「・・・あともう少しで美しいもの、見れるよ!!」
この突然の言葉にその少女ははっとした。
(えっ、僕、どうしたの!?)
一瞬のことで戸惑ってしまう少女、であったが、すぐに今の状況を把握するためにその少女はまわりを見渡す。すると・・・、
(あっ、ここってあるビルの中・・・。たしか・・・、たしか・・・)
と、その少女はなにかを思い出そうとする。すると、それがどこなのかすぐに気づいた。
(あっ、たしか、ここって、昨日の〇のなかに出てきたビルの中だ・・・)
そう、その少女が今いるのは昨日自分が見ていた〇のなかに出てきたビルの中だった。
そんな少女は次に自分の今の姿を確認する。すると・・・、
(あっ、僕、今、小さくなっている・・・。昨日と同じく僕が小3~小4のときの姿とそっくりだ・・・)
そう、昨日の〇と同じくその少女は小さくなっていた、いや、その少女の小3~小4のときの姿とそっくりだった。
そして、その少女はあることをする、これが現実か虚像なのか、それをはっきりするために・・・。そのあることとは・・・、
(え~と、たしか、これが昨日と同じなら・・・自分の頬をつねると・・・)
そう、自分の頬をつねる。これは古来よりこれが現実か虚像・・・というよりも、夢・・・、とを判断するためのやり方だった。それを、今、その少女はしていた。
その少女であるが、その行為により、今、自分がおかれている状況をおおかた把握した。
(痛く・・・ない・・・。と、いうことは、今、僕がいるのは、夢のなか・・・、それも、昨日と同じ夢・・・)
そう、その少女は昨日自分がみていたのと同じ夢のなかにいたのだ。昨日の夢、それは・・・、その少女は自分にとって一番大切な親友と一緒にあるビルの階段をのぼっていた、ある美しいものを見るために。そして、階段をのぼりきりあともう少しでその美しいものを見ることができる、そんな夢だった。
であるが、昨日と同じ夢・・・」ということなら、このあとの展開も昨日と同じ・・・ということで、その少女、
(昨日と同じ夢なら展開も昨日と同じ・・・。なら、そんなにおどろくこと、ないか・・・)
と、逆に落ち着いてしまう。人というのは2回目・・・であれば初回での経験をもとにどう動けばいいかすぐにわかるものなのでそれに対してすぐに対応できるものである。さらに、今回は昨日(初回)とまったく同じ・・・ということで、このあとの展開も昨日と同じ・・・なので、その少女にとってこのあとどう動けばいいかおのずとわかってしまうものである。それはまるで、基礎の繰り返し・・・、といえるものである。そんなわけで、その少女はどんなことにもおどろかず、むしろ、逆に冷静になっていた。
そんな少女であったが、その少女は自分の周囲をもう一度見渡すとあることに気づいた。
(あっ、このビルの中って、たしか、今もある。いや、僕がよく行くビルと一緒だ・・・)
そう、その少女は気づいてしまった、今、自分がいるビル、そのビルは現在でも存在している、というか、現実の自分もよく行っているビルであった。その少女はそのビルのことを思い出す。
(え~と、たしか・・・、たしか・・・、このビルって沼津駅の近くにあったよね・・・。それも、僕たちが今からしようとしている、新生Aqoursお披露目ライブ、その会場の近くの・・・)
そう、その少女がいる場所、それは、現実の世界、において沼津駅の近く・・・というよりも、その少女率いるあるグループ、そして、自分たちの士気、やる気をみせるために頑張ろうとしている、そんな人たちが中心となってやろうとしている、新生Aqoursお披露目ライブ、その会場である沼津駅南口の近くにある、沼津に住む人たちにとってはとても有名なビル、であった。
が、その少女の思考はすぐに止まる。なぜなら・・・。
(え~と、このビルの名前って、たしか・・・、たしか・・・)
必死になってそのビルの名前を思い出そうとする少女。しかし、そのビルの名前を一向に思い出すことができない。その少女にとってみればとても歯がゆいものだった。
そんな少女であったが、そのあいだにも夢は進む。考え込んでいる少女に対しその少女の隣にいた、その少女にとって一番大切な親友はあることを言う。
「月ちゃん、どうしたの?なんか考えていたの?」
自分にとって一番大切な親友一番大切な親友の言葉を聞いたその少女はあることに気づく。
(あっ、忘れていた・・・、一番大切なこと・・・、僕の名前は、渡辺月、月、だった・・・)
そう、その少女、名を、月、といった。いや、この物語の主人公・・・というか、前回(第7章前編)では影が薄くなりがちだったこの物語の本当の主人公、月、であった。と、いうか、前回では影が薄くなったためか、自分の名前すら忘れてしまった・・・のかもしれない。
と、いうわけで、自分の名前を思い出した月、隣にいる親友に対し、
「あっ、曜ちゃん、なんでもないよ!!ちょっと眠かったためかな・・・」
と、その親友こと幼い曜の言葉に答える。これには、曜、
「たしかにそう言えるかも。だって、まだ明け方だもんね・・・」
と、月の言葉に妙に納得する。これには、月、
(たしかに曜ちゃんの言う通り、(昨日と同じ夢なら)まだ明け方の時間帯だもんね・・・)
と、今の時間帯について考えてしまう。今から見ようとしている美しいものを見るためにはまだ空が暗い時間帯からその美しいものを見るための場所に行く必要がある。とはいえ、月にとってみればその美しいものがなにか少しもわからない・・・のであるが、昨日と同じ夢であるなら、このあとの展開を知っている月にとってみれば曜の言葉に妙に納得してしまうのは無理な話ではなかった。
そんな月と曜であったが、自分たちの前には昨日と同じ扉があった。その扉に向かって、曜、月に対し、
「でね、月ちゃん、この扉の向こう側にあるんだよ、美しいもの!!」
と一言。しかし、月からすると・・・、
(あっ、昨日と同じセリフ・・・)
と、昨日と同じセリフを聞いたことを思い出すと、月、
(と、いうことは・・・、この扉の向こう側にはたくさんの人だかりがあるんだよね・・・)
と、昨日のことを思い出すとちょっと白けてしまった。
と、そんな月の思いとは裏腹に曜は、
「よっこらしょ!!」
と、その扉を力いっぱい開ける。すると・・・そこには・・・、
(あっ、昨日と同じ・・・)
と、月、昨日と同じ展開にテンションが下がってしまう。そう、そこには広がっていた光景は・・・、昨日と同じたくさんの人たちが群がっている光景だった・・・。
そんなわけで、月、わざとらしく、というか、白けてしまい、
「このどこが美しいものなの?人がいっぱいいるだけだよ・・・」
と、セリフ棒読みともとれる反応をしてしまう。むろん、この月の反応に、曜、
「月ちゃん、この人たちもその美しいものを見るために来ているんだよ!!」
と、白けている月に対し元気よく答える。まっ、昨日と同じ展開なんですけどね・・・。
そんな曜、突然月の手を握るとそのまま強引に月を引っ張りその人混みのなかを元気よく突き進む。これには、月、人混みのなかを突き進むように引っ張られている、というわけで、
「痛い、痛いよ~!!」
と、昨日と同じ痛みを感じる。で、これには、月、
(あっ、これ、夢だよね・・・。夢って痛みを感じないはずだよね・・・。さっき、自分の頬をつまんだけど痛くなかった。でも、今は痛い・・・。なんで・・・)
と、不思議がる。たしかに今さっき自分の頬をつまんでも痛くなかった、それなのに、なんで(人混みのなかを突き進むときに)人にぶつかってしまう、そのときの痛みを今感じている、その差ってなに?、と、月がそう考えたとしても無理ではなかった。まっ、これにはついては夢と関係ない行動(頬をつまむ)については意図的に痛みを感じていなかったのに対し、夢と関係してそうな行動(人混みのなかを突き進む)の痛みは感じてしまっている・・・としか言えないのが現状であるが・・・。
そんな不思議な感情を抱いてしまった月・・・であったが、昨日と同じく、その痛みは一瞬んで終わってしまった。そして、それと同時に月の目の前には昨日と同じ光景が広がっていた。その光景とは・・・、
「あっ、沼津の街並み・・・」
そう、沼津の街並みだった。それも昨日と同じ薄暗い・・・そんな光景だった。
で、これには、月、
(まっ、昨日と同じならあともう少しでその美しいものが見れるんだもんね・・・)
と、妙に納得してしまう。昨日と同じなら、まだ朝の6時ごろ、なので、その美しいものが見られるまであともう少しである、そう月は思っていた。
そんな感じをしていた月に対し、曜も、
「月ちゃん、あともう少しでこの美しい(沼津の)街並みもさらに美しくなるよ!!」
と、元気よく言うと、もうすぐその美しいものが月たちの目の前に現れることを予告する。
そして、そのときはついに始まった。それは曜のある一言から起きた。
「あっ、もうすぐ始まるよ、沼津で一番美しい光景がね!!」
その瞬間、月の目の前に美しい光景が繰り広げられていた。これには、月、
「えっ、あっ、あっ、建物が輝き始めている・・・」
そう、沼津の街並みを構成している建物たちが次々とダイヤモンドみたいに輝き始めたのだ。これには、月、
(き、昨日も夢のなかで見たけど、この光景は何度見ても美しいよ・・・)
と、昨日と同じものを見たのにそれでも感動してしまう、そんな気持ちだった。とても美しものというのはいつ見てもとても感動してしまうものである。それが、そのときだけ、といった具合に限定された状況でした見られないものであればなおさらである。なので、月にとって見れば昨日と同じものであったとしても感動してしまうものなのである。
で、この美しい光景に、曜、
「どう、これこそ沼津のなかで一番美しいものだよ!!」
と、月に対し言うと、月も、
「うん、そうだね!!」
と、曜の言葉に同意する。って、これも昨日の夢と同じセリフ・・・ではあるがこれについては月も同じ行動しかとれなかった・・・。
そんな美しい光景が月たちの目の前で繰り広げられたあと、曜は月に対し昨日と同じセリフを言った。
「私、この美しい光景を月ちゃんに見せたかったの!!だって、月ちゃんと楽しい思い出、たくさん作りたいから!!月ちゃんと楽しいこと、もっと、もっと、やっていきたいから!!」
昨日と同じセリフ、これには、月、
(このセリフ、昨日、曜ちゃんが私に言ったのと同じセリフだけど、この僕にとってみれば、これが曜ちゃんの僕に対する想い、なんだよね・・・)
と、曜のセリフから読み取れられる曜の自分に対する想いに納得する。こんな曜の想いを感じられる、そんなセリフ、月からすればとても感動ものだった。
そんなわけで、月もそんな曜に対し最上級の言葉をもって返した。
「僕もそう思うよ!!曜ちゃんと楽しいこと、いっぱい、いっぱい、やっていきたい!!」
そして、曜は月に対しある言葉を送った、昨日の夢と同じように。
「あっ、忘れていた!!え~と、え~と、月ちゃん、あけましておめでとうございます!!」
この曜の言葉に、月、あることを思い出した。
(あっ、たしか、昨日の夢だと、僕が言い返した途中で現実の(高2の)曜ちゃんい起こされたんだよね・・・)
そう、昨日はこの場面で現実の曜に起こされたのだ。しかし・・・今は・・・、
(でも、ここには現実の曜ちゃんはいない。僕を起こす人なんていない・・・)
そう、寝ている月を起こす人なんてここにはいなかった。それを知っていた月、ついにある願望を叶える。
(なら、昨日、(夢のなかで)曜ちゃんに言えなかったこと、それが言えるね!!なら、僕、言うね、あの言葉を!!)
そう思った月、目の前にいる幼い曜に対しある言葉を送った。
「あっ、曜ちゃん、僕からも言うね。あけましておめでとうございます!!今年もよろしくね!!」
が、この月の言葉がトリガーだった。月がその言葉を言った瞬間、
バタンッ
と、あたり一面真っ暗になってしまった。世界の大停電・・・ともいえるくらい、いや、本当になにも見えない、それくらい真っ暗になってしまった。これには、月、
(えっ、なにが起こったの?なんで真っ暗になったの?)
と、なにが起こったのかわからずパニックになるも、
(うっ、ここはしっかりしないと・・・)
と、すぐに自我を取り戻すと、すぐに、
(いったいなにが起きたんだろう・・・)
と、現状を把握するためにまわりを見渡す・・・。
が、いくらまわりを見渡してもどこも真っ暗。この空間には月しかいなかった。これには、月、
(ここには僕だけしかいない・・・。いったい曜ちゃんはどこにいったんだろう?いや、なぜ、あの美しい光景が突然消えてしまったんだ・・・)
と、幼い曜、そして、あの美しい光景が突然消えてしまったことに不思議がってしまう。なぜ不思議なことが起こったのか、そう月は考えてしまっていた。
だが、そんな月に対し、月がよく知っている声でこんな声が聞こえてきた。
「月ちゃん、思い出して・・・、月ちゃんにとってとても大事な想い出を・・・」
この声を聞いた月、おもわず、
「えっ、曜ちゃん、なに?」
と、その声の主に対して逆に尋ねてしまう。月、その声の主のこと、すぐにわかったようだ。この声の主、それは、曜、だった。月はこのときこの暗闇の中、自分に対して曜がなにかを言おうとしている、そう思っていたのだ。
その月の想いが具現化したのか、月の目の前にある少女が現れた。それを見た月、おもわずある言葉を口にする。
「曜ちゃん・・・」
そう、月の目の前に現れた少女は曜だった。そして、暗闇の中で月に聞こえてきた声の主、それが月の目の前にいる曜だった。
その曜は月に対しあることを言った。
「月ちゃん、思い出して、月ちゃんにとってとても大切な想い出を、月ちゃんが前に進むためのとても大切な想い出を・・・」
この曜の言葉に、月、
(えっ、僕、とても大切な想い出、あったのかな?中3の卒業のときの想い出以外にも大切な想い出、あったのかな?)
と、ふと考えてしまう。以前、月は夢のなかで幼い曜と会っていた。それは中三の卒業のとき、月とは違う進路に進もうとしていた曜、それによってとても大切な親友である曜と別れてしまう、もう親友ではない、そう思ってしまった月に対し曜はこれまで2人で築き上げた想い出、想い、キズナといった宝物はずっと自分の心の中に残っており、その宝物を通じてずっとつながっていることを悟らせたのである。が、それ以外になにか大切な想い出があるのか、月は必死で思い出そうとしていた。
しかし、月、
(う~、必死に思い出そうとするも全然思い出せないよう・・・)
と、思い出すことを諦めてしまう。いろいろと思い出すもなかなかピンとこなかったみたいだった。
そんな月に対し、幼い曜は月にあることを言った。
「月ちゃん、以前、私が月ちゃんに思い出してもらった想い出(中三の卒業のときの想い出)があったでしょ。その想い出のおかげで現実の私(高2の曜)たちは立ち直ることができたんだよ!!」
そう、この中3卒業のときの想い出、その想い出によりイタリアに旅する前に鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感などによって不安・心配という海・沼に陥ってしまった千歌たち新生Aqours1・2年6人は復活を果たしたのである。厳密にいうと、月がイタリア・ローマの「真実の口」のところで新生Aqoursの中で一番その海・沼に陥っていたルビィにこの想い出を話すとともにこの想い出の中で悟ったことを話したのだ。で、この話を聞いたルビィは一人前の少女として生まれ変わることができたのである。また、それが新生Aqours復活の原動力となったのだ。
そして、幼い曜はこの言葉のあと、月にあることを言った。
「でも、今はそれとは別の想い出だよ!!その想い出は今の月ちゃんにとってとても大切な想い出であると同時に月ちゃんが前に進むために必要な想い出だよ!!」
この幼い曜の言葉に、月、
(う~ん、そんな大切な想い出、あったかな・・・)
と、思い出そうとするも思い出せず、しまいには、月、苦い表情になってしまう。
そんな苦しんでいる月に対し、幼い曜、
「月ちゃん、まだ思い出すことができないみたいだね。あ~あ」
と、ちょっとがっかりするも、すぐに、
「でも、月ちゃんならきっと思い出してくれるはずだよ!!だって、今さっきまで月ちゃんが見ていた夢そのものが月ちゃんにとって大切な想い出なんだもん!!」
と、とても重要なヒントを出してきた。これには、月、
(えっ、今さっきまで見ていた夢そのものが大切な想い出!?)
と、びっくりしてしまう。だって、今さっきまで見ていた夢そのものが大切な想い出だ、というのだ。これにはさすがの月もびっくりするしかなかった。
が、この曜の言葉に、月、あることを思い出す。
(でも、それは一理あるかも。だって、中3の卒業のときの想い出もまえに僕が見ていた夢とまったく同じだったから・・・)
そうである。この物語を最初から読んでいた方々ならご存じだろう。イタリアに行く前、ことあるごとに月は中3の卒業のときの想い出を夢のなかで再現していたのである。そして、月は新生Aqoursとのイタリアの旅の途中でその夢を通じて中3の卒業のときの想い出すべてを思い出すことになるのだ。で、その想い出をルビィに話したことによりルビィは大きく成長し、それが新生Aqours復活へと結びついたのである。なので、月、
(なら、今さっきまで見ていた夢も、今、自分が必要としている大事な想い出の一部かもしれない・・・)
と、考えるようになる。中3の卒業の想い出のときみたいに同じことが月の身に起きている、そう考えると今回も同じことが起きていると考えるのが妥当である、これには月も納得するしかなかった。
そんな納得した表情をしていた月に対し、幼い曜、
「月ちゃんならきっと思い出すことができるはずだよ!!私、そう信じているから!!それも近いうちにね!!じゃ、またね!!」
と、言っては月の目の前からこつんと消えてしまった。むろん、これには、月、
「わっ、曜ちゃん、待って、待ってよ・・・」
と、消えてしまった幼い曜に対し何度も呼びかけるも返事なし。これには、月、
(曜ちゃん・・・)
と、突然消えてしまった幼い曜に未練を感じていた。
が、そんなときだった。突然、
バタンッ ドテンッ
という音が聞こえてきた。これには、月、
(えっ、えっ)
と、一瞬驚くも、すぐに、
(な、なんか、目が回るよ~!!)
と、突然目の前が反転してしまう、そんな感覚に襲われてしまった。そして、その感覚に襲われてしまったあと、月の目の前はどんどん明るくなっていった・・・。