こうして、月のお悩み相談コーナーが幕を開けることになった。相談人は黒沢ルビィである。
「実はね・・・」
と、ルビィ、この言葉を言うと続けてルビィが抱える悩み事を伝えた。
「実はね、ルビィにとって今もお姉ちゃん(ダイヤ)のことはとても大事だと思っているんだ。ルビィ、ずっとお姉ちゃんに頼っていきたい、お姉ちゃんなしでは生きていけない。だから、ずっとお姉ちゃんのそばにいる、ルビィ、そう思っているんだ」
が、これを聞いた月、あることを思う。
(うん、僕、知っていた。だって、見ているだけで、ルビィちゃん、お姉ちゃんであるダイヤさんにべったりだったもんね。だから、僕、ルビィちゃんにあんなことを仕掛けたんだよ)
そうである。月がルビィの心が折れるくらい迫ったのはルビィの姉ダイヤ依存を解消せるのも理由の一つだった。なお、ルビィのダイヤ依存はルビィの行動から簡単に推測できるものである。また、月はヴェネチアからフィレンツェに移動中、ルビィの会話などでそのことをすでに把握済みだった。
そんな月の心からのツッコミなんて知る由もなく、ルビィの話は続く。
「でもね、その一方で、鞠莉‘sママさんが鞠莉ちゃんの自由を奪おうとしている、束縛しようとしているのと同じように、ルビィもお姉ちゃんの自由を奪おうとしている、そん考えてしまうんだ」
と、ここでも月からの心のツッコミ。
(うん、それも知っていた。ルビィちゃん、知らないうちに自分の考えていることが行動として表れてしまうんだよね)
ずばりそうである。これについてもルビィがフィレンツェの一件以来ダイヤと行動しているとき、ダイヤに近づこうと思ったらなぜか離れるなどルビィの態度でルビィの考えが如実に現れていた。と、いうわけで、ルビィ、いわずもがら、自分の考えを隠すのがとても苦手ともいえた。
とはいえ、ルビィの告白はついに佳境を迎える。
「ルビィ、このままルビィの考えだけでずっとお姉ちゃんのこと、束縛していいのかな?どっちがいいの・・・」
このルビィの苦痛の叫びを聞いた月、ルビィの悩みについて考える。
(やっぱり僕がにらんでいた通りか~。ルビィちゃん、姉のダイヤさんのこれからについて結構悩んでいたんだね。僕はそのことはルビィちゃんの苦痛の叫びを聞く前から知っていたけど、ルビィちゃんからすれば、それは自分の根幹をも揺るがす問題かもしれないね。これからもダイヤさんを自分のものにしたルビィちゃん、その考え、もしかすると、僕の失敗から生まれた静真高校の部活動報告会でのライブの失敗、それにより不安・心配の海・沼の奥底に沈んでしまい、それは昔からあった姉ダイヤさんへの依存、それに回帰してしまったのが原因だったのかもね。けれど、それをルビィちゃんと同じく鞠莉ちゃんを束縛しようとしている鞠莉‘sママさんと重ね合わせてしまったんだね)
今ルビィのなかで起こっているルビィの姉ダイヤ依存、もとはといえば、月の願望、静真本校と浦の星分校の統合をいちはやくさせたい、それをするために、静真高校の部活動報告会、そこで行った千歌たち新生Aqoursのライブ、その失敗が発端だった。ダイヤたち3年生3人がいないことにより不安・心配の海・沼陥った千歌たち新生Aqours6人、そのなかでもルビィの落ち込みぶりは激しく、それが姉であるダイヤ依存に帰依してしまったのだ。が、フィレンツェの鞠莉‘sママとの一件以来、ルビィは姉ダイヤ依存を続けるべきか悩むようになった。それが今のルビィの現状、とてもあやふやすぎる状況を作ってしまったのだ。が、月は自分の手でそのルビィを変えようとしている。そのために今回のことを押し通したのだ。
そして、その舞台が幕を開けた。
(ルビィちゃん、待っててね。僕がルビィちゃんを癒してあげるよ。いや、僕の手でルビィちゃんを新しいルビィちゃんへと変えてあげるからね)
その月の想いとともに月はルビィに対し優しい表情で、
「ルビィちゃん、ダイヤさんとの関係で悩んでいたんだね」
と、ルビィを諫めるように言うとともにルビィの頭をなでる。
そして、月はルビィに対しルビィにとって意外なこと、いや、月が何度もフラッシュバックを起こしながらも思い出すことができなかったがヴェネチアからフィレンツェへの移動中に起きた曜との会話で思い出したことを語り始める。
「実はね、僕もルビィちゃんと同じ経験をしたことがあるんだ。それはね、曜ちゃんのことなんだけどね・・・」
これにはルビィ、
(えっ、本当に本当!!月ちゃん、ルビィと同じ状況に陥ったの!!それも曜ちゃんと・・・)
と、びっくりしてしまう。あの誰とでも明るい表情で接する曜とその親友の月の間でルビィと同じ状況に陥ったことについて信じられなかったからだった。そのためか、ルビィ、
「えっ、月ちゃんと曜ちゃんが・・・:
と、きょとんとした表情で言ってしまう。
そんなルビィの言葉を受けてか、月は静かに月と曜とのあいだで起きたことを語り始める。
「僕はイタリアから沼津に・・・」
まず語ったのは、月がイタリアから沼津に帰ってきたとき、一番最初かつ同年代で唯一の友達が曜であり、その曜とたくさん遊んだこと、曜を通じてたくさんの友達ができたこと、そして、千歌たちと遊ぶ時や高飛び込みの練習の時以外はずっと曜と一緒だったため、月としては双子・姉妹同士と思っており、それがずっと続くと小・中のときはそう思っていたことだった。で、この話を聞いたルビィ、すぐに、
(月ちゃんと曜ちゃん、まるでルビィとお姉ちゃんとの関係と一緒だ・・・)
と、思ってしまう。姉妹という関係であるルビィとダイヤと同様に曜も月と同じ関係であるとルビィは悟ったのである。
が、これまで明るく話していた月がいきなり暗い表情になってしまう。これには、ルビィ、
(あれっ、月ちゃん、どうしたのかな?あんなに明るく話していたのに、なんで、いきなり暗い表情をしたのかな?)
と、疑問に思う。一瞬戸惑うルビィ。これには、月、
(ルビィちゃん、ここからだよ!!僕はルビィちゃんと同じ状況に陥ったこと、それを今から伝えるよ)
と思うと、月はルビィに自分に起きたことを話し始めた。
「でもね・・・」
これには、ルビィ、
「でも・・・」
と、つばを飲み込む。月はそのルビィの様子を見てためてから言った。
「でもね、別れのときはついに来たんだ・・・」
この言葉にルビィはただ、
「別れ・・・」
と、言葉を窮してしまう。まさか、ここにきて「別れ」という言葉が出てくるとは・・・。ルビィにはそれについて想像すらできなかった。
そして、月はまじめにこう話した。
「僕と曜ちゃんが高校に進学するとき、曜ちゃん、僕と同じ静真高校、じゃなくて、千歌ちゃんが入学する浦の星女学院に入学してしまったんだ。曜ちゃん、僕じゃなくて千歌ちゃんを選んじゃったの!!」
この言葉に、ルビィ、
(えっ、なんで!!曜ちゃん、月ちゃんじゃなくて千歌ちゃんを選んだの?)
と、少し困惑してしまう。そのためか、
「な、なんで・・・」
と、また言葉に窮してしまう。
その困惑するルビィの姿を見てか、月はこのときの曜の状況を話した。曜、実は静真高校の推薦入学をこのときに決めていたのだった。高飛び込みの選手としては世界大会でメダルが獲れるほどの実力があるといわれており、そのために部活動が盛んでその実力を伸ばすことができる静真高校に入学したほうがいい、静真に入学して世界に羽ばたいてほしい、と、月を含めてまわりからそう思われていたのである。
が、月はすぐに、
「でもね・・・」
という言葉のあと、このときの曜が行ったことを語り始めた。
「でもね、曜ちゃんはその推薦を蹴って浦の星に入学したんだ。で、その理由を曜ちゃんに聞いたんだ。そしたら、曜ちゃん、こう答えたんだ、「だって、千歌ちゃんが好きだから」こうして、曜ちゃんは静真高校よりもっと弱小の水泳部がある浦の星に入学していった」
この言葉のあと、月は「千歌ちゃんが好き」といった理由だけでせっかくのチャンスを蹴った曜を本気で怒ったこと、でお、曜は怒る月に対して笑いながらこたえたことをルビィい語った。このとき、ルビィ、
(えっ、曜ちゃん、そんな将来有望な選手だったの!!せっかくその選手になれるのに、なんで千歌ちゃんを選んだの!!)
と、今の曜から想像できないことを聞いてびっくりするとともにそれを蹴ってまで千歌を選んだことに困惑してしまう。そのためか、
「曜ちゃん、なんて答えたの?」
と、月に聞いてしまう。
これを聞いた月は曜のこのときの想いを語った。
「「だって、千歌ちゃんが入学する浦の星って生徒数が少ないし、千歌ちゃんにとって一緒に入学する友達などはむっちゃんたちか先輩で浦の星に通っている幼馴染の果南ちゃんしかいないんだもん。なら、私自らすすんで千歌ちゃんと一緒に入学して、私と一緒に友達、いっぱい、い~ぱい、作っていこう、千歌ちゃんたちと一緒にね」って」
この曜の想いを聞いたルビィ、
(曜ちゃんって千歌ちゃんのことを考えて、自分の輝かしい未来、約束された未来すら捨ててまで浦の星に入学したんだ・・・)
と、曜に対して驚いてしまっていた。
そんな驚いているルビィに対し、月はこのときの自分の気落ちを語った。それまでは姉妹のように、双子のようにいた曜と一緒にいられる、そう思っていたこと、でも、曜はそんな月とは違い、もう一人の友達である千歌が困っているから、千歌のためになりたい、その想いだけで、約束された未来すら捨ててまで浦の星に入学したことを。
そして、月はこう訴えた。
「僕から飛び立とうとしていたんだ、曜ちゃんは!!だから、僕は驚愕した、もう曜ちゃんは僕の曜ちゃんじゃない、曜ちゃんは僕を見捨てたんだ、そう思ってしまった」
これを聞いた瞬間、ルビィ、
(えっ、曜ちゃんってそんなに冷徹だったの!?いつも笑っている曜ちゃんから考えられないよ!!)
と、月が語る曜の姿にびっくりいする。が、このとき、月、
(たしかにあのときは僕はルビィちゃんと同じことを思ってしまったよ。でもね、このあとの言葉に救われたんだ)
と、思うと、その話の続きをルビィに語った。
「でね、驚愕している僕に向かって、曜ちゃん、僕のことを思って次の言葉を僕に送ったんだ、「でね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでもずっと永遠に大切にしたい友達なんだ」って」
これを聞いたルビィ、
(えっ、別れるのにずっと友達!!)
と、これまたびっくりしてしまう。月もこの曜の言葉を聞いて「曜から見捨てられた」と思っていたのにその曜から「ずっと友達」という言葉がでてきたことにびっくりしたようだった。
そして、月の曜との話は佳境を迎える。
「で、僕、曜ちゃんに「なぜ?」って聞いたらね、曜ちゃん、笑いながらこう答えたんだ、「だって、私にとって月ちゃんは昔からいつも遊んでくれた、千歌ちゃんみたいにずっと遊んでくれた、だから、私から友達の縁を切ることなんて絶対にないよ!!だって、昔も今も、そして、これからも、私、月ちゃんのこと、大大大大大親友、なんだからね、千歌ちゃんと同じくらいにね!!」これで、僕、わかったんだ、僕と曜ちゃんとの縁はこれからもずっと続く、曜ちゃんとのキズナは切れるわけじゃない、けれど、別れはいつかはきっとくる、それなら、ずっと曜ちゃんを僕のものにする、べっとりする関係に終止符を打とう、曜ちゃんを温かく送ろう、と」
このときの月、
(僕、このとき、曜ちゃんのあの言葉にすべてが救われたと思ったよ。だって、あのとき、あの言葉が曜ちゃんから聞いていなければ、きっと、曜ちゃんとはずっと縁が切れたままだったからね。今の僕と曜ちゃんがあるのもあの曜ちゃんの言葉があったからだよ。サンキューね、曜ちゃん!!そして、あの言葉により僕は「別れ」に対する考え方を変えたんだ、「別れとはすべての縁が、すべてのものがなくなる、そんなもの」という考えから次のようにね・・・)
と、思い、その改めた考えの言葉でもって曜との昔話を締めることにした。
「で、このときの経験からある考えにたどり着いたんだ。それは「未来というのは自分で自由なツバサでもって決めるものなんだ。それは、たとえ誰であっても拘束してはいけない、それくらい大切なものだって。そして、たとえ、自分のもとから旅立ったとしても、今までに培われた僕と旅立った者とのキズナ、縁は決して切れない」って」
この月の言葉を聞いたルビィ、であったが・・・、
(これって、今のルビィとお姉ちゃんにもいえることじゃないかな?)
と、自分が今置かれた状況と月と曜が別れたときの話が似ていることに気づく。しかし・・・、
(お姉ちゃんは今、ルビィのもとから旅立とうとしている。けれど、ルビィはただルビィのためだけにお姉ちゃんを放そうとしない、お姉ちゃんを拘束している。でも、そうしたら、お姉ちゃん、未来というこれからお姉ちゃんが自由なツバサで自由に飛び立つ、そんなことができなくなる!!それを、ルビィはしたくない!!でも・・・)
と、ルビィのもとから自由なツバサで自由に飛び立とうとしている姉ダイヤ、それについて自分のためだけにその姉ダイヤを拘束しようとしている、けれど、そんなことをしたくない、そんな二律背反な考えに苦しむルビィ、それはまるで別れによって姉ダイヤとこれまでつながっていたキズナが別れによって切れるのを嫌がっているルビィの姿を、けれど、そんなことをしてまで自由なツバサで大空に飛び立とうとしているダイヤを拘束したくない、そんなルビィの姿、2つの姿のあいだでルビィは苦しんでいるかのようだった。そのためか、ルビィ、おもわす、
「でも、お姉ちゃんとの縁を・・・」
と、つい本音を言ってしまう。
が、これを月は聞き逃さなかった。月、ルビィの本音を言葉を聞くと、すぐに、
(あっ、ルビィちゃん、とても大切なことを忘れているよ。僕、これは大にしていいたいよ!!別れによって切れるキズナなんてないって!!だからね、ルビィちゃん、今から僕が言うことをちゃんと聞いてね!!)
と、ルビィを見て熱く想うと、ルビィに対し寄り添うようにこうアドバイスした。
「ルビィちゃん、ちゃんと聞いて!!たしかにダイヤさんとは別れることになる。でも、ダイヤさんとルビィちゃん、姉妹というキズナ、縁はいつまでも切れないよ!!血を分けた姉妹、これって、僕と曜ちゃん以上の強いキズナで結ばれているんだよ!!それを忘れないで、ルビィちゃん!!」
この月のアドバイスにルビィ、
(ルビィとお姉ちゃんの姉妹のキズナ、それはずっと続く・・・。それはたとえお姉ちゃんがルビィのもとから離れたとしてもずっと続く・・・、言われてみればそうかもしれない・・・)
と、月が言いたいことに気づく。そうである。月がルビィに伝えたかったこと、それはたとえ別れることになっても、これまで培われたキズナ、縁は切れることはない、そのことだった。ルビィをはじめ千歌たち新生Aqours6人は静真の部活動報告会でのライブでダイヤたち3年生3人がいないことで不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった。このとき、千歌たち新生Aqours6人は、
「3年生がいない=3年生とのキズナなどがなくなった=0(ゼロ)に戻った」
と、錯覚していたのかもしれない。これにより、千歌たち新生Aqours6人は不安・心配の深き海・沼の度合いを大きくしてしまったのかもしれない。特にルビィはもっとも近くにいた、そして、依存していた、姉ダイヤの存在が急になくなったことで6人のなかでは一番その度合いが大きかったのだ。これが、イタリア・ヴェネチアでのダイヤたちとの邂逅により姉ダイヤなしでは生きられない、ずっとダイヤに依存したいという考えへとつながってしまうのも、フィレンツェでの鞠莉と鞠莉‘sママとの出来事でその考えが鞠莉‘sママがしようとしていること、鞠莉を拘束しようとしていることと同じであると気づいてしまい、そんなことをしたくない、が、ずっと依存していないと生きていけない、そんなジレンマに陥ってしまったのだ。それは、裏を返せば、ルビィと姉ダイヤのキズナが別れにより切れてしまう、それにより、ルビィは姉ダイヤとの関係がなくなってしまう、結果、ルビィは生きていくことができない、それを心配したルビィ、それを阻止するために姉ダイヤを拘束したい、そんな構図が生まれたがゆえのルビィのジレンマだったのかもしれない。けれど、月のアドバイス「たとえ別れても、姉ダイヤとのキズナはいつまでも切れることはない」、つまり、ルビィと姉ダイヤとの姉妹というキズナは別れてもずっと続く、きれることなんてない、その言葉に、別れることでキズナが切れてしまう、そんな心配をしているルビィを癒すことにつながった。そして、ルビィのジレンマすらも解消、いや、ルビィを前向きにしてくれる、そんなカンフル剤になった。
そして、ルビィはこう思えるようになる。
(そう考えると、なんか、ルビィ、なんかわかった気がする!!ルビィ、なんか頭でもやもやしていたものが吹き飛んだ気がする!!ルビィ、なんかガンバルビィ、できる気がしてきたよ!!)
その思いとともに、ルビィのこれまで暗かった表情が少しずつではあるが崩れていく、そんな感じがしてきた。これには、月、
(あっ、なんかルビィちゃんの中でなにかが変わり始めようとしている、そんな気がしてきたよ!!ルビィちゃん、あともう少しだよ!!ガンバ!!)
と、少しずつではあるが生まれ変わろうとしているルビィの姿を見てルビィを応援する。
その月の応援からか、それとも、自分から生まれ変わろうとしているのか、ルビィの心の中である思いがルビィの中を駆け巡ろうとしていた。
(お姉ちゃんとの縁、キズナは一生残る!!たとえなにがあってもそれは切れない!!ルビィがこれまで忘れていた大事なこと、それは、たとえお姉ちゃんが離れていても、お姉ちゃんとの縁、キズナはずっと続く!!でも、お姉ちゃんとはずっと一緒にいられるわけじゃない。ずっとルビィのそばにいるわけじゃない。いつかは別れのときが訪れてしまう。ルビィにとってそれが今じゃないかな)
このルビィの思いがこれまでのルビィ、いつも姉ダイヤに依存していた、今までのルビィからみたら想像がつかない、いや、なにか自分の殻を突き破ろうとしている、そんな感がしていた。いあや、ルビィからしたら、それがこれからの自分、新しい自分へと変わるトリガーだったのかもしれない。そのトリガーをついにルビィは自らの意思で引いたのだ。
そのトリガーを引いたルビィ、ついにある決意を固める。
(なら、ルビィ、決めたよ!!ルビィ、お姉ちゃんを温かく送ろう!!お姉ちゃんに、自分だけ、ルビィだけになっても強く生きていける、1人でも大丈夫なとこを見せて、お姉ちゃんが安心してルビィのところから飛び立てるようにしよう!!そして、お姉ちゃんが自由なツバサで大空に羽ばたかせる、そんなことができるようにしよう!!)
この瞬間、ルビィにある変化が現れる。崩れかけていた暗い表情が次々と崩れていった。だが、これは悪い意味で崩れていく、そんなものではなかった。崩れていくなかで現れていくものがあった。それは・・・、ルビィの明るい表情、いつものルビィの楽しい表情だった。いや、それだけではない。その表情のなかになにか力強いものが感じられた。それはこれまでのルビィには見られないものだった。それはなにか。それは、自身満ち溢れる、これから1人でもやっていける、そう確信している、ルビィの信念だった。このときのルビィだが、あとでこんなことを言っている。
「ルビィね、このとき、自分の体のなかにあった重たいなにかが次々と剥がれていく、そんな気がしたんだよ」
ルビィにとってみれば、このときこそ新しい自分へのメタモルフォーゼ(変化)だったと自分でも気づいていたのかもしれない。それくらいルビィにとって新しい自分という新たなる体を手に入れた、そんな感じをしていたのかもしれない。
そのルビィの変化をじかに横で見ていた月、だったが、その変化に、
(ついにルビィちゃんが新しく生まれ変わったよ!!僕、とても感動したよ!!1人の少女が1人の女性として生まれ変わる瞬間に立ち会えたんだからね!!でも、これでルビィちゃんは今までの甘えるだけのルビィちゃんじゃない!!これからは1人の女性として力強く生きることができる、そんなルビィちゃんになったんだから!!)
と、新しく生まれ変わったルビィを見て感動していた。
そして、月はそんなルビィに対し、あるお願いをした。
「じゃ、ルビィちゃん、もう一回言うね。ルビィちゃん、「真実の口」に手を入れてみて!!」
これには、ルビィ、元気よく、
「はいっ!!」
と、「真実の口」の口の部分に自分の手を入れる。そして、その口から手を抜くルビィ。すると、ルビィの手は切れていなかった。ただの迷信・・・であるが、それはルビィにとってみれば新しい自分に生まれ変わるための通過儀礼ともいえた。「真実の口」は偽りの心のある者は手を抜くときにその者の手首を切り落としてしまう、手をかみちぎられる、という言い伝えがある。ルビィの場合、これまでのルビィはいつも姉であるダイヤに守られていた、内気でもじもじだけしている、姉ダイヤがいないとなにもできない、なにもしない、そんな弱弱しい姿をしていた。が、それが月のアドバイスによりルビィは生まれ変わった。自分の意思で弱弱しい自分、姉ダイヤなしではなにもできない自分、そんな自分と決別することを決めたのである。それはまるで、これまでの自分、「これまでの弱い自分」、という偽りのルビィを「真実の口」がすべてかみ砕いた、ともいえた。そして、偽りのルビィをかみ砕いたあとに残ったもの、それは、とても強い意志。そう、ルビィは「真実の口」に手を入れるという通過儀礼により、「真実の口」でもかみ砕くことができない、とても強い心、とても強い意志を手に入れることができたのである。