教室の扉からあらわれた3人組、この娘たちこそ、月にとってとても頼もしい助っ人、いや、月にとって最強の切り札だった。この最強の切り札とはいったいなにか?それについて語るために少し時を戻すことにしよう。
月が沼津駅に着いたとき、急に自分のスマホから電話の呼び鈴が聞こえてきたので、千歌たち6人のもとから離れてその電話をとる。どうやら、その相手はナギからだったようだ。そのナギから部活動報告会から今日にいたるまでのこちら(沼津のナギたち静真高校生徒会の動き)の経緯を聞くとともに、そのナギから、
「それに、私たちに強力な仲間が加わったのです!!」
と、ナギたちに新しい仲間が加わった、との報告を受けていたのだ。このとき、月、
(ついに、ついに、僕が一番欲しがっていたものが来てくれたんだ!!)
と、心の中では喜んでいた。そう、この新しい仲間こそ、月にとって待ち望んでいた最強の切り札であった。で、その切り札となるべき新しい仲間について、月、自分もすぐに会いたい、ということで、ナギとの待ち合わせ場所(兼千歌たち6人が向かう場所)である浦の星分校に向かうことになったのだ。
で、浦の星分校に到着後、千歌たち6人と一緒に校舎の2階に上ったのだが、その2階に到着すると、月、そこで月を待っていたナギに呼び止められてしまう。このとき、ナギ、
(月生徒会長、ついに、私たちに待望の仲間ができました!!)
と、喜びの表情で月に接すると、月、
「あっ、ナギ!!」
と、ナギのことを呼ぶのだが、このあとすぐ、ナギは月に近づき、月の耳元でこっそり、
「月、生徒会長、例の少女、連れてきました・・・」
と、小声で話す。このナギの小声に、月、
(例の少女って、まさか、あの娘、かな?それなら安心だ!!だって、あの娘はAqoursのあるメンバーのことをよく知っていて、かつ、Aqoursのことがとても大好きなんだから!!)
と、今まで持っていた不安が吹き飛んだ、そんな感じになっていた。
新しい仲間、それは、これから先、Aqoursのために自分から動いてくれる、そんな心構えが必要だったりする。月のために動く、じゃダメなのである。月が今求めている人材、それは、月のために動く、ではなく、自ら進んでAqoursのために頑張ってくれる、そんな人材だった。月はこのとき知っていた、ナギ考案の作戦のことを。木松悪斗たちが広めた考え、「保護者の声」、それを吹き飛ばすための作戦、それが、新生Aqoursお披露目ライブ、通称、「オペレーション・オブ・New Aqours」。その作戦のことを月は沼津駅でのナギからの電話で知ったのだ。そして、月はすぐに気づいた、この作戦の主役は千歌たち新生Aqoursであり、浦の星の生徒たちなのであることを。が、それと同時に、この作戦にはある弱点があることも見抜いていた。この作戦の弱点、それは、浦の星の生徒たちだけでこの作戦を成し遂げることで浦の星の生徒も1つの大きな物事を成し遂げるくらい(部活動に対する)士気が高い、それが証明できるが、もし、(部活動に対する)士気が高い浦の星の生徒が静真の部活動に入ると、その士気の高さゆえに、おなじく(部活に対する)士気が高い静真の生徒と部内で対立してしまう、そんな問題が発生してしまうのではないか、と。
が、この助っ人がこの作戦に加わることによりその弱点は克服できる、そう月は考えていた。この助っ人がこの作戦に加わることで、たとえ士気の高い者同士同じ部活にいたとしても対立なんて起きることはない、それを証明してくれる、そう月は思っていた。しかし、そのためにも、その助っ人にはある条件が課せられていた。それは、生徒会長である月のために動く、のではなく、この作戦の主役である千歌たちAqours、そして、よいつむトリオら浦の星の生徒たちのために自ら動いてくれる、そんな人材だった。
そんな人材を月はのどから手がでるほど欲しがっていたのだが、今、まさに、その人材を、いや、最強の人材を月はついに手に入れることができた、と、このときの月は確信していたのだった。
そして、そんなことを思っていた、月、迎えに来たナギに向かって一言。
「わかった、会ってみましょう」
その後、月は曜にちょっと席を外すことを言うと、ナギと一緒にナギが連れてきてくれた例の少女が待つ空き教室に向かうことになった。
その空き教室の扉の前に立つ月。その空き教室からは誰かの声が聞こえてきた。
(あれっ、1人じゃない・・・。少なくとも3人はいる・・・)
と、月、空き教室に複数人いることに気づく。これには、月、
(と、いうことは・・・、友達を連れてきたな・・・)
と、もしかすると、自分が思っている以上にすごい人材たちなのでは、と、期待してしまう。
そして、期待しながらこう言って月は扉を開けた。
「こんにちわ!!」
月、とても元気な挨拶!!が、これに対して空き教室にいた少女たち3人は月がびっくりするぐらいの返事で言い返す。
「「「こんにちは!!」」」
まるでオペラぐらい・・・、いや、大学の応援団ぐらいの大声、それも三重奏!!これには、月、
(えっ、えっ!!)
と、一瞬驚いてしまう。いや、「こんにちは」ほど世界中のどの言葉の中でも大声で言うのに適している、そんなことに気づかせてくれる、そんな大声だった。
そんな大声をだす娘たちを見た月、
(とても元気な娘たちだな!!やっぱり、この娘たち、最高だよ!!)
と、その娘たちのことを感心しつつ、その娘たちに、
「僕は静真高校で生徒会長を務めている、渡辺月、と言います!!」
と、自分のことを自己紹介すると、続けて、
「って、どこかで会いましたね。お久しぶりです」
と、その娘たちの1人の方を見る。ここにいる3人のうち1人は月と面識があるみたいだった。その娘は月に対し、
「はい、お久しぶりです!!たしか・・・1か月ぶりですね!!」
と、月に1か月ぶりに再会できたことに嬉しい表情を見せて言った。
そして、月、その娘を見てはその娘の名前を言った。
「たしか・・・、署名活動していたときに真っ先に署名してくれた、稲荷あげはちゃん、ですよね!!」
この月の言葉に、その娘ことあげはは元気よくこう答えた。
「はい、そうです!!稲荷あげは、稲荷あげはです!!私のことを覚えていてくれたなんて本当にうれしい限りです!!」
月、そのあげはが元気よく答える姿を見て、あることを思い出していた。
(稲荷あげはちゃん、中学の時、(Aqoursのメンバーである)善子ちゃんの同級生であり、(中学の時は)不登校だった善子ちゃんの友達になりたい、そうずっと思っていた少女・・・)
そう、月の目の前にいる少女こそ、(第1章第5話で)浦の星女学院との統合実現のための署名を集めに1年のクラスを訪れていた月に対し自ら進んで署名した少女、1年の稲荷あげは、だった。月が署名を集めていたときは木松悪斗の突然の反対により静真高校と浦の星女学院の統合が破談になる可能性があった。そこで、月たち静真高校生徒会は統合実現のための署名を集めていたのだ。その最中、月とナギは1年のあるクラスで署名を集めようとしていたのだが、統合に懐疑的な生徒、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に入ると悪影響がでる」という木松悪斗たちが広めていた噂(これがのちに「保護者の声」となる)に侵された保護者によって「反対しなさい」と強要されている生徒が多く、署名があまり集まらなかった。そのとき、浦の星に通う同級生のヨハネのためにあげはが自ら進んで署名してくれたのだった。このとき、あげは、ヨハネたち浦の星の生徒たちのことを思う自分の気持ちをクラスのみんなに大きな声で語りかけたのだが、この言葉により、クラスのみんなは自分の友達である浦の星の生徒たちのことを思うようになり、みんな署名するようになったのである。(が、このあと、月はそのクラスの1人に「部活動ってなに?」と尋ねてみると、「勝つことがすべてだ」という答えが返ってくるばかりだけでなく、その答えにクラスメイトあっちが次々と賛同していったことにちょっと複雑な心情になったのだが・・・)
と、いうわけで、あげはと月、ついに再会・・・なのだが、その月、あげはに対し、
「あげはちゃん、わざわざ来てくれて、本当にありがとう!!あなたが来てくれたら百人力だよ!!」
と、嬉しい表情であげはに感謝の言葉を贈る。だって、月にとってみれば、
(このあげはちゃんこそ、僕にとって最強の切り札となるべき存在だもの!!だって、中学時代に友達になれなかった善子ちゃんのために、そして、Aqoursのために、一生懸命頑張ってくれる、そんな力強い仲間、なんだもん!!)
と、あげはに期待していたのだから。
そのことはあげはも理解しているのか、あげは、
「月生徒会長のお言葉、本当にうれしい限りです!!私、今度こそ、ヨハネちゃんのために頑張りたいと思っております!!だって、私、中学に、ヨハネちゃんと友達になれなかったから、ヨハネちゃんのためになにもできなかったから。だからこそ、私、今度こそ、ヨハネちゃんのため、Aqoursのために頑張りたい!!」
と、自分の抱負を熱く語った。
そんな熱くなっているあげはに対し、その横にいた娘が、
「あげは、ちょっと落ち着きなさい!!月生徒会長が引くでしょうが!!」
と、あげはに注意をすると、あげは、
「いや~、ごめん、ごめん。つい、熱くなっちゃった!!本当にごめんね、東子」
と、あげはに注意した娘こと東子に言うと、またあげはの横にいた別の娘が、
「あげは、少しは落ち着きなさい!!この私みたいに落ち着きがあれば、どんなことがあっても大丈夫なのですから!!」
と、なんか自分のことを誇張しているようなことをあげはに言うと、あげは、
「シーナ、それはシー、だよ!!だって、思い立ったら吉日、っていうじゃない!!私、こう思ったらすぐに行動する派だもん!!」
と、言い訳を言うと、自分のことを誇張した娘ことシーナ、
「まっ、それがあげはのいいところ、だもんね!!」
と、あげはのことを褒めちぎる。これには、あげは、
「えっへん!!」
と、勝ち誇ったような仕草をする。そんなあげはの仕草が面白かったのか、空き教室にいるみんな、
ハハハ
と笑ってしまった。
と、月、
(あっ、なんで和やかな雰囲気になっているんだ!!ここは先に進めないと!!)
と、この物語の主人公らしく先に話を進めることに・・・。
と、いうわけで、月、あげはいあることを尋ねる。
「あげはちゃん、ところで、隣にいる2人は誰かな?」
この月の問いかけにあげはは元気よくこう答えた。
「あっ、紹介が遅れました!!ショートカットの娘が(私たちのリーダー的存在の)東町東子、髪を2つに分けているのが(ちょっと高飛車な)浜方椎名(シーナ)です!!」
このあげはの紹介のあと、
「東町東子です!!真面目だけがとりえです!!」
と、東子、
「あげは、高飛車って一言多い!!これでも、私、気にしているんだから!!あっ、挨拶が遅れました!!浜方椎名です!!椎名と書いてシーナって呼びます!!」
と、シーナ、2人とも月に挨拶をした。
が、そんなシーナに対し、あげは、
「シーナ、そんなこと言っていいのかな~。たしか・・・、「私の右手に触れたら、どんな魔術も打ち消すことができる」っていう挨拶、しないの?」
と、わざとらしく言うと、シーナ、
「も、そんなこと、言わないでよ!!まるでヨハネちゃんみたいに中二病っぽく見られちゃうでしょ!!」
と、あげはに(わざと)怒るように言うと、あげは、
「あっ、ごめん!!」
と、舌をぺろっとだしてシーナに謝る。これには、みんな、
ハハハ
と、大いに笑ってしまった。
そんなあげはとシーナのやり取りで場の雰囲気が温まった、というわけで、月、あげはたち3人に対し、
「でも、本当に来てくれてありがとう、あげはちゃん、東子ちゃん、そして、シーナちゃん」
と、お礼を言った。
この月の言葉に、あげはは、
「月生徒会長、それは私たちが決めたことです!!あの、私たちの大事な友達であるヨハネちゃん、そして、私たちが大好きなスクールアイドルAqours、のためになりたいのですから!!)
と、自分たちの今の想いを心の中で言うと、これまでのことを思い出していた・・・。