どうも知っている人はお久しぶりです。以前別の魔法科高校の劣等生の小説を投稿してたものです。
リハビリとしてこの作品を書き始めました。飽きるまでは何とか書いていきたいと考えていますので、よろしくお願いします。
第一話
国立魔法大学付属第一高校。毎年、国立魔法大学へ最も多くの卒業生を送り込んでいる高等魔法教育機関として知られている。
今日はその魔法科高校の入学式である。新生活に胸を高鳴らせる新入生がまばらに敷地内に現れ始めたころ、新入生である司波達也はベンチに座って情報端末で小説を読んでいた。読書に夢中になっていると。右からコツコツという音が響き始める。その音に集中をそがれた達也は右側に振り向く。そこには杖で地面をつつきながらゆっくりと進んでいる少年がいた。少年は進行方向にベンチがあることを確認すると、手探りでベンチに座っていないことを確認し、達也の隣に座る。
達也はその少年のことを注意深く見回す。来ているブレザーには八枚の花弁、一科生の証がついている。が、それ以上に目を引いたのは眼を覆い隠すように巻かれた布であった。
「……その目の布はどうしたんだ?」
疑問に思った達也が話しかけると、少年はビクリと肩を震わせると、跳ねるように立ちあがる。そして達也の方を向くと、軽く頭を下げる。
「いや、申し訳ありません。先客がいるとは思わなかったもので」
「いや、構わないよ。座ってもらって結構だ」
少年はその場から立ち去ろうとするが、達也はそれを引き留め、隣に座るように促す。
「では、失礼して」
少年は達也の隣に座ると自身の隣に杖を置く。一拍置いて、少年の方から自己紹介を始める。
「申し遅れました。私、風間、風間進といいます」
達也は進の名字を聞いて、体を小さく震わせる。しかし、目の見えない進に気付いた様子はない。達也はうろたえた様子を隠しながら、自己紹介を返す。
「俺は司波達也だ。達也と呼んでくれ。ところで話を戻すが、その布は……」
達也が再び目の布について問いかけると、進は一度目の部分を指さすと、話し始める。
「私、数年前の事故で盲目でして。それでつけているんです。あまり見せられたものでありませんから」
「そうだったのか。すまない、いいづらいことを聞いてしまったな」
「お気になさらずに。もう慣れてしまいましたから」
二人である程度の時間話していると、入学式まで三十分の時間になる。そろそろ行こうかとなったところで二人の頭上に声がかけられる。
「新入生ですね?会場の時間ですよ」
二人の前に立っていたのは腕にCADを巻いた背の低い女性だった。達也は女性に興味を持たれてしまう。しかし、目の見えていない進は自分が声をかけられているとはつゆとも思わず、そのまま達也に構うことなく講堂へ向かってしまう。
講堂についた進は空いている席を探すために通路を歩き始める。通路をしばらく歩き、人の気配が少ない場所を発見し、席に座ると入学式が始まるのを待ち始める。
しかし、彼は通路の半分から前と後ろで、一科生と二科生で別れることを知らない。そのため、進は半分より後ろ、二科生の方に座ってしまった。彼の周りは妙なざわつきを見せているが、講堂全体がざわついているため、進がそれを感じ取ることはことはできない。
進が座っていると、横から声をかけられる。
「どうしてここに座っているんだ?進」
「私がここに座ることは失礼なのでしょうか?達也さん」
達也の問いかけに首をかしげながら答える進は、問いかけの意味が理解できなかった。かといって別に後ろ側に座ることが悪いというわけではない。前後で別れるのは暗黙の了解であるだけで、ルールとして定められているわけではない。そもそもそうなることがおかしな話で、進の行動は間違っていないのだ。そういうわけで強く否定することが出来ない達也は苦笑いを浮かべながら流すことにする。
「いや、何でもない。隣いいか?」
達也の問いかけに進は無言で手で差し出すことで促し、達也は席に着く。
「さっきの事なんだが、何で逃げたんだ?」
「はて、何のことでしょうか?」
思い当たる節の無い進は首をかしげる。その行動を見た達也は再び苦笑いを浮かべながら、説明を始める。
「ベンチで声をかけられた時だ。生徒会長はお前のことを気にしていたぞ」
「あの方は生徒会長だったんですか。私にはわからないもので」
達也と進が話していると達也が声をかけられ、達也の横に二人の少女が座る。が、一つ空いた席に座る進のことはやはり気になるのか、進に声をかける。
「あのー、それどうしたんですか?」
進に向かって声がかけられるが、それだけでは気づかない。その声が自分に向けられたものだということを達也に肩を叩かれることで進はやっと気づく。
「私の目の布ですか?私、盲目なものでして。私風間進と申します」
「そうだったんですか。すみません、言いづらいことを聞いてしまって。私、柴田美月といいます」
進に声をかけた少女である美月が声を自己紹介をする。美月の隣に座る少女も続く。
「あたしは千葉エリカ。よろしくね。それにしても……、君、一科生なんだよね。なんでここに座ってるの?」
「はて、先ほど達也さんにも同じことを言われたんですが……。私ここに座っていない方がいいんでしょうか?」
進が首をかしげたところで達也がエリカに耳打ちをする。達也の耳打ちを聞いたエリカはばつが悪そうな顔をしながら、はぐらかす。もちろんその顔が進に見えることはないのだが。そんなことをしているうちに入学式が始まった。
入学式は特にトラブルが起こることなく、つつがなく終わり、進はIDカードを受け取りに向かっていた。が、IDカードの端末近くにはほかの新入生も集まり、目の見えない進にとっては非常に進みづらくなっていた。不意に背中に衝撃を受けてしまった進は転倒してしまう。転倒の衝撃で杖を手放してしまった進は、焦りながらも手放した杖を探し始める。が、最初に手放したときに進の横に飛んでしまった上に杖の存在に気付かなかった他の新入生に蹴られ、進にはどうしようもないほどに移動してしまう。
杖を見つけることが出来ず、進が途方に暮れていると肩を叩かれながら背後から声がかけられる。どこかで聞いた声に戸惑いながら進は応対する。
「はい?何でしょうか?」
「この杖、あなたのですよね。お困りのようでしたので」
進は杖を受け取り形を確認する。まぎれもなく自分の杖であることを確認した進は感謝を伝えるために頭を下げる。
「ありがとうございます。これがないと行動できないものでして」
杖を渡した少女は進の謝辞に微笑みながら対応する。
「いえいえ、困っていらしたので。紹介が遅れました。私、この学校の生徒会長をしています。七草真由美といいます。七草と書いてさえぐさと読みます。よろしくお願いします」
「風間進です。こちらこそよろしくお願いいたします」
お互いに自己紹介を終えたところで真由美の方が進に気付く。
「風間進……。そう……、あなたが……。入学試験時の実力試験で一位だったことで噂になっていますよ」
真由美は含み笑いを浮かべながら、進に話しかけ続ける。
「そういえば、入学式前に司波君と一緒にいたわよね。なんであの時先に行っちゃったのかしら?」
真由美はからかうようにして雑談を始める。進の身長は百七十五センチ。二人の身長差も相まって真由美が覗き込むようにして話しかけている。普通の男子であればときめく展開である。実際真由美の後ろに立っている男子は歯ぎしりしている。が、目の見えない進は状況が分からず、普通の応対をしている。
「逃げたように見えたのであれば申し訳ありません。自分が呼ばれたのだとは思わなかったもので」
和やかに会話をしていた二人だったが、そう長くは続かない。真由美は時間を突き付けられてしまい、会話を切らざるを得なくなる。自分の前から真由美が立ち去ったことを確認した進は、再び自分のIDカードを受け取るために歩き始めた。
IDカードを受け取った進はまっすぐに帰宅した。帰宅し、日課の素振りを終えた進の端末に着信が入る。応答のボタンを押し、電話に出てみると、自分の父親からだった。
「これはこれは親父殿。どうされましたか?」
「いや、単なる入学祝いだ。後、久しぶりに声を聴いておこうと思ってな。どうだ体調は?」
「非常に良好ですよ。そちらはどうですか」
「こちらも心配ない。曲者ぞろいだが、なんとかまとめられている。今度暇なときに真田君が顔を見せてくれと言っていた。伝えたぞ」
「ええ、いずれ時間のある時に伺わせていただきます。それでは失礼いたします」
「ああ、それではな」
通話が切れたのを確認すると、進は端末を置き、ソファに座り込む。そしてそのまま、眠りについた。
入学式の翌日、進はA組の教室に向かっていた。歩くのが普通の人より遅いため、早めに家を出ていた進だが、トラブルもなく、想定以上に早く着いてしまう。A組の教室に着いた進は自分の席に座ると、自身の端末に懐から取り出した携帯端末をケーブルでつなぐ。そして携帯端末から伸びたイヤホンを耳につけると、端末を操作し始める。が、家の端末とは勝手が違うため、少々てこずってしまう。悪戦苦闘しながら受講登録を打ち込んでいると、イヤホン越しに教室のざわめきが進の耳に届く。
が、進に構っている暇はない。進には状況が全くつかめていない上に、受講登録の半分も進んでいない。集中して受講登録を進めていると、いきなり肩を叩かれる。それに驚き、進の身体が跳ねる。
イヤホンを外し、叩かれた方の右を向く。と、入学式の時に聞いた声が進の耳に届く。
「初めまして。私、司波深雪といいます。よろしくお願いします」
「風間進といいます。ご丁寧にどうもありがとうございます」
深雪の丁寧なあいさつにいつも通りで答える進。二人の世間話は続いていく。
「生徒会長からお話は聞いています。実技試験で一位だったとか」
進の実技試験の結果が深雪以上の一位であることを知ったA組はざわつき始める。その声を耳に入れるだけ入れて進は会話を続ける。
「総代を務めた方に知られているとは光栄の極みです」
進は薄く笑みを浮かべながら深雪を褒めると、自分の端末に向き直り、履修登録の続きを打ち始める。それを見た深雪は進の顔を心配そうにのぞき込みながら、声をかける。
「あの……、もしよろしければお手伝いしましょうか?」
「ありがとうございます。ですが、自分でするようにしているんです。申し訳ありません」
そう言って再び向き直った進はキーボードを打ち込み始める。が、すぐにミスタッチによるエラー音が鳴り響く。それを見た深雪はクスリと笑いながら、進の肩に手をかける。
「お手伝いいたしましょうか?」
「申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせていただきます」
進は自分の行動に苦笑いをするしかない。苦笑いを浮かべながら深雪の提案を受けた進。自分の学校生活が少し不安になってしまった。
オリエンテーションが終わり、これから専門課程の授業見学に入る。進も席を立ち、教室から出ようとする。杖で地面をつつきながら歩き始めるが、杖で触れることのできなかった小さな段差に躓いてしまい、つんのめる。転ぶことはなかったが、机に手を付くことになり、杖を手放してしまう。二度目のことに微妙に慣れを感じながら、杖を手探りで探し始める。
すると、すぐに新の手に杖が当たる。いや、あてられる。進の目の前には杖を持った男子が立っており、進に杖を差し出している。
「大丈夫か?君のだろ。俺は森崎駿だ。名前だけでも覚えておいてほしい」
簡単に自己紹介をした森崎は、進に杖を渡すと、グループの面々と教室を後にしてしまう。それを見送った進も教室を後にしようとする。が、背後から声をかけられ、脚を止めることとなる。
「目が見えないというのは大変なんですね。よろしければ私たちとご一緒しませんか?」
「では、先ほどのこともありますし、お言葉に甘えさせていただきます。よろしければ司波さんのご同行者のかたのお名前も教えていただいてもよろしいでしょうか?」
深雪は自分の言葉から同行者がいることを察した進の洞察力に少々驚く。
「そうでしたね。ほのか、雫」
「光井ほのかです。よろしくお願いします」
「北山雫。雫でいい」
二人が頭を下げたのを感じ取った進も頭を下げる。自己紹介が終わったところで四人グループになった進は校内を回り始める。が、やはり視覚が切れている進にとって見学は非常につまらない。見学し始めて一時間も立たないところで進は三人から離脱する。
手持無沙汰になった進は放課後まで趣味の散歩をすることにし、校内を歩き始めた。
放課後になり、帰宅の途についた進は校門近くで騒ぎが起こっていることを耳で捉える。聞いたことのある声が言い争うのを聞き取った進は仲裁に入るために、声を頼りに一科生を先導している森崎に駆け寄っていく。
「……どれだけ優れているのか知りたいなら教えてやるぞ!」
口論がヒートアップしてきたところで、森崎がそう口にする。それに二科生の男子がさらに油を注ぐような答えを返す。
「だったら教えてやる!」
怒りが抑えきれなくなった森崎は自身の特化型CADを二科生に向ける。それに応じて二科生の男子も駆け出していく。が、一番先に森崎のもとにたどり着いたのは進だった。進は二科生に向けられたCADを杖で押し下げながら、たしなめるように声をかける。
「少し落ち着いてください、森崎さん」
「何のつもりだ、風間。二科生の肩を持つのか?」
「そんなつもりはありませんが、ここで魔法を打ったところで何も解決しないでしょう。最もここで魔法を発動させたらどうなるか、ご聡明な森崎さんならお判りでしょうが」
進の言葉で冷静さを取り戻したのか森崎はCADを下げる。それを見たエリカたちも剣を収める。そのタイミングで生徒会の面々が到着するが、達也が言いくるめてしまい、騒ぎは完全に鎮静化する。主犯ともいえる森崎は謝罪もすることなく噛ませ犬のようなことを言い残してその場から立ち去っていく。その稚拙さに進は溜息を吐きながら、その場を立ち去ろうとするが、そうはいかんとばかりに達也たちに引き留められる。
「よろしければ進君もご一緒しませんか?お一人で帰られるのは大変でしょう」
深雪の提案がとどめとなり、進は同行することにする。もともと断るつもりがなかったというのもあるが、一人で帰るというのは視覚が無くなったことに慣れた今でもつらいものがある。できれば少しでも楽に帰りたいという気持ちが強かった。
帰り道、先ほどの騒動が尾を引いているのか、微妙な雰囲気であったが、CADの話で盛り上がるとぎくしゃくとした雰囲気もなくなり、和やかになっていく。話題はCADから進のことに移る。口火を切ったのは達也だった。
「それにしても、良く森崎のところまで走ってこられたな。動きが見えていたが迷いなく一直線に走ってきていたぞ?」
達也の疑問に二科生組と深雪が首を縦に振る。雫とほのかは首をかしげている。
「あれだけ大声で騒いでいれば、場所の特定はすぐにできますよ」
「いや、どれだけ騒いでいても普通あんな正確に行動できないと思うぞ……」
唯一聞き覚えの無い声に進の表情が曇る。それを見た張本人は肩を叩いてから自己紹介を始める。
「わりい、紹介が遅れたな。西城レオンハルトってんだ。得意な魔法は収束系の硬化魔法。気軽にレオって呼んでくれ」
「風間進です。こちらも気軽に進と呼んでください。レオさん」
「さんはつけなくていいんだけどな。それより今更なんだが、その目のやつはどうしたんだ」
「中学の頃にちょっとした事故で視力を失ってしまいまして。ですがあまり気になさらないでください。もはや気になりません」
「お、おお、そうか。なんかわりいな」
進の言葉に動揺したレオは詰まりながら言葉を返す。微妙な雰囲気になってしまったのを感じ取った達也が話題を変える。
「そういえばその杖変わった形をしているな。障碍者用の杖っていうともう少し持ちやすい形をしているものじゃないか?」
達也は進の持っている杖に話題を振る。確かに進の持っている杖の持ち手は特殊な形をしている。色が黒というのもあるが、もち手にあたる部分が丸くなっており、そこから六つの突起が見えている。滑り止めのような効果を果たしているのだろうかと達也は考えたが、そもそも持ち手の形状でプラスマイナスゼロといったところだろう。
「確かにそうかもしれませんね。でも私はこれが気に入っているんです。見た目以上に頑丈なので剣の代わりとして振れますから」
「へえ、進君剣やるんだ?」
進の発言にエリカが反応する。興味深そうに進の顔を覗き込みながら問いかける。
「ええ、エリカさんほどではありませんが、少し剣をたしなんでおりまして。今でも素振りする程度には剣を握っています」
「だからそんなに手に握りだこがあるんだ」
話を変えながら道を進んでいると、近くのケーキ屋の話に移る。そして駅に着いたところで面々は解散となった。
第一話終了です。少しばかりここで解説をさせていただきます。
・主人公の名前…設定を考えていた際、独立魔法大隊の隊長の名字が『風間』だったので 名前を考えるのもめんどくさいということもあってこのような名前になりました。
・星の杖……申し訳ありませんがまだまだ活躍しません。活躍するのは横浜事変のあたりになります。そこまで作者の意欲が切れないことを願っていてください。
ではこの辺で失礼します。次の投稿がいつになるか分かりませんが気長に待っていてください。バイチャ。