その後、ナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオはそれぞれ動きまわることになったのだが、ナギたち静真高校生徒会、最初、木松悪斗たちの妨害を予想したか、お披露目ライブの下準備はかなりの困難を極めるだろうと思っていたのだが、その予想に反して、木松悪斗たちの妨害なんてまったくなく、スムーズにことが進むことができていた。これには、ナギ、
(えっ、なんでこんないスムーズにことが進むことができるの?)
と、あっけにとられてしまった・・・。
が、これにはちゃんとした理由があった。ナギたち静真高校生徒会の人望が厚いおかげ・・・というのもあったが、いくつかの幸運に恵まれていたからだった。
たとえば、音響設備などライブ機材のレンタルについては内浦で行われるイベントでお世話になっているイベント会社から格安で借りることができた。詳しくいうと、内浦のイベントの運営にかかわっている浦の星女学院、そのなかでよいつむトリオはそのイベントの運営に深くかかわっていることもあり、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオ経由でその内浦のイベントでライブ機材を提供してくれているイベント会社にお願いしたら格安でレンタルすることができた、というわけである。
また、ライブ会場に出店してくれるお店も続々と決まっていった。大規模なフェス、といえばたくさんの露店がつきもの、なのだが、それと同じくらいのお店から「(新生Aqoursお披露目ライブに)出店したい」という依頼がナギたち静真高校生徒会にどんどん届くようになったのだ。もちろん、Aqoursや浦の星に対する人望の厚さ、というものもあった。内浦の自治会、婦人会、など、これまでお世話になった浦の星に対するお礼の気持ち、これまで浦の星を、内浦を盛り上げてくれたAqours、それに報いるために出店してを決めた、というお店も多かった。また、Aqoursというネームバリューの大きさもその原因の1つだったりする。部活動報告会のライブに失敗して不安・心配の深き海・沼に沈み込んだとはいえ、スクールアイドルの甲子園ともいえるラブライブ!に優勝したこともあり、Aqoursの持つブランド力は今や全国規模、となっていた。そのAqoursが大きなライブを行うのであれば出店しない手はない、ということで、Aqoursとはまったく関係ないところからも多数の「出店したい」という依頼がどんどんナギたち静真高校生徒会に届くようになったのである。
ちなみに、新生Aqoursお披露目ライブ、ナギとよいつむトリオは沼津のどこかに大きな野外ステージを作り、音楽フェスみたいな形式で大規模なライブを無料で行うことは当初から決めていた。これは、できる限り多くのみんなに新生Aqoursのライブを楽しんでもらいたいこと、多くのお店に出店してもらい食べながら気軽にライブを楽しんでもらいたいこと、それに、その多くのお店からいくらかの手数料をもらうことで新生Aqoursのライブを多くの人に無料で見てもらうことができるだけでなく、その収入でこのライブにかかる費用すら賄ってしまおう、という考えからだった。
が、こんなに「出店したい」という依頼がたくさんきたことによりライブ会場の場所を探すのはちょっと大変だった。たくさんの「出店したい」という依頼を一度に叶えるため、より大きな場所でライブを行う必要性がでてきたからだった。ただ、沼津でそんなかなり大きなライブを行える場所はそんなに多くはなかった。
と、いうわけで、ナギとよいつむトリオはもう1度集まり、ライブ会場の選定をすることになった。いろんな場所をあげては消えていく・・・、それを繰り返していき、ついにある候補地が浮上してきた。むつ曰く、
「それじゃ、沼津駅前はどうかな」
むつが沼津駅前を推す理由・・・それは、
①交通の便がよく、多くの方々が新生Aqoursのライブを見に来ることができる
②沼津駅南口付近には大きな通りがあり、駅前に大きなステージを作り、その通りにそってお店を設置すればライブの場所を確保しつつより多くのお店を出店させることができる
などなど。
このむつの考えを聞いたナギ、よしみ、いつきはこのむつの考えに同意、ライブ会場は沼津駅南口付近と決定した・・・のだが、それには沼津市や静岡県警など関係各所からライブ会場の使用許諾が必要だった。そこで、それについては静真高校生徒会生徒会長代理であるナギに一任された。
そのナギ、当初、
(大丈夫かな?沼津駅南口で大規模なフェスを行うなんて前代未聞だもんね。そう考えると、すぐに使用許諾を受理してくれたら本当にミラクルだよ・・・)
と、思っていた。たしかに、沼津駅前で大きなライブを行うなんて誰も想像できない、そんな前代未聞なことを自分たちがやろうとしているのだ。なので、ナギ、沼津駅南口付近の使用許諾の受諾にはかなり時間がかかるし、どっちみち関係各所への説得も必要だろう、と考えていた。
が、それは杞憂に終わった。ナギ、市役所のなかにある担当部署に行くと、その担当者から、
「え~と、沼津駅南口でAqoursのライブを行いたいのですね?」
と、開口一番、それを言われたため、ナギ、
(えっ、そんなこと、一言も話していないのに・・・、なんで、今からお願いすることをすでに知っているの?)
と、唖然となってしまう。そんな唖然とするナギを尻目に、担当者、
「それならいいですよ。なんだったら、「沼津市後援」になってもいいですよ」
と、逆提案されてしまう。これを聞いたナギ、
「えっ、あっ、え・・・」
と、開いた口がふさがらない、それくらいびっくりしてしまう。
と、いうわけで、沼津市から沼津駅南口付近の使用許諾が下りたばかりか、「沼津市後援」という支援すら取り付けることに成功した。このとき、ナギ、その理由を聞くと、担当者曰く、
「だって、Aqoursの人気はすでに全国規模です。そのAqoursが沼津で大きなライブを行うことになれば沼津駅前の町おこしにつながります。それに、Aqoursのメンバーとはいえもとをただせば沼津市の一高校生です。その高校生たちがここ沼津で頑張っていることをアピールすることができれば、Aqoursみたいな元気な子を育てたい、そう思っている大人たちがここ沼津に移住してくれますから」
そんなわけで、なぜかいとも簡単に沼津市のお墨付きを頂いたナギ、そのお墨付きが効いたのか、静岡県警などの関係各所に行ってもすぐに使用許諾が下りてしまった。これには、ナギ、
(いったい裏でなにが起きているのだ!!なんで、木松悪斗たちの妨害がないのだ!?)
と、なにかを疑っている、そんな気がしていた。
このナギの疑い、実は正解だった。なんとこれらについてはちゃんと裏があったのだ。その裏とは・・・、ナギたちが動いているその陰で静真の裏の神ともいえる沼田が暗躍していた、ということだった。
まず、時系列的には部活動報告会のとき、新生Aqoursのライブ失敗したところから始まる。その部活動報告会後に行われた通常理事会で沼田の采配により静真の保護者たちの声「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動にはいると静真の部活動に悪影響がでる」、それを新学期が始まる前までに払しょくすることができればこれ以上の浦の星の生徒たちの処遇の悪化、月を含めたナギたち静真高校生徒会みんなの退学を取り消すことができることが決まったのだが、もっといえば、その保護者の声が払しょくすることができるのであれば静真本校と浦の星分校の統合の障害もなくなることも意味していた。だって、ナギたち静真高校生徒会の敵である木松悪斗たちが統合反対を唱える(表向きの)理由、それがこの保護者の声である、からだった。この声が払しょくできれば統合反対を唱える理由もなくなる、別の(みんなが納得するくらいの)理由がない限り統合に反対することもできなくなる、結果、統合に向けて進むことができる、というわけなのである。
そういうわけで、月はその保護者の声を打ち砕く、そのためのヒントともいえた、沼田の問い、「部活動とは何か」「部活動をする上で大事なこととは」、その答えを追い求めるととともに(新生)Aqours復活のために千歌たち(新生)Aqours1・2年6人と一緒に行動し、ナギたちとよいつむトリオははその復活した新生Aqoursをみんなの前で披露するための、そして、静真の保護者たちに向かって大きなライブを成功するくらい浦の星の生徒たちは一つの物事(部活)に対しても士気が高いことを証明してみせるためのライブの準備をすることになったのだ。
であるのだが、これらの月やナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちの行動においてそれを妨害してくるであろう(月やナギたち静真高校生徒会の敵である)木松悪斗たちに対して(木松悪斗以上の権力を持つ)沼田は通常理事会のときにある制限を加えることを言ったのである。その制限とは・・・、
「浦の星の生徒や月(とそのナギ)たち生徒会の行動を妨害しないこと」
であった。そう、沼田のこの制限、木松悪斗たちからすれば静真本校と浦の星分校の統合実現に向けて行動する月やナギたちだけでなく、浦の星の生徒たちの行動すら妨害できないことを意味していた。これでは、木松悪斗たち、ただ指をくわえて月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を見ているだけしかできない。
それじゃ、木松悪斗たち、陰に隠れてこっそり妨害すればいいのでは、と思うかもしれないが、木松悪斗自身はそれをしなかったのだ。なぜなら、もし沼田に黙ってこっそり月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害をくわえていたら、それは木松悪斗にとって、ここ沼津、いや、日本での経済活動ができなくなることを意味していたからだった。
なんでそんなことになるのだろうか。それについては第2部第9回にて軽く話したが、ちょっと詳しく言うと、この沼田、静真の影の神ともいわれるくらい静真の中では一番の権力を持っている。それは、この沼田、由緒ある歴史を持つこの静真の創立家の末裔であったりする。なので、静真の大スポンサーである木松悪斗すら沼田の前では、ただの子猫、みたいになってしまうのだ。が、それ以上に、この沼田、意外な事実が隠されていた。それは、この沼田、沼津、いや、静岡、いや、日本を代表する企業の会長、だったりする。その企業、いや、企業グループの名、その名も、「沼田グループ」!!静岡市に本社があり、商社として日本の輸出入にも関わっていたり、日本の物流を陰から支える、それくらいの大企業グループ、だったりする。そして、最近では地方を活性化させようと自前で航空会社を持つ(ちなみにその航空会社のハブといえる空港は静岡富士山空港だったりする)など、静岡、いや、東海、いや、日本をまたにかける企業グループ、それが「沼田グループ」だった。そのグループの総帥、会長の地位にあるのが、あの沼田、であった。なので、沼田、沼津、いや、静岡、いや、日本の経済界に強い影響力を持っていたりする。それは、あの浦の星のスポンサーだった、世界有数の大財閥である、あの小原家すらも超えるくらいの・・・、である。なので、木松悪斗からみれば、沼田に歯向かうことは、それすなわち「日本での経済活動ができなくなる=死」と言っても過言ではなかった。あの木松悪斗すら沼田の権力でいつでも消すことができる、それくらいの権力を沼田は持っている、それが木松悪斗の沼田に対する認識だった。
と、いうわけで、木松悪斗自ら月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの統合実現に向けた行動の妨害をする・・・わけでもなく、地盤固め、保護者たちの声、統合反対、その考えを静真の生徒や保護者たちにさらに広める、といった今まで行ってきた策でもって自分たちにとってとても有利であるこの現状を新学期が始まるまでキープする、そんなことに専念しようとしていた、もし、この期限を過ぎればあとは自分の思い通りになる、そのことを信じて・・・。
ところが、そんな木松悪斗一派から主人である木松悪斗に背く人もいた。それが木松悪斗の右腕ともいえる存在、あの裏美、であった。裏美は木松悪斗からこれまで通り、保護者の声、いや、自分の考えを静真の生徒や保護者たちに広めるように命令されていた。のだが、その裏美、
(月生徒会長をはじめとする生徒会役員たち、たとえ不利的な状況であったとしてもなにかを仕掛けてくるはずだ!!)
と、危機感をもってしまったこともあり、あの沼田のことを過小評価しつつも自らの手で月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害することを決めてしまった。
と、いうわけで、裏美は鞠莉‘sママを通じて月と千歌たちAqoursの妨害をしてきたのだった。たとえば、ヴェネチアでの鞠莉たち3年生3人を捕まえるための大量のポスター・チラシ投下作戦(もちろん、その費用は全部鞠莉‘sママもち、にすることでわざと小原家の財政にもダメージを与えていた)、フィレンツェでの鞠莉たちの居場所を鞠莉‘sママに教えることで鞠莉と鞠莉‘sママを対立させ、鞠莉‘sママのイメージを悪化させる(鞠莉を束縛しようとしていたなど)だけでなく、月の(新生)Aqours復活計画を阻止しよう?としていたのだった。
では、裏美、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちへの妨害はなにをしたのか。それは、沼津にある企業やお店への圧力、だった。その圧力とは、
「たとえなにがあったとしても、(ナギたち)静真高校生徒会、および、浦の星の生徒たちの手助けをしてはいけない。これは木松悪斗様からの命令である」
だった。そう、たとえ、ナギたち静真高校生徒会や浦の星の生徒たちがなにかしようとしてもその手助けをしてはいけない、そんな命令だった。それは、ライブ機材のレンタル、フェスの出店依頼、だけでなく、ライブを行う場所の提供すら含まれていた。むろん、沼津の市街地だけじゃない。内浦を含めた沼津市全域にいたるお店や企業、はては、沼津市といった行政にも裏美は圧力をかけていた。で、もし、ナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの手助けをした場合、「木松悪斗の名をもって断罪する」、そんな言葉すら裏美は沼津市にあるお店、企業、行政にちらつかせていた。
なお、この裏美の沼津の行政、お店、企業に対する圧力に関しては、このとき、木松悪斗本人は完全にノータッチ、であった。この圧力はすべて裏美が仕組んだことだった。木松悪斗すらこんな圧力を裏美が沼津の行政、お店、企業にかけているなんてまったく知らなかったのだ。なぜなら、このとき、木松悪斗は、たとえ、月によって一発逆転的なことをしようとしても、今の統合反対という(自分にとって)優位的状況を覆させないように、保護者の声、もとい、自分の考えをもっと静真の生徒や保護者たちに広めようと苦心していたこと、さらに、ここ最近静真のことに力を入れ過ぎてしまい、本業である投資が疎かになっていたこともあり、沼津に戻らずにずっと東京の自分のオフィスで株式投資をしていたこともあり、裏美の暴走に気づくことができなかった。