星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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 ゴブリンスレイヤーはいいぞ

 どうも皆様。連続投稿ですよ、喜べ。
 それではどうぞ。


第十四話

 

 一人での行動を始めた進はこれからどこに向かうかを思案し始めた。

 

(ふむ……)

 

 面倒を考えないのであれば、今すぐに暴れ始めて敵を駆逐していくといい。だが、それでは町の被害まで無駄に拡大する。まだ、避難が完了していない以上、それは避けなければならない。

 

 次に避難者の避難方法を考え始める。シェルターに向かうか、今からヘリを呼んで空路で逃げるか、その二択だろう。船はキャパシティが足りていないし、バスでの避難はほぼ的になるようなものである。

 

 であれば、どちらにせよ、シェルターのある駅前を防衛しなければならない。敵もそれをわかっているからこそ、そこを制圧しようと考えるだろう。

 

「では、軽く駅前の敵を殲滅しに行きますか」

 

 進はCADを操作し、自己加速術式を発動し駅前に向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、シェルターに向かった真由美たち一行はその惨状を目の当たりにしていた。シェルターに入ることができなくなった一行は、進の推測通り、空路での避難をしようとしていた。そのための発着場となる駅前を死守するために、一校生徒が二つの部隊に分かれ、駅前の防衛に励んでいた。

 

 彼女たちはまだ学生とはいえ、実力はピカイチのものが多い。敵の殲滅に苦戦することはなかった。最初の間は。

 

「なんか、敵の数が増えてきてないか?」

 

「同感だ。幹比古が言う数よりも多い気がするぜ。俺たちのほうはちょっと手が回らなくなってきた」

 

 エリカとレオは敵の直立戦車を切り倒しながら、つぶやく。彼らは近接主体で、刀やそれに準ずる武器で相手を切り倒している。動かず敵を氷漬けにする深雪と違い、激しく動き回る彼らはスタミナの消耗も激しい。少しずつ息が上がり始めていた。

 

「おかしい。僕が見る限りでは伝えたとおりの数しか来ていないはずなのに……」

 

「何。責めてるわけじゃないんだ。索敵してくれてるだけありがたいぜ」

 

 幹比古が焦ったようなつぶやきにレオは励ましの言葉をつぶやく。

 

 が、休む暇すら与えず、敵は襲い来る。迫りくる直立戦車をエリカが山津波で、レオが薄羽蜻蛉で切り飛ばしたとき、彼らの耳に聞きなれた、地面を杖で突く音が響いた。

 

「大変そうですね」

 

「進!」

 

 他人事のようにつぶやいた進に真っ先に反応したのはレオだった。杖を突きながら輪の中に近づいていく。

 

「無駄話は後にしましょう。率直に言いますと、囲まれています。直立戦車が二十、歩兵の数も相当です。先ほどまでのは囮で、こちらが本命でしょう。数の力で押し切ろうという腹なのでしょう」

 

 そのあまりの数にエリカたちだけでなく、深雪も驚愕する。そのあまりにも多い数は、良くも悪くもエリカたちが厄介であると認識された証であろう。

 

「さすがにこの数に一斉に攻撃されては深雪さんでも防ぎきれません。わかりやすい戦法です。数の暴力で押し切る」

 

「じゃ、こっちから攻めましょう。ビルの陰に隠れてるやつらを切るのよ」

 

「やめておいたほうがいいでしょう。四方から囲まれている現状で、レオさんとエリカさんが同時に飛び出して行っても、残りから攻撃が飛んできます。そこそこ距離のあるこの状況ですから深雪さんの攻撃も効果半減でしょう。ここは……、私が切りましょう」

 

「で、でもどうやって……」

 

 レオのつぶやきでエリカの頭の中に一つの答えに近いものがはじき出される。会場で行った遠隔斬撃。あれをやるつもりなのだと。

 

「皆さん、私のそばから絶対に離れないでください。みじん切りにされたいのであれば止めませんが」

 

 レオ達の返答も聞くことなく、進はその場の全員に助言をする。最後に付け加えられた脅迫じみた一言によって四人はくっつかんばかりに進に近づく。

 

 それを確認した進は杖の石突を地面につき、宣言した。

 

「他国の有志達。戦士として、私の全力を持ってお相手いたしましょう」

 

 高らかに宣言したそれを聞いた敵兵士は変な奴がいる程度にしか、進の言葉を捉えなかった。しかし、次の瞬間、そんなことを思っていられなくなった。

 

 次の瞬間、放たれた言葉は全員に等しく災厄となって降りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星の杖(オルガノン)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進の杖から放たれた幾つもの光の環は、一秒とかからずに広がっていく。次の瞬間、ビルや道路、直立戦車の残骸に切れ目が入り、重力に耐えられなくなった残骸は、重力に従って地面へと滑り落ちていく。その裏に隠れていた敵兵も例外なく、切れ目が入るとともに、血が噴き出し、その体を地面にたたきつけていく。

 

 進の周囲、半径五十メートルに残ったのは、見るも無残な姿になった横浜の一角と、物言わなくなった敵兵たちの遺体だけであった。

 

 一連の流れを見ていた面々は、その衝撃に驚きを隠せない。進は、大量の敵兵を同時に、一瞬で、建物ごと切り飛ばしたのである。そんな芸当は「剣の魔法師」といわれた千葉家の当主ですらできない。

 

 ここまでの大惨事を生み出した本人は涼しい顔で石突を突いたままの体勢で思案している。いままでエリカは毎日のように相手をしてもらい、負け続けている。それでも日々手ごたえを感じていた。

 

 そんな彼が強さの本性を隠していたと知り、今まで進との戦いで積み上げてきた自信が一気に失われていくような気がしていた。

 

「では、私は適当にまた敵兵の首を刈り取りに行かせていただきます」

 

 四人にその場を任せて、その場を離れようとした進。その手をエリカは掴んだ。今ここで行かせてしまっては帰ってこないような気がしていたからだ。しかし、このままでは進は肩の手を外して、敵兵のところへ行ってしまうだろう。口八丁で引き留める必要があった。

 

「て、敵兵を倒しに行くんだったら、ここにいても変わらないんじゃないかしら?敵はここ制圧の目的みたいだし。いちいち動き回るよりかは、ここで待ち伏せてたほうが体力の消耗もないから」

 

「ですが……、私の場合、走り回っていたほうが数をこなせるのですが……」

 

「そ、それに私ちょっと疲れちゃったのよ。前衛の手が足りないから少し手伝ってもらえるかしら?」

 

 エリカの発言にレオは驚愕する。彼女の体力はしごかれたことのある彼ならばよく知っている。彼女は少し動いた程度で息が切れるはずがない。そんな彼女を疲れさせてしまうとは、同じく前衛である自分の力不足を恨んだ。

 

 最も達也がこれを聞いていたら、「違う、そうじゃない」と思っていっていただろうが。

 

「……まあ、そういうことならばご協力いたしますが、私一人で終わらせられると思いますよ?」

 

「それならそれでみんなの回復に当てれるからいいわ」

 

「では……、手を離していただけますか?」

 

 進の要求でエリカは素早く握っていた手を離した。その様子をほほえましく見ていた深雪はエリカの背後から近づくと、両手を肩に置き、微笑みかける。

 

「エリカがその気なのだったら、私は応援するわよ?」

 

 エリカが慌てて振り返ると、深雪はいつもエリカが幹比古と美月をいじり倒すときの目をしていた。まさか自分がその立場になるとは思わず、エリカは激しく狼狽する。男子連中が気づいていないのが幸いだ。

 

「よ、余計なお世話よ!」

 

 エリカは両肩にかけられた手を取り外すと、深雪から距離を置いた。それでも深雪は暖かいめでエリカを見つめていた。

 

 進はそのまま、深雪たちの班に合流し、駅前の防衛に入ることになった。その威力はすさまじく、直観によって放たれる刃は確実に直立戦車や歩兵の命を刈り取っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと!送り込んだ部隊の大半が一瞬で消されただと!?」

 

「は、はい。直立戦車は二十台以上一度に反応消失、歩兵に至っては五部隊以上が連絡がつかない状態になっています……。送り込んだ兵の半分は残っておりますが、謎の部隊や、義勇軍と交戦中です」

 

 男の報告に司令官は歯ぎしりする。すると、さらに報告が入る。

 

「直立戦車三台、通信途絶しました」

 

 それを聞いて男はさらに噛みしめる強さを強める。

 

「さらに兵を送り込め。なるべく今暴れている者に遭遇しないように指示を出してな!」

 

 指示を出した男の脳裏には一つの単語が浮かび上がる。魔醯首羅。三年前の戦いで悪魔のような活躍を見せた魔法師。それがこの戦いに参加しているとなると、ただの悪夢である。恐怖で体を小さく震わせたことに気付いたものは一人としていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……。もう少し数を増やしましょうか」

 

 進は杖からさらに円を広げ、刃の軌道を増やす。さらにその上を待機場といわんばかりにゆっくりと刃が走っている。

 

(これが、さっきつぶやいてたオルガノンってやつの性能……)

 

 それを近くで見守る深雪たちは黙ったまま、オルガノンを見ている。 

 

 敵がやってくると、刃が急加速し、敵を一瞬で切り裂く。周りの敵がいなくなったところで刃のスピードが落ち、再び待機状態に戻る。

 

(あの破壊力、あのスピード、通常の魔法師の障壁では防御は不可能。十文字会頭のファランクスでもどうかというレベルですね……)

 

 深雪はオルガノンの性能をしっかりと見極める。オルガノンの速度は動体視力を鍛えているはずの深雪でさえ刃をとらえることができない。

 

 破壊力は障壁魔法のかかった自立戦車やビルをヒット&ストップなしで切り刻んでいることから言うまでもない。エリカの山津波レベルの威力がある。

 

(それに円の軌道上を走るのであれば、軌道を変えることで攻撃のパターンを簡単に変えることができる……。)

 

 縦横斜めの円を自分を中心に置いたものを八割、トラップとして自分を中心にせずに置いているものが二割で軌道を描いている。

 

 広範囲を一人でカバーしながら、確実に一撃で相手を刈り取っていく。進が深雪たちの班に入ってからレオ達はまるで動けていない。

 

 進が一人で駅前の道を防衛していると、遠くのほうでヘリのモーター音が響き始める。姿こそ見えないが近づいてくるそれを聴き取った進は上空に張っていた軌道と縦向きに張っていた軌道を消した。

 

 進たちの上空からロープが降りてくる。通話ユニットを耳に当手ていた深雪がロープをつかみ、ステップに足をかけ、ひっぱりあげられていく。それに見習ってエリカたちもロープをつかむ。

 

 が進はロープをつかまず、逆の方向を向いている。

 

「ちょっと進君?まさか乗らないわけじゃないわよね?」

 

 不安そうに進を見つめるエリカのほうを向くと、微笑みながら答える。

 

「すみません。私はまだまだやらなければならないんです」

 

 進は顔を進行方向に向けると、彼らには目もくれずに走り始めた。それを止めることができなかったエリカはそのことを後悔しながら、抵抗することなく、ヘリの中に引き上げられていった。

 

 

 




 もうちょっと派手にぶっ壊せばよかったかも。次は横浜の街が半壊するくらいぶっこわそ。

 それではチャオ。

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