ラブライブ!SNOW CRYSTAL   作:la55

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Moon Cradle 第6部 第16話

 こうして、ライブの大成功と鞠莉の輝かしい未来、スクールアイドルのこれからの未来を手に入れることができたAqoursメンバーはイタリアでの残されたわずかな時間を使って、今、自分たちができることをやろうとしていた。千歌はできる限り、自分の気持ち、Aqoursメンバーの気持ちを代弁するかのごとく作詞に力をいれることにした。ルビィ、花丸はAqoursがステージで着る衣装をスケッチしてはそれに使う生地を追い求めて町中の生地屋さんを巡っていた。曜、ヨハネは新しいダンスをAqoursのダンスに取り入れたいため、ローマの現地ストリートダンサーのもとを訪れていた。梨子は自分の音楽の知識や認識を広げるために日夜イタリア各地で行われるコンサートを巡っていた。それはこれまでのAqoursには見られなかった、新生Aqours、そのものを自分たちの手で作っていく、成長させていく、そんな風にみえていた。

 一方、月はというと・・・、たった一人、ローマを観光・・・ではなく、

「さあ、月さん、今度はAqoursの歴史です!!」

と、ダイヤが大きな声で言うと、月、

「は、はい!!」

と、びくびくしながら言ってしまう。ここは千歌たちが泊まっているホテルの一室。なんと、月、ダイヤ、果南、鞠莉、3年生3人によってなかば監禁状態になっていた。ダイヤ曰く、

「あのあとルビィから聞きました。すべてがすべて月さんの思惑通り・・・じゃなかったのですね」

これには、月、

「すべてがすべて僕の思惑通りに動いていた・・・わけじゃないですよ!!僕は新生Aqoursを復活させるために、ルビィちゃんを生まれ変わらせるようとしただけです!!鞠莉‘sママさんのことはただの成り行きです!!」

と、ダイヤに言うも、ダイヤ、すぐに、

「それは私の早とちりでした・・・。ごめんなさい」

と、月に謝罪するも、

「でも、ルビィの件については話が別です!!」

と、自分の大切な妹であるルビィのこともあり、怒りパワー爆発になる。続けて、ダイヤ、月をにらみつけて一言。

「月さん、たしかにルビィは生まれ変わりました。けれど、そのやり方がほとんど脅かしと一緒というのはどういうことなのですか!!」

そう、たしかにルビィは月によって生まれ変わった。が、第6部を最初から読んでいる方ならもうお分かりだろう。月は、最初、ルビィに対し、姉のダイヤはいつかはいなくなる、と言っていたのである。たしかに事実だが、ダイヤ依存症であった生まれ変わる前のルビィとしては効果絶大だった。というよりも、それにより、ルビィは情緒不安定な状態に一時期陥ってしまったのである。が、そのあと、「真実の口」のところで「ゼロに戻るわけじゃない」などとそれに対する真意を月が言ったことによりルビィはその真実に気づき、安心するとともに旅立つ姉ダイヤに対し自分の意思でこれから生きていくことを心から誓ったのだった。月からしても、ルビィからしても、結果的にはよかった・・・のだが、その過程が悪かった。ルビィは生まれ変わったが、その過程がどちらかというと、恐喝、に近いものだった、そうダイヤは感じたのである。人というのは恐喝的なものを受け、そのあと、手を返したようにやさしく対応すると、その人にとってより効率的に効果を与えることができるものである。月もそれを知っており、ルビィにもその方法を使って新しく生まれ変わらることに成功したのである。が、それが妹であるルビィ想いのダイヤにとって気に入らなかった、いや、脅しという方法自体義理人情に熱いダイヤにとってとても許されるものではなかったのである。

 と、いうわけで、ダイヤの逆鱗に触れてしまった月、ダイヤ、果南、鞠莉によってなかば監禁状態にされてしまったのである。

 とはいえ、実際には監禁とは名ばかりのものだった。じゃ、実際のところは・・・というと、スペイン広場でのライブ前に行っていたプロデューサー見習の続きであった。新生Aqoursを無事に復活させたことで暇になった月、同じく、最後のライブ?も終わったことでAqours関連でやることがなくなった、かといってイタリアを十分堪能してしまったのでとても暇だった、ダイヤ、果南、鞠莉、4人とも暇だった・・・ということもあり、ダイヤの発案で月を徹底的にしごいて本当のプロデューサーにしてしまおう、ということになってしまったのである。けれど、たしかに暇だけだけど、残された時間はそんなに残っていいなかった、というわけで、朝から夜まで部屋に缶詰になりながらも座学で月にみっちり教える・・・だけでなく、

「月、この機械はね・・・」

と、音楽スタジオに行っては音響設備の使い方を月は果南と鞠莉から教えてもらっていた。これに対して、月、とても「うぅ~」と、いやがって・・・いなかった。むしろ、

(へぇ~、そうなんだ!!)

と、向学心丸出しで聞いていた。だって、月からすると、

(もう曜ちゃんたちAqoursに首を突っ込んだもの!!なら、もっと曜ちゃんたちの役に立とう!!)

と、思っていたからだった。そりゃ、スペイン広場でのライブ前でも本で裏方の勉強をしていた月である。それが本職?から直々に教えてもらえるのだから、とても役得、だと感じていただろう。

 しかし、月に残された日々の暮らしはダイヤたちからのしごき?だけではなかった。夜、

「う~、疲れた~」

と、ベッドに倒れこむ月。正味12時間ずっとダイヤたち3人の教鞭をまじめに聞いていたのだ。なので、疲れるのも無理ではなかった。

 が、

「たしかに疲れたよ!!でも、僕にはまだしないといけないことがある!!」

と、言うと、ベッドの近くに置いていた本を取り出す。そのまま、

「え~と、こうして、ああして・・・」

と、自分のスマホを構えながらその本を見ては恰好をつけていた。実は月が今読んでいるのは、

「スマホでも簡単に撮れる・・・かっこいいスクールアイドルの撮り方」

であった。月はその本を読みながら自分のスマホでもってどうすればAqoursをかっこよく撮れるか研究していたのだ。自分が持つハイスペックなスマホをこれまではうまく使いこなしてなかった。が、今こそそのスマホの真価が問われていたのだ。それは、あのスペイン広場でのライブ以外でスクールアイドルを撮ることなんてしたことがない月にとっても同じことだった。そう考えたとき、月はこのハイスペックなスマホを使いこなすことで少しでも千歌たちAqoursのために役に立とうとしていたのである。そして、このときの苦労は近いうちに報われることになる・・・のだが、それはあとの話である。

 とはいえ、こんな過酷ともいえる数日を月は暮らしていたが、

(それはすべて曜たちAqoursのため)

と、月はそう思ってやっていた。その中で、月はふとある想いに至る。

(僕の知らないことを知ることができる!!それはあとになって曜ちゃんたちAqoursのためになる!!そう考えると、前以上にもっと楽しいよ、僕!!こんな楽しい時間がずっと続いてほしいよ!!)

 

 そんなわけで、Aqoursメンバー、それに月は自分ができることを精一杯頑張っていた。それはすぐにでも発揮されることなんてない。けれど、その努力の積み重ねによりそれはのちに大きな力として発揮されるものである、そうみんなが思っていた。そのためか、Aqoursメンバー、月、ともに今を一生懸命頑張っていた。

 こうして、数日が過ぎ、Aqoursメンバー9人と月は自分がやれることはやり抜いたことを実感しつつ帰国の途についた。イタリアローマの空港から日本成田行きの飛行機に乗った月、このとき、

(さあ、これで激闘のイタリアからおさらばになるね!!)

と、思いつつ、

(でも、僕はやることはやったよ!!新生Aqoursは復活した!!もうこれで木松悪斗と十分に戦える!!)

と、勢いつけてしまう。

 が、そんな月だったが、ひとつだけ気になることを口にする。

「でも、沼田のじっちゃんが言っていた問いの答え、まだ見つかっていないんだよね・・・」

そう、月たち静真高校生徒会が目指しているもの、静真本校と浦の星分校の統合、それを叶えるために月に静真の影の神である沼田から出されていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なものとは」その答えにまだ行きついていない、と、月はこのときそう思っていたからだった。

 しかし、このときの月は知らなかった、実は、このイタリア旅行を通じて月はその答えにつながるヒントをすでに持っていたのである。いや、それに月は気づいていなかったのかもしれない。けれど、その問いのヒント・・・というより、答え、はすでに月の中にあった。あとは月がそれに気づくことができればいいのだが・・・。


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