このダイヤの疑問は夕食後のシャワーのときも続いていた。ルビィと一緒にシャワーを浴びているとき、ダイヤはふとルビィの方を見る。
(なんであんな弱弱しいルビィが変わったのですか?私の知らないところで何かあったのですか?)
と、ときどき一緒に浴びているルビィのほうを見るも、そのルビィはというと・・・。
「?」
と、ルビィ、首をかしげてしまう。これには、ダイヤ、
(なっ、なにかの間違いでしょう・・・)
と、なにかの間違いではないかと思ってしまった。
が、そのダイヤの疑問はこのあと確信へと変わる。シャワーを浴びた後、ダイヤはルビィに対し、
「さあ、ルビィ、髪をタオルで拭いて差し上げますわよ」
と、ルビィにいつもの通り髪を拭こうとするも、ルビィ、すぐに、
「お姉ちゃん、ごめんね。今日はルビィが、髪、拭くから・・・」
と、ダイヤを拒絶した。これには、ダイヤ、ルビィが拒絶したのははじめて、ということもあり驚いてしまう。
それでもダイヤはルビィに「心配しないで」と言ってはルビィの髪を拭いてあげると言うも、ルビィ、
「お姉ちゃん、本当にごめんね。でも、これからは、ルビィ、自分で髪を拭くことを決めの」
と、これまでのルビィ、ダイヤ一筋だったルビィ、とは違った答えをする。これには、ダイヤ、少し混乱してしまう。
が、ダイヤ、心を落ち着かせ、もう一度ルビィのほうを見る。すると、ルビィの目つきがいつも以上に真剣だった。ダイヤ、意を決してルビィにある質問をした。
「今日に限ってどうして(髪を)拭かせてくれなのですか?」
このダイヤの質問にルビィは自分の髪を拭くのを断った理由を姉ダイヤが知りたいことに気づく。そして、これこそ自分の気持ちを姉ダイヤに伝えるいい機会、ということで、
(それなら、ルビィの決意、お姉ちゃんに伝えよう!!)
と、自分の決意をダイヤに伝えることを決める。そして、すぐにベッドの上に正座をし、ダイヤの顔を真剣にまじめに見つめる。ダイヤもこのルビィの真剣さに答えるため、自らもベッドの上に正座した。
ベッドの上で正座する2人。まず最初に口を開いたのはルビィだった。
「ルビィ、これまでお姉ちゃんにべったり、いつも甘えていた。ずっとお姉ちゃんがいないとなにもできない子だった。けれど、これからはルビィ1人でやっていく!!お姉ちゃんがいなくても大丈夫!!やっていける!!ルビィはそう決めたの!!」
このルビィの決意にダイヤは「ルビィから離れることなくずっと一緒」と思い、
「甘えていいんだよ!!さあ、我慢しないでこっちにきたら?」
と、ルビィに優しく話しかけるもルビィは意外なことを言う。
「ルビィ、これからはお姉ちゃんがいなくてもやっていけるよ!!」
そして、これまでルビィが姉ダイヤをがんじがらめにしていたこと、けれど、これからはルビィという鎖を解き放って自由なツバサで羽ばたいてほしいことを言うと、
「お姉ちゃんに甘えていた昔のルビィは今日で卒業。これからは一人前の女の子として、ガンバルビィ、したいの」
と、自分が今思っていることをダイヤに告白した。これには、ダイヤ、ルビィ1人で頑張るなんて今までのルビィからしたらいまだに信じられず、これまで自分を頼っていた妹ルビィがこれからは1人でがんばることについてももっと自分を頼ってほしい、しかし、自分の意思でダイヤから離れてしまうことになんか寂しさを感じていた。
そして、ダイヤはルビィにこう言った。
「でも、私としてはちょっと寂しいですわ、ルビィが私から離れようとしていることに・・・」
が、このとき、ルビィ、
(お姉ちゃん、たしかにルビィはお姉ちゃんから離れるけど、とても大切なことを忘れているよ!!だから、ここでルビィが言うね、とても大切なことを・・・)
と思うと、ダイヤに向かって、
「たとえこれからお姉ちゃんがいなくても一人でやっていく、ガンバルビィ、できるって。でもね、これだけは忘れたくないの・・・」
という前置きのあと、元気にこう言った。
「それはね、お姉ちゃんとの想い出!!お姉ちゃんとの想い!!これまでやってきたことすべて!!それで得たお姉ちゃんとのキズナ!!」
そして、ルビィ、それらはすべてルビィにとって大切なものであることを伝えた上で、
「その大切なものをすべてルビィの胸のなかに抱いて、これからはルビィ1人でやっていく!!だから、ルビィ、お姉ちゃんから卒業する。でもね、卒業するとしても、お姉ちゃんとの想い出、想い、キズナはルビィのなかにずっと残っていく!!」
と、ダイヤにそう告げた。
これを聞いたダイヤ、あることに気づく。
(ルビィが私から卒業する、これって私もルビィから卒業することになるかもしれませんね)
そう、ルビィが姉ダイヤを頼ろうとすると同様にダイヤも妹ルビィを頼ろうとしていたのだ。これまではルビィ1人でできることでもすぐにダイヤはルビィを助けた。これがルビィのダイヤ依存になってしまった理由。が、ルビィは今姉ダイヤから旅立とうとしている。これをみたダイヤはついに決心する。なんと、ルビィに、いや、自分自身に、
「ブ、ブー、ですわ!!」
をしたのだ。これにはルビィもダイヤに対して心配そうにするも、ダイヤは自分に「ブ、ブー」をした理由を語った。
「ルビィが私に依存していたのと同じように私もルビィに依存していたからですわ」
そして、ルビィ1人でもできることも自分のために勝手に代わりに動いていたこと、それはルビィをダイヤを頼るのと同様に自分もルビィに頼っていたこと、自分がルビィを思い通りに動かしていたこと、けれど、ルビィの決意で自分もそれに気づいたことを言うと、
「私も決めましたわ、今日をもって私から卒業していくルビィと同様に、私も今日をもってルビィから卒業する」
と、ルビィに自分の決意を語った。
これには、ルビィ、困惑。「姉と妹の関係は・・・」と口で言うも、ダイヤはそんなルビィにこう答えた。
「心配しなくてもよろしくてよ。私との想い出、想い、キズナがルビィの心のなかにあると同様に、私にも、ルビィの想い出、想い、キズナは私の心の中に深く刻み込まれておりますわ。それを大切にして自由なツバサで飛び立ちますわ!!」
そして、ダイヤはルビィの頭の上に自分の手をのせてこう言った。
「今のルビィは昔のルビィとは違うこと、いや、今や、ルビィは未来のAqoursをしょって立つ存在に成長したことを」
このダイヤの言葉に対し、ルビィ、ダイヤに抱き着く。「昔のルビィに戻った」と、ダイヤが言うと、ルビィは謝ってしまった。
そんなルビィに対し、ダイヤはルビィにある約束事を言った。それは・・・。
「ルビィ自ら言ったこと、責任をもってちゃんと行動で示しなさい!!」
これには、ルビィも自信をもって元気よく答えた。
「はい、わかっています、お姉ちゃん!!」
そして、ルビィを寝しつけた後、ダイヤは1人バルコニーにでて夜の星を眺めていた。そんななかで、
(でも、ルビィ、この旅を通じてとても成長したんですね。お姉ちゃんとしてとても嬉しいことです!!)
と、ダイヤはルビィの成長ぶりにとても感心していた。まさか、あのルビィが一昔前の弱弱しい姿とは比べ物にならないくらい凛々しい姿を姉ダイヤの前で見せてくれると姉としてはとてもうれしいののだった。
そして、ダイヤ、ルビィをここまで成長させた月についてもある思いでいた。
(そして、月さん、あなたのおかげでルビィは大きく成長することができました。本当にありがとうございます)
ルビィを大きく成長させた月に対する感謝の心を持ったダイヤ、であったが、その一方でこんな思いも持っていた。
(でも、月さん、あまりに変わりすぎですよ・・・)
そう、月が根回ししているとき、ダイヤと約束したこと、「ルビィを変える」、そのことについて、自分の予想の斜め上以上にルビィが成長したことに少し苦慮もしていた。
一方、そのころ、ホテルの入り口では・・・。
「なんか、ごめんね・・・」
と、果南がホテルに入ろうとする千歌と曜に突然謝ると続けて、
「鞠莉が急にあんなこと(鞠莉‘sママの前でライブを行うこと)を言いだすからだよ!!」
と、果南が言うと、果南の横にいた鞠莉から、
「SELL WORDにBUY WORDで・・・」
と、言い訳を言ってしまう。どうやら、鞠莉、「売り言葉に買い言葉で・・・」といいたそうだっだようだ。
そして、果南は千歌と曜にあることを言いだす。
「もし、抵抗があるようだったら、私たち3人だけでなんとかする方法のあるから、千歌たちは・・・」
しかし、このとき、千歌、
(果南ちゃん、私たちのことを心配してくれてありがとう。でも、今の私たちにとって、これこそチャンス、だって思っているんだよ!!)
と、思うと、
「ううん、いいの」
という言葉を発する。これに呼応してか、曜、
「私たちも嬉しいというか・・・」
と言ってしまう。
そして、千歌と曜は果南と鞠莉にある真実を話す。
「実はね・・・」
その言葉のあとに言った言葉とは・・・。
「私たちを含めてルビィちゃんたちも不安だったと思うし、みんなちょっと悩んでいたんだよね、新しいAqoursってなんだろうって」
新しいAqours・・・。千歌たち新生Aqours6人は当初なにも考えていなかったのかもしれない。1・2年生6人で新生Aqoursを始める、最初はただそれだけしか考えていなかったのかもしれない。しかし、月と木松悪斗の争いに巻き込まれる形で最初に行ったライブ、分校というとても理不尽ともいえる、いや、木松悪斗にとってとても都合のいい、そんな環境に置かれた浦の星の生徒のために行ったライブ、木松悪斗とその娘の旺夏のたくらみ、そして、鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感により失敗に終わり、千歌たち6人は不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった。だが、この旅を通じてルビィは成長した、月によって成長した。しかも、ルビィは成長したことにより新生Aqoursメンバー6人のなかで一番その答えをしることができた。が、ほかのメンバーはいまだにその答えをだすことができていなかった。
「自分たちで見つけないといけないのはわかっているけど、なかなか・・・」
この千歌の言葉、裏では
(聖良さんは鞠莉ちゃんたち3年生と一度会って話せばいいって言ったけど、鞠莉ちゃんたちと会ってもいまだにわからないよ。いったいどうすれば・・・)
と、悩んでいた。そのためか、
「果南ちゃんはどう思う?」
と、果南に「新しいAqoursとはなにか?」を直接聞いてみる。
が、とうの果南はというと・・・、
(千歌、それは自分たちで見つけるしかないと思うよ。だって、千歌たち新生Aqoursは、私たち、私、ダイヤ、鞠莉はもういない。部外者である私たちが言うのはちょっとお門違いだよ!!)
という気持ちが強く、果南、
「千歌の言う通りだよ!!千歌たちが見つけるしかない」
と千歌に言うと、鞠莉も、
「そうだね。私たちの意見が入ったら意味ないもん!!」
と、果南に同意する。鞠莉も果南と同じ考えだったようだ。これには淡い期待をしていた千歌と曜はがっかり・・・。
でも、このとき、果南、
(たしかに私たちがその答えを教えることはできないよ。でも、そのヒントを与えることはできるよ。そのヒントはね・・・)
と思うと、すぐに立ち上がり千歌の前に立つ。そして、
「でも、でも、気持ちはずっとここにあるよ!!」
と言うと千歌の胸のあたりを突っついた。さらに、
「鞠莉の気持ち、ダイヤの気持ち、私の気持ちは必ずずっと・・・」
という言葉を千歌に送る。このとき、果南、
(千歌、私の言葉に気づいてね!!たとえどんなことがあっても私たちの気持ちはずっと千歌たちの心の中に残るものなんだって!!私たちから言えるのはそれだけ。だけど、このヒント、このヒントから千歌たちはきっと答えを導くことができる、私はそう思っているよ!!)
と思っての言葉だった。
そして、この果南の言葉に、千歌、
(えっ、ずっと・・・)
と、果南の言葉を反芻すると、それが、
「ずっと・・・」
という言葉となって表れてしまう。これには果南も「ずっと・・・」という言葉を千歌と同じく反芻する。この言葉の反芻に、千歌、
(私の胸を突っついて果南ちゃんが言った言葉、「ずっと・・・」。ずっと・・・、ずっと・・・。あっ、それって、「どんなことがあっても鞠莉ちゃんたちの気持ちは私たちの心の中にずっと残っていく」・・・のことかな?それって・・・、それって・・・、あっ、もしかして、それが私たちにとって大切なこと、なんじゃないかな?そうだよ!!それこそとても大切なものだよ!!)
と、とても大切なことに気づいたのか、とても明るい表情をみせるようになった。そして、曜もそれに気づいたみたいだった。
その千歌の明るい表情を見てか、果南、安心したのか、
「じゃ、おやすみ!!」
と言っては鞠莉と連れてその場をあとにした。
その後、千歌は座っていたソファーから立ち上がると、曜の手を取り、
「なんか、ちょっとみえた、みえた気がする!!」
と言っては曜と一緒に笑いあっていた・・・。
が、このとき、千歌と曜、2人がいるロビーの物陰にある少女が隠れていた。千歌と曜は気づいてなかったが、その隠れていた少女は笑いあう千歌と曜を見てこう思っていた。
(こりゃ、一足遅かったよ!!まさか、鞠莉ちゃんたちに先を越されるなんて!!本当だったら僕がビシッと決めるつもりだったのに~!!)
そう、月だった。月、どうやらルビィが大きく成長したことで新しいルビィに生まれ変わったように今度は千歌と曜に狙いを定めてルビィと同じことをしようと考えてみたいだった。が、鞠莉と果南に先を越されたことでその計画もおじゃんとなってしまったのだ。
とても悔しがる月・・・ではなかった。むしろ・・・、
(でも、本当ならそれがいい方法かもしれないね!!だって、本当は自分たちでその答えを探すべきだから!!)
と、ちょっと嬉しくなっていた。ルビィにとって月の策略とはいえ月の進言で生まれ変わったのであるが、本来なら自分たちで答えを探すほうがよかったりする。なので、月にとってみれば、今回はそれでよかった、と思っていたのである。
と、いうわけで、お役御免、と思った月、その場を離れようとした、そのとき・・・、
「あの~、月ちゃん、ちょっといいですか?」
と、月、凛々しい声をした少女に呼び止められる。その少女はバスローブ姿だったが、黒髪ストレートで、THE 大和なでしこ、ともとれる容姿をしていた。さらに、
「まさか、ルビィちゃんをあんな力強い少女に生まれ変わらせるなんてね!!まさしく、静真の才女、だね!!」
と、こちらは青い髪のポニーテールをなびかせる体つきもいい長身の少女、さらに、
「なんかマリーたちのお株をスティール(奪う)なんて、静真の生徒会長だけをしているのがとてもおしいです~!!」
と、こちらも金髪の外国人みたいな少女、その3人が月を取り囲んだ。
これを見た、月、おもわずこう言って声をわずらわせた。
「ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、なんでしょうか・・・」
鞠莉たち3年生3人は月を連れて別の階のロビーに移動した。そして、そのロビーに着くなりダイヤが開口一番この言葉を言い放つ。
「月さん、よくもルビィをあんな姿にしましたわね!!」
このダイヤの言葉を聞いた、月、
(えっ、僕、ルビィちゃんに悪いことをしちゃったの!!僕、曜ちゃんたち新生Aqoursのためにやったことなのに、どうして、どうして・・・)
と、戸惑いをみせると、
「あっ、あの・・・」
と、言葉に窮してしまう。
この月の表情を見た、果南、すぐに、
「ダイヤ、月ちゃんを脅しているようにみえるよ」
と、ダイヤに指摘。これには、ダイヤ、
「ご、ごめんなさい、月さん・・・」
と、月に謝る。これには、月、
「ど、どうも・・・」
と、こちらもたどたどしてなってしまう。
月とダイヤ、2人のあいだに気まずくなるような雰囲気が流れていた・・・のだが、こんな雰囲気に1人の少女が嫌気をさしてしまう。
「ダイヤ、月、なんでグローリー(暗い)のですか!!もっとブライト(明るく)に!!」
これを聞いた月とダイヤ、
「鞠莉さん・・・」(ダイヤ)
「鞠莉ちゃん・・・」(月)
と、2人とも鞠莉のほうを見る。鞠莉、どうやら2人の暗い雰囲気に嫌気をさしたのか、できる限り明るくふるまうように言ったのだ。そんな鞠莉に果南が援護射撃。
「ダイヤ、ここは月を脅かしにきたんじゃないんだよ!!」
これを聞いたダイヤ、
「ご、ごめんなさい・・・」
と、しゅんとなってしまった。
そんなダイヤだったが、
「それはそうと・・・」
と言ってはすぐにまじまなダイヤに戻ると、月に対しあることを言った。
「月さん、ルビィを成長させてくれて本当にありがとうございます。もうこれでルビィは私なしで生きていくことができるでしょう。本当にありがとうございます」
このダイヤのいきなりのお礼に、月、
「えっ、ダイヤさん、そんなにかしこまないでください!!」
と、お礼を言うダイヤに頭を下げないようにお願いする。それでも、ダイヤ、
「それでも私はそんな月さんにお礼を言いたいのです!!」
と、月にお礼を言いたい、そんな気持ちを示していた。なんに対してもまじめ、それでいて網元の娘として律義に筋を通す、そんなダイヤの姿がそこにはあった。が、それがある意味悪い方向へと進んでしまった。もちろん、月も、
「ダイヤさん・・・、そこまで頭を下げなくても・・・」
と、こちらもダイヤに負けじとお願いをする。
そんなダイヤと月、またもやただならぬ雰囲気、というか、堂々巡り・・・、になるも、果南、これではいけないと、ダイヤをすぐフォロー。
「月ちゃん、本当にありがとうね!!ルビィちゃん、いつもお姉ちゃんであるダイヤにべったりだったんだよ。それが月ちゃんの頑張りでダイヤなしでも頑張れるルビィちゃんになったんだもの!!本当、月ちゃんって人を導くことがとてもうまいね!!」
この果南の言葉を聞いた月、
「あっ・・・、どうも・・・」
と、口を濁す。その月、
(え~と、どちらかというか・・・ショック療法と申しますか・・・脅しというか・・・)
と、おどおどしてしまう。たしかにルビィを生まれ変わらせることができたが、その方法、どちらかというと・・・ショック療法に近いもの・・・ということもあり、他人から褒めてもらえる・・・ということには気を引けてしまっていた。
そんな月に対し、鞠莉がある話を始める。
「そんな、人を導くことが得意な月にお願いがありま~す!!」
そして、鞠莉はとても重要なことを言いだした。
「月、あなた、イタリアで行うAqoursのライブ、ヘルプ、してくださ~い!!」
これを聞いた、月、思わず、
「えっ!!」
と、驚いてしまう。たしかに月もイタリアで行うAqoursのライブの手伝いをするつもりだった。ただ、自分がするのはライブのときのビデオカメラでの撮影だけ、そう月は思っていたのだ。が、そんな月に思いもかけないことを鞠莉は言いだした。
「そのヘルプですが~、ライブの撮影だけでなく、Aqoursのライブを行うためのプリペア(下準備)をお願いしま~す!!」
これを聞いた、月、
(えっ、僕がAqoursのライブの下準備!!僕、やったことないよ~!!)
と、びっくりしてしまう。たしかにライブの下準備は必要である。しかし、それはAqoursのみんなかいつも手伝ってくれるよいむつコンビが行うこと。その下準備をしたことがない自分が行うなんて本当にできるか心配だった。
それでも、月は鞠莉にあることを尋ねる。
「あの~、鞠莉ちゃん、その下準備って・・・?」
それを聞いた鞠莉、すぐに答える。
「それはね・・・、一言で言ったら、ディレクター、かもね!!」
ディレクター、この言葉を聞いた、月、
「ディレクター?」
と、なんのことだかわからないのか、すぐに鞠莉に尋ねる。すると、鞠莉、
「そう、ディレクター、だよ!!」
と、その言葉だけ言う。だけど、ただそれだけ言ってもなんのことだかわからなかった月。
その月のためか、ダイヤ、鞠莉に対し、
「鞠莉さん、ただ、ディレクター、だけ言っても月さんにはわからないでしょ!!」
と、鞠莉に注意すると、ダイヤは鞠莉の言葉について説明し始めた。
「ディレクターって言うのは、文字通り、Aqoursの縁の下の力持ち、というものでしょう」
そして、ダイヤはそのディレクターの主な仕事を言っていく。Aqoursの練習プランの策定、ライブ会場の使用許諾申請、必要なものの発注、などなど。小さいこともあるが、それらはすべてとても重要であるとダイヤは念押しして伝えた。
そのダイヤの念押しのあと、果南はある事実を言いだす。
「で、このディレクター的な仕事、実は、私たち3年生がこれまでやってきたの。けれど、これからは私たちはいない。なら、千歌たちにやってもらう・・・といいたいのだけど、みんな今のことでいっぱいいっぱい。それに、たった6人しかいないから、これから先、ディレクター的な仕事ができるかどうか微妙・・・」
そう、Aqoursのディレクター的な仕事はダイヤたち3年生3人がやってきたのである。ダイヤと鞠莉はAqoursの対外的なことをしてきた。特にAqoursが9人になって初めてのライブとなった沼津の夏祭りにおいてはダイヤが全部対外とのやりとりを引き受けていたのである。そのあとは浦の星の理事長として鞠莉もダイヤの手助けをしつつ2人で対外との交渉をしていた、だけでなく、ラブライブ!冬季大会のホテルなどの手配、行程表の作成などもしていたのである。対して、果南はAqoursの内の部分、練習プランの作成、新しい練習方法の導入などを担当してきた。いわば、3年生3人が分担してAqoursのディレクター的な仕事をしてきたのだ。が、その3年生がいなくなる今、これまで3年生がしてきたディレクター的な仕事をかわりにしてくれる人がいないのが実情だった。2年生の千歌はそれをするのが苦手、曜はまじめで誰とでもフレンドリーになれるがそれがネック、なぜなら、ときには人に対して厳しく接する必要もでてくるから、梨子は作曲担当であり、それ以上に負担をかけたくない、ルビィ達1年生はたしかにこれからのAqoursをしょって立つ存在になるだろうが、今は成長時期でディレクターというとても重要なことを任せるのは忍びない・・・、そんなこともあり、なぜか月に白羽の矢がたったというわけである。が、その理由を鞠莉はこう答えた。
「でも、月だったらその大任を任せられま~す!!だって、月は静真でプレジデント、つまり、生徒会長、なんでしょ!!それに、生徒たちや静真の先生たちから絶大なる支持を受けているんでしょ~!!」
そうである。月は生徒会長として静真の生徒や先生たちから絶大なる信頼を得ていた。それは、月たち静真高校生徒会が生徒たちにとって満足しうる施策を行ってきたからである。だからこそ生徒たちから絶大なる信頼を得ていたのである、月は。そして、それは浦の星の理事長である鞠莉の耳にも入っていた。そのため、鞠莉は月を信頼してとても大事な浦の星の生徒たちを静真に預けることを認めたのである。が、まさか、あの静真の大スポンサーであり、裏で小原家と浦の星を恨んでいた木松悪斗が反旗を翻して浦の星の生徒たちを苦しめようとしているなんてあの鞠莉でさえ予想にもしていなかったのだが・・・。
とはいえ、ダイヤは月にこう言った。
「月さん、今のAqoursは月さんを必要としております。あなたがAqoursに、私たち3年生がいない新生Aqoursにとって、今、必要な存在です!!だからこそ、月さん、手を貸してください!!」
このダイヤの必死のお願いに、月、
(うっ、僕、こんな困っている人を黙ってみていられないよ・・・)
と、自分が持つ、困っている人を見捨てることができない、その心がびんびんと働いてしまう。でも、その親切心があるおかげで曜というとても大切な大親友を持つことができ、そして、静真の生徒会長として絶大なる信頼を得てきたのである。
と、いうわけで、月、
「わかりました、僕でよければ・・・」
と、鞠莉たち3年生のお願いを聞くことにした・・・。
しかし、たとえ優秀な月であったも突然たった一人でやらせる・・・わけにもいかず、イタリアでのAqoursのライブについては月に必ず3年生の誰かが1人付くことになり、その3年生からディレクターとしての仕事を教えてもらうことになったのである。