている、(もしくは、)一緒に入学する友達って昔から友達のむっちゃんたちか(千歌や曜の)先輩で同じ浦の星に通っている幼馴染の果南ちゃんぐらいしかいないんだもん!!これじゃ、千歌ちゃん、寂しすぎるよ!!それなら、私が自ら進んで千歌ちゃんと一緒に浦の星に入学して、私と一緒に友達、いっぱい、い~ぱい、作っていこう、千歌ちゃんたちと一緒に、そう思えたんだ!!だから、私、静真をやめて浦の星に入るって決めたんだ!!」
そして、最後に曜は自分の今の気持ちを月に伝えた。
「たしかに、月ちゃんの思い、まわりの期待を裏切ることになるかもしれない。私の輝かしい未来すら投げ捨てることになるかもしれない。けれど、私にとって千歌ちゃんはともて大切な友達なんだ!!そんな友達がとても困っている、そんな状況の中で、私、その友達のために大切なものを投げ捨ててまでその友達のためにやっていきたい!!」
その曜の想いを聞いた月、このとき、曜に対してこんな思いを持ってしまう。
(曜ちゃんが変わってしまった・・・。もう僕が知っている曜ちゃんじゃない・・・。僕はずっと曜ちゃんと一緒にいられると思っていた・・・。姉妹のように、双子のように、ずっとずっといられる・・・そう思っていた。けれど、今の曜ちゃんの考えは違う・・・。曜ちゃんの考えは僕と違っていた・・・。曜ちゃんは僕とは別の親友である千歌ちゃんが困っているから、大事な友達、千歌ちゃんが困っているから、その千歌ちゃんのためになりたい、その思いだけ自分の大切なもの、(髙飛び込み選手としての)約束された将来、すら捨ててまで千歌ちゃんのために浦の星に入ろうとしている・・・。それって、もしかして、曜ちゃん、僕から飛び立とうとしているんじゃないかな?もう曜ちゃんは僕が知っている曜ちゃんじゃない!!曜ちゃんは僕を見捨てたんだ!!)
そう月が思った瞬間、月の表情がこわばってしまう。まるで、なにかに絶望したような、そんな表情をしてしまう。
そんな絶望的な表情をした月に対し、曜はというと・・・、
「月ちゃん、なんで絶望的な顔をしているの?」
と、平気に、月に尋ねてしまう。すると、月、
「だって、僕、曜ちゃんに見捨てられたんだもん・・・」
と、弱々しく言うと、曜はそんな月を励ますかのようにこう言った。
「別に月ちゃんのことなんて見捨てていないよ!!」
この曜の言葉に、月、
「えっ!!」
と、驚いてしまう。きょとんとする月。すると、曜はこう答えた。
「だって、月ちゃん、私にとって月ちゃんも大切な親友だよ!!月ちゃんは「私は見捨てられた」って思っているでしょ。でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ずっと、永遠に、大切にしたい友達、なんだよ!!」
これには、月、
「えっ、僕のこと、裏切ったわけじゃないの・・・」
と、曜に確認をとる。すると、曜、
「そうだよ。だった、私にしてみれば、今でも、月ちゃんは千歌ちゃんと同じくらい大親友、なんだからね!!」
と、正直に言うと、月、
「なぜそう思うの?なんで「ずっと友達」って言葉、でてきたの?」
と、曜に聞いてみる。
すると、曜は元気よくこう答えた。
「だって、私にとって月ちゃんは昔からいつも遊んでくれた、千歌ちゃんみたいにずっと遊んでくれた。だから、私から友達の縁を切るなんて絶対にないよ!!だった、昔も、今も、そして、これからも、私、月ちゃんのこと、大大大大大好き、なんだからね!!これからもずっと、大大大大大親友、なんだからね!!千歌ちゃんと同じくらいにね!!」
これを聞いた、月、
(あっ、これが曜ちゃんなんだね。忘れていたよ。曜ちゃん、誰に対しても優しい、自分のことよりもほかの人のことを先に助けようとしている、そんなやさしい人、曜ちゃん。名前のように太陽みたいな性格だったね。それに対して、僕、勝手に、曜ちゃんとの縁が切れた、って思っていたよ)
と、勝手に親友の縁が、キズナが切れた、そう思った自分を恥じた。
そして、月はこのとき、ある決意をする。
(僕と曜ちゃんのキズナはこれからもずっと続く。曜ちゃんとのキズナが切れるわけじゃない。けれど、別れはいつかきっとくる。それなら、ずっと、曜ちゃんを僕だけのものにする、べったりする、そんな関係に終止符を打とう。曜ちゃんを暖かくおくろう。そして、なにもわだかたまりなく、なにもかも忘れよう。だって、別れることはキズナ以外のもの、すべてがなくなる、そんなものだから・・・)
こう決意した月、曜にこんなことを言う。
「そうだね。僕、勘違いしていたよ。なら、今、僕が曜ちゃんにできることは1つだけ、なにもかもさっぱり、なんもわだかたまりもなく送るよ。なにもかもなくなるかもしれないけれど・・・」
が、これを聞いた曜、月に驚きの言葉を言う。
「月ちゃん、たしかに、私は月ちゃんから旅立とうとしている、そう月ちゃんから見えているかもしれないけれど、とても大切なことを忘れているよ!!」
これを聞いた月、
「えっ!!」
と、これまた驚いてしまう。その月の顔を見て、曜、さらに言った。
「月ちゃん、たしかに私は月ちゃんから旅立つけど・・・、旅立つっていうのはね・・・」
その言葉を思い出そうとしている月、そんなとき、
「月ちゃん、月ちゃん、しっかり!!」
と、曜が月に呼びかける。これを聞いた月、
「あっ、僕、なんかボーとしていた?」
と、曜に尋ねる。曜はすぐに月に対して、
「うん、そうだよ!!月ちゃん、私が言っている最中になんかボーとしてしまっていたよ。まるで、今ここにあらず、そんな状況に陥っていたんだよ!!」
と、心配そうに言うと、月、
「あっ、曜ちゃん、心配かけてごめんね」
と、心配してくれた曜に御礼を言う。
そして、月は曜にあることを尋ねる。
「ところで、曜ちゃん、僕たちが中学3年生のときのこと、覚えている?曜ちゃんが浦の星に入学を決めたとき、僕になにか言わなかった?」
これには曜、
「う~ん、たしか、なにか言っていたよね。でも、なんて言ったかな?う~ん、う~ん、思い出せないわ!!」
と、思い出そうとするも思い出せなかった。これには、月、
「あっ、ごめんね、曜ちゃん。頭を悩ませてしまってごめんね!!」
と、曜に謝る。これには、曜、
「月ちゃん、私のほうこそごめんね。とても大切な思い出なのに、思い出せないって。本当にごめん!!」
と、月に謝る。
しかし、このままだとお謝り大会、謝罪の堂々巡り、になってしまう。と、いうわけで、月、
「でも、曜ちゃんのおかげでとても大切なことを思い出すことができたよ。本当にありがとうね、曜ちゃん!!」
と、言ってこの場をあとにした。これには、曜、
「うん、またね!!」
と、月に挨拶をした。
そして、曜と別れた月はすぐに列車の中の多目的ルームに行くと、すぐに、
「全部・・・思い出した・・・。だから、聖良さん、僕が新生Aqours復活のためのキーパーソンに選んだんだ・・・」
と、曜と別れた中学3年生のときの出来事を全部思い出したこと、そして、Saint Snowの聖良がその新生Aqoursの復活のキーパーソンに選んだ理由を理解した。これに対して、月、
「たしかに、今、新生Aqoursに起きていることって、昔の僕、中学3年の僕、と同じ状況かもしれないね。僕は曜ちゃんと別れることですべてがなくなる、そう思っていた。そして、今の新生Aqoursもそう思っているに違いない。なら、この僕がそんな新生Aqoursを導いてやろう。そして、本当のAqoursの姿によみがえさせてあげよう!!」
と、決意表明をした。