星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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 特になし。


第二話

 次の日、進はいつも通りに学校に登校していた。キャビネットを第一高校前の駅で降りると、いつものように学校までの道のりを歩き始める。いつもと違うのは同行者がいることだろうか。

 

「大丈夫ですか?進さん」

 

 二科生組の美月が進の手を引きながら進んでいる。その周りを取り囲むようにして達也たちが歩いている。おかげで進が誰かにぶつかることも、段差に躓いて転ぶこともなく安全に進めている。進はあって間もない彼らのやさしさに感動する。

 

 和やかに会話をしながら、学校に向かって歩いていたところで爆弾が介入する。声を上げながら軽やかに駆けて来る小柄な人物。それを見た達也は嫌な予感がしてすぐにでも駆け出したくなる。が、そういうわけにはいかない。進も声で何が起ころうとしているかの察しはついていた。進む足を止め、真由美の言葉に耳を傾ける。

 

 真由美は達也たちのもとにたどり着くと、朝の挨拶をする。しばらく達也、深雪と真由美が話し込んでいる間、他の皆は蚊帳の外になってしまう。

 

 ようやく話が終わったところでエリカたちも学校に向かおうとするが、今度は進に矛先が向く。

 

「進君も昼休みに生徒会室に来てもらってもいいかしら?少しお話しておきたいことがあるんです」

 

「分かりました。向かわせていただきます」

 

 進が声の方向に頭を下げると、真由美は満足そうな表情をしながら軽やかな足取りでその場を後にする。その後ろ姿を見送った達也たちの足取りは重い。足取りが変わらないのは進のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進は深雪と達也に連れられて生徒会室にやってくる。扉の前に立った三人を代表して深雪がドアホンを押す。スピーカーから歓迎の言葉が返されると、達也が戸を引き三人は部屋に入る。部屋に入り、深雪が周りが感嘆の声を上げるほどの洗練されたお辞儀を披露したあと、三人は指示された席に着く。

 

「お肉とお魚と精進、どれがいいですか?」

 

 真由美の問いかけに達也と深雪が精進を選び、進は何も選ばない。が、真由美は進の格好を見て不思議に思う。弁当を持っているようには見えないし、食べてきたようにも見えない。

 

「あの、本当に要らないんですか」

 

「ええ、自分でカロリーバーを持ってきていますので」

 

 進は懐から二本のカロリーバーを取り出す。が、それを見た風紀委員長は心配そうな声を上げる。

 

「おいおい、そんな量で足りるのか?一応食べ盛りだろう?」

 

「足りるか足りないかといえば足りませんが、定食形式の食事は食べづらいので外で食事をとるときにはこれにするようにしているんです」

 

 進の発言で風紀委員長がはっとした表情になり、雰囲気が少々重くなる。しかし、真由美が生徒会の面々の紹介をすることで少しはましになる。雰囲気がましになったところでダイニングサーバーから出てきた料理を書記の中条が並べ、会食が始まる。

 

 当たり障りのない会話が続く中、真由美が本題を切り出す。それは深雪に生徒会に入ってほしいというものだった。しかし、深雪はそれに思うところがあり、達也を生徒会に加入させようとする。が、生徒会の役員は第一科から選ばれるという不文律に阻まれてしまう。

 

「それに、もし深雪さんが辞退しても、次席の方にお願いするだけです」

 

 鈴音の説明に納得した深雪は素直に謝罪し、書記として生徒会の役員に加入することが決定する。深雪の加入が決定したところで次の話題に移る。

 

「次は進君です。進君には風紀委員に前年度卒業生の枠として加入してもらいたいと考えています」

 

「一応、どのようなお仕事か聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 真由美は一番下座に座るあずさに視線を送る。彼女は唐突なふりでうろたえる。が、慌てながらも説明を始める。

 

「風紀委員の主な仕事は、魔法使用に関する校則違反者の摘発と、魔法を使用した騒乱行為の取り締まりです」

 

「昨日の騒ぎを止めたのは君だろう?二科生のトラブルに首を突っ込んでいけるようなお人よしは少ない。ぜひ入ってもらいたいんだが……」

 

 進は下を向いて内容を精査していく。十数秒ほど口を開く。

 

「誠に光栄なことではありますが、お断りさせていただきたいと考えています」

 

「……理由を聞かせてもらってもいいかしら」

 

 真由美が神妙な面持ちで進に問いかける。進の前に座る摩利も同様の表情をしている。少々重苦しい雰囲気の中、進は自分の考えを話し始める。

 

「私、攻撃系の魔法がほとんど使えないのです。狙いが定められませんから。攻撃魔法が使えなければ、取り締まりは出来ませんでしょう?」

 

「目が見えていれば快く引き受けさせていただいたんですが……。非常に残念です。力比べだったら負けませんが……」

 

 真由美が理由を聞いて、理解したが納得できないように唸り声を上げ始める。その淑女とは言えない声に、摩利は冷たい視線を送るが、摩利も進を無理に引き留めることはできない。が、解決策として進は一つの案を提案する。

 

「ですが、私は別の人物もいいと思いますよ?」

 

 進は視線を右に傾ける。その人物を見て真由美と摩利の二人は表情を明るくさせる。

 

「そうか……。生徒会は第一科のみだが、風紀委員にはそんな決まりはない。達也君を選んでも全く問題ない訳だ」

 

 摩利はにやりと口角を上げ、達也を見る。いやな予感を感じ取った達也は反論していくが、深雪の押しもあり、だんだんと流されていき、風紀委員になる方向で話が進んでいく。

 

「じゃあ達也君。放課後、またここに来てもらっていいかしら?進君もね」

 

 生徒会室を出ようとしていた進は思い切り襟を引かれる。風紀委員にならない自分まで何故また来なければならないのかと思いながらも、早くいかなければ遅れてしまうと思い、反論することなく生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、再び生徒会室にやって来た進はいきなり修羅場に出くわす。

 

「実力の劣る二科生では風紀委員の役目に耐えられません!」

 

 そのセリフを聞いた摩利は眉を少し吊り上げてから、反論する。

 

「さっき実力にもいろいろあるといっただろう?達也君は展開中の起動式を読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳がある」

 

 摩利の発言に服部は仰天する。さらにそれが未遂犯に対する抑止力になることも聞かされ、服部はひどく動揺する。

 

 それでも服部は食い下がる。が、それを許さない人物が一人立ちあがる。深雪だ。服部に反発する深雪は、達也が実践では負けないと主張する。二人の間にある秘密を知らなければ身贔屓にしか聞こえないだろう。実際そのように聞こえた服部は深雪をたしなめる。火に油を注ぐような発言にさらに深雪がヒートアップしようとしたところで達也が制止し、服部に提案をする。

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進たちは移動して第三演習場へ来ていた。目的は服部と達也の模擬戦。二人は向かい合うようにして立っている。服部の腕にはブレスレット型の汎用型CADが、達也の手には銀色に輝く拳銃形態特化型CADが握られている。

 

 進の隣に立つ真由美は進に向かって問いかける。

 

「達也君は服部君に勝てるかしら?」

 

 進は真由美の問いかけに小さく息を吐くと口を開く。

 

「私にこの戦いを見届けることはできませんが、勝敗を予想することは出来ます。恐らくでしょうが……」

 

「始め!」

 

 摩利の合図で模擬戦が始まる。その直後、進は結論を示す。

 

「達也さんが勝つでしょう」

 

 直後、倒れこむ音が演習場に響き渡り、摩利が勝敗を告げる。

 

「……勝者、司波達也」

 

 生徒会の面々は達也が勝つとは思っておらず、唖然としている。達也は軽く一礼すると、CADのケースに向かう。

 

「待て」

 

 達也は摩利の問いかけにしっかりと応対する。続けて問いかけてきた生徒会の面々の質問にも丁寧に解答する。確たる勝利をつかみ取った達也の顔にはうれしさといったものは一切なかった。ただ淡々と仕事をこなしただけと言わんばかりの表情。意識を取り戻した服部は自分の無礼を深雪に謝罪すると、演習室を後にする。

 

 演習が終わったことを理解した進はその場から立ち去ろうとするが、達也がそれを許さなかった。

 

「話は少し変わるんですが、俺から提案があります」

 

 達也らしからぬ発言に進を除いた全員が興味深そうに耳を傾ける。その間も進は演習場から出ようとしている。

 

「今回は勝ちを拾えたとはいえ、やはり俺の魔法力は低いと言えます。そこで俺の補佐として進を風紀委員として加入させるのは」

 

 達也の提案に全員が雷に打たれたような衝撃を受ける。確かにこれならば達也の実践力と進の魔法力が備わった最強チームが出来上がり、風紀委員の力は飛躍的に高まる。達也の提案を受けた摩利は今にも演習場を出ようとしていた進を引き留める。

 

「よし、風間。次はお前の番だ」

 

「……まあ、いいでしょう。お付き合いしましょう。ではCADを取ってきます」

 

「じゃあ、俺がとってこよう」

 

 達也は演習場から出て事務室へ向かっていく。進は踵を返し、ゆっくりとしていた歩調が嘘のような速さで演習場の開始線へ向かっていく。それをみた面々は驚き、動揺するが、そういうものだということで納得する。達也を待つ間、進は言っておくべきことを伝えておくことにする。

 

「お先にお伝えしておきますが、ここに立ってはいますが、まだ入るとは言っていませんので。悪しからず」

 

 それを聞いた摩利は悪い笑みを浮かべながら、進に提案をする。

 

「じゃあ、私が勝ったら風紀委員に入ってもらうぞ。それくらいしなくては面白くない。さあ、君が言った力比べでは負けないというセリフに間違いがないことを見せてくれ」

 

 摩利の発言の直後、達也が進のブレスレット型CADを持って演習場に戻ってくる。進はそれを受け取り、装着する。審判は真由美が務めるようで、先ほどの摩利のようにルール説明を行う。

 

「それじゃあ行くわよ。……始め!」

 

 直後、二人はCADを操作し、魔法を発動する。摩利が発動したのは移動系、先ほど服部が発動しようとして不発だったものだ。普通であれば進の身体は宙を舞い、壁に激突するはずだった。しかし、進が吹き飛ぶ様子はない。起動式を読み込み、魔法を発動することは成功している。ではなぜ進が吹き飛ばないのか。

 

「領域干渉!?」

 

 進が恐るべき速さで領域干渉を発動させたことに驚きの声を上げる。しかし、本当に驚いているのはその強度にだった。三巨頭の名は伊達ではないほどに、摩利の干渉力は非常に高い。その摩利が進の干渉力の前に手も足も出ていないのだ。摩利もなんとか対抗しようとしているが、進の領域干渉はびくともしておらず、いたずらに魔法力を消耗するだけになっている。

 

 しかし、冷静に観察眼を働かせた摩利は領域干渉が進の半径五メートルまでしか張られていないことに気付く。魔法を変更し領域干渉の外に魔法を設置する。設置したのはエア・ブリット。打ち出された空気弾は進に向かって一直線に向かっていく。が進から三メートルにまで近づいたところで壁に当たったような音を立て、空気弾が霧散する。

 

「今度は対物障壁……。どんな演算能力してるのよ……」

 

 真由美の口から小さくつぶやかれた声は空気弾がぶつかる音でかき消される。進を覆い隠すように張られた対物障壁は何発も打ち出される空気弾をただの空気に変えていく。それでも障壁はびくともしない。逆に打っている摩利の方が消耗の方が大きい。

 

「余り長々と続けるつもりはありません。終わらせていただきます」

 

 進は同心円状に領域干渉を広げていく。摩利は下がりながら、魔法を発動して進に攻撃を続けるが、進の対物障壁を貫けず、徐々に追い詰められていく。そしてついに演習場の壁まで追いつめられた摩利は魔法を発動することが出来なくなる。

 

 自身の敗北を悟った摩利は両手を上げて降参を宣言する。それを聞き取った進は領域干渉を解除し、そのまま演習場を後にする。残された摩利たちは集まって話し始める。

 

「彼を何としても風紀委員に入れよう。彼は本物だ。達也君もそう思うだろう?」

 

「ええ、防御魔法だけで相手を制圧、本気を出しているようにも見えませんでした。さらに上があるんじゃないでしょうか」

 

「恐ろしいわね……。私たちもうかうかしていられないわね」

 

 摩利は悪い笑みを浮かべ、達也は淡々と、真由美は嬉しそうに笑みをこぼした。

 

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