ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

55 / 250
Moon Cradle 第6部 プロローグ

 2018年3月中旬、イタリア・ローマ、スペイン広場・・・。ここでは今から1つのライブ・・・、いや、1人の少女の運命、そして、あるものの運命をかけた、絶対に失敗が許されないライブが今まさに行われようとしていた。

 スペイン広場の一番下にある踊り場には9人の少女たちがライブで披露する曲のフォーメーションの位置について曲が始まるのをいまかと待っていた。その9人に対し、この9人の雄姿を日本にいるみんなに映像で届けるため、スペイン広場の下で自分の高性能のスマホをもってスタンバイしていた少女、月、は、

(あともう少しで鞠莉ちゃんの・・・、いや、スクールアイドルの未来を、運命をかけたライブが始まる・・・。それって、まるで、あのμ'sの・・・、N.Y.でのライブ・・・みたい・・・)

と、一瞬考えてしまう。月が思い出したのは、数年前、μ'sがN.Y.で披露した「エンジェリック・エンジェル」のライブのことである。日本のテレビ局がラブライブ!の影響で急激に人気になっていったスクールアイドルの特集をするため、第2回ラブライブ!で優勝したμ'sに白羽の矢をたて、N.Y.でのライブをしないかとμ'sにもちかけてきたものだった。そして、μ'sはそれを快諾、N.Y.でライブをすることになった。そのN.Y.でのライブだが、大成功に終わる。そして、このN.Y.ライブは日本中に放送され、μ's、そして、スクールアイドルの人気は不動のものになった。ただ、μ'sはこのあと、秋葉原で行われたスクールアイドルフェスティバルをもって活動を終えることになるのだが、そのμ's、そして、今や大人気アイドルグループとなったA-RISEによって人気を加速されたスクールアイドルは、秋葉ドームでラブライブ!決勝が行われるくらい、いや、世界中にまで広がりをみせるくらいにまで成長していった。そして、μ'sの意思、「スクールアイドルを楽しむ」という意思は、μ'sのリーダー、穂乃果の妹、雪穂率いるオメガマックスをえて、日本中に、世界中にひろがりをみせようとしていた。

 しかし、月はμ'sが行ったN.Y.でのライブと今からローマスペイン広場で行われるライブについてこう考えていた。

(でも、μ'sのN.Y.でのライブって、特段、誰かの未来とか運命とか、そんなものをなにもかけていないよね。でも、今から行われるライブは、1人の少女の未来、これからの運命をかけたライブ・・・。そして、それをジャッジするのは、その少女の望む未来、運命を完全に否定している、その少女の母親・・・。同じ海外でのライブだけど、かけているものの差はこちらのほうが重い・・・)

そうである。この今からから行われるライブは1人の少女の、これからの未来、これからの運命をかけた大事なライブである。もし成功すれば、その少女は自分が望む未来、運命を手に入れることができる。だが、もし失敗すれば、その少女は一生鳥かごのなかに入れられてしまうのである。さらに、わるいことに、そのライブのジャッジをするのは、その少女を一生鳥かごのなかに入れたい、その少女の母親・・・だからである。ある意味、本当に厳しいライブになることが予想された。

 が、月はその9人の雄姿を見てこう思ってしまう。

(でも、そんな苦境のなかでも、あの9人は一生懸命頑張ってきた。短い間だったけど、あの9人は著しく成長していった。特に、これからをときめく、あの6人は精神的に大きく成長した。そのなかでも、ルビィちゃん、僕の想いを、気持ちを、熱心に、真正面から受け止めてくれた、それがほかの5人にも伝わってくれた!!だからこそ、もう大丈夫!!ルビィちゃんは、いや、新生Aqours、曜ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん、はもう復活してくれた、いや、前以上に輝いてくれている、そう、僕は思っているよ!!)

そのグループと敵対する母親との邂逅を果たしたフィレンツェでの出来事から今日のライブまでの短い間のことを思い出していた、月、そのなかで、静真の部活動報告会でのライブの失敗により、不安・心配の海・沼の奥底に沈んだ新生Aqoursの6人、それが、(本来の)Aqours3年生3人、鞠莉、果南、ダイヤ、との邂逅をえて、その奥底から這い上がってきたことにより、今まさにこれまでにない輝きをみせている、そう月は確信していた。

 そんな月・・・であったが、それでも、

(でも、一番大事なのは、今からのライブ、あの(静真での部活動報告会の)失敗のライブ以来のライブ・・・、いざ、本番、となると、その輝きも曇ってしまう・・・。また、不安・心配の海・沼の奥底に沈みこんでしまう・・・かもしれない・・・)

と、心配そうに新生Aqoursのメンバーを見る。いくら練習で輝きを取り戻したとしても、本番ではなにが起こるかわからない。一瞬の気の迷いにより、それまで成功していたとしても、それを台無しにするくらいの失敗をするかもしれない。そう、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選のSaint Snowのライブと同じように・・・。

 それでも、月は今からライブを行おうとしている9人の方を見る。すると・・・。

(でも、なんでだろう・・・、このライブ・・・、成功するような気がする・・・、そう思えてしまう・・・。だって、今、僕の前にいる9人、Aqoursのみんな・・・、笑っている・・・。これから失敗が許されないライブが始まるのに・・・、みんな、笑っている・・・。なんで・・・笑えるの・・・、なんで・・・笑顔・・・なの・・・)

と、思えてきてしまっていた。そう、今からライブを行う9人、(本来の)Aqours9人、は、みんな笑顔だった。これから1人の少女の未来、運命を決める、そして、スクールアイドルの未来、運命すら決めてしまう、そんなライブ、失敗が許されないライブが始まるのだ。それなのに、9人、Aqoursメンバー9人、ともに笑っている、笑顔になっている。これを見た、月、もうライブは成功する、そんな気になってしまっていた。

 そして、月はこれまでに起きたこと、今からライブを行う9人・・・、(本来の)Aqours9人、にとのあいだで交わった、このライブをジャッジする母親、鞠莉‘sママとのフィレンツェでの邂逅から始まった、そして、この日までの短い間での出来事を思い出そうとしていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。